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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2008年06月17日(火)13:30~
出席者 桜井 正光 代表幹事
小島 邦夫 副代表幹事・専務理事

Q: 地球温暖化問題について、「福田ビジョン」および政府の有識者懇談会の報告書が公表された。これらについて、代表幹事の総括的な評価と見解を伺いたい。

桜井: まず「福田ビジョン」は、時期的にも洞爺湖サミット前という重要な時期であり、内容的にも一歩踏み込んだ理念、温暖化防止に対する日本の取り組み方の理念をしっかりと書き込んだということで、非常に評価できる。「福田ビジョン」を原点にして低炭素社会に向けた大きな改革を促進させる、という意味でも大変重要だと思う。

具体的には、理念について、ひとつは、現在志向ではなく、50年先、100年先という未来志向に基づこうと言っている。未来志向の下に、私たちの次世代、次々世代に問題を残さないようにするために、いま私たちがいったい何をすべきかを考えること、アクションをとることが大事だと指摘している。

もう一つは、現在の日本の温暖化に対する議論の仕方、方策の求め方に問題がある、あまりにも足下志向すぎるのではないかということだ。例に挙げているのは、排出量取引の問題である。ここで私見を述べるが、(私は)排出量取引が地球温暖化防止のための一番大事なものではないと以前から言い続けている。(ビジョンでは)(排出量取引の)問題点を探し出すなどということに労を尽くすべきではない。排出量取引を、今後の温暖化防止のために役立てるために新しい制度を議論し、提案しても良い。いわゆる「脱足下」である。この未来志向と、足下に集中した議論をやめよう、という二点が非常に重要である。

そのうえで、長期目標について、(2050年までに)60~80%(温室効果ガスの排出量を削減すべき)と言っている。この(数値の)過多の問題はあるが、少なくとも全世界で(2050年までに)半減させることに対して、主要(先進)国が責任を持って、それ以上のもの(削減目標)を出すということだ。途上国や新興国の一部が、これからの成長を担保しながら(排出削減をして)いくとなると、やはり50%(の削減)はきつい。また、正確な数字は忘れたが、現在は(全排出量のうち)先進国が60%、途上国が40%だが、2050年にはこれが逆転する。つまり途上国が主要排出国になっているということだ。これを考えても、先進国は途上国ができない部分をかなりカバーしなければいけないため、50%以上ということで、きっちりとした思想を持って言及したことは非常に良いと思う。

その他、かなり踏み込んだ点もあるが、問題なのは中期目標である。中期目標については、総理も責任を持った省庁も理解していることだが、ピークアウトと中期の削減目標は、(地球の)温度上昇をどの程度に押さえるかという重要な意味を持つ。(「福田ビジョン」は)明確な(中期)削減目標をいま設定しようとするものではなかった。2009年に明確にしようということだが、ポスト京都議定書、COP15まで、交渉期間は正味あと1年という状況にある。このことから考えると、洞爺湖サミットで主要国は、「(中期の)削減目標を決定する」ことに合意すべきである。そのためには、日本の(中期目標設定の)宣言が必要であっただろう。ここが少々残念であるが、政府も十分理解している点だと思うので、できるだけ早く明確にすることを期待したい。

有識者懇談会の報告書については、あまり精査していないが、これには要望がある。主題は「低炭素社会の実現」である。目標が設定されると次にすぐ来るのが、一体どうやって削減するのか、すなわち低炭素社会の実現である。有識者懇談会は、決して一般論ではなく、長期目標、中期目標を達成するための低炭素社会の実現(をしっかりと議論して欲しい)。いろいろと具体策が出てくるとすると、その具体策には、削減にどれだけ効果があるのかとしっかりと結びつけた議論とそのアウトプットを期待したい。そうでないと、アイデアを出していくだけになってしまう。多くのアイデアに対して、平均的に資源・経費・人材を投入するわけにはいかない、しっかりと重点化ができるような低炭素社会実現のための方策を期待したい。

Q: 政府は、「骨太の方針」に環境税を盛り込むことを検討しているようだ。まだその(具体的な)中身はわからないが、環境税について所見を伺いたい。

桜井: 「福田ビジョン」で環境税についても触れているが、これも歓迎したい。単に環境税の導入を歓迎するという意味ではない。道路財源を一般財源化し、そこから環境税に割り振るという一般財源の使途としての話ではなく、炭酸ガス(温室効果ガス)発生を抑止するために環境税を導入しようということである。これは非常に大事な点である。脱化石燃料を促進させる、あるいは国民の購買動向をエネルギー効率の良い商品・サービスに変える、また、省エネ・省資源型の企業にインセンティブを与えることに作用するような環境税の設定を言っていると思う。地球温暖化防止のために大変に建設的な税のあり方で(あるので)導入したいということだと思う。石油(ガソリン)税を環境税に振り向けようという単純な発想ではない。

Q: 道路特定財源の使途ではなく一般財源化して環境目的に使う、あるいは、現在ある税(体系)を組み替える形ではいけない、ということか。

桜井: 組み替えてもよい。現行のガソリン税の名前を変えて環境税にすればよいということではない、という意味だ。その理由は、第一に、温暖化防止には、ガソリンだけでなく石炭やガスなども関わっているため、ガソリン以外も含めた広い意味での炭素税、環境税にしなくてはならない。第二に、温室効果ガス、あるいは炭酸ガスの単位あたりの発生量に合わせた税率にすることが大事である。第三に、炭素税、環境税がかかったことで、購買行動が変わってくるような税率にすべきである。いくらという(具体的な)税率についてはまだ考えがないが、単に税があるだけではなく、抑止効果、あるいはインセンティブ効果がなければいけないので、税率はそこから見出さなくてはならない。これらを基本にしたうえで組み替えていくのであれば問題ない。

小島: 簡単な話ではないだろうが。

桜井: 炭素税(環境税)と言ったからには、やらなくてはならない。

Q: 「福田ビジョン」の中期目標のなかで、14%削減で52兆円(必要)という試算が出ている。いずれにせよ削減には相当のコストがかかり、鉄や電力の価格転嫁も進むと思う。これについては産業界でも反対があるが、代表幹事はこのコストについていかがお考えか

桜井: 地球温暖化防止のためのコスト(経費)は当然支払うべきであるし、必要な投資は行っていかなければならない。そうした温暖化防止のための投資やコストを回収できるのか、リターンが得られるのか、というのが、企業経営から見た判断である。つまり、(投資やコストを)吸収できる価格で、お客様に商品・サービスを購入していただけるのかということである。購入していただければ投資やコストは回収できる。経営論的には、効率の良い投資や経費のかけ方をし、リーズナブルな価格でお客様に提供できるように相当の努力をしなくてはならない。問題は、短期に回収できる業種と、(回収が)長期にわたる業種との差があるという点だ。地球環境保全、温暖化防止は、長いスパンで取り組む活動である。従って、そのための投資や経費・コストも長期間で回収することが可能になるような制度や環境作りが必要である。そのことを社会全体、お客様も企業も投資家も、さらいは政治家も認識して欲しい。その意味でも「低炭素社会作り」をより具体的に掘り下げていくことが、参加する企業にとっても、お客様にとっても、投資家にとっても、非常に重要になってくる。

Q: 「福田ビジョン」の注目点は、7月に行われる洞爺湖サミットで、ポスト京都議定書に向けた議論を日本がリードしていけるのかどうかにかかっていると思う。(「福田ビジョン」は、)ポスト京都に向けた議論を日本がリードするための材料足り得るかについてはいかがお考えか。

桜井: まず、先ほど申し上げた理念については、十分に世界、少なくとも先進国を理解させるだけの力は持っている。具体的な施策事項についても、長期(削減)目標の60~80%はヨーロッパに並んだ。米国はじめ他の先進国はまだそこまでの目標を出していないので、説得力がある。さらに、先ほども申し上げたが、リーダーシップをとる、まとめていく力としては、中期目標が非常に重要だ。できるだけ早期にこの設定を宣言することが必要な要素になってきている。排出権(取引)や環境税の問題等は手段の話で、仮に(これらに)日本が参加しなくても世界で進んでいくだろうから、(日本が)まとめる必要はない。一番大事なことは、ビジョンや考え方、あるいは中・長期目標、ピークアウト(といった重要項目)について、明確なリーダーシップをとるということだ。中期目標は、ポスト京都議定書の枠組みの中心課題になってくるところで、これに対する先進国の態度が、途上国、正確には新興国かつ主要排出国をいかに巻き込むかについての大事な問題になってくる。先進国の責任ある目標設定が非常に重要である。

経済同友会も私自身も、以前から目標(設定)の話ばかりしているが、これは、日本(国内)の議論があまりにも目標(設定)なしで進んでいるからである。一番大事なところを外してはならない。次の段階はいかに実現するかで、当会の(地球環境問題)委員会でも、低炭素社会実現のためのプランニングを、できるだけ広い範囲で議論し、そこに企業がどのような役割を持って入るかについて、議論を深めたい。

(文責:経済同友会事務局)

以上


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