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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2010年10月13日(水) 13:30~
出席者 桜井正光 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、桜井代表幹事がチリの鉱山落盤事故での作業員救出作業についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)為替とG20への期待、(2)レアアースと対中貿易、(3)法人税率引き下げ、(4)COP10、(5)新卒採用、(6)第36回日本・ASEAN経営者会議、(7)ノーベル賞、などについて発言があった。

チリの鉱山落盤事故での作業員の救出作業について

桜井:  今日、チリの(落盤事故での)作業員救出に感激した。個人的には、命がかかった先の分からない状況で、限られた食べ物や飲み物の奪い合いや人間関係が悪くなってしまうことを心配していたが、それがほとんどない。(事故)当初は救出が3ヶ月先というアナウンスもあり、そのような状態で、みんなで生き延びよう、(助けを)待とうと、団体の意思が統一されるのは立派なことだ。そういう方々を救えるようになったのは、現代の技術(革新の賜物)であろう。

Q: 為替について、G7で野田財務相から(為替)介入に入った経緯が各国に説明されたが、週明けも(1ドル)81円台後半の状況が続いている。今後G20でも話し合いになると思うが、81円台後半の評価と、政府・日銀への要望を伺いたい。

桜井:  今回のG7で表明されたことは、為替の異常な変動は何とかしなくてはいけない(という認識と)、今後為替の柔軟性を維持できるような枠組みを作っていかなければならない、ということだった。以前からこのような考え方で市場は運営されてきたと思うが、ここで特に、各国とも経済・景気の後退を食い止めるための財政出動や金融緩和(策)を展開し、意図的ではないにしろ、各国通貨安の方向になってきた。健全な流動性、柔軟性を維持する方策は難しいと思うが、まずG7で方向性がまとまったことは非常に重要で、評価したい。今後、G20でどうなるかである。(G20で)枠組みが協議され、(今月下旬のG20ではまとまらなくても)今後の課題として引き続き枠組みづくりに取り組まれることを期待したい。

足下では、(1ドル)81円台後半という水準は、企業にとっては、事業計画・利益計画での計画レートとは相当な乖離があるため、減収減益要素が大きい。また、継続して(円が)高止まりとなることに対して、危機感を持たざるを得ない。

前原:  米国や欧州(ドルやユーロ)から購買力平価で見ると、欧米のメディアの論調にもあるように、(円高は)やむを得ない面もあるかもしれない。日本企業がなぜこれほどきついのかを考えると、(日本円と)アジアの通貨との関係をもう少し見なくてはいけないのではないか。購買力平価(に対して市場レート)を見ると、日本は円高ではあるが、中国は80%近い元安、インドは200%近いルピー安、インドネシアは80%近いルピア安、韓国も50%近いウォン安であり、このような状況の国々に取り巻かれている日本、という観点からも考えなくてはならない。近隣諸国の多くはドルに連動しており、日本にとっての矛盾が非常に拡大しているのではないかと感じるので、これらの国々とよく話し合う必要がある。

Q: レアアースについて、先日大畠経済産業相は、荷動きがまだ正常な状態に至っていないと発言された。経済産業省の調査などを見ても、輸出入全体の4割程度が改善したとの話もあるが、改善したのは手続きのみで荷動きは依然止まったままという話もある。本件について、新たな情報をお持ちであれば、また懸念されていることがあれば伺いたい。

桜井:  当社(リコー)については把握しているが、(他社とも)大体共通しているのではないかと思う。レアアースに限らず、一般の貿易の輸出入材の面でお話しする。輸出入規制というよりも、税関等の手続きや検査が以前より厳しくなったことで、現実的に通関を完了するまでにかなりの時間がかかり、これが非常に響いた。当社の例では、一般材についてだが平常に戻りつつあり、中国当局も改善の方向への動きが出てきていると思う。レアアースについては、データや情報がなく、はっきりとはお答えできない。中国が輸出規制や輸出禁止をしているという事実はないだろうが、一般材と同様の手続きの問題などがあるのかもしれない。

今後は、対策が重要である。レアアースの90%近くを一国に集中(依存)していることは、企業経営にとってもよろしくない。企業と政府が共通の認識を持ち、レアアースの調達先の分散化を図ることが大事である。政府も、今年度の補正予算で約1,000億円を計上するとしている。その対策の柱として、まず、「レア」といわれている現在の材料から、「レア」でない材料に転換する脱レアアース。これは技術開発の課題である。もうひとつは、中国だけではなく、南米、アジア、アフリカなどに資源(産出)の可能性のある国での採掘を行い、調達先の分散化を行うことが大事である。これは資源開発になるので時間がかかるが、今から地道な努力を続けていくことが大事だ。3番目がリサイクルである。これら3つをやるべきで、今回の補正予算の速やかな成立を期待している。

Q: 今日の衆院予算委員会で、菅首相が法人税引き下げを指示された。これについて所見を伺いたい。

桜井:  法人税(率引き下げ)については、いつも申し上げていることと変わらない。法人税は、成長戦略のエンジン役となる企業にとって、先進国間や新興国との間での競争力の強化として非常に大事なことである。また、外資を日本に招く、海外の企業が直接投資を行って日本に進出することを促進するという意味でも非常に大事である。さらに、法人税は企業の損得だけの問題ではない。企業が頑張る、海外の直接投資が増えることにより、新しく需要が生まれ、雇用の増大に繋がっていく。このように広く考えていくことが必要で、法人税(率引き下げ)は、日本の成長と発展、特に国内需要や雇用の増大を図る意味で、大事な政策である。

Q: COP10が始まったが、このなかでABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)の考え方について定めようとする名古屋議定書の策定がひとつのポイントになる。これについては産業界では異論もあるようだが、所見を伺いたい。

桜井:  ABSについては、適正な考え方の下に、適正な比率で、生物資源を提供するところに還元するという考え方は、必要だと思う。COP10で必要な議論は、(極論すると)ある種の排泄物が、別の種の食糧になる。このような連鎖が自然界に存在する(かつ人類は多くの恩恵を得ている)。そのような地球の種の連鎖を大事にしよう、(種の)絶滅を食い止めようということである。ABSでは、生物資源の活用による、製薬会社等が得た利益の、資源提供者との間での利益配分が課題とされているようだが、(有限な)生物資源の絶滅を食い止めるために、皆が相応の負担をしていかなければいけない。この面からもルール化を考えていくことが必要だ。どのようなルールかについては、私は分からないが。

Q: 今年の就職戦線について伺いたい。大学生の就職活動は現在3年生の半ば辺りからスタートしているが、これは早すぎる、大手商社は、学業専念という主旨から4年生の夏に採用活動を始めると主張している。一方、4年生から採用活動を始めることは難しいとの意見もある。代表幹事はいかがお考えか。

桜井:  (企業側も)これは大いに議論すべき課題である。基本的な考え方として、多くの企業は、早い時期からの青田買いは、人材育成、特に日本を牽引することになる若者の高等教育における人材育成を阻害するようなことはできるだけ改めていく必要がある。これについては、どの企業も同じ意思を持っていると思う。そのなかで、大手商社5社が自らの業界としてできることをやっていこうという方向性を打ち出したが、これは大変結構なことだ。(新入社員の獲得は一方で)競争的課題なので、一斉に始めれば問題はないはずだ。就職協定で実現を目指したはずだが、段々と前倒しになってしまった。本質(学業専念の阻害)を理解した上で、共に実現するための方法を探っていくべきだろう。若手の人材育成の阻害要因を解消していくことが大事である。

Q: 採用する立場から、最近の学生の質や性格についてはどう感じているか。内向きであるとの意見が聞かれるが。

桜井:  実際に企業経営者としてもそう感じることはある。内向き、外向きについては(人によるので)一概には言えないが、高度成長期にあった目の輝きは、現在の中国で出会う(人たちの)目の輝きと比較すると、確かに失せているかもしれない。悲観論で言っているわけではないが、もっと積極的に、もっと外へ、もっとグローバルに、ということを求めるには、社会全体でそのような環境づくりをしていくことも必要だろう。

前原:  大学関係者であった経験から述べるが、3年生からの就職活動は、勉学に対する大変な阻害要因になっている。さらに留学も阻害されるため、二重の意味で阻害されてしまう。就職活動はぜひ4年生の後半からという状態にしていただきたい。私が近くで見ていた学生は、海外へも出ていたし、意欲的に勉強をしていたので、(以前の学生と比べて)大きく変化したと感じることはなかった。(最近は)さまざまな社会的な要因で阻害されるという面があるのではないか。就職環境が厳しいだけに尚更だろう。

Q: (卒業後)3年間は新卒扱いするということについてはいかがか。

桜井:  (企業側として)人事制度や社内の育成制度などを直したり、新たに見合った制度を設けるなどが必要になる。しかし、その年に就職機会を失った新卒者には、その後も非正規社員の道しかない、ということになるのは不幸な話である。年度、年度で機会を逸した学生の塩漬け(固定化)になってしまうことは何とかしなければならない。一つの方策として(卒業後)3年間は新卒扱いするということは考えられる。しかしこれは、新卒扱いの対象者が増えることに比例して、採用数が増えるわけではない。企業が欲しい人材は今後のオペレーションのために必要な人材であるという点は変わりない。

Q: 卒業した人には(新卒扱いされる)3年の間、何をやってほしいとお考えか。

桜井:  出来れば、海外へいくことを勧めたい。また、企業側もインターンシップの枠を広げ、(卒業者に)企業活動を学ぶチャンスを作ることも必要だろう。その間に、自分にとって本当に相応しい仕事は何か知っていただきたい。企業としても、そのための窓口を広げていくことが必要になってくるだろう。

Q: 先週、第36回日本・ASEAN経営者会議が開かれたが、成果について伺いたい。また、第3セッションでは「アジア発イノベーションの促進」がテーマで、代表幹事も発言されていたが、「アジア発イノベーション」がどう大事で、どうすべきか、改めて伺いたい。

桜井:  会議の総論から述べると、この会議は今年で36回目を迎える。(歴史的に見ると)かつては日本を中心とした経営者の情報交換を行い、ASEAN諸国への支援を考える場であった。近年は、ASEANは世界の成長センターだとの意識が高まり、ASEAN地域として、各国の経済成長のために日本といかに協力し合っていくか、日本・ASEANという地域の発展のために自分たちは何をすべきか、という議論に変わってきた。そのための環境整備として、今回は特に、日本とASEANとの経済連携、そして日本とASEANが共に取り組むイノベーションについて議論した。(アジア発イノベーションについての)私の発言は、イノベーションというと先進国型イノベーションの話、すなわち技術革新がベースにあり、先端技術を重要視する話になってしまう。世界に冠たる先進企業、例えばGoogle社やApple社のようなイノベーションをアジアで起こそう、と。それは現実的ではない。それよりも、アジアの強みは何か、アジア型のイノベーションとは何かということを出発点にする必要がある。そうした地域に根差した、長持ちするイノベーションを起こさなければならない。これが私の言うアジア型イノベーションである。東京のイノベーションと地域・地方のイノベーションとが違うのと同じである。

Q: 今年のノーベル賞で、日本人2人がノーベル化学賞を受賞された。祝意を伺いたい。一方で、6つある(ノーベル賞の)分野で、経済学賞は日本人がまだ受賞していない分野で今年もできなかった。(日本人は、)自然科学系は強いが(何故)社会科学系は弱いのか、なぜ経済学賞はとれないのか。ご意見があれば伺いたい。

桜井:  ノーベル賞は国の力を示すためにも大事なものだ。化学賞にしても物理学賞にしても日本のものづくり業界の影が薄れてくるなかで、次の世代の若者や子供に技術の楽しさ、すばらしさ、日本の可能性を感じてもらうためにも非常に大事だ。そういう意味で、受賞は大変喜ばしい。ノーベル賞は発見から30~40年後、世界に貢献できるようになってからの評価なので、既に次のテーマが仕込まれているだろうと信じている。特に、化学や物理はかなり(研究・開発テーマが)仕込まれているので、これからも期待できる。若い世代がそれを絶やさないように、次の30年、40年先を見据えて仕込んでいってほしい。

前原:  経済学賞については、これまで候補になりそうな人はいた。例えば、東京大学にいらした宇沢先生などは一時有力だったと思う。経済学を学んだ身として考えると、欧米の理論を学んで日本に適用するのに非常にエネルギーを使ってしまったように感じる。ユニークな研究が少なかった。日本を対象にして研究しても普遍性が低いという面もあるかもしれない。エコノミストの一人として、これから変わってくるのではないかと期待している。例えば、バブル崩壊後の日本の(金融)処理は、渦中にいたものとしても先進的だったと感じているが、もっと前向きな研究が好ましいだろう。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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