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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2011年05月17日(火)13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、最近感じていることについてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)わが国のリーダーに今求められていること、(2)原子力政策、(3)TPP交渉への参加判断の先延ばし、(4)東電の賠償問題と金融機関の債権放棄、(5)福島・浜岡以外の原発の稼動、(6)電力会社の発送電分離、などについて発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

第一に、通常国会の会期について、予定通り6月22日に閉会するという報道があるが、これが事実であれば極めて遺憾である。(平成23年度)第一次補正予算は可決、成立したものの、第二次補正予算や公債特例法案など(東日本大震災からの復興に向けて)早急に取り組むべき課題が山積している。加えて、本日閣議決定された(「政策推進指針」の)なかで、6月までとされていたTPP(交渉)参加の判断が先延ばしされたことは、TPP推進を全面的に支援してきた経済同友会の代表幹事として極めて遺憾である。先延ばしの理由として、被災地の第一次産業に従事する人々の心情を挙げている点に矛盾を感じる。被災地の人々の心情を本当に考えるのであれば、必要な仮設住宅の設営が大幅に遅れているなか、日々苦しんでおられる方々のためにも、国会を延長して必要な事項を論議すべきではないか。被災地の方々のために、閣内で十分検討し、矛盾のないようにお願いしたい。そもそも本年度予算は平時に作られたもので、大震災という危機の後では、緊急時の対応として当然予算そのものを見直すべきであるが、第一次補正予算(策定)の段階ではそこに切り込まれていない。第二次補正予算では、(平成23年度予算および)マニフェストの見直しを盛り込まれることを期待する。さらに、国民に税などの負担を求めるからには、政府には、政府保有の株式売却等も含め、自らできることをすべてやり尽くしていただきたい。

第二に、以前から疑問を呈している通り、現在の民主党政権に目指す国家像がないことが、最近のその場しのぎの対応につながっている遠因ではないか。例えば、金融機関に対する東京電力の債権放棄、発送電の分離、浜岡原発(の停止要請)等に関する政府のコメントやその後の閣内からの異論を聞いていると、民間企業の業績や株価に影響を与える内容であるが、この国の民主主義は、自由主義市場を前提とする資本主義とどう折り合いをつけていくのか、疑問に思わざるを得ない。GDPは世界第二位から第三位に順位を落としたものの、アジアにおける資本主義(国家)の雄である日本が、このような形で迷走を続けることについて、極めて問題が多いという認識を持っている。

Q:政権の姿勢が見えないとのことだが、このような局面で政権を担うわが国のリーダーに求められる要素は何か。

長谷川: 私が(政権交代による)民主党政権の誕生に期待していたことは、「ガバナンスの透明性(確保)」と「情報の非対称性の解消」であった。ガバナンスの透明性(確保)については、意思決定のプロセスにおいて、諮問機関による提言を受け、また国民にしっかりと説明できる状態で意思決定のプロセスを踏むのが民主主義の原理・原則である。情報の非対称性の解消については、不都合な情報も都合の良い情報も、常に国民に開示し、できればその情報にどう対応するかについても準備を整えた上で発表されることが一番望ましい。現在のところ、いずれの期待も満たされていない。リーダーの立場にある方には、しっかりと対応していただきたい。

また、現在の民主党政権は、日本国内だけに目を向けて意思決定を行っているように見える。先述の通り、日本は今でもアジアの民主主義国家の雄であり、世界からの日本への期待も、(世界に)与える影響も大きい。これに対する政権の認識が低いように感じる。例えば、浜岡原発の停止要請や原子力政策の見直し等について、原発事故後に来日し協力を表明されたサルコジ仏大統領や原子力政策の堅持を表明されたオバマ米大統領など世界の友好国に対する説明や、世界に対する原子力技術での貢献、成長戦略の一つの大きな柱であった官民が協力した原発を含むインフラ輸出等が、あいまいなままに(国内目線のみで施策が)進められることは問題ではないか。

Q:引き続き、原子力政策を推進していく必要があると考えているか。

長谷川: (消費)電力の約3割を原子力発電に頼っているという現実を見ると、まず、代替エネルギー開発の「コスト」と「時間軸」、つまり、どれだけのコストで、いつまでに、どれだけのエネルギー量を確保・提供できるかを考える必要がある。再生可能エネルギーでの代替は、もちろん50年先、100年先であれば可能になるだろう。しかし、この国に工場を構えて生産を行う企業が多数あり、また1億2,500万人以上が生活し、今や産業より家庭での電力消費量が上回っているという現実を考えると、今すぐに(すべての)原発を止めるとすれば、どこまでのライフ・スタイルの変更を求めるのかについても考えなければならず、現実的には難しいと考えている。20年から30年の期間の中で、代替エネルギーについて、国家としてどのような優先順位で、どのようなバックアップをして開発を行い、実現可能性が見えてきた段階で切り替えていくという政策を示す必要があると思う。

Q:新設の原発は考えるとしても、既存のものを急に止めるのは難しいということか。

長谷川: 原子力の専門家ではないが、仮に電源が止まっても支障なく冷却できる新しい原発が既に開発されていると聞いている。であれば、より安全な新しい原発を作り、比較的リスクの高い古いものから置き換えていくという選択肢も、原発技術の維持・発展のためにはあり得るのではないか。今すぐには無理だとしても、より安全な形で置き換え、さらに代替エネルギーが実用可能になった時点で(原発の)停止を考えるという選択肢を示し、国民に真を問うことは考えられると思う。

Q:TPP(交渉)への参加判断の先延ばしについて、所感を伺いたい。

長谷川: 冒頭に述べた内容は、(被災地の方々の心情を)TPP交渉への参加判断先延ばしの理由とするのであれば、当然、国会の会期を延長(して被災地の救済、復興の政策を進めるべき)という趣旨であり、被災地の心情というのは先送りの理屈付けのための理由に過ぎないのではないかという意図である。被災した東北地方は、第一次産業に依拠する比率が他の地域より少し高いだろうし、その心情を考えることは理解できるが、TPP締結の翌年から自由化されるわけではなく、一般的には数年をかけて行われるものであり、現在協議に参加されている加盟9カ国に対し、事情を説明することで延長を求めることも可能だろう。説明も努力もなしに、今回のような先延ばしをされることは、単なる問題の先送りに過ぎず、不都合な真実に目を背けていると言われてもやむを得ないと思う。

Q:金融機関の債権放棄について、枝野官房長官が先週金曜日(5/13)に言及し、その後各金融機関が反対の立場を示した。経済界から見ると、これは政治が口を挟むことではないとお考えか、あるいは、ある程度は政府の意思として表明しても良いとお考えか。

長谷川: まず、政府としての意思がはっきりしない段階で軽々に発言され、それが決算や株価に影響するようなことは避けていただきたい。第二に、自見金融相が本日「民間当事者同士が話し合う事項」と発言されたようだが、私の意見もこれに近い。仮に(政府が債権放棄を)望むとしても、基本的には(債務者が)債権者に再建計画を話し、その条件についてお願いする、これが筋ではないか。

前原: 東電の債券は、(原発事故以前は)国債に次ぐような信用があった。今回、破たんと同じような処理で債権放棄のようなことになれば、将来来る信用問題が非常に大きくなると思う。それも含めてよく検討して方針を出さないと、いたずらな風評被害になってしまうので、慎重にお願いしたい。

Q:JALの際もそうだったが、最終的には金融機関が債権放棄などのような形で負担しなければならないという流れができてしまうことに、疑問を感じることはないか。

前原: JALの場合は破たん処理なので少し(事情が)違うと思う。

Q:東電の賠償の枠組みを読むと、「東電は金融機関に協力を求め、それを国に報告する」とある。協力の内容には、債権放棄、金利減免、支払い期間を延ばすなどいろいろあるが、(いずれにせよ金融機関が)何らかの協力をする前提で枠組みが決められており、金融機関が1銭たりとも協力しないという態度は、この枠組みを壊すことになると思う。この「何らかの協力」について、金融機関はどのような協力をすべきとお考えか。

長谷川: 当事者同士が話し合いをして決められることであり、一方的な債権放棄を求めた場合、(金融機関が)その後の資金調達に応じられないということにもなりかねない。それらもすべて含めて、東電が自社の再建計画を示し、それについてこのような協力を求めるという話をして決めるべきで、今の段階で私がコメントをすることは適切ではない。状況を見守りたい。

前原: 今回は破たん処理ではない。また、原発事故の際の賠償をどうするかの法的解釈にも不明な点が多い。このような段階でいきなり金融機関に徳政令を求めるのは、個人的には少し問題だと思う。どこの金融機関も「1銭たりとも出さない」とは言っていないと思うし、協力はされると思うので、よく話し合って段階的に決められるのが良い。今回のようなやり方は、いたずらにマーケットを混乱させてしまう。

Q:浜岡原発の停止に関連して、浜岡以外の原発の安全性を含め、稼動の是非について所感を伺いたい。

長谷川: (今日時点で日本全国の原発の)54基のうち35基が停止している。電力供給量のひっ迫を考えれば、(停止中の原発を)早く稼動させることも一つの選択だが、特に福島第一原発の現状を見て、仮に自身が近くの自治体にいると考えれば、なかなか今の段階で(近隣住民の)理解を得ることは難しいのではないかと思う。電力供給量のひっ迫を少しでも解決するために柏崎・刈羽を含め早く再開すべきという意見と、一方で、地元のご理解をいただけないと再稼動できない、という両方の問題を解決しなくてはならないため、少し時間をかけざるを得ないのではないかというのが、現時点での率直な意見である。

Q:東電の問題で議題になっている一つに発送電分離があるが、これを実際に行うことにメリットがあるとお考えか。

長谷川: 個人的な感想かつ一般論になるが、自由主義経済の下では競争が組織を強くするのが大前提だと思う。競争のない独占状態をつくるとすれば、プラス・マイナス両面あるうち、デメリットを最小限化するような仕組みを考えなければいけないが、現実的にはなかなか難しい。長い目で見れば、可能性としては(発送電分離も)あると思うが、東電の電力安定供給や賠償などの問題の先行きが見えない現段階で、このような話を表立ってするのは時期尚早ではないか。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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