代表幹事の発言

記者会見発言要旨(未定稿)

桜井 正光 代表幹事
小島 邦夫 専務理事

冒頭、桜井代表幹事より意見書「COP15に向けて」について説明があった後、記者の質問に答える形で、(1)温室効果ガス25%削減の国民負担の試算と日本の中期目標、(2)7-9月期のGDP速報値と景気見通し、(3)2009年度第2次補正予算、15ヶ月予算と財政健全化、(4)行政刷新会議による事業仕分け、(5)租税特別措置、などについて発言があった。

Q: 昨日、温室効果ガス25%削減について、3つの研究機関から家計負担などの試算が出された。本日、意見書「COP15に向けて」を発表した背景には、政権発足から約2ヶ月経つが、会議の歩みが遅いという意図があるのか。

桜井: 進度状況を十分に把握しているわけではないが、(政府の地球温暖化に関する)タスクフォースに期待したアウトプットは家計負担だけではない。国民に、受益と負担のバランスを明示することが大事なポイントであり、次に道筋(の明示)、そして、公平性をいかに定義し、これをいかに担保するか、この辺り(のアウトプット)を期待している。これを踏まえると、(いまの)進度状況には少々不安を覚える。

昨日、3つの研究機関の試算が一斉に公表されたが、内容についてはまだよく理解できていないのでコメントのしようがない。また、(3通りの試算の)併記論でいくのか、タスクフォースの提案をベースに政府としての見解が出てくるのか、その辺りも定かでないので、明らかになったら意見を述べたい。

Q: 後向きな話になるが、COP15での交渉の見通しが厳しいと言われており、すべての主要(排出)国の参加による意欲的な目標の合意という前提が確保できないのではないかという見方が強まっている。その場合、日本は25%という削減目標をどうすればよいとお考えか。

桜井: 公平性が担保されない場合、目標値を下げて公平性が担保される状況になるのであれば、目標値を下げるべきであろう。これから国民的議論にしなければならないだろうが、目標値を下げる場合、例えば、経済同友会が提言している1990年比マイナス7%、前政権のマイナス8%よりも落ちて、それで済むのかという問題になる。そうならないように、あくまでも現政権がリーダーシップを発揮して、公平性を担保して下げるという適切なところに落ち着かせることが大事だ。

国際公約という面とは別に、日本が世界の低炭素社会づくりのトップランナーとして、国の繁栄、企業の競争力、産業の活性化を狙うのであれば、国内で高い目標を掲げてみんなで頑張っていこうという姿勢はあって良い。

Q: 国内目標と国際公約が違っても良い、ということか。

桜井: 違っても構わない。国内目標が低くて国際目標が高いということではだめだが、国内目標が高くて国際目標が低いということは、むしろやるべきである。

小島: 中期目標は2020年の話なので、COP15で結論が出なくても時間がないという話ではない。

桜井: UNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)のデブア事務局長やデンマークのラスムセン首相は、「(COP15での)合意は無理ではないか。先進国間だけでも政治合意をすべき」との発言をされている。これについては心配で、そうであってはならないと思う。

Q: 昨日公表された試算を受けて、(温室効果ガスの)削減には(排出枠を)買った方が国民負担が少ないという意見も出ている。限界削減費用は、今の削減幅では日本にとって大き過ぎるということでもあると思う。この点について、いかがお考えか。

桜井: 問題は、買った方が一時的な国民負担は低いが、(排出枠を)買うということは、イノベーションを起こさないということである。イノベーションを起こさなければ、今後目標値が上がっても、いつまでも買い続けることになる。

今後ずっと(排出枠を)買い続けていく国にするのか、それとも投資をして技術革新、ライフスタイルの革新を図って、現実的に(目標値分の温室効果ガスを)吸収できるような国にしていくのか、どちらを選択すべきなのかという話である。短期的な国民負担ではなく、長期的国民負担をどうするのかという方向でまとめていく必要がある。難しいが、国としてしっかりとまとめて明示する時期を迎えているのだから、責任を持って取り組んでいただきたい。

小島: そもそも(排出枠の値段が)いくらになるかは現時点では分からない。(マーケットなので)各国が買う方が安いと考え出したら高くなる。「買った方が安い」などと日本国内だけで判断する話ではない。

桜井: 売った方は得をする。例えば、目標値が低い国は、努力しなくても森林開発等の権利を売れば良い。しかし、それはいつまでも続く話ではない。開発努力をして、削減をして売るという国も出てくる。買った方が安いなどという考えでは、努力を続けている国から排出枠を買い続けることになるが、日本をそういう国にして良いのか。このような恐ろしい問題を含んでいることは、政府の方々もタスクフォースの方々も皆わかっているはずである。産業界でも一部、排出量取引、あるいは高い削減目標に対して警戒感を持っているのは、企業が自ら開発努力をせずに安易に排出枠を買うという行為に走るのではないか、そうすると企業の開発力が減退し、競争力の低下を招くのではないか、という懸念からだ。そのような発想をする企業も出てくるだろうが、それでは長持ちしない。安易に買う方向に走らず、自ら開発投資をして削減努力をする企業は、将来は排出枠を売ることが可能になる。どちらを選択するのか、企業の姿勢が問われる。

Q: (目標値のうち)真水(で達成する目標値)が多ければ多いほど、イノベーションにつながるということか。

桜井: それは難しい問題である。イノベーションを起こせば届く範囲はほぼ想像できるが、それ以上は大変なことである。中期目標委員会にしてもタスクフォースにしても、その高い目標でイノベーションによって届く範囲がどこなのか、それを検討しているはずだと期待している。真水をどの程度にするかというのは、この話だ。これは、前政権時代の中期目標委員会では議論されたので、これを再評価すれば良い。(ある程度の)イノベーションを含めてマイナス8%という目標値を導き出した。

小島: 経済同友会で提言した(90年比)マイナス7%も同様の議論を経ている。

Q: 昨日、7-9月期のGDP速報値が発表され、実質で年率4.8%増、一方で名目GDPはマイナスという結果となった。これについて代表幹事の感想を伺いたい。また、先行きに関しては二番底を懸念する声があるが、これについての所見も併せて伺いたい。

桜井: GDPが2四半期連続でプラス、特に今回は予想を上回ったプラス成長となった。内容も、輸出の伸び、生産の伸び(に加え)、今回顕著だったのは内需の伸びである。まだ自立的とはいえないが、内需が伸びてきたことは心を強くする点だと思う。あくまでも世界経済あっての日本なので、今後輸出の伸びがどう展開できるか。また、内需の伸びも、財政出動、景気刺激策あっての話である。設備投資がプラスになったことは、企業の意欲の表れであり、企業努力はたいしたものだ。おそらく産業別に見れば、一部の業界がけん引しており、全体の話ではないと思う。世界の経済状況がどうなるか、また財政出動、景気刺激策が途切れたらどうなるか、という不安はある。今後の日本の成長率が、このまま3%、4%と続くとは思い難い状況である。また、デフレの危険性はあると思う。消費と雇用が回復する見通しが立たないという状況の中なので、第2次補正の必要性はあるだろう。

Q: デフレについて、2000年代前半から始まったデフレの局面と比較して現状はどう違うか。過去は日本だけがデフレに陥ったが、今回は世界同時不況に伴い、世界的に物価が上がりにくい状況にある。これが長く続くと、世界的にどのような影響があるか、また日本にどのような影響を及ぼすか。

桜井: 一般的に、デフレの判断は消費者物価指数が2年間下降するということだと思うが、今回デフレータを見ると、かなりの大きさで落ち込んでいる。これをもってすぐにデフレ宣言というのは、専門家ではないので分からないが、二番底を回避する努力はしっかりとしなくてはならない。その意味で、二番底およびデフレの回避に対する適切な処置が必要になるだろう。

Q: 今朝の閣議で政府は、2009年度の2次補正と来年度予算をあわせて15ヶ月で予算を組む方針を掲げた。「環境」「雇用」について重点的に予算を配分する方針だが、財政健全化が必要な中で、具体的にどのような事業に(予算配分が)求められているか。同時に、補正予算の適切な規模をどのようにご覧になっているか。

桜井: まず分野について、狙いである4K、(景気刺激除き)3Kという環境・雇用・子育ては、以前から言われている成長分野である。景気対策として、成長分野に(資金を)投入することは重要である。もう1つは、いま申し上げてもなかなか実現し難いが、財政健全化、財政規律というレール、(たとえ)今回(歳出が)オーバーしたとしても、またすぐに戻すという財政規律のレールの下に(資金投入を)行うことが重要である。財政健全化の枠のなかで、成長戦略と重なる政策に(補正資金を)投入していく必要がある。

全体の規模感については、いまはまだ財政再建、財政健全化のシナリオができていないが、それが無いからと言って野放図にという訳にもいかない。(国家)戦略室を軸に財務省等も含めて、財政健全化を視野に入れた適切な枠組み(作り)をしていただきたい。

Q: 第2次補正予算が必要とのことだが、その規模を巡って与党内でも議論がある。補正予算を組むにあたって、どのような点を留意すべきか。

桜井: 先述の通りであるが、いわゆる3Kは成長分野であるため評価できる。(重要な点の)一つは、成長戦略に結びつくもの。もう一つは、規模感として、大変な状況にある財政健全化を視野に、財政規律をいかに建て直していくかというシナリオの中で規模を決めていくことである。財政規律のシナリオは、今は無いが、前政権からの課題でもあり、無いことを言い訳にしてはならない。財政規律を描きながら補正予算を組む必要がある。オーバーした場合は、どのように財政規律のシナリオのラインに戻るような、次年度、次々年度に削減予算を組んでいかねばならない。

小島: 15ヶ月予算を検討しているのだから、その次の年度の予算を持ってくるという考え方もあるだろう。もう一つ問題を言えば、現政権が今の景気状況をどう判断しているのかが明確でないということもある。デフレという言葉だけが先行しても意味がない。例えば、アジア諸国は急成長を遂げ、それによって日本からの輸出も伸びている。これが突然腰折れすることはないのか、といったことも見極める必要があり、そのようなことも含めて議論していただきたい。

Q: 行政刷新会議で進めている事業仕分けについて、印象、感想を伺いたい。また、個別事項として、長期戦略に関わるスーパー・コンピュータの予算が削減される一方、有料児童劇巡回事業(の予算)が全額認められるなど、ちぐはぐな面があると思うが、いかがお考えか。

桜井: 個別(事業)のことを言い出すときりがなくなってしまう。なぜなら、大本にあるべき政権の「(新施策と従来施策)に対する優先順位」と「財政の規模」を基に、どのように整理していくかという「整理方針」がないからであろう。事業仕分けは、事業の無駄を排除するという狙いで行われており、横に並べてウエイト付けをされている訳ではない。(対象になった)事業について、目的や手段、その手段の必要性、金額の適切性などを深堀りしていく。その中で、その事業の狙いや必要性の問題も出てくる。このように深堀りしていくことは、非常に意義があり、(私は事業仕分けを)評価している。

(事業仕分けによって)出てきたものが、その事業の存廃、是非の問題として政策自体に関わってくる場合は、政策自体の必要性について議論しなければならない。また、制度自体の問題が出てくるなど、重要な課題が出てくる。この(ような)施策や制度の問題は、単に費用を削減するということだけではなく、政治主導で見直していかねばならない。最後に、仕分けして出てきた現時点で160事業程度、(金額で)9,700億~9,800億円は、あくまでも事業仕分けを行った結果出てきた案であり、実際に予算にどのくらい組み込むかということになると、政策も絡み、ウエイト付けをして、これこそ政治主導でしっかりとやらなければいけない。事業仕分けを行ったからこそ、こういう無駄遣い、制度の悪さ、そして政策の優先順位の無さにさかのぼっていくのであるから、これをぜひ大事にしていただきたい。

Q: 租税特別措置について、これから税調で議論が始まる。研究開発減税や情報基盤強化税制など、産業界として残してほしいものがあると思うが、今後の租税特別措置の見直しについて、所見を伺いたい。

小島: 経済同友会としては、基本的には租特は精査して縮小すべきで、むしろ法人税率の引き下げを優先すべきという議論をしている。個別項目については、特に議論はしていない。

桜井: 個々の項目を徹底的に洗っていただきたい。小島専務理事も述べた通り、これは残すべきという議論はしていない。

小島: 先ほどのスーパー・コンピュータの話も同様だが、科学技術分野ということで優遇されている部分もあるのではないか。そうした分野も含め、どのような無駄があるのかをきちんと精査した方が良いと思っている。

桜井: 科学技術分野は(今回の事業仕分けで)厳しい判断をされている。事業仕分けは、費用の適切性、無駄か無駄でないか、という(企業で考えると)経理主導で行われるのと同じである。足下での使い方に目を奪われ、長期・中期の展望に基づく政策展開の視点が欠落してしまう。政策の明確化と重要性(ウエイト付け)がないと、足下の費用面だけで進むことになる。予算に反映させる際に、政策の重要性をもしっかりと見極めていかなければならない。

(文責:経済同友会事務局)

以上

PAGETOPへ