代表幹事の発言

記者会見発言要旨(未定稿)

長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

冒頭、長谷川閑史代表幹事より最近感じていることについてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)固定価格買取制度、(2)佐賀・玄海原発の再稼動、(3)松本復興相の辞任と後任人事、(4)第二次補正予算の閣議決定、(5)国会審議再開、(6)8月解散、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

菅首相は明確にはされていないが、退任の条件のごとく発言された三つの法案、特例公債法案、復興のための第二次補正予算、再生可能エネルギー法案について述べる。

特例公債法案は、これが通らなければ予算が執行できない。法案成立の限度については、本日、(野田)財務相が発言されたようだが、会期末までに法案を通さなければ10月か11月までには予算の執行が止まってしまう。これは時間の問題であろう。

第二次補正予算は、本日閣議決定された。原発事故関連対策として約2,800億円、二重ローン問題対策として約800億円、これらを含め2兆円規模で、予想されていた通りさほど多額にはならなかった。被災者の方々の立場を考えれば、スムーズに審議され承認されることを望む。

再生可能エネルギー法案、固定価格買取制度について、少し私見を述べる。これと密接に関係するのは、エネルギーの中長期政策をどうするかという問題であるが、現在、原発問題について最終的な方向性が出ないままに、いろいろな論議が進んでいる。原発に対するスタンスを大きく分けると、「原発推進派」と「脱・原発派」に分けられるが、そこにもう一つ「縮・原発派」、原発の比率を少しずつ下げていくという考え方も出されている。私は、この三つ目の路線が最も現実的ではないかと思う。これまで原発の平常稼動時には全電力(量)の約3割を供給していたが、これが減っていくとなれば何で補うかということになる。化石燃料で補うことについては制約があり、温暖化問題、CO2問題もさることながら、国の負担も考えなくてはならない。化石燃料の輸入コストは、1998年には約5兆円だったが、統計によると2008年には23兆円を超える額になっており、GDP比で1%から4.5%程度にまで増えている。このままインドや中国ほかBRICsが経済成長を続けると、化石燃料の(価格)高騰は避けられない。従って、代替エネルギーを促進することは、当然国家として考えなければならない。その意味で、菅首相の再生エネルギーに関する大きな方向性については、私も賛同する。ただし、このような話をされる場合は、政権党として、あるいはそれを率いる首相として、中長期のエネルギー政策を打ち出し、それと併せて再生可能エネルギー法案や固定価格買取制度を出されるのが筋ではないか。菅首相は、5月25日、OECDの50周年記念式典でのスピーチで、これまでの原子力エネルギーと化石エネルギーの2本柱に、自然エネルギーと省エネルギーという2本の柱を加え、これからは4本の柱でやっていくと述べられた。2020年代の早い時期に、自然エネルギーの割合を20%を超える水準にまで高め、そのために太陽電池の発電コストを2020年には現在の3分の1に、2030年には6分の1に引き下げ、1,000万戸に太陽光パネルを付けることについても言及された。しかし、それにかかるコストと時間軸、さらには実現可能性が十分論議されないままに一人歩きをしている現状では、最終的な国民の判断、あるいは国会における審議に基づいた判断をされる時に、ミス・リーディングされる懸念がある。本当にこの法案を通されたいのであれば、併せて中長期のクリーン・エネルギー政策についてもぜひ(方向性を)出されることをお願いしたい。なお、固定価格買取制度は、70以上の国および地域で既に実施されており、わが国だけが突出して行おうというものではない。また、諸外国の実績を見ても、限定された期間であっても、再生可能エネルギーや自然エネルギーを大幅に促進、バックアップする政策として極めて有効である。実例のある諸外国でも、日本においても、インセンティブ策とともに再生可能エネルギーに対する国家の大幅なバックアップが必要となる。現状、日本では水力を除く風力や太陽光などによる発電量は約1%と言われているが、それを20%にまで上げようとすれば大変な努力が必要になる。実際に、ドイツやスペインでは既に(全電力に占める再生可能エネルギーの割合・パーセンテージが)2桁、ドイツでは16.8%、スペインでは28.8%(ともに2010年時点)にまで到達しているようなので、不可能ではないと思うし、この機会に(国家としてインセンティブ策などのバックアップを)お願いしておきたい。

質疑応答

Q: 固定価格買取制度について、経団連の米倉会長はどちらかというとネガティブなスタンスであると理解しているが、経済同友会としてはこの制度をサポート(支持)するという認識で良いか。

長谷川:来週仙台で開催予定の夏季セミナーで、エネルギー政策に関するセッションを設けてこの問題を含めて論議したいと考えており、現時点で経済同友会全体としてのコンセンサスを得ているわけではない。従って、先述の意見は個人的な見解である。固定価格買取制を実施すれば、サーチャージという形で電力価格が上がることになるが、これ(固定価格買取制度)をやらなければ(電力)価格が上がらずに済むのかといえばそうではなく、おそらく化石燃料価格が上昇してくる。シェール・ガス(など他の資源)の状況、あるいは福島第一原発事故を踏まえた国民感情を考え、長い目で見た場合には、現時点で自然エネルギーを国家政策に位置付けていくことは意義があるものと考える。

前原:本件については、(経済同友会の)エネルギー政策PTでも賛否両論ある。来週の夏季セミナー2日目、7月15日のひとつのセッションでこの問題を議論したい。

Q: 昨日、佐賀・玄海原子力発電所の再稼動に向けての動きがあった。前回の会見で代表幹事は、54基の原子力発電所の再稼動問題について、国が全面的にバックアップしないと電力供給問題は大変なことになるという趣旨の発言をされたが、今回の玄海原子力発電所の動きに関してコメントをいただきたい。

長谷川:前回の発言の趣旨は、この(再稼動)問題を地方自治体の首長と電力会社との話し合いだけに委ねることは国家として適切ではなく、国が関与して再稼動の道を開くことが必要である。そうでなければ、(産業の)空洞化もさることながら、経済成長、新成長戦略の実現もおぼつかなくなる。また、今年よりもさらに来年の電力供給がタイトになれば、多くの企業では事業計画も立てられないという状況になる、というものだった。

その後、説明を受けていないので詳細は分からないが、海江田経産相が現地に赴き、佐賀・玄海町長や古川県知事とをされた結果、安全性が担保された形で、町長が電力会社に原子力発電所の再稼動への同意を伝えられたと理解している。県知事は、最終的に議会等の承認を得る必要があり、菅首相や国のコミットメントを得たいとのことである。自治体の長からの要望に対し、まして福島第一原発事故後の最初の再稼動という重い決断を強いられる自治体の長に対して、国家としてきちんと安全性の担保を確認した上で、コミットメントを出すことが必要だと考える。そう遠くない時期に実現されることを支持したい。

Q: 松本復興相の突然の辞任に関して感想を伺いたい。

長谷川:感想の言いようがない。就任後僅か9日、ご本人は「個人的な都合」とおっしゃっているようだが、誰が見ても明らかなように、岩手県、宮城県訪問の際の発言の責任を取っての辞任と受け止めざるを得ない。被災者の方々のため、被災地の復興のために一刻を争う状況の中で、このような形で任命後10日も経たない時期に復興担当大臣が辞任されることについては、理由の如何を問わず極めて遺憾である。

Q: 復興相の後任人事が検討されているようだが、次期復興相に望むこととどのような方を望まれるかについて伺いたい。

長谷川:今の内閣がいつまで続くのか、あるいはおそらくそう長くは続かないだろうという状況の中で、新任の大臣の任命は極めて困難な作業になると思うが、それは政権党の内部事情であり、被災地の事情は「待ったなし」である。菅首相も本日中には(後任を)決めたいとおっしゃっているようだが、明日からの国会(審議)再開にあたり、復興担当大臣が決まっていないということでは、再開後の国会が冒頭からつまづく要因にもなるので、早急に決めていただきたい。(次期復興相について)個人的な希望を申し上げれば、これまでの復興の経緯をよくご存知であると同時に、相当の権限を与えられてそれを行使できる方になっていただきたい。また、先のことは分からないが、そういう方が就任されたら、内閣が変わっても継続していただくことが、被災地のことを考えれば望ましいのではないか。

前原:(後任大臣には)東北地方の復興だけでなく、日本再建のためにも強い使命感と真のノブレス・オブリージュ (noblesse oblige)を持つ方になっていただきたい。

Q: 2兆円規模の第二次補正予算(が閣議決定されたこと)について、この時期にやることにより、本格的な三次補正(予算)が後ろにずれ込むという現状について、所感を伺いたい。

長谷川:このタイミングで二次補正を組むことについては、当初から、喫緊の課題である原発事故に対する補償・対策および二重ローン問題を主眼に小規模な補正(予算)でつなぎ、本格的な復興のためには第三次補正(予算)という形でおやりになると理解している。そのタイミングは、いまの国会情勢では見極めにくいが、そう遅れることがないように(願っている。)今国会閉会後、民主党代表や首相がどうなるかが不確定要素ではあるが、できるだけ速やかに臨時国会が召集され、来年度予算の概算と併せて本格的な復興のための最終的な大規模な補正予算が組まれることを望む。

Q: 野党が菅政権への反発を強めており、明日から再開される国会審議が再び空転する可能性があるが、それについて所感を伺いたい。

長谷川:冒頭に述べた三つの法案が可決もしくは採決されれば、どういう形であれ次のステージに進むということなので、問題はいろいろあるにしても、野党もあまり国会を空転させず、必要であれば修正案を出し、必要な法案の審議を進めていただきたい。最終的に決着を付けて次のステージに進むことが、懸案事項が山積している中で、被災地のみならず国家としても、国政の遅滞を最小限に留めることにつながると思うので、それを強く望む。

Q: 菅首相が再生可能エネルギー法案で8月にも解散する、というような噂があるが、どう見ているか。

長谷川:(この時期の解散総選挙についての主張は)終始一貫しており、あってはならない、あり得ない(と考えている)。以前から再三述べているが、(「一票の格差」問題について)3月23日、最高裁の大法廷において14対1で「現在の選挙区割りは違憲状態にある」との判決が出た。さらに踏み込み、都道府県ごとに一議席を割り当てる区割り(一人別枠方式)(の廃止)にまで言及した判決であったにもかかわらず、首相は、「内閣が衆院解散を決定することは否定されるものではない」とする答弁書を閣議決定した。これは、質問(主意書)には閣議決定をして答えなければならないというルールがあるからだと理解している。また、首相の統治権は何者にも阻害されないとの意見があるが、国民の安全・安心と領土の保全を考えるのが、統治権としてはもっと大事ではないか。この(解散についてのみ統治権を言及される)ような政治家は少数であるが、そのこと自体を遺憾に思う。このまま(解散総選挙を)強行し、選挙後に弁護士グループが(選挙無効を再度)訴えた場合に最高裁がどういう判断を下すか、これは未知の領域であるので分からない。しかし、三権分立と言いながら、立法府が司法を無視するというのは、国のガバナンスの根幹にかかわる問題であり、国民にきちんとした説明がないままに強行されることはあってはならない、と強く、何度でも反対の意思を表明する。

以上

(文責:経済同友会事務局)

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