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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2011年03月29日(火)13:30~
出席者 桜井正光 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)東北地方太平洋沖地震から2週間の政府の対応、(2)産業界への影響、(3)法人実効税率引き下げの見直し、(4)東京電力の国有化、(5)福島原発事故と今後の原子力政策展開の体制、などについて発言があった。

Q: 震災から2週間経ち、ライフラインは若干復旧に向けて動き出した感があるが、原発は依然一進一退が続いている。現時点での政府の対応と日本経済に与える影響について、所感を伺いたい。

桜井: 政府の対応については、とにかく予期せぬ出来事で、政治・行政ともに相当な被害があったため、最初は混乱したと思うが、22日から国会も動き出し、予算案、関連法案、今後の補正予算と、与・野党協調路線の中で進み始めた。対応の時間的な遅れはあるにせよ、国難という状態の中で、救済・復旧に向けた与・野党揃っての協力体制は見えてきた。

原子力発電(所の事故)の問題は、原子力の専門家ではないのでコメントが難しいが、政府の対応を見ると、後手後手の感は否めない。多分に技術的要素が絡んでいるので、いま何が起きているのかをしっかりと掌握し、それに対する対応も、技術的なものをベースにあらゆる可能性とリスクを引き出し、先行性のある対応が必要だったと思うが、事故の拡大に後手に回ってしまっている状況である。今後、いかに低温安定化(を図り)、いまの異常な状態の拡大を止めるかに専念する必要がある。原子炉の中の状態や放射能の漏洩は、チェルノブイリやスリーマイルでは見られなかったような世界でも初めての状況であり、世界の英知を集め、技術ベースに則って現状把握をし、いかに沈静化、低温安定化を図るかについて、早急に世界レベルで考え、対応策をとることが必要である。政治にも、そのような体制を早急に敷くことが望まれる。

前原: 今回の震災で感じたことを2点お話したい。ひとつは、関西の広域連合が各々支援する県を決めて取り組んでおり、また、姉妹都市同士での助け合いも進んでいる。これは新しい動きで、今後の国や社会のあり方を考える上で重要であり、平常時から進めなければならないと感じている。2点目は、先般、関西経済同友会との会合でも話題に上ったが、企業の本社機能が東京に集中していることについて、危険分散や電力の観点から、名古屋や関西などに本社機能を分散することを考えなければならないと思っている。

Q: 産業界では、計画停電の影響などが出ていると思うが、いかがか。

桜井: 被災に遭った東北地区は、日本全国に部品・材料(を供給している)メーカーが集約化しており、全国規模で展開している(需要者としての)大手企業は大きな打撃を受けている。サプライ・チェーンの破綻や物流の寸断により、モノ(製品)を作ろうにも作れない状況である。企業がすべきことは、第一に、東北地区の部材関係のメーカーをいかに復旧させるかであり、東北地方以外の関連企業にも、人為的、金銭的、技術的などの面でサポートをしていく必要がある。第二に、電力の問題である。(福島)原発の問題で、電力の供給が東電の(送電地域の)中で約25%低下し、これは日本全体で12~13%(の低下)に相当する。日本全体が相当な影響を受け、いかに節電をしていくかが大きなテーマである。前原専務理事の発言にもあったが、企業の生産やオペレーションの拠点を西日本に移転することがひとつの大きなテーマになってきている。生産のあり方も、今までのサプライ・チェーン・マネジメント、(即ち)部品を調達し、(製品を)生産し、それを市場に提供していくという一連のサプライ・チェーンの改革も必要になる。日本全国にわたる企業のオペレーションを、特に節電・省エネという観点で改革していかなければならない。早く震災前の生産性・生産高に戻すことが大事である。

Q: 復興財源確保のために法人実効税率引き下げを見送る案が出ているが、これについて所感を伺いたい。

桜井: 結論は、法人税だけで考えるべきではない(ということである)。(法人実効税は、)企業の国際競争力(強化)や、企業が日本に立地し、日本を離れない、また海外の企業が日本に直接投資をして入ってくる、あるいは間接投資をして資金を日本に向ける、といった企業の立地環境を整備し、日本企業にも海外企業にも「魅力ある日本」を作り上げるということで、これは成長戦略上、非常に大事なことである。法人税(率引き下げ)だけで魅力を出せるわけではなく、FTA、EPA、TPPによって日本を開くことも重要で、セット(で)の話である。これらは日本の成長力を高めるという、震災以前から掲げられた重要政策である。また、税と社会保障制度との一体改革も同様だ。背景は少子・高齢化の問題で、これも震災とは関係なく進んでいく。日本創生のための大きな政策の柱は、税と社会保障制度(の一体改革)と成長戦略実現のための、日本を開き、(企業の)立地条件を魅力あるものにしていくことであり、待ったなし課題だ。

政策の優先順位だが、いま一番大事なことは被災者の救済であり、被災地の復旧である。これを第一義的に、優先順位の第一に据えることは、当然疑いのないところだ。次に、日本の財政の面からも、他の政策の優先順位を決めて、何に国の予算を投入していくのか(を考えなくてはならない)。今の政府を見ていると、震災対策、被災者救援と(被災地)復旧が第一義で、後は復旧の状況を見つつ考えていく様だ。私は、これは違うと思う。税と社会保障制度の一体改革にしても、少子・高齢化という環境変化は、震災とは別次元で進んでおり、待ってはくれない。また、日本を開き、かつ(企業の)立地条件を魅力あるものにしていくことも、グローバル大競争という環境変化の中での重要な成長戦略で、これも待ってはくれない。震災に対する復旧(・復興)活動を第一義とし、その他の重要な構造改革テーマは後回しでは、いつになったらこれらに着手できるのか、財源を回せるのかが不明確になってしまう。第一義的には、震災復旧。第二に、「強い経済、強い財政、強い社会保障」に向けた制度改革を並行して進めることが大事だと思う。そのための財源確保が次の大きなテーマだ。日本の財政面から優先順位を落とさざるを得ないのは、(民主党)マニフェストの徹底的な見直し(による政策の修正)である。マニフェストを(一旦)白紙に戻し、再構築することも必要だろう。金額的には、2010年度の予備費、2011年度の予算にある予備費で、約1兆1,600億円ある。加えてマニフェストを全て白紙に戻すと、6~7兆円程度捻出できる。全てをゼロ・ベースに戻す訳にはいかないだろうが、政策展開の優先順位を落としても良いものが4~5兆円ある。一方、必要な復興費用は、被害金額が未確定で、復興のための予算がどのくらいかはまだ発表されていないが、10兆円を超えるであろうとの説が多い。その半分程度は、マニフェストの見直しでなんとか捻出できるのではないか。それ以外の手段として、建設国債や特例公債を、いかに財政健全化という視点で抑えつつ出すかということである。これを(与・野党一体となって)国会の場で審議し結論を出すことを、政治には期待したい。

Q: 法人税率引き下げの見送りは慎重に、ということか。

桜井: 法人税だけを考えれば良いということではないはずだ。成長戦略、大きくはアジア・新興国の成長エネルギーをいかに取り込んでいくかを考えることが非常に重要である。そのためには、法人税のみならず、TTP等の経済連携、自由貿易協定の促進を前進させ(ることも併せて考え)る必要がある。

Q: 法人税(率引き下げ)だけを見直すことに否定的な発言があったが、マニフェストの見直しを先ずやって、それでも足りなければ法人税(率引き下げの見直しに)くるべきとお考えなのか、それとも全体をパッケージとして(見直すのか)、代表幹事の考えを伺いたい。

桜井: 優先順位を考えると、第一に(震災の)復興対策で、第二は制度改革が必要な課題、すなわち現政権が言う「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一体改革であるはずだ。そして(第三が)、政権交代によって出てきた生活者視点、それは当然重要だが、子ども手当や高校無償化、高速道路無料化、農業(戸別補償)支援等、新たに投入した政策について(マニフェストを)見直す必要がある。

Q: 今回の原子力発電所の事故を受け、政府内で東京電力の国有化も議論されているが、東京電力の経営体制についてどのように見ているか。

桜井: なぜ国有化が必要なのか、政府の監督・管理の下に置く理由があるはずだが、その理由が分からない。安全管理の面で必要なのか、それとも企業のファイナンス上で必要と判断されたのか、ポイントがわからない段階では答えることができない。安全管理の問題であるとすれば、国有化をすればしっかりと安全管理ができるのか、国としてどのような安全管理をしようとしているのか、それは民間企業ではできないことなのかを知りたい。

Q: 原子力発電所の問題について、「世界の英知を集めて解決していく必要がある」との発言があったが、そもそも日本は技術立国として世界に冠たる技術力が強みである。3月11日に震災が起きてから、今なお原子力発電所はあのような(危険な)状況であるが、日本の技術力についてどのようにお考えか、伺いたい。

桜井: 専門外のため答えることは難しい。企業経営という立場で述べると、日本は、技術力、特に品質管理や信頼性、安全保証という点で、世界でも長けた国であったと考えているし、いまもそう確信している。その国で今回のような事故が起こり、現段階では放射能漏れの可能性まで取り沙汰される事態となったことは、本当に残念でならない。原子力(発電)や新幹線、その他の基幹インフラに関わるものは全て大規模なシステムとして稼働している。新潟県中越沖地震の際、柏崎・刈羽原発では原子炉自体に被害はなかった。問題は、その他のコンピュータ管理室を含む周辺のシステムが被害に遭ったことで、安定制御などに不安を招いた。今回も同様に、電源がダメージを受け、代替の電源を働かせようとしたが低温冷却装置を作動させる諸経路が被害を受けて傷んでいたということだ。システム問題は、重要な部分だけが機能すれば済むということではなく、周辺を含めたシステム全体としての耐震性、津波対応力などを備えるよう設計されていなければならないはずだ。今回は、そうしたシステム全体としての信頼性、安全管理の面で問題があったのかもしれないと思う。その意味で、(個々の)技術力というよりも、安全管理、安全システムの設計能力、震災規模に対する想定能力に問題があった可能性が考えられる。この経験を基に今後の日本の原子力はシステム全体で安全対策を施し、非常に高い信頼性を発揮して、世界の原子力産業の中でもさらに信頼性の高いものにしていくことができると確信している。

Q: (原子力発電所の)全体のシステムをどう守るかという点で問題があったのでは(ないか)との指摘だが、今まで東電が原子力発電所の安全対策として説明していたところから(判断)すると、今回の問題は起きなかったのではないかと思う。また、震災を受けた電力会社が今後の災害対策をどうするかと言えば、例えば、地震の恐れがあるところに原子力発電所を建てているある電力会社に聞いたところ、「津波への対策は強化するが、地震に対しては今の基準であれば大丈夫」と言っている。合理的な発想に基づいて様々なことを組み立てていくのだろうが、合成の誤謬というか、元々の発想や設計に基本的な落とし穴や抜けがあるように思える。これを改善するにはどのようなことが必要とお考えか。

桜井: 今回は、全体のシステムで、どれだけの震度、あるいは津波に耐えられるレベルに(設定)すべきかという出発点に問題があったと思う。3つのプレートが連鎖的にずれてマグニチュード9.0という地震が発生するというのは想定外で、さらに津波の高さも1つのプレートだけならば10メートル程度を想定していたらしいが、それが実際には約17メートルにまで達してしまった。いま振り返れば、出発点に問題があったと言えるだろう。

Q: 想定できないことが起こったが、原発は(現在も)運転しているところも多いので、(運転を)止めて補強工事をすることも大変である。これから起こるかもしれない(災害の)ことも考えて、抜本的な見直しや対策の強化は不可欠と考えてよいか。

桜井: (対策強化は)不可欠だ。私は、原子力政策は大事だと考えている。今の原子力政策は、日本の総発電量の約40%、あるいは50%までまかなえるよう、2020年までに9基、2030年にはさらに5基、合計14基増設する計画だと言う。今でも約30%を原子力に頼っている状況で、再生(可能)エネルギーである風力や地熱、太陽光等でエネルギー量を高めていくのはかなり難しい。火力・石炭のみに戻すこともできず、原子力を軸に置いたエネルギー政策をとらざるを得ない。そのためには、想定条件、前提条件の設定を高め、それに耐え得る原子力発電所にしていく必要がある。

Q: 東京電力も経済産業省も、(原子力発電所の対策基準を)低く見積もっていたと思う。国会でも(この点について)、想定外というよりむしろ想定内であったのではないかという質問も出ている。そうすると今回の場合、東京電力の経営者や関係者は過失責任を問われて然るべきとお考えか。

桜井: この様な質問に、私が答える立場にはない。知る範囲では、想定していなかったと聞いている。

Q: システムの問題となると、原子力政策全体を進める経済産業省、原子力安全委員会や原子力安全・保安院、および電力会社との(関係各所全体の)システムも見直さないと信頼を得られないと思うが、いかがか。

桜井: そう思う。東京電力には、事業者としてのシステム設計、システム保証の責任があるが、やはりこの問題は、国、そして機器や装置類を提供しているメーカー、さらに事業者である電力会社を含め、全体の総合力でシステム設計をしていくことが重要だ。こうしたあり方の改革も今後必要になる。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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