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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2008年09月17日(水)13:30~
出席者 桜井 正光 代表幹事
小島 邦夫 副代表幹事・専務理事
田谷 禎三 経済情勢・政策委員会 副委員長

Q: 景気定点観測アンケート調査結果につき、(1)2009年度の物価の見通し、(2)「日本経済の回復はアメリカ経済の回復をきっかけに持ち直す」とあるが、アメリカ経済の回復のきっかけは何か、(3)望ましい金融政策のあり方、の3点について伺いたい。

田谷: (1)ここ1-2か月の世界経済、日本経済でもっとも顕著な特徴は、アメリカ経済の景気回復が先に延びており、それを反映して欧州の景況感が急低下しているということと、先進国の景気減速を反映して新興国の景況感がかなり下がってきていることが一点目、二点目は1次産品の価格が急低下していること、三点目が金融市場の混乱がある種のピークを迎えていることである。二点目の1次産品価格の急低下が、世界各国の消費者物価の前年比変化率をこれから下げていくと思う。一般的にもそう考えられているし、今年、近々前年比の数字はピークアウトして、変化率はなだらかに下がっていくだろう。

(2)(アメリカ経済について)昨年までは、住宅投資の減速が(停滞の)主たる理由だったが、ここへきてはっきりしてきているのは消費の減退である。これに対しては、消費マインドを改善しなくてはならないだろうし、実質所得の伸びが回復しなくてはならない。一般的に考えて、今回のアンケートから、来年後半から起こってくるだろうということで、それまでには金融市場の安定化も起こってくるだろうということが前提だろうと思う。

(3)金融政策については、国内外とも、マーケットでは利下げが言われ始めているが、まだその可能性はかなり小さいと思う。現状、日本、アメリカ、欧州とも、中央銀行では、流動性供給で対応できるだろうという姿勢を取っていると思う。その結果を見て判断するのだろう。

Q: 金融市場はかなり不安定な状況が続いているが、日本の今後の景気をお天気で表すとどのようになるか、その理由は何か。

桜井: お天気で表すと「曇り」になり、「雨」が降るのではないかということが視界に入ってきている。今回の「景気定点観測アンケート調査」でも、2008年度および2009年の半ばくらいまでは「曇り」だろうという結果が出ている。リーマン・ブラザーズの一件や今後の金融不安がどこまで発展するか次第では「雨」の様相にも変わるというのがいまの時点での天気予報だと思う。

Q: 「雨」が視界に入っていると考える理由は。

桜井: いまの日本のケースで言えば、政府や民間の指標で「踊り場的」、「停滞気味」と発表されているが、世界経済が金融不安をひとつの大きな問題として捉えているなかで、今後これがどう底を打ち、脱出することができるのか次第で、「雨」かどうかが分かると思う。油断してはいけないという思いで「雨」と述べた。

Q: 日本の経済に停滞感があり、さらにリーマン・ブラザーズ破たんのショックで厳しい状況になるなかで、いま政治は政局に終始し、総合経済対策の実現もいつになるのかという状況である。総合経済対策の補正予算を通したうえで(臨時)国会解散をすべきかとお考えか。いまの時点で、政治に対して言いたいことは。

桜井: 前回の会見でも、いま政治の空白を長引かせてはいけないと申し上げた。日本のいまの経済の停滞状況を考えれば、総合経済対策を早く稼動させる必要もあり、補正予算の問題もあり、2009年度の予算編成も非常に重要である。速やかにこれらの事項を審議し、稼動させることが大事である。そのために、総裁選、および衆議院解散総選挙もできるだけ早い時期に実施し、いま申し上げた課題に取り組むことが必要である。解散総選挙の時期について、(これらの課題に)取り組む前か後か、いずれが適切かについては、私の判断事項ではないが、リーマン・ブラザーズの問題が起こったからといって、大きな流れが変わるわけではないと見ている。リーマン・ブラザーズの問題は、当然のことながら世界の金融不安を解消する方向には決して向かわないし、むしろそれを助長することにもなりかねないと思う。その繋がり(世界の金融不安や日本の経済にどのようなダメージが出てくるか)については、今の段階では、はっきりと分かるものではない。

サブプライムローン問題を発信源として、未だに(アメリカで)住宅価格等が下がって、住宅市場の活性化は全く起きていない、これがアメリカ経済にとって大変大きな痛手になり、金融不安(が広がり)、消費の活力が減退し、実体経済に影響を及ぼしている。この流れのなかの悪い方向の一環として、(証券会社の経営難という問題が)出ているという位置付けだと思う。急展開して大きく揺れないように、政府や金融当局が、いまそれなりの手段を講じている最中である。そのなかで、(日本で)株安、円高、あるいは日本の金融機関への直接的なダメージが日本の実体経済に影響することについて、いま急に慌ててなんらかのアクションをとることが先決であるとは思わない。それよりもむしろ、速やかに(自民党)総裁を決め、民意を問い、政治の空白をいかに短縮し、政治の意思決定体制を整えることが大事ではないかと思う。

Q: 一連の金融不安について、米国政府の対応は、ベアスターンズへは支援、リーマン・ブラザーズは破たん、AIGへは支援、となっている。こうした対処方法について、一貫性があると見るか、あるいは、泥縄式で(支援の)基準がはっきりしないと見るか、米国の一連の対処をどのようにご覧になっているか。

桜井: ダブル・スタンダードなどという話も出ているようだが、政策当局がそれなりの考え方を持ち、公的資金の投入・注入をしているケースとそうではないケースを決めていると、私は思っている。その考え方(の下)で、あるときには投入し、あるときには投入しないケースが発生することが、軸の無いバラバラとした金融政策ということではないと思う。

米国政府が真剣に取り組んでいるのは、絶対に「米国発の世界金融不安」にしてはならないという視点に立ち、一つひとつ判断をしていると思う。そのような判断の下に、世界の中央銀行や政府筋が積極的に、協力できるところは協力し、(金融不安の)世界への波及を食い止めるために頑張っていただきたいと思う。

Q: 来月から排出量取引の試行が実施されるが、これについてお考えを伺いたい。

桜井: 「何のために排出量取引の試行をするか」について、日本政府も同じ考えだと思うが、私の考えを述べる。ポスト京都議定書の方向性は、長期・中期目標をきちんと決めて取り組もう、そこでは大事な(大気中の温室効果ガス)濃度の増加を減少させるというピークアウトをしっかり織り込んで決めていこう、ということである。途上国、なかでも新興国、いわゆる主要排出国を共同参加させるか、どのような責任の下に参加させるかというところに、まだ問題は残っているものの、方向性としてはそのようになる。当然意味のある高い目標を達成しなければいけない、世界がそれにチャレンジしなければいけない。そのためには、制度的な仕掛けが必要で、そのひとつに排出量取引がある。排出量取引(について)も、世界の全体の枠組みを作る方向に動いていくだろう。そうなると、日本も早く試行して、制度やルール、(それらにどのような)問題・課題(があるのか)、そしてそれをどのように解決していくかも経験していかなければいけない。実効的な取引制度づくりの試行にしては、参加は自由、自主計画で(削減)枠を決めればよい、としたときに、どれだけ参加企業が出てくるのか、どれだけ参加企業が真剣に(自主努力で)足りない部分を買おうとするのか、あるいは(参加企業が)積極的に(温暖化効果ガスの排出量削減を)やって売ろうとするのか、このような売買の当事者間のニーズは、本当に出てくるのか、この辺りを疑問に思わざるを得ない。

ただし、今回の試行は京都議定書の枠組みの中で行なうので、義務的な枠組みについては、日本に掛かっている(削減目標1990年度比)6%のブレイク・ダウンで(行うため)、自主計画と言っても、義務的に近い意味合いで試行ができるのではないかとも思う。(京都議定書の第一約束期間である)2012年まで、あと4年の間に、日本の6%という京都議定書の枠組みのなかで、本当に実効(性)のある試行も、やり方によっては可能だと思う。その方向に大いに向けていってほしい。ポスト京都議定書になったときには、自主計画や自主参加などという話ではなくなる。

Q: 今週に入ってからの(米国の金融機関の破たんなどの)経済の動きについて、桜井代表幹事にとっては想定内のことか、それとも想定以上のことだったのか。さらにこれらの事態を受けて日本の政治日程にどのような影響があるとお考えか。

桜井: 専門家であれば想定内と答えるだろうが、私は、ここまで来たのか、驚いた。しかし、だからと言って、政治日程を大きく変えてまでして、今すぐ取り組むことではないと考えている。もちろん無視して良いと述べているわけではない。金融不安、あるいは世界の実体経済に対して日本が取れる手段は限られている。日本に大きな影響が及ばないようにするために何をすべきかという手段について言えば、金融関係でどれだけの取引があり、どれだけの損失が生じるのかを、早期に明らかにし、その対応を準備をしておくことが大事である。それとは別に、現在の政治日程の中で、日本の将来に対する確固たるビジョンと重点政策、そしてその政策の優先順位について、総裁選およびその後に想定される総選挙でじっくりと議論し、国民の評価を仰ぐことが重要である。(金融不安対策よりも政治日程を)粛々と実直に進め、政治的意思決定体制の確立を図っていくことの方が良いと思う。

小島: リーマン・ブラザーズの破たんを想定していたわけではないが、その後の経過や、さらに本日のAIGへの対応などを含めて見てみると、米国政府は、世界の金融市場への影響の大きさというものをきちんと考えたのだと思う。その限りにおいて言えば、リーマン・ブラザーズの主な顧客が機関投資家に限られていたなど、影響はそれほど大きくない、という判断があったと思う。その意味でも、この件(リーマン・ブラザーズの経営破たんと金融市場への影響)についてはもう少し冷静に見ておいた方が良いというのが私の考えだ。米国の金融不安は以前から続いており、その中で日本の金融は、幸か不幸かリーマン・ブラザーズのような事業の展開の仕方を採ってこなかったこともあり、(日本での)影響は少ない。さらに、AIGへのサポートに見られるように、米国政府は世界に迷惑を掛けないというスタンスを示している。そうした点も踏まえて、この流れを冷静に見て良いのではないかとますます感じる。従って、代表幹事と同様、政治日程に影響するような話ではないと思っている。

田谷: 今週に入っての動きを見ると、米国発の金融問題は、いままで考えていた以上に底の深い問題であると、かなりの人が考え始めていると思う。例えば、今年4月にIMFが発行した『Financial Stability Report』は、昨年夏から2年間の(サブプライムローン関連の損失)推計総額が1兆ドルになるとの推計で、その内の半分、つまり5,000億ドルは銀行の負担になるというレポートだった。ところが、世界の主要銀行70数行の実現損と評価損を含めた公表数字は、すでに5,000億ドルを越えている。そういう段階で今回のような問題が噴出してきていることは、この問題を改めて考え直す必要があるのではないかという雰囲気を作り出していると思う。底の知れない不透明感が漂っているという状況である。とはいえ、これが日本の政治日程に影響するかと言えば、小島専務理事も言われた通り、幸か不幸か日本の金融機関はあまりこの問題に深く関わってきておらず、極めて限定的なだけに、あまり影響はないと見ている。

Q: 米国の金融当局は、米国発の金融恐慌を防ぐため適切に対応してきているとお考えか。

桜井: 世界の金融システム不安を防止するという意味では(例えダブル・スタンダードであろうと)、(米国の金融当局は)適切な判断をしていると思う。ケースごとに政策の打ち出し方をきちんと決めている。しかし、もっと早期に、もっと積極的に今後の不安材料や不安商品、欠損となっているところをリアルにして、これ以上の事態が発生することがないよう、防止策が講じられてもよいと思う。

Q: 政治献金について伺いたい。近く行われる総選挙で政権を争う自民党と民主党に対する企業団体の政治献金は、(自民党には)30億円、かたや(民主党には)30分の1以下という状況である。(それぞれの)政策を評価すると政党間の政権担当能力はそれほど違うものなのか。また二大政党制を育てていくうえで、政治献金のあり方を変えていく必要はあるか。

桜井: 今度の衆院選で、(政権)担当能力の有無、あるいは(政策の)違いの有無などがクリアになってくるであろうし、クリアにすべきである。政治献金について、経済同友会としていまの情勢下で改めて検討したわけではないが、政治献金は党を主体にしたものになる可能性があるし、また献金(そのものの)内容が変化していくこともあり得る。政策を応援するということは、献金だけではなく、選挙や常々の活動などでもできると思う。企業としての献金というより、個人としての献金を主体にすべきであるという経済同友会のスタンスに変わりはない。

Q: 企業献金が自民党に圧倒的に厚く、民主党とは比べるまでもないという実態から、一般国民は、「経済界が民主党には政権担当能力がないと判断している」と見るのではないか。国民の信を問うべき選挙に影響はあるか。

桜井: 国民がそこまで見ているかどうかは疑問である。献金が多い方に投票しようという人も、少ない方に、という人もいるかもしれないが。大事なのは、政策を評価して投票するということであって、献金が多い、少ないではない。

Q: 自民党総裁選について、各地域の自民党(県連)の動きや国会議員の調査等によって麻生候補が有力と報じられているが、麻生候補の政策を含め、どのようにお考えか。

桜井: まず、マスコミ各社の調査もあったが、政策論議を聞く前に、(誰が)「有力」、「過半数(獲得)」などと言うのは急ぎ過ぎである。

次の総選挙は、政権をどちらに委ねるかを決める重要な選挙であるので、各総裁候補には、この国をどういう形にしたいかというビジョンを語り、それに重要な政策事項はなにか、優先順位はどうか、Q.C.D.(Quality, Cost, Delivery)をDelivery(納期)まですべて明示すべきとまでは言わないが、重要政策とその財源くらいまでは、きちんと述べ、お互いに議論し合っていただきたい。そうすれば、総裁になったひとの政策を軸に、党全体としてのマニフェストを作り上げて、衆院選で国民に問うことができる。「こういう国にしたい」、「(重要)政策は何」、「財源はどうする」、「スケジュールはどうだ」ということを国民に語り、互いに議論することが、非常に大事だと思う。民主党も同様に明示できれば、国民にその違いを問えるし、国民もその次期選挙の重要性を理解して投票する。そのような意味で、このタイミングでの総裁選は非常に大事だと思う。

このような視点で総裁選を見ると、(各候補の)ビジョンがどうもわからない。(挙げられている)重点施策がビジョンに資する施策なのかもよくわからない。質問にあった(麻生)候補の政策については、もっともっと(各政策について)議論をすれば、判断しやすい政策になると思う。例えば、(1)経済活性化、景気の刺激、(2)財政(の建て直し)、(3)(経済)成長、という三段階について、どういう施策がそれぞれに展開されるのか、どういう状態になったら次の段階に進むのか、などについて深く議論をすれば、もっと生きた、評価できるメッセージになると思う。このようなことを他の4人の候補者と議論しなくてはならない。また、最初の経済活性化の段階でも、活性化のために、定額減税や研究開発促進減税、住宅投資促進減税、有価証券への総合減税などの減税項目が並んでいるが、現在のような財政の苦しいときに、その減税分の財源をどうするのか、この議論が、埋蔵金の話になって終わってしまう。もっと具体的に、埋蔵金であればどこからどのくらい出せるのか、という話を議論しなくては、民主党・小沢代表と同じところで止まってしまう。これは一例に過ぎないが・・・。

本日発表した「景気定点観測アンケート調査」に、「具体的にマニフェストに記載すべき重要な政策課題」という問いがあったが、結果は(1)税制改革、(2)年金制度改革であった。日本の内需に活力がないことにはいろいろな要因があるが、軸は、将来の生活に対する不透明感、社会保障に対する不安感が圧倒的に大きいだろう。その社会保障制度をどうするのか、年金では基礎年金の全額税方式化という課題があり、(さらに喫緊の問題である)医療についてはいまの保険制度ではどうしようもなくなり、これも税の問題になりかねない。このような重要な課題について、長持ちする制度設計をこう考える、その財源をどうする、(財源が増)税であればいつからか、というような議論をもっと深めることを、国民は期待していると思う。単に、「税制抜本改革で・・・」では分からない。ビジョン、重要政策のウェイト付け、(具体的な政策の)中身など、国民の知りたいことに迫っていただきたい。

ただし、自民党総裁選は、告示から投開票まで12日間しかないので、技術的に非常に難しい。国民に、総裁選で議論してほしい重点政策を募り、2-3テーマを絞って集中して議論を展開するなど、工夫の仕方はいろいろあったと思う。このまま総裁が決まったとして、総選挙で、自民党として責任を持って(重要政策を)政権公約(マニフェスト)にブレイク・ダウンできるのかについては、一抹の不安を覚える。

(文責:経済同友会事務局)

以上


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