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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年10月18日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より最近感じていること(経済連携、消費税論議、復興財源、国家戦略会議)についてコメント、前原金一副代表幹事・専務理事より震災復興に関する活動(被災地視察、「IPPO IPPO NIPPON」プロジェクト)について報告があった後、記者の質問に答える形で、(1)タイの洪水被害、(2)国家戦略会議、(3)中国の7-9月期国内総生産(GDP)、(4)九州電力の「やらせメール」問題への対応、(5)オリンパスの社長解任問題、(6)TPP、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

4点お話したい。まず(経済連携について)、米韓FTAのアメリカ議会における承認手続きが完了した。10月6~7日、米日カウンシル(U.S.-Japan Council)の年次会議でオープニング・スピーチをするため訪米した。ワシントンD.C.でいくつかシンクタンクを訪問した際、翌週にはアメリカ議会を通るだろうとの見通しで、イ・ミョンバク韓国大統領が訪米されたタイミングで発表があった。日本と似た環境にある韓国が、さまざまな障害を乗り越えてここまで到達されたことに対し、日本も見習うべき点があるのではないかと率直に思う。野田政権は、TPPについて、今月中に党あるいは政権としての結論を出されるとのことなので、それに大いに期待したい。

2点目は消費税について、安住財務相がG20(財務相・中央銀行総裁会議)で、消費税率(5%)引き上げの法案を年明け(の通常国会)に提出し、成立を図りたいと発言され、野党の幹事長から反発があった。(消費税増税の)実施は、逆累進性緩和のための戻し税などを考えれば、国民ID(制度の導入)とセットでなくては無理ではないかと観測する。あたかも法案を通せば来年には実現できるとか、(他方、2年前の衆院選で)政権をとったときに消費税を上げないと言っていたのだから方針を変えるのであれば解散して国民の信を問うべきだとか、与党・野党の感覚は分かるが、必要なものはきちんと論議をし、結論が出たところで時間がかかるので、その辺りを踏まえて分かりやすく討議をしていただきたい。また、選挙区割り(一票の格差是正/投票価値の平等実現)の問題をないがしろにしたままで解散を求めることは、野党第一党として無責任なので、そこをクリアにしていただかなくては困る。

3点目は復興財源について、首相は「野党の要望もよく聞いて考えたい」と、安住財務相は「次世代に(負担を)先送りしない」とおっしゃっている。一方、復興債の償還期間について、自民党は建設国債に準じる60年、公明党は15~20年としている。結果としてどうなるか分からないが、仮に償還期間を延ばすのであれば、「次世代に先送りしない」というロジックそのものが崩れるので、もう一度原点に立ち戻り、消費税も含めた見直しを求めるか、あるいは60年ということであれば国債という論議になる。償還期間が明確になれば、それにあわせてぜひ見直していただき、納得できる説明をしていただきたい。

4点目は国家戦略会議について、昨日一部の報道で、私も民間議員の一人として名を連ねていたが、確かに依頼があった。会議の目的等についてはまだ報道ベースでしか分からないが、国家の将来に関する重要な戦略を協議し、決定するとのことである。私はあくまで個人として参加を要請されており、経済同友会代表幹事としてではない。

前原金一副代表幹事・専務理事より震災復興に関する活動についてお知らせ

震災復興(に関する活動)につき、3点報告する。まず、10月5~6日に、経済同友会・震災復興PTと全国経済同友会・震災復興部会との合同で、岩手県を訪問した。合計39名が参加し、県の幹部から復興計画について伺い、意見交換をした。その後、陸前高田市、釜石市、遠野市、大槌町を視察し、被災地の首長や経営者から現状について伺った。7月の夏季セミナーでは宮城県(仙台市と石巻市)を訪問したが、地域によって状況が異なると感じた。

陸前高田市では、市街中心部がすべて津波で流されてしまった。46歳の戸羽市長をはじめ、200年以上の伝統を持つ醤油醸造業・八木澤商店の河野会長、マイヤの米谷社長にお会いした。八木澤商店では、すべて流されてしまったが、従業員を一切解雇せずに一から再建を目指すとのことで、新入社員お2人の入社式のお話には涙が出たが、大変勇気づけられた。同市には様々な復興プランが持ち込まれているそうだが、市長によると、(それらのプランについて)目利き、判断をできる人が乏しいというのが最大の悩みとのことだったので、企業経営者としてお手伝いできないかを検討したい。

釜石市は、市のパイロット事業として民間事業者による瓦礫処理場が稼働していた。放射線量もトラックごとにきちんと測った上で処理されており、分別・焼却・リサイクルのプロセスがしっかりと組み立てられて動いていた。新日鉄の存在が大きいのではないかと感じた。

大槌町は津波被害が甚大で、当時の町長が津波で亡くなっている。8月に新町長が誕生し、これからどうするか、という状態である。

民話の里・遠野市は、内陸部で被害が少なかったが、10年程前から大震災を想定した大規模避難訓練を実施されており、震災後も迅速に行政の対応体制が築かれ、沿岸被災地の後方支援の要として機能したとのことで、大変感銘を受けた。

陸前高田市には、全国から50人以上の若手市長(全国青年市長会)が応援センターを設置されており、私たちが訪問した際には松阪市の副市長がおられた。自治体間の連携がうまくいっているケースだと思うが、県同士の連携は必ずしもうまくいっていないとのお話もあった。秋田経済同友会のメンバーから、北東北3県では経済界と知事や県が一緒に話し合いを進めているという話があり、関西のような広域連携が東北でも必要ではないかと強く感じた。

また、今回の岩手県に続き、11月1~2日には福島県(福島県庁、浪江町、二本松市、相馬市)を訪問する予定である。

3点目は「IPPO IPPO NIPPON」プロジェクトについて、第1期(2011年10月~2012年2月)の活動が始まり、既に100を超える法人や個人から参加申し込みをいただいている。第1期の寄附目標は3億円で、ほぼ目処がついた。寄附金の使途(支援内容)は、(主に教育、人づくりの分野で)現金だけではなく必要な現物を調達して贈ることを原則としており、岩手県、宮城県、福島県の高校、大学などを対象としている。宮城県については、12月5~6日に現地視察と代表幹事円卓会議を開催し、学校に贈るバスの贈呈式を行う予定である。

質疑応答

Q: タイでの洪水被害について伺いたい。自動車や電機機器の生産に影響が出ており、年末にも品薄になるのではとの懸念がある。経済同友会の会員から具体的に影響を聞いているか。また、今後の影響について所見を伺いたい。

前原: 現時点では、特に厳しい状況は聞いていない。

長谷川: まだ報道でしか分からないが、既に400社以上の日系企業が影響を受けており、当初被害のあったアユタヤだけでなくバンコク近郊でも浸水が始まり、さらに被害が広がっている。今月中は降雨も続き、さらなる被害の拡大が予測されている。東南アジアの主要拠点都市の海抜が低いエリアの災害について、国際機関が警告を発していたとも聞いている。しかし、現代の人類・社会が持っている記録は過去100年程度だが、自然はそれ以上の長いサイクルで動いている。過去のことを十分に把握しないまま大規模な集中工業団地を造成した結果、森林伐採などの影響はあるにせよ、このようなことが起こった。(東日本大震災に続き、)再びサプライチェーンの中断につながり、常にリスクヘッジをしておかないと、いつ、どこで、何が起こるか分からないということを、改めて教訓として学んでいるという実感である。

Q: タイの洪水被害について、タイと日本は密接な関係で、日本企業も多く集積しており、これまで互いに有形無形の支援をしてきた。また、東日本大震災ではタイからかなりの支援があった。現地の被災者、被害に対する救援・支援について、首相は何も述べられていないが、経済界として声を挙げる必要があるのではないか。

長谷川: 経団連は、1%クラブで被災者の救済支援への協力を呼び掛けている。経済同友会としてはまだ最終的な判断をしていないが、(タイとの関係については)ご指摘の通りであり、何ができるかを検討したい。政府も、当然、支援のあり方について具体的に検討していると思うので様子をみたい。(仮に何もなければ、)機会があれば経済界からも政府に働きかけたい。

Q: 国家戦略会議で、TPPや社会保障・税について議論から除外されることに対し、受け止めを伺いたい。また、この会議に対する期待感を伺いたい。

長谷川: ビジネスマンであるので、ビジネスの場合はコンプライアンス遵守が前提だが、結果が良ければプロセスはあまり気にしないタイプである。TPPは、党・政府として今月中に結論を出すということで、国家戦略会議の初回会合が今月中ということであれば、日程的に間に合わない。党・政府の結論がポジティブなものであれば、(国家戦略会議で議論をしなくても)一向に構わない。国家戦略会議は、さまざまな国家的課題を民間有識者と主要閣僚で議論し、ワーキンググループと協力しながら取り組んでいくということで、課題は山積しており、(TPPと社会保障・税が除外されると)主要テーマがなくなるといったことはまったく心配していない。社会保障・税一体改革についても、私は以前から「一体改革の名に値しない」と厳しく述べているが、一歩でも半歩でも前進するという形を党と政府とで作ることができるのであれば、それは前進と考えたい。

Q: 課題が山積ということだが、優先順位についてはどのテーマから取り組むべきとお考えか。

長谷川: 既に、TPPと社会保障・税一体改革は述べられている。これ以外の優先順位の高いテーマは、社会保障・税の問題と密接に関連するが、消費税(増税)であろう。もう一つは選挙区割りの変更、一票の格差是正(投票価値の平等実現)といった問題がある。さらに、私が期待もし、国家戦略会議で意見表明をしたいと思っていることは、(成長戦略である。)成長なくしてこの国の明るい将来は描き得ないので、「財政規律、累積債務の問題と経済成長は車の両輪」とおっしゃっているが、特に経済界の人間としては経済成長戦略に高い優先順位をつけ、結論を出すことができれば良いと思っている。

Q: 国家戦略会議について、代表幹事はかねてから法的根拠がないと実効性に疑問があると指摘されていた。国家戦略会議はその点について何も決まっていない状況で、そこに個人の立場で参加される中で、どのくらいの実効性が担保されるとお考えか。

長谷川: ビジネスマンであるので、現実に応じて変幻自在に対応を考える。決まったことに対して非難や指摘はしない。推察ではあるが、会議で議論をして決まったことは閣議決定などの位置付けになると思う。正式に法制化された組織で決められたことよりは少し弱いかもしれないが、今回正式な機関が発足して、そこで民間と政府が協力し、国家の将来にとって重要な課題について議論をして方向性を定めていくことに対して前向きに捉えているし、個人としてできる限りの協力はしたい。

Q: 「個人として」と強調されるのは、日本商工会議所が(民間議員のメンバーに)入っていないことを気にされているのか。

長谷川: そういうことではない。古川大臣から「個人としての参加」を要請されているのでそのように述べているし、古川大臣も(今日の)会見でそのようにおっしゃっている。

Q: 国家戦略会議について、自民党時代の経済財政諮問会議に似ている面もあるが、諮問会議との違いについてどうお考えか。

長谷川: まだ会合もないので何も分からない。事実だけ見れば、法的根拠のある組織とそれがない組織という違いはある。法的根拠があるに越したことはないが、政府内での判断でこのようになったと推察する。重要なのは、そこで合意して実行することになった課題が、現実にどこまで実行されるかという「実行の担保」にある。実際に会議に参加をし、実行をしつこく要求してフォローしたい。第三者的に批判するのではなく、自身が意思決定の一翼を担うわけで、責任はより重いと考えており、(実行の担保に)全力を尽くしたい。

Q: 中国の(2011年7~9月期の)GDPが9.1%と発表され、依然高い伸びではあるが、(前の期に比べて)0.4%低下した。金利の引き締めやヨーロッパの影響もあると思うが、中国を含めた新興国経済の見通しをどう見ているか。

長谷川: 正直に言うと分からない。大方の見方は、まず、9.1%というのは、0.4%下がったとはいえ極めて高度な成長である。一方で、(消費者物価指数が前年同月比)6%を超えるインフレの状況が続く中で、中国政府はインフレ抑制に懸命な対策をとり、消費抑制も行っている。例えば北京では、自動車についてライセンス・プレートの発行を制限し、自動車を買っても自由に運転できないという方法で購入・所有を抑制したり、住宅についてもバブルになりつつあるので、北京に住民登録がある人しか購入できないようにして投機目的での住宅購入を防ぐなどといった抑制策を取っている。常にバブル崩壊の危機があるにせよ、こういった制約がある中でのこの(高成長の)結果は驚嘆に値すると思う。

Q: 九州電力の「やらせメール」問題について伺いたい。枝野経済産業相は、最終報告書について「住民の理解を得られない」と批判されており、ガバナンスの問題であるとも述べられているが、それに対する所見を伺いたい。また、この問題は再稼動にも影響すると思うが、今後どのように対応すべきとお考えか。

長谷川: (今後の対応については)九州電力が決められることで、代表幹事としてコメントすることは差し控えたいが、それにしても、顧客に対してきちんと説明をし、納得できる対応を取られることが必要である。その意味では、何のために第三者委員会を作って調査をしたのか、「それとこれとは別」という説明は、一般の消費者からすれば納得し難いだろうというのが率直な感想である。経営者の身の処し方は、それぞれがお決めになることで、私が述べることではない。(この問題による原発)再稼働への影響は、ないことを望む。

Q: オリンパスの社長解任の件について伺いたい。菊川会長は、ウッドフォード前社長が日本の文化が分かっていないと述べ、ウッドフォード前社長は、M&Aに絡んだ不適切な資金支出を主張しているなど、意見が相反している。ガバナンスの問題と日本企業のグローバル化にとって問題を残すのではないかと考えるが、いかがか。

長谷川: 現象面だけを捉えても、好ましい結果でないことは歴然たる事実である。任命した社長が数ヶ月で辞めることは、通常企業では考えられない。加えて、報道でしか分からないので何とも申し上げかねるが、買収に絡むアドバイザーへの支払いといった点については、オリンパス自身がどこまできちんと説明責任を果たすか、場合によっては調査が入るか、といった動きを静観するほかない。一方でウッドフォード氏は、報道によると、オリンパスが買収したヨーロッパの会社に入社以来30年も在籍し、執行役員も経験された方なので、内部事情が分からないという説明も不可解であると感じる。現在の経営の最高責任者が、ステークホルダー、特に株主に納得のいく説明をされることが最も望ましい。

Q: TPPについて、結果が良ければプロセスは問わないと述べられたが、「結果」とはTPPへの交渉参加を指しているのか。WTOや二国間交渉という道もある中でなぜTPPなのか、という指摘もあるが。

長谷川: 経済連携協定は、あらゆる可能性をすべて手掛けるべきである。WTOドーハ・ラウンドは完全に行き詰まっているし、二国間協定について米国は関心を示していない。私はTPP至上主義ではないが、TPP推進の意見を抑制するための意見としての「WTOや二国間交渉ではなぜだめなのか」という批判は簡単である。どういった理由で、どの二国間協議を優先すべきかについて述べない限り、単なる第三者的、傍観者的批判になる。そういう意見である以上は、あまり気にする必要はないと思う。健全な根拠のある賛成/反対の意見を戦わせることは大いに必要であり、経済同友会としてもそういった場の設定を摸索している。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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