代表幹事の発言

2008年度(平成20年度)通常総会前記者会見発言要旨

桜井 正光 代表幹事
小島 邦夫 副代表幹事・専務理事
岩沙 弘道 副代表幹事
細谷 英二 副代表幹事
小島 順彦 副代表幹事
有富 慶二 副代表幹事
金丸 恭文 副代表幹事
林野 宏 副代表幹事
長谷川 閑史 副代表幹事
芦田 昭充 副代表幹事
小枝 至 副代表幹事
小林 いずみ 副代表幹事
數土 文夫 副代表幹事
萩原 敏孝 副代表幹事
池田 弘一 副代表幹事
岩田 彰一郎 副代表幹事
勝俣 宣夫 副代表幹事
北山 禎介 副代表幹事

岩沙弘道、細谷英二、小島順彦各副代表幹事より退任のあいさつ、次いで、池田弘一、岩田彰一郎、勝俣宣夫、北山禎介各副代表幹事から新任のあいさつがあり、桜井正光代表幹事より所見を述べた。

その後、記者からの質問に答える形で、(1)代表幹事2年目の抱負、(2)新設委員会への思い、(3)コンプライアンス、(4)経済同友会の方針、(5)福田内閣の評価、(6)ガソリン税、(7)英TCIによるJパワー株買い増し中止勧告への拒否、について発言があった。

退任あいさつ

岩沙: 2002年に副代表幹事に就任させていただいてから6年経ったが、本当に時の経つのは早いものだと思う。この間、みなさま方にはいろいろな面でご指導いただきありがとうございました。これからも一幹事として引き続き同友会活動にも参加して参りたいので、よろしくお願いします。正副代表幹事会や各委員会、委員会は6つ担当させていただいたが、いずれも私自身の経営者としての成長と形成に大変大きな影響があり、勉強にもなったし役立った。特に委員会活動のなかでは、郵政公社民営化委員会を担当し、小泉政権の「官から民へ」という大きな国家的な構造改革、行財政改革に対し、同友会として、「民営化はどうあるべきか」について、非常に建設的にタイムリーに提言できた。そして、「行動する同友会」としてシンポジウムなどを通じ、みなさまも含め政・財界や行政など多方面に行動・発信でき、みなさまご承知の通りの郵政民営化が実現できたことが、一番印象に残っている。引き続き、いろいろな財界活動などでお世話になると思うので、よろしくお願いします。

細谷: あっという間の6年だった気がする。ふたつコメントする。ひとつは若干胸の張れることだと思う。これまで、ひとつの会社のなかで社長から会長、会長から相談役など役職が変わる方はおられたが、私は在任中に所属企業が変わるということがあり、同友会の個人力を体現させていただいた。もうひとつは思い残していることだ。2002年度行財政委員長として、『国民の信頼の回復と若者たちの夢を支えるシステム改革を』という提言をまとめ、当時の渡辺専務理事から「同友会のバイブルだ」と言っていただいた。6年経ったいまなおこの提言が新鮮であるということは、構造改革が進んでいないということであり、思い残すことである。引き続き、経済情勢・政策委員会の委員長は務めさせていただくので、今後ともよろしくお願いします。

小島: 5年間副代表幹事を務め、その間、日本中国交流委員会、日本のイノベーション戦略委員会、そしてこの1年は国際問題委員会の委員長を担当させていただいた。「個人として入る同友会」という意味で、例えば年代ではかなり高齢の方から若い方まで、そして大企業からベンチャー企業まで、大変幅広くかつ率直に意見をぶつけ合って議論ができる、大変素晴らしい経済団体だという印象を持っている。特に委員長を務めていた分野で感じていることは、国際社会における日本のプレゼンスが著しく下がっているということである。これについては、経済同友会としてこれから種々提言を出していただき、日本の経済、社会を支えていくという大変な役割をぜひ担っていただきたい。私も一幹事としてできる限り協力していきたい。本当に良い5年間だった。ありがとうございました。

新任あいさつ

池田: 同友会では、2007年度は地域経済活性化委員会、その前の2年間は地方行財政改革委員会と、地域・地方に関わることを3年間担当し、随分勉強させていただいた。仕事柄日本国内の各地でビールを販売してきたし、私自身も地方の出身なので、地域には大変関心があった。この3年間、地域を担当させていただき、改めて東京と地方との問題をいろいろな面で理解することができた。同友会活動を通じて、いろいろな方から多様なお考えを伺ったり、各地の方と交流することにより、私自身も非常に勉強になったし、仕事上も役立っている。加えて、地域のことに携わってきて、みなさま方マスコミの力が非常に強いということをつくづく感じている。ぜひみなさま方と良い関係を作り、日本の将来にわたるこれからのあるべき姿について、いろいろなコミュニケーションを取っていければと思う。よろしくお願いします。

岩田: 2003年より新規事業創生委員会、同友会起業フォーラムを通じて、ベンチャーの育成に携わった。また、2006年より2年間、ITによる社会変革委員会委員長を務め、ユビキタスネットワーク社会の構築による、人に優しい、世界のロール・モデルになるような国づくりを提言し、近々発表する予定である。同友会活動を通じて感じていることは、本当に志の高い素晴らしい経営者の方々と、個人個人の立場で国の将来について議論をし、この国が将来どのような方向にいくのかを熱い思いで語り合えたことは、私自身が多く学ばせていただいたし、刺激になった。私の問題意識は、世界はいま大きな転換期にきており、日本の将来に向けて明確なビジョンを打ち出し、実行するときだと認識している。今回は、突然の副代表幹事の指名に驚いたが、桜井代表幹事の下、素晴らしい未来社会をつくるために、同友のみなさんと共に努力をし、少しでも社会が良くなることにお役に立ちたいと思っている。よろしくお願いします。

勝俣: 同友会の活動では、2004年に郵政公社民営化委員会の副委員長、2005-2006年に中国委員会委員長、2007年には経済外交委員会委員長を務めさせていただいた。この間、経営者個人の資格、すなわち各企業あるいは産業の代表ではない方の集まりということで、非常に自由闊達な議論を行い、私自身大変勉強になった。現在日本は、少子高齢化による人口減少、あるいはグローバル化の進展において、大きな経済・社会の構造変化に突き当たっている。そのなかで、変化への対応だけではなく、変化の先取り、先を見越した勉強をしながら、日本あるいは世界の未来が少しでも明るくなるような議論を行い、お役に立って行きたいと思っている。

北山: 銀行員生活は40年近く経つが、同友会には2年前に入会させていただき、新入生の部類に入る。同友会ではいろいろ勉強させていただいている。この1年間は、政府でも大きなテーマになっているサービス産業の生産性向上委員会の委員長を仰せつかって活動してきたが、自分自身にとっても大変勉強になる。不確実性、不透明性、激動の時代、などという言葉は毎年繰り返し言われ続けているが、いま日本が置かれている立場は、本当にこれをどうしていくのかを考えないと、国際的なポジション自体が揺らぎかねない危機に差し掛かっていると思う。委員会のみならず副代表幹事として、これを打破できるような提言を出すことに力を尽くせればと思っているので、みなさまのご指導、ご鞭撻をお願いします。

代表幹事所見

桜井: 2008年度所見の大筋をお話させていただく。

いま「日本の閉塞感」と言われているが、確かに、政治のみならず企業も少々、内向きに、あるいは短期志向になってきている。日本はこれまで、企業経営者や国民が頑張って、経済を活性化させ、経済大国をつくり上げてきた。また、世界からの信頼や期待も、日本の経済力だと思う。この経済力を停滞、後退させてはならない。そのために、政治も企業もしっかりと新しいグローバル化のなかで、積極的に、外に、長期に、我々の改革を進めていかなくてはならない。

大きなテーマは3つある。ひとつは、洞爺湖サミットおよびその後のサミットでも主流になろうと思われる地球温暖化問題への日本の取り組みについてである。全地球的課題として、最初にこうあるべきだという目標を設定し、(その達成への)具体的なイノベーションを起こすことが非常に大事なことである。次に、政治の問題についてである。停滞感どころか前へ一歩も進まないという状況になっているので、ここから脱皮するためにどうすべきかを、特にこの「ねじれ」状態での新たな政策審議の仕方のルールづくりが必要である。第三に、「新・日本流経営」。政治および企業の停滞感、ここから脱皮しなければならないというときに、同友会および日本の企業は、どういう志と、どういう考え方、そしてどういう方法で、更なるグローバル化を図っていくべきかについて述べたい。内容は、昨年の就任挨拶で述べた通り「強さからのスタート」、そして欧米流、海外流の良いところを導入した「融合経営」、さらには強ければ良いというだけではなく、社会的な大きな問題に積極的に取り組み、国際社会からの信頼を得る、という経営も同時に実現するという3本柱である。詳細はお手元の全文をご一読いただきたい。

質疑応答

Q: 代表幹事就任2年目にあたり所見を発表された。(同友会として)これまで様々な提言をしてこられたが、より具体的に(提言の)実現にむけた取り組みという点から、2年目に向けた意気込みを伺いたい。

桜井: (就任から)1年が過ぎたが、政治の世界で思いもよらぬ展開があり、政治に関してかなりの時間を費やさざるを得なかった、というのが率直な感想である。2年目も、まだ政治の混沌とした状況が整理されることはなかなか難しいと思う。先ほど岩沙副代表幹事のお話にもあったが、まず政治については、構造改革をひるむことなく徹底して推進することが、日本の国にとっても経済にとっても非常に大事な課題である。今後は(構造改革促進について)もっと具体的に提言していきたいと思っている。

併せて、先ほども申し上げたが、企業経営者として、今後国際競争に対応し、勝ち抜いていける、そして(同時に海外から)信頼を得る企業づくりについては、我々自身の話でもあり、かなり具体化できると思う。この展開(の成果)を、我々自身にどんどん普及させていきたい。

また、具体的な展開を実質的で実効性あるものにするという点から考えると、我々の提言自体が実現に適う内容であることが必要である。それはひとつの思想と理念と、そして展開できる具体性を持つことが大事である。当会の委員会活動が、そのような方向に向いていくことが非常に大事だと思っているので、2年目の抱負としては、これらを実現していきたい。

Q: 委員会活動のなかで、今回、医療制度と農業に関する委員会が新設された。これら2つの委員会新設の背景と具体的な目標について伺いたい。

桜井: 医療制度は、いまも問題が取り沙汰されているが、財政的な問題や制度自体の継続性、持続性を含め、今後、年金制度に代わる大きな問題になるはずである。今までは、社会保障改革委員会でテーマの一部として取り扱ってきた。医療制度は、社会保障制度全体という視点も大事であるが、ひとつの大きなテーマということで、長持ちする継続可能な制度設計と制度の展開を意図し、切り離して独立した医療制度改革委員会を設置した。同友会では2005年に、75歳以上を対象にした新たな継続性のある(医療)制度設計を提案した。費用の分担という点では、政府が設計した(後期高齢者)医療制度とは異なったが、(通常の医療制度と)切り離し、安定した制度にしていこうという提言だった。(今回新設した医療制度改革委員会は)それを具体的にフォローしていくことになる。

農業については、さまざまな角度(からの論議)がある。ひとつは、EPAやFTAなど近隣諸国、先進諸国等との経済連携は、日本の産業の活性化に非常に大事な点であり、これを促進するうえで農業問題が出てくる。もうひとつは、地域の活性化のためには農業はエネルギー源になると考えられる。この視点からも、農業の強化、効率化、高付加価値化は非常に重要である。このような複数の目的を踏まえ、(農業改革委員会では)農業はどうあるべきかを十分に議論し、具体性のある提言をしていこうと考えている。

Q: コンプライアンスの問題について、岩田副代表幹事に伺いたい。最近、野村證券のインサイダー取引や吉野家の(輸入した米国産牛肉に)特定部位が使用された牛肉の問題など、いまだにコンプライアンスに関わる問題が発生している。このような状況のなかで、今後どういう取り組みを重点的にしていくお考えか。コンプライアンスについての基本的な考え方についても伺いたい。

岩田: まだ委員会活動が始まっていないので私の個人的な見解になる。コンプライアンスは、企業活動の基本中の基本であり、人間個人としてそれぞれが正しくどう動くか、経営者・社員を含めてコンプライアンスは守るべきものであるという認識を当たり前のように持つことから始まる。その積み重ねと日頃の問題意識の持ち方によって、コンプライアンス意識の高い健全な企業が生まれてくると思っている。

Q: 桜井代表幹事に伺いたい。現在のねじれ国会のなかで、今後政権交代や大連立などいろいろな展開が考えられるが、同友会として(活動や提言の仕方など)変わっていくべき、あるいは変わらざるを得ないとお考えか。また、一般的に「政策提言はやや尖っているが影響力は弱い」という同友会のイメージ、立ち位置があると思うが、これを変えていく必要があるとお考えか、あるいは、守っていくべきとお考えか。

桜井: まず、ねじれ国会だからといって、同友会のスタンスや提言の仕方が変わることはない。同友会の趣旨は、この国のあり方に対してズバリ骨太の提言を出し、そのフォローアップをしていくことである。国に対して、「こうあるべきだ」という政策・制度等を提言していく。このスタンスに変わりはない。同友会の政策提言は弱いというご指摘について、私達の提言は強いと反論するつもりはないし、みなさんの評価が大事であると思う。先ほども触れたが、(同友会の提言を)いかに影響力のあるものに、むしろ政治や行政に「同友会の提言をフォローしなければならない」と言わせるものにしていくために、我々は常に努力し改善していかなければいけないと思う。

Q: 桜井代表幹事の所見も踏まえ、福田内閣・福田政権の評価を改めて伺いたい。また今月30日、ガソリン税に関する税制関連法案が再可決される予定で、ガソリン・スタンドなどでの混乱が予想されるという指摘もあるが、国民生活への影響の有無も含めて所見を伺いたい。

桜井: 福田政権・福田総理への評価は、いつも申し上げている通りで特に変わることはない。日本のこれからのあり方として、トップのリーダーシップが非常に重要である。企業経営でも同じだが、トップが何をしたいかを明確に表明し、その「したい、するべきである」ということについて、議論や環境作りをしていくことがトップに求められる。その意味で、これまでのところでは、(福田総理のリーダーシップは)少々不足しているところがあったように感じる。ぎりぎり(の段階)になって、最終的に「こうあるべきだ」という案を出しても、(結局)国会で処理できないというもあった。ぜひ福田総理には、これからの日本経済の活性化やそれに向けた政策展開をより明確にし、引っ張っていってほしい。

ガソリン税の復活については、(自民、民主)両党が道路特定財源の一般財源化を協議しようとしているが、これについてはっきりとした筋道が見えない。両党ともが条件を設定し過ぎての協議なので、前提条件があまりにも多くあり過ぎて(合意の方向性が)見えない。日本の国民が困るのは、(ガソリンが1リットル当たり)25円安くなったという(ような)ことではなく、(3月末の特措法期限切れで租税が中断された)その財源を適用しようとした地方の行財政等に(今後)どう影響が出てくるのか、あるいは国の社会保障を含めたその他(の使途)に必要な財源をどう(確保)するのかという税制全体に及ぶ(問題である)。そう考えると、やはり現実的には現在のところは特定財源の復活はやむを得ないと思っている。

Q: 本日、英国のTCIが、Jパワー株買い増しへの日本政府の中止勧告を拒否するという動きがあったが、改めてJパワーを巡る問題について代表幹事のお考えを伺いたい。また、最近同友会から出されたM&Aのあり方についての提言では、防衛があってもよいと読めなくもないが、提言をまとめられた岩沙副代表幹事にも見解を伺いたい。

桜井: Jパワー問題でTCIが(政府勧告を)拒否したが、日本政府がなぜ中止勧告をしたのかがよく分からない。これは(決定の経緯や理由が)非公開の勧告であった(ためである)。これを先に、早くオープンにして(情報開示を)行わないと、このままでは、TCIは中止勧告を拒否し、日本政府は中止命令に進む。(一般には)何が起きているのかよく分からない。(私は)これが良くないと言っている。国の安心や安全保障という角度から事態の大きさを考えると、(株買い増し)中止(勧告の発令)もやむを得ないかもしれないが、(その場合でも政府の)中止勧告がどういう理由で出ているのかをしっかりとオープンにしないと、我々も分からないし、TCI以外の投資家の方々にも分からない。これがまた(海外の投資家から)「日本は閉鎖的である」という話に展開されてしまい、ここが問題である。(まずは拒否の)理由をオープンにすべきである。(理由を)オープンにしたうえで、それに納得できないという場合は、考え方の違いでありいたし方ない。(議論の中身を)オープンにしないやり方をしていくと、日本の閉塞感を助長するだけである。

岩沙: 私が企業・経済法制委員会の委員長としてまとめた提言の表題は、「健全なM&Aを促進するために」であることを、まずはご理解いただきたい。M&Aは、敵対的かどうかは問わないということははっきりと打ち出し念を押しているが、企業は100%株主の利害だけで全てが決まるのではない。同友会でも(言っている通り)企業は社会の公器であり、あらゆるステークホルダーに対して企業価値を高め、企業が担っているミッションを進化・発展させていくという、ゴーイング・コンサーンとしての本質があるのではないか。そうであるならば、経営に対して支配的な株主としてM&Aを考えるという以上は、(M&Aを仕掛ける側は)企業価値を高め、社会の公器としての企業がさらに進化・発展することが望ましい。そのような覚悟を持ってM&Aをやるべきではないか、それだけの責任があるのではないか、ということを(提言では)強調したかった。従って、金融商品取引法の入り口であるTOBの規制について、今の段階では、それが(先ほど述べた)企業のあり方とM&Aの健全な促進がマッチングするうえで一番効果があるだろうという観点で提言させていただいた。本質的なところは、会社法もしくは上場会社法かもしれないが、ルールとしてその点をどう考えるか、さらに議論を深め、法制化してルール化すべきではないかと提言させていただいた。ご指摘のような(防衛を擁護するという)観点ではないことをご理解いただきたい。

(文責: 経済同友会事務局)

以上

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