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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2011年06月14日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事
稲葉延雄 経済政策委員会委員長

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冒頭、稲葉延雄 経済政策委員会委員長より 「2011年6月(第97回)景気定点観測アンケート調査結果」 について説明があり、長谷川閑史代表幹事より最近感じていることについてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)イタリアでの国民投票結果と日本のエネルギー政策への影響、(2)原子力賠償支援機構法案の閣議決定、(3)菅首相による追加補正予算の指示、(4)税・社会保障の一体改革、(5)菅政権への対峙のあり方、(6)インフレの影響、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

代表幹事就任時から、日本経済を安定的な成長軌道に戻すことを最優先課題として全力を尽くしたいと述べてきたが、その関連で二点申し上げる。

一点目は、先般、政府の新成長戦略実現会議に経済三団体長の一人として参加した。その場で述べたのは、当面の成長戦略上の最大の課題のひとつは、今夏もさることながら来年以降の電力供給であるということだ。54基ある原発のうち35基が定期点検あるいは点検のため停止しており、(点検終了後の)再稼動は実現しておらず、残りの19基も来年4月までにはすべて定期点検に入り、停止する予定だが、再稼動の目処は立っていない状況である。地方自治体の長と電力会社の話し合いに任せるのではなく、国家が責任を持たないと今の状況を打破できないと強く申し上げた。それがないと、企業としても事業計画すら立てられないし、心配されている(日本の)空洞化も促進しかねない。加えて、ベトナムやトルコのように、3.11以降も日本からの原発購入を表明されている国がある中で、自国が原発を停止して再稼動もせずに、他国に買ってくださいと言うことは論理的に矛盾している。国家が責任を持って、当面は(原発の)再稼動を行って欲しい。長い目で見れば、再生可能エネルギーに置き換えていくことは重要であり、仏ドービル・サミットで(菅首相が)述べられたことも理解できるので、時間軸とコストを踏まえて実現可能性を検証していく必要がある一方で、当面は(原発再稼動によって電力供給を確保していかなければ)経済成長どころではないと強く申し上げた。政府からこれに対する明確な言動がないことは極めて遺憾である。

もう一点は、税と社会保障の一体改革についてである。これも経済成長という国全体のパイを大きくする戦略とセットでない限り、成長しないあるいは縮小するパイの切り分けをどう行おうと意味がないと考えるが、成長戦略とのセットという形では提示されていない。同様の危機に遭遇した経験のあるニュージーランドやカナダ、あるいは現在のイギリスは、成長戦略と歳出削減と歳入増の3つについて、バランス良くタイミング良く取り組んでいくことで、国家の再建を果たそうとしている。それにも関わらず、(日本)政府はバランスの取れた一体的な政策提言をできずに個別に対応している。ましてや今回出された改革案は、消費税増の問題もさることながら、それ以前に、今の社会保障制度にメスを入れ、効率性を高めるための改革、例えば、国民ID(の導入)、電子カルテやレセプトの電子化など、ICTを駆使してあらゆる効率化を進めることでコストを下げる(ことなどが見られない)。また、若い人の将来に夢を持たせると口では言いながら、ここで(痛みを伴うメスを入れて)世代間格差の是正を打ち出さない限り、社会保障の抜本的な改革はあり得ない。それらの点からも、今回の改革案は、掘り下げも痛みを伴う改革という面でも、極めて不十分であると言わざるを得ない。

質疑応答

Q: イタリアで実施された(原発再稼動の是非を問う)国民投票では、反対票が圧倒的多数であったが、代表幹事の受け止めを伺いたい。また、日本のエネルギー政策に与える影響について所感を伺いたい。

長谷川: (イタリアの国民投票結果を受けて、)閣僚の方々もコメントされており、例えば海江田経済産業相は、電力供給のひっ迫は経済や国民生活に影響するし、原発は日本の(エネルギー政策の)4つの柱の1つというのは変わらない、と述べられている。先述の通り、再生可能エネルギーで原発を代替できるのであればそれに越したことはないが、(代替に)必要な時間軸とコストを見極めないで、代替(を主張)することは説得力に欠ける。政府が具体案を出し、それについて産業界ときちんと話し合いをして、実現可能性のあるプランに落とし込み、国民の皆さんに是非を問う、あるいは理解を得るというプロセスを踏まなければ(ならない。)現実を見極めれば、原発から(再生可能エネルギーへ)の置き換えには20~30年はかかると思われ、(今すぐには)難しいだろう。仮に、古い原発が安全性の面で少しリスクが高いのであれば、新しい原発に置き換えていくことも、世界の原発の重要な技術を支えている国として取り組んでいくべきだろう。ましてや、浜岡原発を地震の発生確率が高いことを理由に停止を要請し、(中部電力は)それを受け入れたわけだが、止めたから必ずしも安全とは言えないとも聞いている。使用済み燃料棒が同じ原子炉の建屋の中にある以上、冷却システムが地震や津波で破壊されれば(福島と)同じような問題が起こるわけで、そういったことも正直に(国民に)話していただき、その上で国家の責任として、産業の育成、経済成長、そして国民の福祉のためには、苦渋の選択ではあるが、こういうこと(原発の再稼動)をやりたいと説明されるべきだと考える。

イタリアの国民投票結果については厳粛に受け止めるべきであろうが、隣国のスイスやフランスから電力を購入しており、必要であれば購入量を増やすことも可能だろうと理解している。日本のように、現時点では隣国から電力を購入することが難しく、すべて自国で賄わなければならない国では、国民の感情とは別に、国家の政策として取るべき選択肢は限られているのではないか。

Q: 東電の賠償スキームに関わる法律案(原子力賠償支援機構法案)が閣議決定されたが、それに対する受け止めを伺いたい。

長谷川: 閣議決定はされたが、法案として成立するかは別問題である。また、第三者委員会(運営委員会)も発足していると聞いている。以前も申し上げたが、「電力の安定供給」「賠償を確実に」「国有化はしない」という解決が難しい3つの連立方程式を解こうとすると、現時点ではあのような答えしか出せなかったのかもしれないが、これは恒久的な解決策ではないと思う。民間の上場企業として存続させるからには、将来の事業プランが立てられるような解決策を、どこかの時点できちんと提示しなければ、事業会社としては成り立たないだろう。つまり、賠償の限度額を、いつかの時点では国と電力会社、あるいは機構との間で決めないと、東電の事業会社としての存続は極めて難しいということになると思う。(今回の法案は)あくまで暫定的なものであると理解している。

Q: 菅首相が閣僚懇談会で、「1.5次補正」と表現されていたが、第2次補正予算案についての考え方を7月中にまとめると述べた。一方、野党は補正(予算)を人質に政権延命を図っていると批判するなど、政界が混乱している現状だが、補正についての考え方と国会(の会期)延長について、改めて所感を伺いたい。

長谷川: 菅首相の(追加補正の)意図や「1.5次補正」という表現で何を意味されているのかは良く分からない。被災地の方々の復旧・復興のために必要な措置をできるだけ早急に打つべきであるという状況はまったく変わっていないし、事態はより深刻化していると言っても過言ではないと思う。瓦礫も2割程度しか片付いておらず、これも片付けやすいところが片付いている状況で2割程度であり、残りの8割は難しいところが残っていると思われる。それらに対して、特別立法などを含め国家が先導して一つ一つ手を打っていくべきである。(復興)基本法こそ成立する見込みであるが、経済同友会が主張している東北復興院ではなく復興庁ではあるが、その設立時期でさえ当初は来年とされており、被災地の方々に説得力が欠けるような形になっているのは極めて遺憾である。何をするにしても、被災地を最優先し、必要であれば政策連携・協力なども行い、野党と一体となって協力していくことを心からお願いしたい。

Q: (菅首相が)補正を指示するタイミングについてはいかがか。

長谷川: (意図されている)内容、成立時期、そしてどれだけ被災地の観点に立っているのか、 その内容次第だと思う。「1.5次補正」などと言われても訳が分からず、コメントのしようがない。

Q: 税と社会保障の一体改革について、明日の会議で素案がまとまる運びになっているが、 例えば、高齢者医療に対する税負担や年金支給年齢の引き上げ、それに伴う定年の延長など、内容に対する意見を伺いたい。

長谷川: 一部については冒頭のコメントで申し上げた。例えば、定年年齢の引き上げ、それと一体化した年金支給年齢の引き上げは、避けて通れない問題だろう。消費税などで当面の社会保障の費用が賄える目処がついたとしても、高齢者にも痛みを分かち合う形でメスを入れない限り、いずれは破綻することになりかねない。私自身も団塊の世代の走りであるが、(高齢世代が)現行の賦課方式の中で自ら拠出した額の何倍もの受益があり年金生活を送る一方で、若者たちの将来は何も担保されていないというのでは、抜本的改革の名に値しない。これは「一票の格差」是正にも通じる問題で、今の選挙制度では、地方の高齢者の方々の声が(国政に)過大に反映され、都会の若者の声が過小に反映されている。決して地方の高齢者の声を軽んじろという意味ではなく、国民は法の下で平等の権利が保障されているはずであるが、それが実際の国政の場に反映されていないことが問題である。こうしたことが、今後もさまざまな制度改革に歪が出てくるような影響を与えかねないと憂えている。

Q: 菅政権はいつまで続くか分からない。これまで長谷川代表幹事も経団連の米倉会長も、紳士的に政権の不満を述べられてきたが、一向に事態が進展しない。もう一歩進んで政府に抗議を表明するお考えはないか。

長谷川: ないことはないし、そのようなことを考えなければならない事態になるかもしれない。しかし、現状を見ていると、それ(強く抗議すること)で決まるような話ではないと思うので、極めて理論的に意見を述べている。一国の首相は、自らの出処進退は自らがお決めになるべきであり、それがリーダーの役割だと思う。

Q: 世界的にインフレの傾向が出ていると思うが、日本の景気回復に与える影響をどうお考えか。

稲葉: 一部に資源価格が上がっているとか、新興国の中でインフレ率が高くなり、そのための政策対応が必要になっている中国のような状況もあり、世界経済を見ると従来よりもインフレ的な色彩が出てきていることは事実である。しかし、先進国を中心に必ずしも一様ではないし、日本は今の段階では心配する状況ではないと考える。むしろ、震災復興を含めて、多くの(課題を乗り越えて)日本の景気(回復)を確かなものにしていくことが大事ではないか。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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