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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2010年11月16日(火)13:30~
出席者 桜井正光 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)景気・経済の展望、(2)G20、APECの評価と今後の見通し、(3)新卒採用、(4)尖閣ビデオ流出問題、(5)連合との幹部懇談会、(6)TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、(7)金融証券税制見直し、(8)京都議定書の延長、などについて発言があった。

Q: 昨日、内閣府が(発表した)7-9月期のGDP速報値は、年率換算3.9%と高い伸びとなった。特殊要因もあったが、今後の展望も含め、代表幹事の所感を伺いたい。

桜井:  時限的な特殊要因はあったものの、3.9%の伸び率は嬉しい話題だと思うが、10-12月期は、民間のアナリストにはマイナス予測もあり、経済同友会の 景気定点アンケート調査 でも厳しい見方が出ている。2010年全体のGDP(成長率)は、幅広い見方もあるが、2%程度というところだろう。

(7-9 月期は)自動車購入補助金の終了やたばこの値上げを前に(した)駆け込み需要)があり、10-12月期にはこの反動が出てマイナス成長につながりかねない。内閣府の月例経済報告や日銀の金融経済月報などを見ても、(今後の景気の)足踏み感、停滞感が表れており、まだまだ厳しい日本経済ということだと思う。

Q: 先週来、G20、APECと、金融・通商会議が続いた。これを踏まえて今日の市況は小康状態となっているが、国際会議の評価と今後の見通しを伺いたい。

桜井:  G20とAPECは、焦点の違う部分があるが、世界経済の不均衡な状態を均衡ある成長に持っていくという点で共通している。

G20は、今後、世界の経済不均衡を是正し、安定した世界経済の成長を担保するためには、新たな枠組みが必要だということで、努力されたことは大変に評価したい。特に、経済不均衡については、第一に為替(の問題)がある。本来はファンダメンタルズによって市場で決められていくことが望ましいが、それ以外の要素で為替が大きく変動したり、不安定な動きをすることを防止するために、具体的な指針まではまとまらなかったものの、経常収支を軸とした指針を作り、それを世界で管理する枠組みを作ろうということで、来春までに指針の検討を終え、その指針により来年中に異常な問題を摘出するというスケジュールを作ったことは、国際会議として大変に進んだと思う。その他、世界の金融システムに重要な銀行の健全化・強化の点で規制強化の動きもあったが、私は前者(スケジュール策定)は非常に評価できると考えている。

APECについて、一番の関心事は、日本が、外交面、経済面でトラブルが続いている中で、今後の世界経済の成長センターとなるAPEC地域での成長戦略その他を前進(させることが)できるような枠組み、横浜ビジョンを、議長国として責任を持って取りまとめることができるかということだっただろう。個々に見るといろいろあると思うが、一応まとまったのではないか。

これを元に今後の経済の予測ということだが、(G20とAPEC)両者とも、(G20では)世界の不均衡な経済を是正していく方法、(APECでは)APEC地域が世界の成長センターとして着々と歩みを前に進めることができるかは、各々の責任者が、具体的に、言い訳せず、他人のせいにせず、経済成長と経済の安定化、(不均衡の)是正に努めるかにかかっている。

Q: APECの関連で、菅議長に点数をつけると何点か。及第点をつけられるか。

桜井:  点数(をつけること)は難しい。どの辺りが及第点なのかも分からない。何をもって(の)点数か、それぞれ価値観が違うであろうし、大した意味はない。それよりも、定性的にまあまあのまとめをしたということであろう。

Q: APECについて、一応まとまったという評価だが、足りなかった部分や課題は何か。APECの組織としての限界も見えてきたようにも思うが、所見を伺いたい。

桜井:  APECで限界があったとしても、(それは)乗り越えるべきである。今後の課題について述べる。横浜ビジョンの重要なメッセージは、「緊密な共同体」「強い共同体」「安全な共同体」だが、その内の「緊密な共同体」は、経済連携である。FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を2020年、あるいはもっと前倒しで、それを目指してどのように具体的な進め方をしていくかという中で大事なのは、ASEAN+3、ASEAN+6、そしてTPPを、各国が積極的に取り組み、最終的なFTAAPという経済圏に持って行こうというところである。日本は、米国と共に、自由貿易協定をベースに経済圏を作っていくことを、もう少し前向きに、積極的に取り組んでくれればと思っていた。けれども、後退とまでは申し上げないが、積極的ではない。ここがひとつの(残された)課題であったと思う。

補足すると、自由貿易協定、あるいは貿易(モノ)だけではなく、ヒト、カネの移動をもっと自由にする経済連携(EPA)は、確実な流れであり、とてもくい止められるものではない。日本がこの流れに逆らうことは、世界の成長から遅れ、(世界と)離れていく、非常に危険なことだ。積極的に考え、日本の大構造改革を、TPPやEPA、FTAを積極的に活用し、特に、(国内の)産業構造改革を進めていくことが重要である。活力ある日本を作るために、成長戦略上最も重要な問題として(積極的に)取り組むことが非常に大事である。そのような方針とそのような考えの下に、APECでより積極的なリーダーシップが発揮されることを期待していた。これからまだ挽回の余地はある。政府には、積極的な取り組みをし、産業構造の大改革に努めていただければと思う。

Q: 来春卒業予定の大学生の就職内定率が就職氷河期を下回る状況となっている。雇用環境はまだ厳しい状況が続くとお考えか。

桜井:  そう思う。設備投資の指標を見ても、わずかに増加している程度である。内需面での(生産拡大や)設備投資や需要創造は、なかなか手をつけられない状況(拡大を図れる状況ではない)にあると思っている。日本の内需は、(ボリュームは今でも)大きいが、GDP成長率への寄与はまだ少なく、もっと拡大させることができる。内需を刺激する活動がもっと十分に働かなくてはいけないと思っている。

前回の記者会見でも述べたが、いま政府は(雇用・採用に関して)企業に3つ要望を出している。ひとつは、来年度の雇用拡大である。(しかし、)企業側は、内部に余剰雇用を抱えている。雇用拡大は、成長戦略の進展とともに可能になる。2番目に、(卒業後)3年間は新卒扱いをして、企業が採用に努力をしてほしいというものである。これは雇用拡大の話ではないが、新卒の非正規社員や失業者としての固定化を防止しようというものである。できる企業から積極的にやることが必要だと思っている。経済同友会の雇用・労働市場委員会や企業経営委員会でも検討していく。3番目は、青田買いの話である。これは社会的に大きな問題で、大学生が学業に専念する時間を確保することが大事だ。早くとも、会社紹介は3年終わり頃から、採用試験などは4年生になってからが、あるべき姿だと思う。業界ごとに検討し、青田買いを止めるべきである。これも、委員会で検討し、年末くらいに方向性をまとめ、年明けにでも報告したいと思う。

Q: 改めて、学生の(就職)内定率が厳しいことについての所感と政府への要望を伺いたい。

桜井:  一言で申し上げると、企業が無理をして採用数を拡大するという問題ではない。企業が成長と発展、拡大を遂げれば、採用枠は自然に拡大する。自ら責任を持った企業の成長が一番大事である。政府はそのための支援をすることが大事である。政府がやるべきことは、日本をオープンにするEPA、FTA、TPP等の経済連携である。自由貿易協定を各国と結んでいくことが非常に大事である。いま日本は、(アジアや)欧州や米国の市場で、韓国や新興国と大競争を行っている。韓国は、欧州とFTA協定を結んでいる。車を例に挙げると、韓国は欧州に関税ゼロで輸出することができる。(これに対し)日本は、欧州(に車を輸出するときに)10~22%(の関税がかかる)。同じコストで作っても、それだけの差がついてしまう。日本が欧州へ(輸出する)車の関税をゼロにしてもらうためには、日本もオープンにしなければいけない。日本(で)は、企業が国内に投資できたり、雇用を増大したりするには、企業は成長しないと(いけない)。企業が成長せず、負け戦ばかりでの雇用増大はあり得ない。

前原:  先ほどの政府の3つの要請の2番目の(卒業後)3年間は新卒とみなすという話と、いまの成長の話はリンクしている。成長が戻れば採用が増える。3年間というのはそういう意味もある。

Q: 以前の就職氷河期と比べても、(就職)内定率はさらに悪いということだが、企業の雇用意欲がますます低下しているという状況か。

桜井:  雇用意欲の低下という話ではない。企業は、成長戦略に対応して、どういう人材を何人採用していくか、少なくとも3年くらいの計画で採用案を作る。これは、(問題は足下では)企業が雇用増大に繋がる成長戦略をなかなか描けないということである。

Q: ゆとり世代(の学生)が就職時期を迎えているが、ゆとり世代を外して次の世代を採用するという傾向はあるか。

桜井:  そのような発想はない。ゆとり世代ということで区別しようとは思っておらず、企業が採用したい能力のある人材を採用するだけである。

Q: 尖閣諸島沖(の中国漁船衝突)のビデオを流した(海上)保安官は起訴されず、一区切りついたが、この一連の事件について所見を伺いたい。

桜井:  (保安官の起訴・不起訴については)私たちがコメントできるものではない。尖閣ビデオの流出については、私は本当に驚いた。9月7日に衝突事故があり、その後、(中国人船長の)逮捕、起訴に向かうかと思いきや処分保留のまま釈放となった。その後、10月18日に国交相が厳しく情報を漏洩しないよう通達を出した。ここで正式に機密扱いとなった(と思う)。現在、海上保安官の話によれば、10月18日以前は自由にコンピュータでアクセスでき、さらに、これは企業では考えられないことだが、個人のUSBにダウンロードすることも可能だったという。実質、開放状態だったわけで、これは大問題だと思う。情報に対する危機管理(のずさんさ)が非常に問題である。

Q: 昨日の保安官のコメントによれば、「私利私欲のために流出しのではなく、日本の海で起こっていることを、(国民の)みなさんにお知らせしたかった」とのことだが、これについての所見を伺いたい。

桜井:  機密扱いにしていなかった上に、予算委員会の理事に一部公表している。結果論であるが、誰でも自由に見られる状態で、また一部の議員にもオープンにしていたという事実を考えると、そうした(流出させる)行動をとる人も出てくると考えられる。10月18日に機密情報となったのか、そもそも(船長を)逮捕し、保釈した時点で機密情報扱いだったのか、ここが判断の分かれ道だろう。(この点を明確にすることが大事だ。)

Q: 尖閣(諸島沖の中国漁船衝突)の問題とは別に、日本の調査捕鯨をシー・シェパードが妨害している行為はビデオで撮影され、関連のHPなどで公表されている。海上での不法行為を記録したビデオは、機密扱いとするべきか、国民に広く公開されるべきか、代表幹事のお考えを伺いたい。

桜井:  (公開すべきか否かは)国益を基準に決めれば良い。公開することが国益を大きく毀損するかどうかで判断すべきだろう。こうした考え方で見れば、当該情報が公開すべきか否かは自ずと明らかになる。シー・シェパードによる妨害は、(我が国が)一方的に被害を受けているのだから、公開して国民に知らせ、対応すべき情報だろう。一方、今回の尖閣の問題は、一方的に被害を受けたというだけではなく、日中関係の問題があるので、国益を毀損するか否かを考えた上で、情報の公開性を議論し(決め)なければいけない。企業の株主総会にも同様の基準があり、株主の質問に対して回答しなくて良いとされている事項が4つある。そのうちのひとつは、会社の成長に対して障害・毀損となる、および株主の利益を損なうものである場合には、情報公開はしない。企業益/株主益、国益/国民益につながるものなのか(という観点)で整理すべきということだ。

Q: 代表幹事は、今回の尖閣のビデオは公開すべきだったとお考えか。

桜井:  それは国が考えるべき事項だ。

Q: 今週金曜日に、(経済同友会と)連合との会合が予定されているが、ポイントは何か。連合は、雇用・賃金一体改革について主張を持っているが、この基本スタンスに対するご意見を伺いたい。

桜井:  現時点では、金曜日の議論の詳細はまだ決めていない。連合との会合は定期的に行っており、今週の懇談会もその一環だ。就職内定率や採用の要求が非常に厳しくなっているという状況を受けて議論することになろうかと思う。我々の側から特に(議論すべき内容が)あるとすれば、これから日本が成長するためには国を開くことが大事になってくるだけに、連合にとっても、企業で働く人々にとっても、あるいは学生にとっても、決して甘い(見通し)だけの話ではなく、それぞれに負担をして、総合的に日本の成長と雇用増大につなげていくことが重要である、という論点になるだろう。

Q: 政府はTPP対応(のため)のタイム・スケジュールで農業改革の取りまとめを来年6月(を目途)としているが、オバマ大統領は来年11月のAPECでまとめたいとしている。いまの政府のタイム・スケジュールについていかがお考えか。

桜井:  タイム・スケジュールは間に合うと言えば間に合うし、間に合わないと言えば間に合わないかもしれない。要は、6月までにどのような(農業改革の)内容かが、分岐点になるだろう。例えば、農業のあり方、農業の産業化に対して積極的ではないアウトプットになれば、本質的に全く間に合わないことになる。反対に、積極的に取り組んでいくとすれば、農業も含めた日本経済の活力の増大、経済成長の実現が可能となる。そのためにも、大きく産業構造を変えていくという方向へ、今からでもすぐに(農業構造改革の)議論を始めなくてはならない。

Q: 金融証券税について、税制改正大綱で株式譲渡益・配当にかかる軽減税率を元に戻すことがテーマになっているが所見を伺いたい。

桜井:  税目の切り替えだけで法人税(減収分)の穴埋めをする税制として(そのような話が)あると思うが、そうした思想は間違っていると思う。何のための法人税(減税)なのかという点を考えて欲しい。法人関連以外のところに代替案(財源)を求めるために金融証券税制を元に戻すということは、日本の株式市場活性化のために、個人の資金を株式市場に投入できるようにすることを大きな目標にしたのだから、この見直しは慎重に検討されなければならない。

前原:  単年度で帳尻を合わせるという発想は間違いだと思う。中長期的な視点では、(日本経済が)成長すれば法人税(率)を下げても税収は増えるという研究も多いので、そのような発想でいくべきではないか。

桜井:  法人税(率引き下げ)の効果については、ドイツなどでも実現しているが、例えば経産省の試算では約4000億円~8000億円の増収があるとも言われている。税収は増収の話だけではなく、外資が入ることで雇用を増大させ、その外資からの法人税等の収入源を増やすというように、トータルに考えていくことも必要だろう。

Q: 産業の構造転換が必要との発言があったが、具体的に伺いたい。

桜井:  第一次産業になるが、特に農業(が重要なポイント)になるだろう。日本の農業は相当な力を持っていると思っている。オーストラリアやアメリカのような広大な土地を有する国々の、機械化された大量生産型の大規模農業と比較をすると、とても敵わないのでオープン化などできないという話になる。しかし、現在でも(力があり)売れているものがあり、高付加価値で品質の高い日本の農産物は、中国や欧米で3~10倍の値が付いている。また、高付加価値分野ではない一般の農産物でも、農業の大規模化を行い、生産性を高めることで競争力をつけ、コストを下げられる。そうした高生産性、低コスト化をしてもまだ足りない分については、(競争力強化支援以外に)補填をするという形があり得るだろう。大規模化や産業化支援をしても競争力がつかない農産物については(転業を)考えていく必要がある。この様な産業構造の改革が必要になるのではないか。

Q: ものづくり産業、第2次産業にも手をつける必要があるとお考えか。例えばどのような(改革が)必要とお考えか。

桜井:  同様である。我々(ものづくり企業)が進めてきた技術革新や生産性を高めるための種々の取り組みは、モノだけではなく、モノとソフトウェアやシステム化による高付加価値の追求等だ。これからの国際競争ではこの様な切磋琢磨が求められる。しかし、これまでのままで本当に大丈夫なのか、単なるコスト競争に入り込んでしまうと新興国には敵わない。新興国に任せなければいけない生産物から、(技術革新をもって)新たな付加価値を持った商品・サービスへ切り替えていくことが必要だ。大事なことは、そこから逃げていたら日本の産業は(世界市場から)敗退せざるを得なくなる。TPPに参加しなければ敗退だが、参加できても、国際競争力をつけ、生き残ることが必要だ。日本にはそれだけの技術と知恵があるのだから、それを発揮できるよう改革をすべきである。

Q: 地球温暖化に関連して、月末のメキシコでCOP16が開かれる。事前予想だと米国、EUが京都議定書を単純に延長することもあり得るかも知れない。主な排出国が参加しないという点で、同じ状況が繰り返される懸念がある。このような事態に対するご意見を伺いたい。

桜井:  まず京都議定書の延期だけで済ませようというのは絶対避けるべきである。日本の国益にもならないし、米国や中国などの主要排出国が抜けており、(批准している国の排出量は)総排出量の1/3に過ぎないのだから、これを(単純)延長するということはあってはならない。新しい枠組み作りについて述べると、各論になると各国が国益重視だけになってしまいがちだが、それを乗り越えてでも地球益を尊重し温暖化を阻止するためには、それぞれの国々の事情を考慮しつつ高い目標へと近づけるようにする必要がある。そのためには、セクターごとに(排出量を)積み上げる方式に加えて、トップダウン型で(排出枠を)割り振る方法しかないだろう。もう一つ、日本はそこで決まった排出量の(日本への)目標値が幾らであろうと、COP16、あるいはCOP17となるかも知れないが、国内的には高い(目標数値を)定め、低炭素社会づくり、低炭素商品・サービスの提供へと大きく変革できるようにすべきであろう。国内はそれで展開するべきだ。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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