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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2011年05月31日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、最近感じていることについてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)政局と内閣不信任決議案提出、(2)楽天・三木谷社長の経済団体に関する発言、(3)経済団体の役割、(4)税・社会保障の一体改革と消費税率引き上げ、(5)エネルギー政策、(6)夏季セミナー開催地の変更、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

冒頭に、三点述べる。第一に、内閣不信任(決議)案(が提出されるかどうか)は別として、今の時期に総選挙(を実施すること)はあり得ないということを、経済同友会として強く意見表明したい。その理由の第一点は、被災地の現状、被災者の方々の心情を考えれば総選挙をやっている場合ではなく、また、被災地である3県において有効な選挙、投票が行われる担保がない状況で(総選挙を)実施すること自体に疑問がある。第二点は、(「一票の格差」について、)3月23日に最高裁大法廷において、14対1で先の総選挙は違憲状態にあると判断され、各都道府県にまず一議席を割り当てるという選挙区割りのやり方(「1人別枠方式」)がその主因であるという判断が出されているにもかかわらず、選挙区割りの見直しもなしに、軽々に解散総選挙を口にすることすら「三権分立の精神に反する」と考えている。

第二に、政治状況を見ると、野党の合意なしに重要な法案や政策がなかなか決められず、すべて先送りにされている。一方で、この危機下で国政の遅滞は許されない状況にあり、与党および野党の第一党は、何らかの打開策を考えることが国政を預かるものの責任ではないかと思う。具体的な課題としては、例えば一次補正予算や義援金等が被災者の元に十分に届いていないとも聞くし、避難所や自宅で避難をされている方に最も望まれる当面の雇用の創出についても具体的に対策がとられているようには思えない。さらには、二次補正(予算の審議)や本格的な復興計画(の策定)を考えれば、これを機に通年国会にするくらいの覚悟をぜひ示してほしい。ましてや、通常国会の会期を延長しないというような発言は、厳に謹んでいただきたい。

第三に、私は代表幹事就任時に、最優先課題として「この国の経済を少しでもマイルドな成長軌道に戻すために全力を尽くしたい」と述べた。残念ながら現状は、確かに目の前の危機に取り組まなければならない状況であるにせよ、あまりにも世界からかけ離れて、国内情勢だけに目を向けた政治が進められている。世界は日本を待ってくれず、成長なくして日本の将来はない。菅首相は「第三の開国」と言われていたが、その気概も今は感じられず、停滞している。例えば、TPPの問題も先送りされ、EPA/FTAについても、EUとは予備交渉入りが合意されたが(他の国・地域とは進んでいない)。目の前のことだけではなく、世界の情勢を見ながら並行して対応策を進めていただきたい。

加えて、電力事情について述べる。今年の夏は、一部の例外を除いて15%の節電要請が出ており、これについては産業界も家庭も十分に対応できると思っている。問題なのは、54基ある(全国の)原子力発電所のうち現在35基が休止状態で、(試験運転中を含め)運転中の19基も(点検終了から最も日が浅い原子炉の次の定期点検を考えると)1年以内には定期点検のために休止せざるを得ない状況に至る。国の責任として、休止中の原子力発電所の再稼動が極めて難しいという状況を打開しなくては、電力需給のひっ迫は来年の方がさらに厳しくなる可能性がある。そのような状況が起こることは、産業界にとっても極めて危機的であり、ましてや日本の経済成長にも大きな影を落とすことになり、また、外資系企業が日本から出て行くという事態に拍車をかけることにもなりかねない。長い目で見て、極めて懸念を感じざるを得ない問題であるため、政権与党には、迅速にきちんとした見通しを出されることを強く要望したい。

質疑応答

Q:政局の話があったが、(内閣)不信任(決議)案提出の動きについてはどう思うか。今は大変な状況なので、このまましばらく菅首相が続けられるのが良いとお考えか。

長谷川: 政局に関してはコメントをする立場にない。政局をやっている場合ではないということだけである。

Q:「この時点で総選挙はあり得ない」という発言の意味は、不信任案が仮に可決された場合でも総選挙という選択肢はない、ということか。

長谷川: 選択肢としてはあり得るだろうが、経済同友会としては(総選挙には)反対である、ということだ。

Q:楽天の三木谷社長が、日本経団連からの脱退についてツイッターに投稿し、報道があった。三木谷社長は、日本経団連・米倉会長の東電・賠償スキームへの政府の対応に対する反論や、関西経済連合会が会長に関西電力トップを選出したことに疑問を呈していた。日本経団連から三木谷社長のような若い経営者が脱退することや、この時期に各地の経済界のトップを電力会社の経営者が務めている状態を構造的にどう見るか、所見を伺いたい。

長谷川: 日本経団連への加盟・脱退については、個々の企業や経営者がメリット・デメリットを判断して決めるものなので、経済同友会としてはコメントする立場にない。また、個人的には遅れも感じるが、ツイッターを利用していないので、実際にどのような投稿があり、それに対してどのような反応があったか、またそれをどう考えるかは、(見ていないので)コメントできない。

各地の経済団体で電力会社がトップを務めることについては、その就任や継続が決まったのは3.11の震災以前の話だろうし、厳しく辞任云々という状況にはないと判断している。現在、継続されている方、また就任が決まった方すべてが自身の出処進退を問われるかというと、必ずしもそうではないだろう。基本的には、選出した組織と(選出された)ご本人の判断であり、経済同友会が是非を判断する立場にはない。

Q:三木谷社長の投稿への反応は、日本経団連というより経済界(全般)に対して厳しいものだったとの印象を持っている。今の経済界は、国の(経済)成長等、国民の期待に十分応えていると思うか。

長谷川: 国民の期待が(経済)成長にあるとすれば、それは実現できておらず、責任の一端は経済界にある。そういう観点から言えば、結果が伴っていないので、十分に応えているとは言えないだろう。

Q:(成長に関連して、)各企業では戦略を立てていると思うが、(経済界)全体としては、どのような取り組みをすれば(国民の)期待に応えられるか。

長谷川: 私は、成長なくして日本の将来はないと考えている。IMFの見通しでは、今年から来年にかけて世界全体で4.4~4.5%成長するとされている中、日本だけが1%台の成長である。これは今に始まったことではなく、十数年に亘って(日本だけが世界の成長から)取り残されている。

(成長のための第一の要素である労働力については、)「人口ボーナス」から「人口オーナス」と急激に人口が減少する中で経済成長を維持した国は、少なくとも近代においてはない、という極めて深刻な状況である。国内でやらなければならないことも多々あるが、いずれの対策を打ったとしても、その効果が出るのは15~20年後であろう。(第二の要素である)投下する資本についても、OECDの中でも最低の国であり、FDI(Foreign Direct Investment:対日直接投資)を促進するためには、日本を魅力ある市場にしなければならない。そのためには成長を実現しなければならないという、いわばニワトリと卵の関係である。同時に、規制改革を大胆に実行し、被災地における経済特区のようなものを例えば東京にも作るなど、外国の企業が日本に入りやすい魅力的な環境を整えなければならない。(成長のための第三の要素である)イノベーションを起点とする全要素生産性の向上についても、一つの産業の中で多くの企業がひしめき合い、国内市場で消耗戦を繰り広げるという状況を変えなければならない。産業構造の大きな転換、これには限られた研究開発投資の集中投下という政策もとらなければならない。

現状を考えると、これらすべてを直ちに実行できる状況にはないし、実行できたとしても直ちに効果が出てくるのは難しい。そうなると、もう一つ必要なことは、世界のGDPの伸びの6割以上を稼ぎ出している新興国に進出して、成長のパイの分け前を勝ち取って日本に持ち帰る、これを政・官・民一体となって全力を挙げてやらなければならない。まずは、これをやるべきである。

Q:税と社会保障の一体改革について、今日、6月2日の(社会保障改革に関する)集中検討会議で公表予定の改革案の全容が明らかになった。消費税率を、2015年度までに段階的に10%まで引き上げると提示されているが、これについて所感を伺いたい。

長谷川: 経済同友会では、提言『2020年の日本創生』(1月11日発表)において、いずれは17%まで(消費税を)引き上げると述べており、基本的には賛成である。ただし、大きくならないパイの中での配分をどうするかという話であり、先述の通り、この国を成長させない限りは、人口が減少し、高齢化が進み、社会保障の費用がどんどん膨らむこの国で、国民の生活をある程度満足できる形で支えていくのは不可能である。成長戦略をセットでやらなくてはならない。税と社会保障の一体改革を否定するものではないし、社会保障に使用目的を限定した消費税(率)の引き上げに反対するものではない。セットとして、成長(戦略)がなければいけない、さらに歳出のカットにギリギリまで切り込むという姿勢を見せなくては、国民の支持は得られないだろう。

以前も申し上げたが、今の予算は平時に作ったものである。このような危機的状態にあっては、もっと切り込むべきではないか。東京電力にリストラや役員報酬のカットを求める一方、原子力政策を推進してきた政治家や官僚はどうなのか。

前原: 電力供給について(補足する。)ニッセイ基礎研究所の試算によると、(東京・東北電力管内では、)電力供給が10%低下すると、全産業でマイナス5%、(内訳は)製造業でマイナス9.8%、非製造業でマイナス3.8%という大きな影響が出る。これを前提に、成長戦略を考え直さなければならないという課題もある。

Q:企業経営の例えだが、ある会社にリーダーシップのない社長がいたとして、その会社に非常事態が起こった場合、トップは変わるべきか、それとも周りが支えるべきか。

長谷川: 難しい質問で、ケース・バイ・ケースであると思うが、危機が起きた時、少なくとも初期動作の段階でトップが交代するという選択肢はあり得ないと思う。仮にトップにリーダーシップの欠如があるとしたら、それ(ダメージ)を最小限に防ぐための方法として、危機管理のマニュアルをきちんと作り、同時に常に予行演習をやっておく(ことが求められる)。今回の震災においても、こうした(対応ができていた)企業はダメージが最小限で済み、生産などの事業の復活も最速であったという事例もある。今回の震災を機に、それぞれの企業が、うまく乗り切った例と必ずしもうまく乗り切れなかった例を検証し、将来に備えることが肝要だろう。経済同友会でも、このような観点での取りまとめを試みている。

Q:菅首相は、エネルギー政策について、1,000万戸の太陽光パネルの設置や再生可能エネルギー(の割合)を2割まで高めるという目標を打ち出されたが、これについて所感を伺いたい。

長谷川: 菅首相のG8サミットでのご発言は、「2020年代の早い時期に再生可能エネルギーの比率を20%にする」というもので、私の理解では、再生可能エネルギーの定義についての言及はなかったと思う。これ(再生可能エネルギー)に水力を入れるかどうかで大きく変わる。水力(発電)は、現在でも総発電量の8%程度を占め、その他風力・太陽光・地熱などが2%程度と理解している。仮に水力を入れて(の20%)だとしても、水力は既に開発し尽くされており殆ど伸ばす余地はないので、今の(風力・太陽光・地熱などの)2%を12%に(伸ばす、すなわち)6倍程度にしなければならない計算になる。十分な説明のないまま、国際的な公約とも取られかねない場で発言をされることは、その実行に大きな責任を負う産業界にあらぬ懸念をもたらすことになりかねない。数字の裏付けはお考えと思うが、早く産業界と対話を始めていただき、その実効性を担保していただくことが肝要だろう。

Q:実際には、事前に相談、あるいは対話を始めるという動きはあるのか。

長谷川: 今のところ、経済同友会にはない。

前原: 個人的には太陽光は支持しており、自宅にも前職の学校にも付けたが、お金がかかる。自宅では250万円くらいかかり、初期投資と言われても(個人では)なかなか(難しいのではないか)。また、屋根の構造や強度によって付けられない場合もあるので、1,000万戸と言われてもイメージが湧きにくい。しかし、努力は必要である。

Q:大阪府の橋下知事は、太陽光パネルの義務化を言っているが。

前原: 実際には、家の構造上、建て直さないと取り付けられない場合もあり、そう簡単ではない。その前に、公的機関である学校や役所などに設置する方が(実現)可能性が高いのではないか。

長谷川: 再生可能エネルギーには、太陽光、風力だけでなく、国立公園や自然公園などでの地熱(発電)もある。温泉地では宿に影響を与えるなどの課題はあるようだが。加えて、再生可能エネルギーの割合(向上)にどの程度貢献するかは分からないが、電力を有効に使うスマートグリッド(の技術も重要だろう)。さらに、大量の電力を蓄電する技術の開発も忘れてはならない。

Q:今年の夏季セミナーの開催地として仙台市を選んだ狙いを伺いたい。また、被災地の視察を検討中とあるが、実際に被災地でどういうところを見て、どういうことを今後の政策提言に反映させたいとお考えか。

長谷川: まず、視察ありきでなく、被災地の多くのサービス産業において、国内旅行者も海外からの旅行者も含め、観光客が激減して困っているという事態を考えた。開催地を例年の軽井沢から被災地に移すことで多少でも貢献できれば、と正副代表幹事の議論で澎湃として湧き上がり、実行するに至った。まだ瓦礫も2割程度しか片付いていないとのことなので、現地の皆さんのご迷惑にならない範囲で視察をさせていただくことは、百聞は一見に如かずで、提言の中身を少しでも実態に即したものにすることで役立てられればと、今の段階では考えている。

前原: 昨年、例年東京で開催している代表幹事円卓会議を(口蹄疫で被害のあった)宮崎で開催したが、今回も同様の考え方だ。最初から仙台で考えたのではなく、盛岡、仙台、福島を候補地として検討し、(宿泊場所の条件などから)仙台に決めた。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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