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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年09月30日(金)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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 冒頭、長谷川閑史代表幹事より最近感じていることについてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)景気の現状と先行き、(2)TPP、(3)野田総理の国会答弁に対する評価、(4)第3次補正予算案を巡る与野党協議、(5)エネルギー供給不安と空洞化、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

 今週初め(9月26日)、東京地裁において、小沢元民主党代表の三人の秘書全員に有罪判決が下った。控訴・上告の制度があり、現時点で刑が確定したわけではないので、司法制度の下では当然のことながら推定無罪であるが、本質的な問題は政治資金規正法がザル法であるところにあると認識している。1994年に政党助成法ができて政党助成金が法制化された際、約束ではいずれ企業・団体献金を廃止するはずであったが、話題にも上らず放置されている。(政治資金の)扱いについても、その後度々問題が起き、領収書添付など透明化を図る動きはあったものの、結果としては(政治資金規正法が)ザル法であることが問題の本質だと考えている。

 二点目は、一票の格差是正の問題について、一部の与党幹部の間で若干話題に上っているのは一歩前進である。一方で、野党・自民党は、第3次補正予算が成立すれば解散総選挙を求めると発言している。野党が解散を主張することは、戦略上理解できなくもないが、(3月23日に最高裁で「違憲状態」との判決が出た中で、)一票の格差是正なくして解散総選挙になだれ込むことは、三権分立というこの国のガバナンスをないがしろにするものである。最高裁の司法判断からすでに半年が経っていることもあり、一票の格差是正を選挙区割りの改定という形で実施した上で、次の選挙に臨んでいただきたい。

 三点目、野田首相が(所信表明演説で)述べられたポイントのひとつは、「成長と財政再建は車の両輪である」という点である。国会での質問が集中していることもあるが、復興債の財源や社会保障と税の一体改革の関連で増税の問題ばかりが取り上げられ、一部円高に関する議論を除いて経済成長や景気対策についての本格的な議論が出ていないことは、極めて問題だと感じている。第3次補正予算が通れば復興投資につながり、経済成長へのスプリング・ボードとして有効に働けば望ましいが、成長戦略をきちんと実行していくためには、改めて新成長戦略を見直すべきである。年内に見直すと約束されていたが、この動きが乏しいことを懸念している。また、今朝、経団連と民主党幹部がTPPの議論をされたとの報道があり、11月のAPECで交渉参加の意思表明をして欲しいというのが経済界の要望である。一方で、TPPは完成度が高く、日本を含めると10ヶ国ということで、(参加が決まれば)一挙に貿易協定が進展する意味では望ましいが、米国の政治状況などを考えると、TPPだけにかけるのはリスクがある。何事もバックアップ・コンティンジェンシー(不測の事態への備え)を持っておくべきで、すでに予備交渉などで合意の可能性が見えているオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、EUなどとの二国間での経済連携協定を進展させるべきである。日本のTPPへの交渉参加が決まり、帰趨がはっきりするまでは、すべての経済連携協定の中から優先順位を付けつつ、同時並行的に真剣な対話を続けることが必要である。

質疑応答

Q: 今日9月30日は中間決算期末を迎える。株価も低調で円高も続いているが、改めて景気の現状、先行きに対する代表幹事の認識と、政治への要望があれば伺いたい。

長谷川: 企業業績そのものは、企業によっても異なるが、六重苦や七重苦と言う経営者もいるように厳しい条件が折り重なっており、なかなか厳しい状況にあることは間違いない。景気全体としては、緩やかながら着実な回復の方向に向かいつつあると感じている。また、経済情勢について、先進国の中で日本だけがもたついていた状況から、欧米が日本以上にもたついてきていることを考えれば、相対的にはそう悲観的ではない。円高等について政府が取れる対策は求めるものの、欧米の状況を鑑みても急激な改善は難しいだろう。経営者として厳しい条件を克服するためには、円高を嘆くばかりでなく、それを活用して何とか活路を開くことも考えなければいけない。M&Aも増えているようだが、今後もその傾向は続くだろうし、円高を活用して成長市場に進出し、成長市場の経済成長および生活の質に貢献するとともに、そこでのパイを獲得しなければならない。その裏側として空洞化の問題が出てくる。空洞化の定義付けにもよるが、労働力コストが大きく価格競争力に影響するものについては国内での生産は今後ますます難しくなり、海外に展開することは避けられない。日本国内では、付加価値が高いもの、あるいは海外で稼いだ富の再配分の過程で新しい産業を興したり、待機老人が100万人以上いると言われて久しく解決されていない医療・介護の分野に投資や財政出動をするなど、大きな目で見た政策の重点化が必要ではないか。

前原: 経常収支がそこそこ堅調を保っているが、中身を見ると、貿易・サービス収支が落ち込んでおり、所得収支でこれを補っている。M&Aや海外投資が進めばさらにこれが顕著になり、日本経済の体力が保たれている時に次の飛躍をしなければならないという状況である。

Q: 先のTPPの発言について、「11月に意思表明をして欲しいのは変わらないが、それだけにかけるのは問題である」と思う理由をもう少し詳しく伺いたい。

長谷川: 11月に正式に交渉参加を表明いただくのが望ましい。ただし、米韓FTAを見ても、両国で合意に達したまま2年近く米国議会でたな晒しになっており、米国議会の状況から考えればそこで相当苦労すると推察される。TPPが合意に達すれば良いが、(そうならない場合も考え、)バイラテラル(二国間)の経済連携協定についても合意に達せられるものから並行して進めていくのがバックアップとして必要である。TPPの重要性について過小評価するものではない。

Q: 野田首相の国会答弁に対する評価を伺いたい。

長谷川: 基本的には官僚作成の答弁の棒読みではなく、ご自身の言葉で発言されていると感じる。性格もあると思うが、慎重な発言に終始されており、失敗もないが思い切った発言も今のところは聞けない。ある意味では、過去の2つの政権を考えれば、スタートとしてはやむを得ないのではないか。

Q: 財務省主導の内閣とも言われているが。

長谷川: 報道にもよると思う。一部個人的に懸念があるとすれば、報道によると、政府税調が復興債の財源として消費税を含めた案を出していたものを、首相の意思で消費税を検討から外されたということである。(復興財源としての消費税は)当然考慮されてもよいと考えるが、民主党の税調が検討する段階で外されたということ自体は、少し(財務省の)影響があると勘ぐられても仕方がないかもしれない。

Q: 今日臨時国会が閉幕し、次の臨時国会に焦点が移っている。第3次補正予算案について、民主党が自民党・公明党と事前協議をするという動きがある。頻繁にあるものではなく、「ねじれ国会」を乗り切るための知恵のひとつとも言えるが、密室性も捨てきれない。協議という方法について、どのようにお考えか。

長谷川: 結果として出てくる内容とスピード次第だろう。(事前協議によって)国会審議がスムーズに進み、早く第3次補正予算が承認・執行されることになれば、今回に限って言えば悪いことではないと思う。第1次、第2次と復興予算を組んできたにしても、いま一番必要なのは、早く第3次の本格的な復興予算を通して、待っておられる被災地に提供し、その執行を担保していくことである。それに資するのであれば、今回に限っては悪いことではない。ケース・バイ・ケースだろう。

前原: 当会の震災復興プロジェクト・チーム(PT)の会合でも、第3次補正予算の内容が決まらないと、各県市町村の復興計画が立てられないとの意見が非常に多い。来週(10月5~6日)、全国経済同友会震災復興部会と震災復興PTが合同で岩手県を訪問する。報道各位にも、ぜひ現地に行っていただき、各地の意見を聞いていただければと思う。ヤマト福祉財団などいろいろな復興支援の寄付プロジェクトがあるが、実際の被災地の復活に力になる活動について、まだ周知が足りない部分もあるので、広く知らせていただきたい。

長谷川: 経済同友会の「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」も着実に進んでおり、近々進捗状況を報告できると思う。

前原: すでに、全国で80社を超える企業から支援を決めていただいている。詳細については追って報告させていただく。

Q: 六重苦、七重苦の話があった。エネルギー需給の話題は、今夏を乗り切って下火になっているが、根本的に解決されたわけではない。このリスクが空洞化を後押しする懸念はまだ残っているのか、新政権になったことで和らいでいるのか。

長谷川: 様子を見てみないとわからない。野田政権が発足して、エネルギー政策の見直しを年内にし、本格的な見直しの結果を来年中頃までに確定し、新エネルギー政策として出すと表明されている。年内と区切られたのは、来年夏の供給問題を視野に入れてその対策をきちんと出そうとされていると想像できる。また、その背景として、原発の再稼動問題については、首相以下(閣僚も)可能なものから再稼動する趣旨で発言されているし、原発の輸出についても、日本からの協力を希望する国には協力を推進するとも述べられている。これらから、以前より、懸念は若干少なくなったという感はある。しかし、年内の見直しの中で、原発再稼動の見通しが確実に立たないと、その懸念は再び重大な方向に変わっていくと言わざるを得ない。当社(タケダ薬品工業)も関西企業であり、関西エリアに工場も有しているが、特に薬は安定供給が重要であり、備蓄生産にも限界があるので、全国で50億円ほどの電力確保のための投資を決めている。特に関西地域では、(供給量の)50%を原発に依存している(ためリスクが大きい。)ガス・エンジンの発電機やNAS電池などを購入する方向で、当社としては何とか乗り切る見通しは立っているが、それだけの投資をできる企業は多くないと思うので、来年になって「またか」という話になると、生産拠点の海外展開も視野に入ってくるだろう。早く来年の目処を立てていただくことが必要である。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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