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記者会見発言要旨 桜井代表幹事発言要旨(未定稿)

日時 2008年03月18日(火)13:30~
出席者 桜井 正光 経済同友会 代表幹事
小島 邦夫 経済同友会 副代表幹事・専務理事

記者の質問に答える形で、(1)日銀総裁人事、(2)円高・ドル安、株安、(3)排出権取引・地球温暖化問題、について発言があった。

Q: 日銀総裁人事について、本日午前中、政府が、田波耕治・国際協力銀行総裁を再提示した。田波候補の、日銀総裁としての評価を伺いたい。また、民主党は財金分離を理由に財務省事務次官経験者である武藤氏を反対したが、今回も、政府は同じように反対されそうな財務省事務次官経験者を再提示した。明日で日銀総裁の任期が切れるが、このような政治状況について見解を伺いたい。

桜井: 個人的に田波氏を存じ上げない。日銀総裁は、一国の金融政策の司令塔であり、日本の経済全般に対して大変重要な役割を持つ。以前の会見でも4つの主な要件を挙げた。主体は専門知識と見識が非常に重要であり、いまのグローバル経済のなかではグローバルな感覚を持ち活動ができる方、そして心身ともにタフであること、さらには国内的にも関連の知識とネットワーク(構築の力)を兼ね備えた方、と、(これらの要件に合う人を)絞るだけでも大変で、これ以外にもさまざまな要件があると思う。このような人材は、そう多くいるものではなく、かなり少数のなかから選ぶことになるだろう。田波氏は、政府として、要件に近い方として選ばれたと思うので、信頼感はあるだろう。現在の大変不透明な経済情勢、金融不安のなかで、世界経済を回復させていく、あるいは日本の貢献を視野に入れて運営していく、ということに足る人材だと思うし、そう期待している。

ここまで大事な司令塔を選任するにあたり、(任期切れ前日という)ギリギリまで来てしまったことは、非常に残念である。すべての案件について言えるが、「ねじれ国会」という審議や議案の処理が難しい状況のなかで、このような大事な人材を選ぶということなので、しっかりと準備をして、それなりの進め方をすることが必要だっただろうと思う。野党も単に財金分離ということだけで済むものではないし、政府としてもひとつの案で済むものではなかっただろう。このような政治状況のなかで、重要案件を処理するということでは、双方に問題があったという感じが大いにする。

Q: 日銀総裁候補となった田波氏は、かつて大蔵省で事務次官を務められた。(日銀総裁は、)かつて大蔵省と日銀で「たすき掛け」の人事が、いわば天下りの延長のような形で行われたこともあった。そのような「たすき掛け」人事について、いかがお考えか。また、今回の田波氏の人事は、そのような観点からの批判もあると思うが、いかがか。

桜井: 財務省と日銀の「たすき掛け」的人事が恒常化し、それを基本とするのは全く好ましくない。「たすき掛け」とする理由も不明であり、避けるべきだ。しかし、だからと言って、一概に財務省出身者の日銀総裁への就任を拒否するのはいかがなものか。冒頭申し上げた通り、一番大事なのは(総裁としての)資質である。財務省出身者だから悪いというのは、単純すぎて明確な根拠とはならないと思う。それ(出身の問題)よりも重視すべきことがある。例えば、政治と財政、そして日銀の金融政策の分離は必要だが、ある時には協調も必要だろうし、明確な考えに基づく分離というものもあるだろう。いま、国際的な金融不安という状況にあり、今後もこのような状況が発生する可能性は否定できない。従って、こうした危機的事態に適切に対処できる総裁が望ましい。

今回の人事を巡るやりとりで気になったのは、総裁候補者の所信聴取において、なぜ過去のことばかりを聞くのかということである。今後の金融政策に対する考え方や有事の際の対応の仕方といった、次のステップの方針を確認することが必要ではないのか。

Q: (日銀総裁の候補者として)観測では、同じ財務省の黒田元財務官、渡辺財務官、あるいは元日銀副総裁の山口氏の名前が挙がっていた。田波氏が候補者として提示されたことに意外感はあったか。

桜井: 特に(個人を)想像をしていたわけではないので、意外感はない。誰がよいかと個人を特定して憶測するよりも、選ばれた方が、今後の荒波を乗り越えていけるだけの、金融政策についての考えや方針を持っているか、そして、それを証明できるだけの実績を有しているか、が重要だと思っている。

Q: 日銀総裁選びに伴う政治の責任について、先ほど(与・野党)双方に問題があると発言された。政府ならびに与党側の責任について、もう少し詳しく伺いたい。

桜井: 結果的には、(政府・与党は)一候補、一案のみしか持っておらず、万一(野党に)拒否された場合にどうするか、「ねじれ国会」という状況のなかでは拒否という可能性も想像できたはずだっただけに、その対応として十分な準備をしておくべきだった。

また、拒否されてから任期満了までの日数があまりにも短く、他の候補を選出する猶予が残されていない。重要な人事だけに複数のケースを事前に考え、それなりの結論を得るためにも余裕を持った対策がなされるべきであった。

Q: 日銀総裁選び(の要件)に関して、民主党(が反対の理由にしている)、財金分離という理由の底流には、(日銀は)バブル崩壊後約10年にわたり、国民に低金利政策を強いてきた、これによって企業から家計への約300兆円の利益が毀損された、ということで、格差問題に結び付けた議論がある。企業の立場から、このような議論をどのように思われるか。

桜井: なぜ、どのような状況下で、低金利政策を採ったかという背景を理解する必要がある。バブルが崩壊し、金融不安が増大するなか、それを抑えるために低金利政策が採られた。低金利政策そのものではなく、その政策が寄って立つところ、(金融不安等々といった市場の)状況に対する妥当性というものを考えなくてはならない。一方、成長戦略の下で生じた格差については、バブル崩壊で生じた3つの過剰を処理し、少子高齢化やグローバル化のなかでいかに日本が競争力を高め、成長を遂げていくかを考えて採られたのが、構造改革および成長戦略であったと思う。従って、低金利政策や成長戦略は、日本として納得性のある政策だと受け止めている。

Q: 日銀総裁人事が本日(の定例会見)まで決まらないという状況を予想していたか。

桜井: 全く予想していなかった。先日の武藤氏が否認されたことも予想していなかった。武藤氏(という個人)云々以前に、政治責任で司令塔を選ぶのだから、ある程度は調整をとり、人選することに期待していたので、ここまで来るとは思ってもいなかった。

Q: マーケットでは、円高・ドル安、株安が進んでいる。現在の状況にいたる原因と、日本経済に与える影響についてお話いただきたい。

桜井: 原因は、サブプライムローン(問題)を震源地に、この影響が多くの証券化商品に波及し、一種の金融不安に拡大している。いままでの処理では、潤沢な資金を市場に供給する、あるいは、金融機関に財政的な支援をする、ということで、だいたいは収まっていると思うが、最近の状況を見ると、これをやればやるほど、「そこまでの状況なのか」という不安感で、むしろ、打つ手が混乱を招く、不安を増長させるようなことになっている。日本のバブル崩壊後の金融不安に似てきており、日本も当初は潤沢な資金を投入していたが、これがほとんど効かなくなった。最終的には、不良債権を特定し、それを処理する、そのための中心的な対策が公的資金の投入で、かなりきちんと手術をし、金融不安の解消を成し遂げてきた。そのような経緯もあるので、日本の轍を踏まないようなことを考慮しなくてはいけない時期に来たのではないかという感がある。公的資金投入だけを述べるわけではないが、ひとつの貴重な参考として、潤沢な資金供給だけではない施策も、そろそろ考える時期に来たのではないか。

Q: かなり危機的な状況にあるということか。

桜井: 危機的かどうかは予想できないが、どんどん不安が増長、拡大し、一向に良い方向が見えないのは心配な状況だと思う。

Q: 日本は震源とは比較的関係ないところにあるが。

桜井: 日本への影響は当然出てくる。アメリカの金融不安がこれだけ拡大し、ドル離れが起こり、そこから円の(実際の)強さ以上に円高が進む、それによって円高のマイナス面としての日本の企業業績や生活に対するダメージから、日本経済にも大きな影響を与え始めている。それが株価(に表れており)、円高・株安は、サブプライム(ローン問題)による金融不安の増幅が原因である。

株価について言えば、先ほどの日銀総裁人事と同様、日本経済の活性化に対するいろいろな政策展開が遅々として進まないということが、さらに輪をかけている。

円高については、業種や業態、輸出産業か国内産業かによっても違うが、(円高の影響を受ける)輸出産業について言えば、海外における基本的な競争力が落ちることはないと思う。輸出産業は海外で利益を上げているが、その配当や日本への還元において、利益幅が薄くなりP/L(損益計算書)上では業績を悪くするが、決して競争力に影響するとは思わない。国内産業についても、原材料の高騰には円高はプラス要因なので、これで少しは緩和されると思うが、依然として、原材料の高騰により、企業業績全体が今後不透明になることから、賃金、消費(に与える影響)の方が大きいと思う。

Q: 日銀総裁人事を巡る騒動が、マーケットにもある程度影響しているとお考えか。

桜井: 多少は(影響は)あるだろう。今回の人事の問題がどの程度波及するかの詳細は不明だが、関係者の話などを総合すると、そういう見方ができると思う。しかし、空白期間がなく(次期総裁人事を)決めることができれば、現在の世界的な金融不安のなかにあっても、対応次第では(日本は直接的な影響は受けていないので)、日本経済は後退することなく、これからも緩やかな成長を維持していくことができる。それによって(国際金融市場に対して)、日本経済は欧米と異なっているという安心感を与え、それが世界経済への貢献にもつながるはずである。

Q: 円高・株安への対処の仕方として、潤沢な資金供給をすれば(さらに国民の)不安を煽ると発言をされた。為替に関しては、協調介入の可能性もあると思われるが、今回そのようなことになれば、同じく不安を増幅するようなことになるのか、あるいは有効な手段とお考えか。

桜井: 前回の1995年頃に介入した時代と今日とでは、為替取引の規模が全く違い、当時に比べ、約2.5倍から3倍(の規模に)膨らんでいると言われている。従って、効果を上げるためには、相当に大量で長期の介入が必要だろう。特に欧州では通貨高でも介入していないし、もはや介入は効き目がない、成果が出ない、というのが世界の共通認識だ。そうした世界的な潮流のなかで、日本だけが介入をすれば国際的批判を招くだろう。そうしたことなども踏まえ、為替への介入はすべきではない。

Q: (現在の)円高に関連して、かつて(1ドル=)100円割れあるいは史上最高値の70円台をつけた時代の日本経済の危機感と比較して、(当時からこれまでの)20年間の変化ついての感想を伺いたい。また、自社での取り組みも踏まえ、為替レートの(企業にとっての)危機ラインはどの辺りをイメージされているか。

桜井: 昔の為替の変化は、ファンダメンタルズ(経済基盤)がある程度明確で、その基盤の強さや弱さで自然に調整され、設定されるという状況だった。変わったなぁと思うのは、(現在の状況は)「そんなの関係ない」ということだ。今回の動きは余りにも極端だとは思うが、(ファンダメンタルズが)それほど強くなくても、どんどん(為替が)強くなってしまう。一体どこにどのような構造があって、為替が決まってくるのか(が分からない)ということだ。但し、長い目で見ると、基本的には経済の強さ弱さに基づくことになると思う。現在は(大きく)振れているが、昔と変わった点という意味ではファンダメンタルズ以外の要因に大きく影響を受けるようになってきたことが、以前と変わったことと言えるであろう。

自身の企業経営のなかでの変化は、当時よりも為替に対する抵抗力がかなりついてきたと思う。現在は輸出だけではなく輸入もある、また、米国(向け輸出)主体ではなく、EU(向け)、アジア(向け)もあることで、色々なバイパス(補助ライン)を作ってきたので、一度に「あっ」と思うほどのダメージを受けることはなくなってきている。

水準については、一般論として、当社の来年度計画(の社内レート)は105円にした。対前年度伸び率は少なくならざるを得ない。但し、今下期(の業績)については下方修正するまでには至らない。

どのラインが採算ラインかは、非常に難しく一言では言えないが、最も対応が難しいのは、急激な為替の変化である。今回は2 週間で10%程度為替が変化した。このような事態が継続してしまったら、これは付いて行けない。各企業は、為替レートの安定によって、今まで高めてきた生産効率の向上を緩めてしまったのではなく、今後の成長のために新たな投資項目に(資金を)投入してきている。リコーも例外ではない。今後の成長のために、技術開発をもっと促進させる、新しい事業を追加する、といった可能性に、資金投入を行ってきた。これらの回収のために、ある程度の為替ラインを想定している。

Q: 今の足もとの(為替の)レベルなら、まだまだ対応可能ということか。

桜井: 少なくとも今の足下の水準であれば大丈夫だ。まだまだ改革も可能だし、投資項目の調整も可能である。これは一部上場企業だから適用できることであるかも知れないが、それほど危機感をもっている訳ではない。

Q: 温暖化防止策について、イギリスなど動き始めているが、(日本の)産業界の意識の差に、歩み寄りは見られるか。

桜井: (産業界の意識の差は、)相変わらず離れているのではないか。最近では、(産業界の意見を)一枚岩にしなければいけない、とは真剣に考えなくなった。(産業界に)色々な意見があるのは当然である。だいたい3つ程度(の考え方)になるであろうが、(その違いは)あっても良いと思う。それらを無理に(一つに)絞り込もうとすると、(日本が)採るべき案ではなく、かなり(質の)悪い考え方になるであろう。足して3で割ったり、2で割ったりという方法では、本来の目的を見失う案になってしまう。そういう意味で、一つにまとめる必要はないと思う。まとめるのは我々(産業界)ではなく、国の政策としてまとめれば良い。(我々は)重要な考え方やあるべき姿を(国に)提案し実行するという姿勢で良いと思っている。

Q: 排出権取引の流れになるのか。

桜井: 以前から何度も申し上げているが、排出権取引から(議論が)スタートする日本(のアプローチ)は良くないと思う。排出権取引と温暖化防止とが、イコールで見られることは良くない。排出権取引よりも、温暖化を止めることが最も大事である。前回も申し上げたが、2050年に、地球上の温室効果ガスの発生量を、森林等で吸収できる量にもっていく(ことが重要である)。そのためには、「ピークアウト」を何年後に設定するか(が課題になる)。福田総理がダボス会議でおっしゃったように、(ピークアウトを)10年後か20年後に設定し、それまでに各国・各地域がどれだけ削減しなければいけないかの目標値を決めることである。皆で分担するにあたり、公平性を定義し、公平性を担保した分担の仕方(を決めなければいけない)。これが非常に難しいので、早く検討に入ることが大事である。そして、それが決まったら、(温室効果ガス発生量の)削減を促進させるひとつの方式として、排出権取引があるということだ。

排出権取引から始まる議論では、公平性を担保したキャップをはめることに関心が集まり、非常に緩い(低い)削減目標になってしまう。こうなることは決まりきっている。各国・各地域でこの低い(削減目標を)設定するだけで(議論が)終わってしまう。(たとえ)排出権取引が成功したとしても、(削減)目標がものすごく低く、ピークアウトを10年後、20年後に実現できない削減量になってしまう。

今回、千葉で開催されたG20において、公平性を担保する(日本が主張した)セクター別アプローチでは、これまでの努力(の結果が)数字で表れるので、努力した国・地域はあまり削減しなくて良い。努力していない国・地域へは、努力したところの(温暖化防止)技術などを活用して削減活動をしようということである。EU 等から指摘されたのは、そのやり方(日本のセクター別アプローチ)でピークアウト(を実現するための削減量)に届くか、ということである。EU は、2020年にピークアウトを実現するために主要先進国が(1990年比)25~40%(温室効果ガスを)削減しなければいけない(といっている)。(この問いに対しセクター別アプローチでは)答えようがない。セクター別アプローチの積上げ(方式)だけでは、(目標が)緩くなってしまう。(また)オフィスや民生部分(の削減目標の設定)は、セクター別アプローチで対応できないので、これをどうするか、などといった疑問も出てくる。

敢えてもう一度申し上げるが、福田総理のダボス(会議)での発言は、大変重要である。これをいかに具現化していくかについて、日本はもっと詰めていかなければいけないと思う。(排出権取引が最重要課題ではない。)

(文責: 経済同友会事務局)

以上


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