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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年09月13日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事
稲葉延雄 経済政策委員会委員長

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冒頭、稲葉延雄 経済政策委員会委員長より「2011年9月(第98回)景気定点観測アンケート調査結果」について説明があり、長谷川閑史代表幹事より最近感じていることについてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)枝野経済産業大臣への期待と懸念、(2)法人税に対するスタンス、(3)復興財源、(4)「国家戦略会議」、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

野田新政権が発足し、野田首相をはじめ党三役や複数の大臣に来訪いただき、また当方からも訪問して、経済同友会として取りまとめた意見書「野田新政権に望む」をお渡しした。補足として、意見書にも整理したが、国家の課題・問題点は十分に認識されており、重要性や緊急度を考慮した上で、いかに優先順位をつけ、政府・与党のコンセンサス、野党との合意、産業界や国民の理解を、丁寧に説明・説得することによって形成し、実行できるかにかかっていると思う、と申し上げた。一つでも二つでも、まずは着実に実績を上げていただきたい。

民主党政権になり、政策課題がなかなか実現しない。自民党政権末期も同様の問題を抱えていたが、原因の一つは、法的根拠を有する首相主導の意思決定機関の不在という点にあるのではないか。例えば、民主党のマニフェストに謳われていた「国家戦略局」の法制化を実現するか、それが短期間では難しい場合は、すでに法的に存在が確立している「経済財政諮問会議」を復活させるか、いずれかの方針を早急に固め、実現していただくことが肝要である。これは、本日開催した古川国家戦略担当大臣、石田内閣府副大臣、大串同大臣政務官などとの朝食会でも申し上げた。「経済財政諮問会議」は自民党時代のものであるといった狭量な考えは、国益優先の観点から、排除していただきたい。民主党内では、この考えに沿った「国家戦略会議」構想が検討されているようだが、古川大臣も官房長官とよく相談した上でおっしゃっており、まだその構想が固まっていないようだ。国家戦略会議をつくるにしても、法的根拠がないと実行の担保が難しいことを懸念する。すべての政策課題は、その法制化、「立法」とその裏付けとなる「予算」、この二つがない限り具体的に進まないことから、法的根拠のある意思決定機関、首相のリーダーシップが発揮できる場が必要だと考える。

また、主要政策課題の中で、「経済成長」を優先するのか、「財政規律」を優先するのかという、あまり生産的でない論議を聞くことがある。「財政規律」が大切であることは論を俟たないが、プライマリー・バランス(黒字化)は早くても10年後に達成できるかといった息の長い課題であり、さらには累積債務の解消も実質的には30年程度のスパンで考えなければならない命題である。こういった長期的な課題と、震災復興をスプリング・ボードとした経済成長という比較的喫緊の課題を同列で論じるのは、あまり意味がないと考える。長期的課題として財政規律の回復に取り組む一方で、まずは経済全体のパイを大きくする経済成長に取り組むべきである。「日本経済はもはや成長できない」「無理をして成長を求めるべきではない」との考えもあるが、少なくともマイルドな成長とマイルドなインフレ路線に戻さないと、日本以外の世界が4~5%の成長を続けている中で、少子高齢化の下でのさまざまな課題の克服は、一層困難になる。「成長なくして将来なし」と考えざるを得ないし、「改革なくして成長なし」も真実である。そのためにも、民主党政権になってあまり重きを置かれていない「規制改革」への本格的な取り組みと、それを可能にするための法的根拠を持った協議決定機関の設定も必要である。

最後に、党を問わず多くの政治家から、人口減少と高齢化は予見として受け止めて移行期間をどうマネージするかを考えれば良い、などあまり深刻に受け止めておられないような意見表明を聞くことがある。これでは衰退のスパイラルを止められないし、止める意欲もないと考えざるを得ない。人口減少に歯止めをかけるためには、あらゆる少子化対策を実施するとともに、まだ不十分である女性や高齢者の更なる活躍推進、(海外からの)頭脳・技能労働者の計画的受け入れなど、他の先進国が実施し成果を上げている政策の実行を求めていくべきである。この話題では、すぐに移民を何千万人も受け入れるのかという極端な話になりがちだが、まずは限定的に試行し、結果を見ながら次のステップを考えるという柔軟な対応が必要である。

質疑応答

Q: 野田政権発足直後に鉢呂経済産業大臣の不規則発言による辞任があった。後任には、東電の過失責任を問うなど、経済界からは「アンチ・ビジネス」と見られがちな枝野前官房長官が就任したが、枝野新経済産業大臣への期待と懸念を伺いたい。

長谷川: 結果を見なければわからない。菅政権の要役であった官房長官としての役割から、新たに経済産業大臣という役割になられ、立場による微修正や軌道修正もあるだろう。まずは、どういう発言や取り組みをされるかを見た上でコメントしたい。すべてに予断を持って判断することは、ビジネスにおいてはタブーである。

Q: 所信表明演説が終わると本格的に(政策議論が)スタートする。先ほど、長期的な財政再建よりも経済成長を求めるべきとのお話があったが、改めて法人税に対するスタンスを伺いたい。

長谷川: 復興債の償還財源には基幹税(所得税、法人税、消費税)を充てるという考えが、現時点では主流のようであるし、その背景は、一過性のものは一過性の財源で賄い、後の世代にツケを回さないという趣旨だと理解している。ただし、例えば、社会保障・税の一体改革について、以前も「改革の名に値しない」と述べたように、世代間格差に何のメスも入れていない。また、国民ID や電子カルテ、レセプトのオンライン化など、IT技術の駆使による運営面での効率化や透明化にも切り込んでいない。また、75歳以上の高齢者の医療費については負担率を原則1割としているなど、問題を放置している。復興財源だけは「後の世代にツケを回さない」というのは矛盾しているのではないか。また、誤解を恐れずに言えば、900兆円にも上ろうという累積債務を抱えつつ、(金額で見れば)1%の復興財源の部分のみにそのような理屈を述べられるのもいかがなものかと思う。したがって、基幹税を充てるのであれば、いま一度そのバランスを考えるべきであるし、法人実効税率の5%引き下げもあきらめていない。

Q: 法人税は既定の方針通り今年から5%下げるべきとお考えか。

長谷川: (既定の)平成23年度はもう間に合わないので、2012年度からお考えいただきたい。

Q: 法人税について、今出ているのは「法律上は5%減税するが事実上は凍結」という案であるが、それとも違ってあきらめていないという趣旨か。

長谷川: あきらめていない。経済成長の実現には、日本の市場を魅力的にするための環境整備が必須である。これには、規制改革と同時に、法人税の面でも、韓国(ソウル)24.2%、中国25%、シンガポール17%と周辺諸国が誘致合戦を展開している。日本の存在感を考えると、ピーク時は世界のGDPの17~18%を創出していたが、今は8%台にまで下がっている。特に中国は、地方自治体に課税権が与えられており、柔軟性を持って積極的に誘致している。そのような環境の中で戦っているということを認識しなければならず、企業の成長を促す(という課題)を先延ばししている余裕はない。二者択一ではなく、両方を実施することをお考えいただきたい。

Q: 税制改正に関連して、地球温暖化対策税を復興財源に充てるという考え方もあるようだが、それについてはいかがお考えか。

長谷川: 本日の報道で知ったのでまだ考えがまとまっていないし、単発的に出てくることに、個別にはコメントしかねる。復興財源については、税以外にも政府資産、政府保有株の処分といった話もあり、これもどうなるのかも定かでない。少なくとも、一時的な出費は一時的な収入で(賄う)、という政府のロジックで考えれば、むしろ政府保有株の処分などを優先し、足りない部分については税、となるのではないか。税について、当初は(復興財源には)所得税と法人税だけで、消費税は社会保障に取っておくという考えのようであったが、これはバランスを欠いている。これらも含め、全体像が出てこないとコメントのしようがない。

<長谷川代表幹事より、景気定点観測アンケート調査結果について補足>

長谷川: 本日発表した「第98回景気定点観測アンケート結果」のトピックスで、今夏の企業の節電について、日本人が見事に要請に対応した結果が示された。要請があれば対応するが、長く続くようであれば、海外移転などの可能性も示唆されているので、この結果をもって安心するわけにはいかないだろう。

Q: 経済財政諮問会議の再現について肯定的なコメントがあった。法的根拠以外にそのスキームが良いと判断する理由はあるか。

長谷川: 産業界や学界の代表など民間を大いに活用し、そこで提言し、最終的に首相のリーダーシップで判断いただく。それが予算の枠組みなどに具体的に展開されるという、しっかりとした法的位置づけのある組織で論議をして決定をしていかないと、なかなかそこまで持っていけないだろう。どうやって一つ一つ実行していくかを考えた場合、まずはしっかりと組織づくりをしなければ上手くいかない。経済財政諮問会議は現在でも法的には存在しているのでそれは一つの方法であり、民主党が国家戦略会議という名前で新たに設置するならば、その法的根拠をはっきりしなければ(政策の実現は)難しいだろう。民主党のマニフェストの一つの大きな施策であった国家戦略局ですら、民主党政権発足から2年経っても法制化できないという現実の中で、果たして新しいものが実現できるのかという疑問を持つ。ただ、それが実現されればそれに越したことはないので、いずれの形にしてもしっかりとしたものにしていただきたい。

Q: 米倉経団連会長の言葉を借りれば、経済財政諮問会議は、民間と官僚の対立、また省庁間での対立が激しかったとのことだ。何らかの形でリーダーシップを発揮し得る仕組みを考えないと、民間の声が反映されにくいと示唆されていたが、何かアイデアはあるか。

長谷川: ない。最後は、最終意思決定者の腹のくくり方一つだ。省庁間の利害調整が極めて難しいことは歴史が証明している歴然たる事実であり、ましてや、民間と政府の官僚組織が意見をまったく同じにすることもあり得ない。そこで対立を浮き彫りにしながらも、最後は国益を最大化するためにはどうすべきか、という判断を、首相が大所高所から大局的にする。そのような場をつくることが重要なのであって、どんな組織をつくってももめるだろう。もめることを覚悟でどのように一歩一歩進めるかについては、首相にすべてを負わせるつもりはなく、産業界にも学界にも覚悟が必要である。皆が力を合わせ、国益最大化のためには小異を捨てて大同につく、多少の犠牲があっても大きな利益を目指す、その考えでやらない限り上手くいかないので、その点についてはお願いをしておきたい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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