代表幹事の発言

記者会見発言要旨(未定稿)

桜井 正光 代表幹事

冒頭、桜井代表幹事より、参議院議員選挙の結果についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)民主党の敗因、(2)自民党の議席増、(3)みんなの党の躍進、(4)今後の消費税議論、(5)超党派での議論、(6)郵政民営化の見直し、などについて発言があった。

桜井正光代表幹事によるコメント

結果の総評

まず、今回の参議院議員選挙の結果の総評をお話したい。今回の選挙は、鳩山政権、菅政権の二代にわたる民主党政権の9ヶ月について評価を受けるものだったが、国民の審判は大変に厳しかった。数字的には、民主党は改選第一党を維持することができず自民党に屈し、連立与党としても過半数割れとなった。

これは、自民党政権時代よりもっと厳しい「ねじれ国会」になるという結果を招いた。国民の評価としては、鳩山政権時代の普天間基地や政治とカネの問題、そして政策意思決定が内閣に一任されない二頭立てという姿も見え、政権運営における大きなブレと意思決定の遅延があったことがひとつ。また、菅政権としては、今回の参院選で消費税だけを論点にしようとしたつもりはなく、消費税のよって立つところである「経済・財政・社会保障」の三位一体改革が重要で、その姿を具体的に描くこととその結果の消費税見直しという意図だったと思うが、結局、議論が消費税に終始してしまった。全体像がなかったことも問題ではあったが、論争の重点が消費税だけに置かれてしまったことに対して、国民が「もっと慎重に」という意味でNOを発したと感じている。以上、鳩山・菅両内閣の問題点に対して、このまま突っ走ることは良くないという国民の審判が下ったと思う。

また、我々は健全な二大政党制を志向しており、日本にとっては大きな挑戦課題である。どのように健全な二大政党制を実現するかは難しい課題であるが、むしろ国民が、衆議院での民主党の圧倒的多数に対して、参議院が監視役となり、歯止めをかけられる体制を望んだ、ということも想像できる。今後の政権運営は、単に「ねじれ国会」を言い訳に使うのではなく、むしろ二大政党制における必然的な状況として、建設的にいかに克服するかが課題となる。

今後の課題

次に、今後の課題について述べる。菅内閣が政策の軸においた、日本の再生に必要な「経済・財政・社会保障」の一体的な建て直しが今後どうなるかがひとつ。次に、国民から否定された訳ではなく、経済・財政・社会保障の三位一体改革のなかでの位置づけと必要性の説明を求められたと思う。消費税についてどう議論を深めていくか。三つ目は、「ねじれ国会」の建設的な克服をどう描いていくか。四つ目は、国際的な信頼と信任を回復させるためにはどうすべきか。

民主党に対する今後の期待と要望

最後に、民主党に対する今後の期待および要望、いま挙げた課題の解決策について述べる。課題多き日本の建て直しは、大変な手間・暇・知恵が必要な重い課題であるという認識を、みなさんに持っていただくことが第一である。

第二に、総理が長期間、政権の責任者として国の運営をリードしていける政権の構築が重要である。

第三に、「ねじれ国会」を理由に政治空白を招いてもらっては困る。建設的な、「ねじれ国会」への健全な対応を、与・野党でしっかりと構築していただきたい。

第四に、現政権のブレない政策展開をお願いしたい。特に、大きな債務を背負っている日本、少子・高齢化で人口減少に悩まされる日本、という状況のなかでは、社会保障制度における給付の自然増が必須で、制度の安定的な運営が課題である。まず、「経済・財政・社会保障」の一体的な建て直しについては、ブレることなく展開・推進していただくことが重要である。

第五に、その結果具体的政策課題として出てくる消費税問題については、財政的な面もあるが、特に長期にわたる安定的な社会保障制度の構築という意味で、徹底した議論をしていただきたい。また、経済成長が伴わなければこの国の再生は望めない。牽引役である企業の競争力強化とその成果の社会還元を前提として、法人税の見直しを継続的に議論していただきたい。

第六に、海外からの信頼を確保するためには、一番目に一人の総理の長期的な政権運営、二番目に足下の問題である普天間基地の移設問題に着手し、合意に従って実施へと展開することが早期に望まれる。同時に、日米同盟の必要性、位置づけを再確認し、今後の日米同盟の深化・進展について新たな設計図を描くことが重要である。三番目に、G20で国際公約となった財政運営戦略の(具体化と)展開を強力に進めなくてはならない。

要望のまとめ

(今回の参院選の結果を)悲観論にもっていくべきではなく、国民の審判は非常に建設的であった。(政治は)これにしっかりと応えていくことが大事である。そのために重要なことは、早期に、国民の審判をよりきめ細かく分析し、民主党政権の政策と政権運営について、見直しをしていくことが重要だと思っている。前の自民党政権や鳩山政権のときのように、総理を代えるという安易な方法ではなく、政策および政権運営体制・構想をしっかりと見直すことが大事である。

Q: 今回の選挙の結果について、鳩山政権時代の政権運営のまずさと消費税の取り上げ方の両方(が原因)というお話だったが、どちらがより大きなインパクトを持っていたとお考えか。

桜井: 両方あると思う。鳩山政権時代の迷走で、内閣支持率は70%(政権交代当時)から20%台後半まで下がった。菅政権になってから、組閣や政策面でこれまでの整理・建て直しをするという意思表示が明確になり、支持率が(60%へ)上がった。確かに選挙期間中に支持率は下がったが、(鳩山政権の最後にまで)戻ったわけではないので、すべて台無しにしたということではないだろう。定量的には支持率でしか把握できないが、国民の期待に沿わなかったという意味では、どちらも同じように影響しているのではないか。

Q: 自民党が議席を伸ばしたことについて、所見を伺いたい。

桜井: 自民党の政策のどこが良かったかについては分析も足りず把握が難しいが、ひとつの要因としては(民主党の)迷走と消費税、単純に言えば選挙のタブー、敵のエラーによるところが大きいと思う。一方で、自民党のマニフェストを見ても、この国をどのような国にするか、経済、財政、社会保障を筆頭とする国の制度に関する一体的改革とその全体像が見えにくい。自民党は、前の衆院選で敗退したときの選挙分析と今回の勝った分析を徹底的に行い、国民の願いがどこにあるのか、自民党として民主党と違う部分は何であるべきかを明確にすることが、自民党が二大政党の対極に位置づけられる重要な点だろう。

Q: みんなの党が大躍進を遂げた。以前から経済界からの評価が高い印象があるが、みんなの党の躍進について所見を伺いたい。

桜井: 少なくとも、公務員制度改革や郵政改革を含めた構造改革という点では、市場に立脚し、市場の判断に任せることが機軸にあるので、その面では経済界と方向を一にするといっても良い。民主党の問題・課題を国民が厳しく評価し、その一部がみんなの党という第三勢力に流れたという部分がある。特に自民党でも拾えなかった部分を拾ったということで、かなり評価され始めてきたと思う。みんなの党については、これまでは野党として民主党の足りないところをついて存在価値を上げてきたと思うが、今回キャスティング・ボードを握るほどの政党になったことから、責任をもった政策の提案・実行がどれだけできるかにかかるだろう。

Q: 消費税の論議は、今回の選挙で否定されたとお考えか。

桜井: まったくそうは思っていないし、経済同友会としても個人としても、消費税の見直し・引き上げは必要だと考えている。

Q: 今後、菅首相や民主党政権は、どのような筋道で消費税の見直し・引き上げを国民に説明すべきか。

桜井: 7月6日の定例記者会見ですべてお話した。消費税引き上げを前提に、各論に入ってしまっては、国民としてはついて行けない。国民の多くは、大きな財政赤字・長期債務を持ちながら、延々と国債発行を続けるわけにはいかない、成長戦略や、歳出削減や、あるいは税制改革の中で消費税を議論していかねばならない。

財政健全化や社会保障制度の安定化のために消費税が必要であることは理解していると思う。国民は、経済・財政・社会保障の一体的な改革のなかで、引き上げられる消費税の使途は何か、財政健全化のスケジュールのなかでどのように消費税アップを計画していくか、この辺りの明示がなければ具体的な議論にならないと考えていると思う。(前述の通り)菅総理は、経済・財政・社会保障の一体改革において、経済成長、財政健全化、社会保障制度の全体構図を描き、そのなかで消費税の位置づけを明確にしようとされていたと思うが、消費税の部分だけが取り沙汰されて議論が展開されてしまったので今回の結果を招いた。きちんとステップを踏んだ方が良い。

Q: 菅総理が消費税を争点にして望んだ論戦で今回の結果となった。政府・与党内では、消費税議論が縮小してしまうのではないかという見方があるが、それについてはどうお考えか。

桜井: これで消費税の論議を止める、凍結する、避けるというのは、何とも無責任な話である。凍結するのであれば、代替案が議論されるべきである。

Q: 消費税がこのような形で取り上げられ、国民への説明不十分だったこともあり、今回のような結果となった。実際に議論を持ち出したのは菅総理であり、政策の進め方としては責任が大きいと思うが、その点についてはいかがか。

桜井: それはあるだろう。しかし、(消費税の各論の部分だけを)取り出し、膨らませたりしたのは誰の責任か。

Q: このまま菅総理が総理を続けて、継続的に消費税を議論してほしいとお考えか。

桜井: 消費税というのは、財政および社会保障制度の建て直しや外需依存が大きいなかでの成長戦略の強化という、日本のこれからの建て直しを考えたなかで出てくる議論である。建設的に考えて議論を継続していく必要がある。菅総理を代えた方が良いか代えない方が良いかについて、人事的なことを申し上げるつもりはないが、(総理を)代えて済むという簡単な問題ではない。

Q: 超党派での政策協議が必要という意見があるが、具体的にはどのように超党派の議論を進めるべきとお考えか。

桜井: 超党派での議論は、解決の方向が見えていないなかで、みんなで方法論を探すというような簡単なものではない。(消費税を超党派でというが、)三位一体改革そのものについて、経済・財政・社会保障をどのように組み合わせてこの国を再生すべきかを超党派で議論するというのは(無理がある)。例えば、三位一体改革を主張する民主党と、行政のムダを省くだけでうまくいくという他の党が超党派で議論をしても進まないと思う。これこそ、各政党のビジョンであり、理念であり、政策の優劣の問題という大きな課題である。

(超党派で議論すべきは、)大きな構図ではなく、課題が絞られた上での議論であるべきだ。例えば、スウェーデンでは、持続可能な年金制度にテーマを絞って超党派で議論をし、制度を確立した。これは、政権交代があっても制度や考え方が変わらないという意味でも持続可能である。

Q: 個別の政策の話になるが、郵政民営化見直しについて、今回の参院選で国民新党が議席を取れなかったことで、法案の成立が厳しくなるのではないか。

桜井: 分からない。今回の結果で、どのような連立を組むのか、どう政策協調をしていくのかについては、想像できない。(どうあったとしても)郵政民営化の見直しについては、本質的な議論をした上で、必要であれば制度改革をするというステップを踏んでいただきたい。

Q: 今回の民主44、自民51という議席数は、想定内か想定外か。

桜井: (数を)想定はしていなかったが、想定外と言える。(与党)過半数割れの可能性はあるとも思っていたが、これほどとは思っていなかった。

Q: 今回の結果を受けて、野党からは国民の信を問うべきと早期の解散総選挙を求める声が出ているが、これについてはどのようにお考えか。

桜井: 私がコメントすることではない。

以上

(文責:経済同友会事務局)

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