ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年11月01日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事

動画を拡大する

冒頭、長谷川閑史代表幹事より(1)TPP、(2)コーポレート・ガバナンス、(3)為替介入、(4)国家戦略会議、についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)為替介入、(2)TPP、(3)今冬の九電・関電管内での節電要請、(4)企業の中間決算、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

TPP、コーポレート・ガバナンス、為替介入、国家戦略会議について簡単に述べたい。

まず、TPPについて、論議が沸騰しており、ある意味では国論を二分していると言える状況かもしれない。一部報道機関の世論調査を見ると、どちらかと言えば賛成が多いという結果が出ていた。また、報道によると、民主党(の方針決定)について今週中という当初の目標は難しく、来週に先送りされたとのことである。野田首相が然るべき時に然るべき判断をされるだろうということと、経済界代表の立場からは、新浪剛史副代表幹事・農業問題委員会委員長が10月30日の討論番組でも発言したように、TPPの話題になると第1次産業と第2次・第3次産業の対立、特に第1次産業と第2次産業の対立の構図に矮小化されがちだが、今の時代は農業も漁業も第2次産業や第3次産業との協力無くしては生産性の向上は図れない。(先般(10月25日)「食と農林漁業の再生推進本部」で決定された「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」にあるように、6次産業化事業者への成長資本の提供や経営支援を一体的に実施するためのファンドの組成、イメージとしては)産業革新機構の農業版(の組成)が検討されているようなので、それが実現すれば経済界としても協力したい。

次に、コーポレート・ガバナンスを巡る問題である。(大王製紙やオリンパスの問題は)一向に収まる雰囲気がなく、経済同友会内部でも議論している。この問題の背景にどういった事実があるかが分からない段階で意見を述べることは難しいが、株主利益を大きく毀損する結果を生じた場合、説明責任を果たすのが経営者として当然の義務である。また、多くの企業は良好なガバナンスを保っているとは思うが、こういった事象が発生する度に、今一度自社のガバナンスに問題がないかを問いかけ、より一層透明なガバナンスが徹底できるよう努めていくことを、経営者としても経済団体としても強調しておく必要がある。

次に、為替介入について、かつてない大規模かつ単独での為替介入があった。安住財務相の発言は「納得のいくまで介入する」から「注意深く見守る」と(ニュアンスが)変わっているが、いずれも偽らざる心境であろう。これだけ円高が進むことについて、経済のファンダメンタルズなどを考えるとなかなか理解しにくい部分があり、また、企業も悲鳴を上げていることについて政府が何らかの措置を取らざるを得ないと判断されたことを多としたい。同時に、日本銀行も量的緩和を実施されているようで、政府と中央銀行が協調して円高対策をとられたことも多としたい。直後の効果に比して円高方向への揺り戻しはあるが、財務相も注意深く見守り必要に応じて考えるとおっしゃっている。こういったことが度々起こらないことを望むと同時に、今週G20が開催されるので、日本としてG20 のメンバー諸国の財務相や中央銀行総裁と話し合い、協調介入という結論が出ればそれに越したことはないが、何らかの協力体制ができる方向に進むことを望む。

最後に国家戦略会議について、先週金曜日(10月28日)に第1回会合が開かれた。(会合の内容については、)古川国家戦略担当相から事後ブリーフィングがあったのでそれ以上述べることはないが、私からは、発言時間が5分間と限られていたため、説明の理解を促進する意味で4ページの資料を配布した(資料は国家戦略会議のHPで公開)。ポイントは、中長期のビジョン、日本再生プランの基本戦略を年内にまとめ、詳細の「日本再生戦略」は来年の年央までにまとめるというのが政府側から出ているタイムラインと中身である。それに沿って進めるのは当然のことであるが、私が希望として申し上げたのは、網羅的に戦略を見直す必要は分かるが、政府は既に重い課題をいくつかコミットされている。第3次補正予算、これは野党第一党も第二党も協力されるようであるが、社会保障・税一体改革とそれに伴う消費税率引き上げについても基本法案の来年通常国会への提出をコミットされているし、一票の格差是正も法案提出を約束されている。こういった重い課題がある上にあれもこれも(課題に取り組む)というわけにはいかないだろう。例えば、「エネルギー・環境会議」は、従前の新成長戦略実現会議から国家戦略会議の下部に置き換えることが承認されたが、そういった下につく会議や検討グループでの検討状況は、適宜国家戦略会議に上げていただき、国家戦略会議は優先順位付けやバランス・チェックを行うような位置付けにしていただければありがたいと申し上げた。

質疑応答

Q: 為替介入の効果についてもう少し伺いたい。10月後半に円が戦後最高値を更新する中で、それを見送っての昨日の介入となった。このタイミングをどう見るか。G20 の場で協調介入まで話し合えればと言及されたが、円高を阻止する対策としての為替介入、しかも現状では単独で行うことに対して、どこまで、どういった水準まで追加介入を行うべきか。昨日は1ドル80円に届かない中で終わったが、どこまで追加介入すべきとお考えか。

長谷川: どの水準が適切かは難しいし、介入のタイミングや水準は政策当局が決めることである。行き過ぎた円高、特に史上最高値を更新するような円高と急激な変化は、いずれも企業にとって対応が困難になるという、基本的なビジネスサイドの要請について、(当局が)十分に考慮されて判断されたものと思う。タイミングが早いか遅いかについてのコメントは差し控えたい。

Q: 為替介入について、安住財務相が昨日は「納得行くまで介入する」とおっしゃったが、今日は違った。既に1ドル78円台に戻ってきているが、代表幹事としては断固として介入すべきとお考えか。

長谷川: 安住財務相がどのような局面で発言されたか分からないが、気持ちが素直に出たのだと思う。担当大臣である財務相としての姿勢は、常に慎重に情勢を見極めながら必要な時期に断固たる措置をとるというのが公式見解であり、これ以上詮索しても何も出てこない。こういった公式見解の中で、どういう行動を取られるかを注意して見ていくことに尽きる。

Q: 1ドル75円という水準は、経済界としては超えられない水準になるのか。

長谷川: 経済界全体の見方として(現状が)行き過ぎた円高であると感じていることは間違いないが、75円を超えてしまった場合に74円なら許容できるか、といった議論には意味がない。最高値の更新を今後も繰り返すような状況ではないと認識しているし、それが続くようであれば、六重苦と言われている(日本企業が置かれている)状況が厳しさを増す。例えば、食料や化石燃料(の輸入)だけでも、円高の今日の時点でも毎年20兆円以上を対外的に支払って購入しないとこの国の生活が成り立たないという(現実の)中で、将来の生活の安定を考えなくてはならない。外貨を稼いでくるという意味でも、国内の成長だけでなく企業は海外で稼いでくる(ことが重要である)。同時に、成熟した経済であるので、貿易収支以上に所得収支でプラスになるような状況を今後も続けていかざるを得ないことを考えると、あまり円高が進むことは好ましくない。ただし、デフレ脱却のためには「マイルドな経済成長とマイルドなインフレ」という形に戻さないと、基本的な問題解決は難しい。

Q: 安住財務相の「納得いくまで介入」という発言に関して、代表幹事の考える納得のいく為替水準はどの程度か。

長谷川: すべてムービング・ターゲットである。ビジネスマンであるので、今の段階でどの水準が納得のいくものかは述べないが、記録的な円高の更新を放置されることは企業にとっては極めてつらい状況である。

Q: TPPについて、民主党内でも慎重派の声が高まっており、離党をほのめかす議員もおられる。このような党内がまとまらない状況をどう見ているか。先週末は総理との意見交換を行ったようだが、総理にどのようなリーダーシップの発揮を期待するか。

長谷川: 然るべき時に然るべきご判断を、総理のリーダーシップでされることを期待している。民主党内で話がまとまらないことに対しては、オープンに議論をされることが民主党の特色でもあるし、結果良ければすべて良しであるので、その間に十分な論議が尽くされることが良いと思う。その意味で、当初(11月4日)金曜日に予定していた党内の方針決定を来週月曜日(11月7日)に延期したのも決して悪いことではない。ターゲットはあくまでもAPECに合わせたタイミングである。関連して、当会でも、11月4日に、TPP・FTA/EPAに関するシンポジウムを開催予定である。賛成派の方だけでなく、TPPに慎重な立場の方も含めてフランクな意見交換ができればと思う。政治家の皆さんにも参加いただけるよう働きかけており、どなたにお越しいただけるかは未定だが、興味深いディスカッションになると思う。

Q: TPPのシンポジウムの件で、経済同友会がこの時期に開催する狙い、特に農業を主要テーマとする狙いは何か。

長谷川: 経済界としては、国家にとっては第1次産業も第2次産業も第3次産業も大事な産業であり、(そこを)対立軸にすべきではないということ、第2次産業のために第1次産業を犠牲にして良いとはまったく思っていないということを訴えたい。先般(10月30日)、新浪剛史副代表幹事も討論番組で述べたが、公開の場でそういった立場を広く訴える機会を持ちたいと同時に、慎重派の方にも参加いただき、(双方が)虚心坦懐にお互いの信じるものを披瀝し合って、どこかに理解できるものはないか、あるいは協同で前に進められるものはないかといったことを試みたいという考えで、シンポジウムを開催する。

Q: 政府は、今冬の電力供給について、九州電力管内で5%、関西電力管内で10%の節電要請を行ったが、この影響をどのようにお考えか。また、来年夏の見通しについて、今年の夏よりピーク時で1割不足するのではないかという見通しを立てていることについて、どうお考えか。

長谷川: 菅内閣時代の新成長戦略実現会議でも度々発言したが、長い目で見た「縮・原発」と当面のエネルギー供給とは少し切り離して考えざるを得ない。特に、政府ができるだけ早い段階で来年夏の電力供給の見通しを明らかにしないと、原発(再稼動)は企業だけでは解決不可能な問題であるため、企業は事業計画すら立てられない状況になる。(九州電力管内の)5%、(関西電力管内の)10%という(今冬の)節電要請が、どういった形で来夏につながっていくかは現段階では不明確なので、何とも申し上げようがないが、来夏はできるだけ節電要請なしに済ませたいというのが産業界の願いではある。一方で、CO2(排出量)や化石燃料の追加輸入費用の問題が負担になってくる。当面は、ストレステストを通じて安全性が確認された原発について、政府、電力会社、地域住民の皆さん、自治体長の話し合いの下で、再稼動を前に進めることが好ましいと考える。

Q: 企業の中間決算発表がピークを迎えている。長引く円高や震災の影響に加え、タイの洪水被害があり、足下の経営環境が悪化している状況だが、改めて企業の決算内容をどう見るか。

長谷川: ご指摘の点が多くの企業に影響を与えており、大変厳しい。当社(武田薬品工業)も今週金曜日(11月4日)に決算を発表するので、現段階では多くを述べられないが、大変厳しい、容易ではないと受け止めている。

Q: TDKが11,000人、約1割の人員削減を発表し、パナソニックは大幅な赤字に転落する。円高の影響が日本企業に出ているように見えるが、人員削減や赤字は円高が原因なのか。

長谷川: それだけではないだろう。震災前から慢性病的に企業業績を圧迫するいろいろな要因があり、加えて震災の影響があり、さらに急激な円高が追い討ちをかけている。その(円高の)影響も、企業によって濃淡はあるものの、あるだろうと推察する。

以上

(文責:経済同友会事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。