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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年11月29日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、前原金一副代表幹事・専務理事より「タイの洪水による企業経営への影響に関するアンケート調査結果」について説明、長谷川閑史代表幹事より、(1)大阪府知事・市長のダブル選挙、(2)社会保障・税の一体改革、(3)提言型政策仕分け、についてコメントを述べた。その後、記者の質問に答える形で、(1)大阪の二重行政解消、(2)自動車2税(自動車取得税と自動車重量税)、(3)新卒採用、(4)会社法の改正、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

まず、大阪府知事選・市長選の結果について、いずれも(大阪維新の会の)圧勝に終わったのは、府民・市民がいかに現状の政治のあり方に飽き足らず、改革を求めているかという証左ではないかと思う。既存政党が、これまでの確執や主義・主張の違いを置いて相乗りで推薦・サポートしたにもかかわらず、維新の会に圧倒されたことは、政党として選挙民の期待に応えていないという意味で反省しなくてはならない。二重行政の解消については、考え方としては理解できる。ただし、「大阪都構想」というシンボリックな考えの下にどう実現されるかについては、メディアなどでも法改正が必要など疑問が呈されているが、具体的な取り組みのお手並み拝見としたい。(今回のダブル選を受けて、)既存の政党の限界に大きな一石を投じたという意味で、各政党とも反省をしなければならないと思うし、経済界も他人事ではなく、(企業経営者も)株主の期待に応えているかについて、コンプライアンスの問題を含め、常に反省をしなくてはならないと感じている。

次に、社会保障・税の一体改革を含めた課題が山積しており、来年の通常国会に向けて法案(策定)の準備が進められている。国家戦略会議の議員の一人でもあり、以下について言い続けたい。個別の政策に優先順位を付けてその実現を図っていくことは言うまでもなく大事だが、このような状況下で進めることは三つしかない。一つは、この国の経済をマイルドな成長とマイルドなインフレに何としても持っていく、そのために第三次まで含めた震災復興の補正予算をスプリング・ボードとして使うこと。二つ目は歳出削減で、三つ目は歳入増である。この三つについて、優先順位を付けてバランス良く取り組まない限り、説得力ある形で国民の納得を得られない。個々の政策を打ち出すにあたっては、この三つの大きなフレームワークのうち、どこをどう実現しようとしているのかを明確に打ち出すよう、訴え続けていきたい。中でも社会保障・税の一体改革について、手続き論で税を上げることだけが先行して実態は何に使うのかという問題提起があるのは事実だが、一方で、社会保障(費)の支出が100兆円を超えていながら、(社会保障4経費に対する)現在の消費税収が半分にも満たないという状況を考えれば、消費税が5%上がったところで年間1兆2,000億円も増える社会保障(費)の増加額をまかなおうと思えば、今のままでは10年も経たないうちに足りなくなる。同時に、世代間格差の是正や社会保障の中身についても切り込まない限り、持続性ある改革は難しい。

最後に、提言型政策仕分けについて、実施すること自体に異論を唱えるものではない。ただし、ビジネスの世界では、常識的に、仕事の目的(Job Purpose)は何か、実施した結果どのような成果をもたらせば成功と言えるか(Critical Results)を考える。政治の世界では、目的や結果や、その結果を担保するための仕組みについて、政治的な権威付けや法的根拠も含めて曖昧であるだけに、効果がゼロとは言わないが、ショー的ととらえられることがあってもやむを得ない。本気で(仕分けを)行うのであれば、その辺りの担保を求めたい。

質疑応答

Q: 大阪都構想における二重行政の解消について伺いたい。例えば、図書館や体育館に府立と市立の2つあるのは無駄という考えと、住民サービスのためには大切だという考えがある。代表幹事は、二重行政を解消すべきとお考えか。解消するとすれば、どのような手法が望ましいか。また、もしこれが大阪で実現すれば、全国の政令市に波及する問題だと思うが、この点についてはいかがお考えか。

長谷川: 個別の問題について、府立図書館と市立図書館の例を出されたが、私自身十分な理解と洞察を持たないので、コメントは控えたい。ただ、選挙戦の中で、あるいはそれ以前から例示的に挙げられているような、例えば、大阪府と大阪市の水道局が隣り合わせやすぐ近くにそれぞれ浄水場を持っており、それを一本化すればもっと効率的になるであろうことや、大阪府だけでなくいくつかの府県に見られるように、政令指定都市が幾つもある府県においては、府や県の仕事は、それ(政令市)を除いた部分であることにどれほどの意味があるのか、など様々な疑問点が提示されている。これをどう解決されていくかについて、これから橋下市長と松井府知事の共同作業で具体的な提案がされることを見たい。

Q: 大阪都構想について、実現するためには地方自治法の改正が必要となる。橋下氏は、国会でそれを改正するような機運がなければ、自分達で国会議員(候補)を立てて選挙を戦うと言っており、これが一つの政界再編や新党に結び付くのではないかと言われている。地方自治法の改正についてどうお考えか。また、それが進まない場合に、政治的に新党が出てくるという動きに対して共感するか。

長谷川: 構想や理念については賛同する部分もあるように感じているが、それをどう具体的に実現していかれるかについては、具体的な内容を知らないでコメントすることは控えたい。地方自治法の改正が必要であれば、それに取り組まれるだろう。市長は当選後の会見で、必要であれば国政にも維新の会から候補者を擁立していくなど、いろいろと仰っているが、これはあくまで話の段階で、まだ具体的な実現のための行動には必ずしも結び付いていない。極めて野心的で誰もやったことがないようなことをされようとしているので、障害は山ほどあるだろうが、これまで発言を実現されてきた実績もあるので、お手並みを拝見したいと思っている。

Q: 大阪都構想について、二重行政の解消という意味では理解できるということだが、政令市の制度について、課題や問題点はどこにあるとお考えか。

長谷川: 一つの府県という行政区域の中に政令指定都市が幾つもあると、結果として、府知事や県知事の管轄外という扱いがされ、キーとなる政令指定都市を含めた行政の効率化や合理化が図りにくいだろう。それを解消するやり方としては、我々がずっと提言している「地方分権(や地域主権、道州制)」という形で県の枠を取り払う方法もあれば、今回どういう形で実現化されるかはわからないが、都構想という中で二重行政解消を試みられるということである。言われて久しい地方分権や道州制が実現しない中で、一つの新たな試みとして実施されることについて、注目して見守っていきたい。風穴を開けるのは、結果が良ければ、(国政・自治体の)どちらからでも良いと思う。

Q: 税制に関して、自動車取得税と自動車重量税について民主党税調が廃止を求める決定をした。しかし、合計が9,000億円の財源に該当するため、財務省と総務省は、代替の財源がないと難色を示している。今後、政府税調で年末の大綱に向けて議論が本格化するが、この自動車2税の減税と代替財源のあり方について、どう解決すべきとお考えか。

長谷川: どう解決するかは政治の問題なのでコメントは控える。ただ、代替財源を必ず求めるとなれば、どこかで新たな課税が発生することになるし、それがなければ赤字国債の発行額が増えることになる。そのバランスをどう取るかと同時に、背景として、国民にきちんと説明していただく必要があるのは、これを何のために行い、それが例えば経済成長などにどう貢献するのか、それに最も貢献する可能性が高いからこれを実施するなど、具体的な説明がないと、なかなか国民の理解が得られないのではないかと懸念している。

Q: 就職活動について伺いたい。12月から就職活動がスタートするが、日本貿易会から、新たに就職活動の日程をさらに遅らせるという提言があった。経済同友会では、今年初めに一度提言を発表されているが、現時点で望ましい(就活)日程をどのように考えているか。

長谷川: (経済同友会では、2011年1月21日、「新卒就職採用活動の適正化に関する意見」として)2014年度の採用から、3年生の春休み(3月)以降に(広報活動を)開始すべきと提言した、この考えは今も変わっていない。就職内定率が厳しい状況の中で、学生の焦りもあるなど、学校側と学生側の間でも統一見解が出されていない部分はあるにせよ、大前提としては、少なくとも3年生までは、就職活動に奔走することなく、勉学に専念していただきたい、という意見について、産業界としても尊重すべきと考える。経済同友会としては、すでに提言した内容の立ち位置は変わらない。日本貿易会の提言については、これまでの慣行からすれば現実的には相当ドラスティックな変更になるが、個人的には、方向性としてはそれが望ましいかもしれないと思う。

Q: (就職活動の)理想の日程像に近づけるためには、どのくらいの期間をかけるべきか。今年新しい日程で始まり、来年また変更となると、特に今の1、2年生にとっては、目まぐるしい変更によって留学など学生生活の日程を立てにくいのではないか、改革は一度に実施すべきではないかという考えもある。

長谷川: 本来であれば、経済団体の中で見解の相違がなく、学生に統一したメッセージを送ることが望ましいのは申し上げるまでもない。結果としてそうなっていないことについて、(学生に)混乱を生じさせていることは、申し訳なく思う。ご指摘の通り、日本貿易会は、経団連のメンバーでありながら違う意見を出されている。経済団体の中で、(学生や学校の)混乱を最小化するために、出来るだけ統一行動がとれるよう見解をまとめる努力をすべきだと思っている。また、以前から、留学をすると就職に不利になると言われているが、それは全く逆である。日本の企業の多くは、すでに200社を超えていると思うが、ボストンで開催されているジョブ・フェアに参加して企業ブースを出し、ヨーロッパへの留学生含む日本人の留学生を直接採用している。日本の就職協定外になるので、まずここで採用した上で、日本の新卒採用に臨むという企業がたくさんある。決して(留学することが)不利になることはなく、しっかりとした留学経験を持ち、そこで成果を上げている学生については、採用側からすれば、むしろ有利になるはずだと思う。

前原: (就職活動時期を)遅らせればよいというだけでなく、一つの会社に十何万人も応募する半面、地方の有力企業には誰も応募しないなどというミスマッチが起きている。それを解消するための工夫も、我々に求められていると思う。

長谷川: 時代は変わっているが、企業も政治もなかなか変われない、さらに親のマインド・セットもなかなか変われないので、学生も変われていない。大きな変革の時期なので、過去のやり方をもう一度考え直すべきだろう。通年採用を行っている企業もあるので、考え直す方が良いと思う。

Q: 就職活動について、経済団体間で意見が合わないということだが、経済同友会と経団連との団体間で協力する体制ができていないのか。両団体の構成メンバーは重なっていると思うが、違う意見に集約されるのはなぜか。

長谷川: 残念ながら、お互いが肝胆相照らしてきちんと協力するという体制が、必ずしも構築できていないことに原因がある。それぞれの団体のそれぞれの考えを優先してしまうことが、場合によってはあり得る、その結果がこのようなことを惹起しているのだと思う。(経団連と経済同友会とでは、)意思決定の仕方やプロセスが異なるので、こういう結果が生じてしまうことはあると言わざるを得ない。その結果、学生や大学側に混乱を生じさせていることについては、大変申し訳ないと思っている。

前原: 経団連は2013年(の採用)、経済同友会は2014年からの変更を提言しており、矛盾はしていない。方向性として、経済同友会が提案する方向に行けば良いと思っている。多くの団体が同じ方向で考えており、また、大学側では経済同友会や日本貿易会の案に賛成している方が多いようだ。よく議論しながら対応していきたい。

Q: 会社法改正の動きについて伺いたい。オリンパスや大王製紙の問題を受けて、政府が会社法の見直しを考え始めており、例えば、社外取締役を設置するなどの議論が行われている。これについて見解を伺いたい。

長谷川: 前回の会見でも述べたが、このこと(オリンパスや大王製紙の問題)をもって日本企業のガバナンスが大いに疑問を抱かれていることについては、決してそんなことはないと断言できる。ただ、全く想定していないような意図的な粉飾決算が、社外取締役がいるという外見的にはガバナンスの形が整えられていた中で、実際に起こってしまった。ここから何らかの規制強化が行われる方向性が出てくることについて、産業界としては、「この事例は例外的であるから規制強化が行われては困る」と一方的に拒絶するのではなく、謙虚に受け止め、事業活動の裁量性と、ガバナンスの強化による透明性の強化のバランスを見ながら判断をしていかなければならないと思う。

Q: 大阪都構想と併せて、大阪の有権者からは、変えて欲しい、あるいは雇用・経済を何とかして欲しいという声が大変多い。経済同友会のトップとして、また企業経営者として、今の大阪経済の現状をどのように感じているか。また、新知事、新市長に望むことを伺いたい。

長谷川: 結果として一極集中がさらに進行していることは、国全体、特に地方自治を与り前向きに改革していこうとされている自治体の長にとって、好ましくないと思っている。高度成長時代に作ったいろいろなシステムについて(言えることだが)、現行のような経済があまり成長しない成熟した社会の中で、大幅な財政赤字を抱えながら今後財政規律を実行しながら立て直しを図っていかなければならないような、従来とは全く違う課題に直面しているにもかかわらず、行政のあり方や企業経営のあり方が昔のままで良いはずがない。そういう意味で、今のやり方に風穴を開けて、何とか効率化を図っていこうという試みについては、注目して見ていきたい。本来であれば、もう少し中央(政府)のコントロールを弱め、自治体に税源・財源を移譲して裁量権を与え、経営的なセンスで自治体を運営する形に移行していただきたい。その結果、良い成果をもたらせたところにはインセンティブを享受し、結果としてうまくいかなかったところにはナショナル・ミニマムのセーフティネットを考えながら、後は有権者が自治体の長や自治体の経営について、必ずしもうまくできない人たちを変えていく。省エネの課題も含め、もう少し、有権者、国民、消費者といった人たちの判断に委ねる、国民や消費者を信頼した形で、情報を開示しながら判断を求めていく、ということが、これからの行政や経営のあり方に必要なのではないか。今回の大阪での選挙結果がそういう方向につながっていくのであれば、極めて注目して見ていきたい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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