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桜井正光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年04月12日(火)13:30~
出席者 桜井 正光 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、桜井正光代表幹事より、「震災後の経済情勢・企業業績への影響に関するアンケート調査結果」を説明した後、記者の質問に答える形で、(1)東日本大震災から1ヶ月の政府の対応と残された課題、(2)危機の際にリーダーに求められる資質、(3)夏の電力不足に向けた取り組み、(4)消費自粛ムード、(5)東京電力の責任と国有化問題、(6)日本の科学技術に対する信頼感、(7)日本製品への風評被害、などについて発言があった。

Q:東日本大震災から昨日で1ヶ月が経った。政府のこれまでの対応を中心にこの1ヶ月を振り返りつつ、いま残っている課題にはどういうものがあるか、所見を伺いたい。

桜井: (震災発生から1ヶ月、)何をすべきだったかを段階的に述べると、人命救助、避難者の救済・支援、町・企業・社会の復旧、そして今後は復興となる。人命救助や避難者の救済の段階では、今回は未曾有の大震災、そして津波だったので、その影響として自治体の壊滅的な打撃もあり、難航したことはあるだろう。しかし、避難者の支援、復旧という次の段階になかなか進めない、手がつけられないということでは、現在の政府のあり方、やるべきことを考えると、かなり後手後手の対応に追われている。これは、原発事故への対応、避難地域のあり方、野菜や酪農品など食料品・生活用品への対応についても同様である。震災からの復旧・復興への対応のみならず、以前から多額の負債を抱えた日本について、財政健全化をはかりつつ、強い社会保障制度、税制の抜本改革、成長戦略(といった重要政策の遂行)が遅滞していたが、国の政策(形成)・執行の司令塔となるべき、強力な体制づくり・機構づくりができていなかったことが、ここにも表れてしまったということだと思っている。

今後の復旧から復興に向けて、復興構想会議ができたようだ。議論や会議は良いとは思うが、その提案を受けて、実際に一番大事なのは、予算化をし、その予算を省庁縦割りに流すのではなく、優先順位を付け、省庁通しての復興計画を実現させるために、(政治の)執行力を強めることである。そこがまだ見えてきておらず、次の(復興という)ステップに移行するにしても、心配している。

Q:この1ヶ月間、国、自治体、企業・経済界から、さまざまな対応・発言があった。これだけの危機になると、人間の本当の姿が如実に現れると思うが、この危機であればこそリーダーに求められる資質、やらなければならないことは何だとお考えか。

桜井: 民主主義とは、民意をしっかりと捉え、それを政策に具現化していくことが重要である。リーダー(のあり方)には(平時と非常時の)二つがあると思う。平時は、民意を掴み、それを的確に政策に表し、実現を図る。一方、非常事態の際には、中長期を見据え、政策の優先度の付け、民を説得する強い執行力が求められ、これは待ったなしでタイムリーにやっていく必要がある。(現在は)後者の非常時だろう。(特に非常時の)リーダーの要件として、まず現状把握能力があること、2番目に政策または活動の優先順位をしっかりと決められること、そして3番目に国民に対する説明・説得能力が大事だと思う。

Q:2つの質問の答えを併せて考えると、今の(政権の)方々にはもう少し頑張るべきところがあるという理解で良いか。

桜井: その理解でよい。最初の(質問に対する)答えで述べたのは、リーダーだけがそのような人物であれば十分ということではない。そのようなリーダーが力を発揮できるためには、国として政策立案・執行の司令塔が組織として組み込まれていないと、(先述の)3つの条件を備えたリーダーがいたとしても、国は全体で動くことができない。リーダーシップと機構・組織・運営体制が大事だということである。

Q:「震災後の経済情勢・企業業績への影響に関するアンケート調査結果」P.2のQ2(業績見込みに大きな影響を与えると思われる要因)の中で、「部品供給の滞り」はどれにあたるか。

桜井: (要因2.の)「協力企業の被災」である。

Q:先週、経済産業省が、夏の電力不足に対応するための対策案の意向を示したが、これに対する意見を伺いたい。

桜井: 経済同友会としては既に、計画停電によって生産性を低下させるのはできれば避け、需要サイドの総量を規制し、削減方法は民に任せる、すなわち総量規制の方が良いとの立場を明らかにしている(「東日本大震災からの復興に向けて」<第2次緊急アピール>参照)。その総量規制についても、供給能力が4,500万kW、夏場の需要予測が6,000万kW、差し引き1,500万kWが不足すると言われている。この約25%を削減するには、加えて電気事業法第27条を適用し、国の責任の下で使用量の上限を設けることが必要になるだろう。現在、経済産業省が総量規制の具体的方法論を議論しているが、当会の趣旨と軸を同じにするものとして歓迎している。今後は、我々企業が、いかに総量規制の下に、経済産業省が薦める輪番操業や土・日への業務分散化などを実施していくか(が課題である)。これには2通りのアプローチがあるだろう。一つは、(各業界の)工業会が主体性を持って、傘下の各企業に輪番操業や業務の土・日への分散化を働きかける。もう一つは、各企業がその責任において努力していく。これには例えば、西日本地域への生産シフトのような、リスク分散なども考えていく必要があるだろう。

Q:経済同友会では、夏に向けた節電対策について何か考えているか。

桜井: 先般発足させた「震災復興プロジェクト・チーム」で議論を始めており、その大項目として電気需要の削減や電力供給不足への対応など、我々がやれることを決め、それを会員メンバーが各々責任を持って実施していくことになる。

Q:「震災後の経済情勢・企業業績への影響に関するアンケート調査結果」(P.2のQ2)で、(業績見込みに大きな影響を与えると思われる要因のひとつに)「消費者心理の悪化・消費自粛ムード」があるが、自粛についていかがお考えか。また、自粛の解禁はいつ頃どのようにすべきとお考えか。

桜井: 自粛は、解禁する(しないといった)問題ではない。誰かが「自粛せよ」などと指示したものではない。日本の特色と言う(べき)か、良いところから生まれでたものだろう。

自粛の内容のひとつは、電力供給量の不足から、できるだけ電力消費量を少なくしようという動きである。(例えば)家の中でこれまでのようにテレビ(など家電製品)をつけっ放しにしたり、色々なところに車で出かけたり(を止め)、できるだけエネルギー(消費)削減(のために)自粛するということである。これは必要なことで、電力の供給量と(使用量の)ギャップが縮小されれば解決していくと思う。もうひとつは、日本人の価値観で、東北地区や北関東地区の被災者の方々を思うが故に、色々なイベントや旅行は控えよう(という自粛)である。(質問は)後者の自粛であろう。過度に自粛(ムード)が広がり、それが継続すると、まず、サービス業が大変なダメージを受ける。旅館や観光の(旅行)代理店、商店街等の小売業の他、数多く出てくる。(サービス業は主に)中小(企業)の方々なのでダメージが大きく、企業の存続さえ危ぶまれる事態になる。日本人として、思いやりは非常に重要ではあるが、対極にはそのような方々がさらなる被災者になることになる。日本の今後の復興のためにも、中小(企業)の能力ある方々や企業が今後の日本経済を支えていくということを、国民レベルで考えなければいけない。一人ひとりがこのような産業(について)考えて(行動すべきである)。加えて言えば、一時、夏の甲子園を止めた方が良いという声も聞かれた。電力(不足)への対応は必要だが、スポーツや音楽、観劇などのイベントを止めることは、逆に復旧・復興のための日本人の意識・エネルギーを減退させるので良くない。文化・ソフト関連のものは、復興のためにも、絶やしてはいけないと思う。

Q:東京電力について伺いたい。今日、原子力安全・保安院が福島第1原発事故をレベル7と発表した。今回の事故を振り返って、原因は津波にあったと言われているが、津波の対策が甘かったのではないかという一方、自然災害で(あり)一義的には国に責任があるという声もある。所感を伺いたい。

桜井: 原子力の技術的なところは専門ではないので分からないが、一般論として述べるなら、原子力や新幹線など大規模システムを設計する上で必要なのは(設計のための)条件設定である。(安全面で言えば)どこまで耐えられるようにするかの、条件を設定して設計を開始する。今回は、その想定段階で、マグニチュード9(の地震)や15メートルもの津波を想定しなかったということだ。想定のない設計はできないということを考えると、ある意味で致し方なかったとは思う。今回の問題で注目しなければならないのは、万が一の想定外のことが発生してシステムが被害を受けた場合の(事後対応プログラムなど)応急処置や修復といった対応はどうすべきだったのかということだ。それを(危機管理として)きちんと決めておかなければならない。(あらかじめ)20メートル近い津波に耐えられるシステムを設計しようとしたら、これは非常に大掛かりにならざるを得ない。大事なことは、ならば想定外のことが発生した時の対応策が(当初より用意され)迅速且つ的確に取れるようにしておくことだ。そうした対策が取れていたのかは、私には分からない。そこがまだ精査されていない現状で、東電の責任範囲について言及することは難しい。

Q:今後(東電の)賠償問題がクローズ・アップされるだろうが、東電の株価は大幅に下落している。多くの個人株主や投資家がいて、金融機関にも約5兆円の社債残高を抱えており、経営が万が一破綻すれば大変なパニックになりかねない。政府の一部では、(東電の)多額の賠償金の支払いがあることから国有化の議論も出ている。これについて所感を伺いたい。

桜井: 前回の会見でも述べたが、(即・国有化という話は)あまりに短絡的だと思う。国有化するとなれば、マーケットのことも考える一方で、国有化の必然性は何なのかを明確にすべきだ。その説明がなされないまま国有化という議論が出てくるのは、非常に危険度が高いと思う。

Q:少し前の日本を考えると、ノーベル賞をとった自然科学者もおり、また大学や企業にも候補者がたくさんいたと思うが、今回の原発事故への対応や東電の説明は、一体どうなっているのかと思うことが多い。(今回の事故対応の悪さから)日本の科学技術に対する一般国民の信頼感が揺らいでいると思う。原子力や地震、津波の学問に限らず、日本の科学技術への信頼をもう一度勝ち得るために、科学者や技術者がしくてはならないことは何か。

桜井: 日本のブランドは、「安全・安心」であり、それが傷付かないようにすべきだ。科学技術は基礎技術であって、それ(基礎技術)を活用して商品・サービスやシステムが生まれる。そうしたお客様に届ける商品・サービス、システムの設計がとても大事で、言い換えると、(異常が発生しないようにすることは当然大事だが)何か事が起こった時にも迅速かつ適切にお客様に商品・サービスをお届けできるようにすることも大事だ。万が一を含めた対応策、対応システムをしっかりしておくことが重要だ。(日本のブランドである)「安全・安心」に焦点をあてて考えるなら、起こり得るさまざまな条件を出しておき、(設計では補償できない事態が発生したときに)いかに対応するかが必要だ。これは科学者ではなく、技術者の領域だ。

Q:日本ブランドは「安心・安全」との発言があったが、日本製の部品や製品にまで放射能汚染に対する証明書を付けろ、証明書のないものは輸入しない、などという風評被害が出ている。政府が安全だと言っても信用してもらえないかもしれないが、どういう対応策があるか。

桜井: (そのような風評被害には)憤りを感じる。政府が、しっかりと今の原発の状況やそれによる食料品等への影響をきちんと(事実と科学的根拠に基づいて)述べ、かつ、どのような基準を設けて制限し、出荷しているかという状況を、国内のみならず海外へ、明確に発信することが大事であろう。政府で言えば、外務省や経済産業省が、しっかりと外交の公式ルートで何度も情報発信をすべきである。もうひとつは、日本の中(政府や関連機関)だけの調査分析・対応を流すだけではなく、国際機関、例えば、IAEA(などの)国際機関の調査を定期的に受け入れ、お墨付きをもらうなどの動きをしたほうが良い。また、我々企業も海外にネットワークを持っている。海外の支店や工場から「今日本はどのように見られているか」(といった)情報を入れ、同時にそこから日本についての情報を(積極的に)流していく努力が必要である。

Q:リコーは風評被害を受けているか。

桜井: (リコーは)ない。

前原: 加えて保険業界のことを述べると、阪神・淡路大震災の時と決定的に違うのは、民間の保険会社(生命保険と損害保険)の支払額が非常に大きく、復興が始まるとこれが相当な力になると思う。地震保険の附保率が阪神淡路大震災では約7%(全国平均)であったが、今回は(共済も含めると)30%程度になると思う。生命保険もおそらく前回の約4倍、(生保・損保・共済の)総額で2兆円近く(試算)の支払いになるものと思われる。これが動き始めたら非常に強い復興支援になるだろう。阪神・淡路大震災の時が生保業界で500億円弱、今回は約2,000億円、その他農協共済などもある。特に、地震保険は非常に多いと思う。自動車(保険)は地震の(原則)対象外だが、船舶(保険)では(地震は原則支払い対象に)ある。いずれにせよ、(保険金額は)前回とは桁違いになるはずだ。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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