ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

桜井正光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2008年03月04日(火) 13:30~
出席者 桜井 正光 代表幹事
小島 邦夫 副代表幹事・専務理事

冒頭、桜井代表幹事より「2008年3月(第84回)景気定点観測アンケート調査結果」について説明があり、その後、記者の質問に答える形で、(1)景気見通し、(2)日銀総裁後継人事、(3)排出権取引・地球温暖化問題、(4)年金制度改革、(5)為替、(6)強行採決と国会空転・修正協議、について、発言があった。

Q: ここ2-3日、円高・株安で、これらはアメリカ発(の問題)であり国内のファンダメンタルズはしっかりしているとのご発言があったが、住宅着工件数の問題以外に国内の問題はないとお考えか。

桜井: 国内については、建築基準法の影響で住宅の着工件数が一時的に低下したが、最近は持ち直しつつある。個人消費は、(総務省の)家計調査によると、1月の状況で対前年比3.6%、前月比で2.5%伸びた。ただし、これは自動車や薄型液晶テレビの売上の伸びが貢献していることもあり、安定的なものと捉えるのは大変危険だと思う。個人消費については先行きが読みづらい。輸出関連の伸びは依然堅調だが、その先行きについては米国経済に依存するところが大きいだけに、今後(の米国経済の伸び)に期待したい。これに関しては、冒頭にご案内した『景気定点観測アンケート調査結果』においてデカップリング/リカップリングの問題、すなわち「今回の米国経済の落ち込みと世界経済の減速との連動性は、過去の景気悪化局面と比べ、どうであるとお考えか」と問うている(9ページ)。その結果、「引き続き連動性が高い」という回答が半数以上を占め、「連動性が弱まっている」という回答は約30%であった。ここからも、連動性への期待の高さが伺える。しかし、冷静に考えるとこれは時間的な問題で、現状足下のところでは連動性はなく、米国景気の停滞を欧州や新興諸国等によって補っているのが実情だ。将来的には、国際経済は連動性が高くなるだろう。デカップリングとばかりは言っていられない。

Q: (経済見通しについて)今回のアンケートでは、約6割が「いざなぎ景気」を「すでに終わった」、もしくは「2008年前半まで」に終わるとの結果だが、代表幹事はどのように見ておられるか。

桜井: 私の業界、つまりリコー・グループとしての見方を述べるなら、まだまだ続くと考えている。

小島: 今回のアンケート結果は、多分にムードに左右されている面も感じられ、本当に足下の需要が落ちてきているのか、他の数字と照らしてみると断言できないところもあるように思う。

Q: 日銀総裁人事について、今月19日に(現総裁の)任期が切れる。まだ自民党・与党が具体的な(候補者の)名前を挙げていない状況だが、この政治状況についていかがお考えか。

桜井: 再三申し上げてきた通り、日銀総裁人事は他の政策審議事項とは分離し、空白が生じないよう、相応の資質を持った方を選出することが非常に重要である。決して、政局的に扱うべきではない。予算案や関連法案の審議、あるいはイージス艦等々の問題もあるが、(日銀総裁人事は)独立して責任を持って進めなければならない。それが政治の役割である。

Q: 日銀総裁人事がこう着している状況で、候補の一人として山口元日銀副総裁の名前も浮上している。山口元日銀副総裁は、経済同友会とのお付き合いも深いと聞いているが、同氏の印象と総裁候補としての適性について伺いたい。

桜井: 個人的に存じ上げていないので印象は述べられない。資質については4つほど以前に申し上げたが、金融政策の重要性を認識し、ある部分では世界と協同しながら、ある部分では日本経済をベースに、そのバランスをうまく取りながら進めていける方であれば(日銀総裁に)相応しいと思う。いずれにしても、政府が提案し国会が責任をもって決めることだ。

Q: 排出権取引について、日本経団連の御手洗会長が事実上容認ととれる発言をされた。総量規制についても徐々に発言が変わってきている。以前から代表幹事が発言されている意見に、少し経済界も追いついてきたという印象があるが、最近の経済界での議論を巡る状況についていかがお考えか。

桜井: あるべき論で申し上げる。

排出権取引は、欧州(を中心に議論されているが)、米国でも、現政権中に積極的に発言する可能性があり、次期政権になればまず間違いなく言及するであろう。日本でも排出権取引を導入すべきであるという議論が、欧米(を始めとする)世界の潮流に遅れるから、という意味で始まることは問題である。以前から申し上げているが、排出権取引は、地球環境の問題にとって、高い目標を達成するためのひとつの有効な仕組みに過ぎないという位置付けであり、排出権取引そのものが地球温暖化防止の目的ではない。

福田総理はダボス会議において、今後の方針を展開する上で、大変重要な日本の理念を明示されたことは高く評価すべきである。具体的には、ピークアウト(温室効果ガスの発生量の増大を、ある時点で止めること)を10年先、あるいは20年先に実現すると表明した。これが非常に大事である。これが可能になって、初めて将来(2050年になるかもしれないが)の温暖化が2~3度程度で止まるということになる。これが世界共通の課題である。バリ・ロードマップでは、数値は明確に書かれなかったものの、IPCC(のレポート)を尊重しようということになった。ここが、温暖化防止(の問題)で一番大事なところである。福田首相はまた、(ピークアウトの実現のために)中期と明言はしていないが、ピークアウトの時期を考慮すると当然中期と考えられる目標として、各国・各地域は削減目標を決める(べき)とおっしゃった。そして、日本は、主要先進国と一緒に削減目標を提案するとおっしゃった。非常に重要である。そこで(初めて)排出権取引が出てくる。日本の政界も経済界も、ピークアウトの時期をいつにするか、そのために各国・各地域で(公平な)削減目標をどのように決めるのか、(という議論に)集中して欲しいと強く願う。

Q: そういう意味では、まだ議論は若干脇道にそれているということか。

桜井: 脇道とまでは言わないし、排出権取引はいずれ(議論の)王道(中心)になっていくであろう。しかし、やはり大事なのはキャップの方である。何故キャップをつけなければいけないか、公平性のあるキャップをどのように制定するか、という本質論を、これから大いに展開していただきたい。

いつもこのような話をしているが、記事には一向に取り上げていただけない。「桜井は環境税や排出権取引に前向きである」という点ばかりが取り上げられることは心外である。排出権取引にこだわっているわけではなく、むしろ、一番こだわっているのは、ピークアウトをいつにするのか、そのために各国が原単位ではなく総量でどれだけの分担を、どう公平性を担保して決めるのか、という点である。これをご理解いただきたい。

Q: 排出権は、その概念が広いにも関わらず、どうしてもEU型キャップ・アンド・トレードを認めるか認めないか、容認か反対かという議論が進みそうだが。

桜井: 今後その議論が進むであろう。いかに公平なキャップをつけるかという場合、直近の実績をベースにしたグランド・ファザリング方式と、有償でどれだけの排出枠を買い取るオークション方式がある。(オークション方式は)排出権ではなく排出枠の買い取りで、これが最も公平なやり方と見られており、EUの提唱する改訂版のキャップ制である。(一方)日本が提唱しているベンチ・マーキング方式は、セクター別に原単位で、どこが一生懸命やっているか、どこがやっていないか、という今までの努力実績を元にして配付する方式である。それぞれ一長一短あるが、(実現)可能であれば、私が最も良いと思うのはベンチ・マーキング方式で、正しいデータに基づいて、努力したところと、そうでないところを評価し、それなりの目標設定にするというものである。(ただし、)日本であればデータは(ある程度)集まると思うが、それでも(正しい)データが集まるのは一部の産業(に留まる)であろう。それを世界に広めようとしても、かなり難しいということは否めない。(しかし)この議論は重要なので、どんどんやらなければいけない。(本当は)政府の研究機関などが(これをテーマに研究を)やるべきである。

Q: 排出権取引について、経済3団体トップや各々の団体のなかに温度差があるように感じる。特に、今後の議論は鉄(業界)に集中していくと思われるが、経済界内の温度差をどうご覧になっているか。また今後、コンセンサス作りに向けて、どのように刷り合わせが行われていくべきとお考えか。

桜井: それぞれ(の産業)の事情を理解できるので、温度差は当然できてしまう(と思う)。地球環境の問題は、炭酸ガスの発生量や発生させる方法、投資とその回収、どの程度の期間で削減できるかという可能性等、さまざまな問題は、産業の構造やプロセスの中味によって違ってくる。従って、温度差が出てくることはやむを得ないであろう。世界のどこでも同じであるが、欧州にも色々な産業があり、色々な国がある。サービス産業主体の国もあるし、もの作りが主体の国もある。もの作りであってもセット(メーカー)的な企業も、電力、鉄鋼もある。最終的には政治決断になるであろう。理想的には、国民が納得する政治決断を図ってもらうことである。しかし、それも大変難しい問題である。政治決断(をする際)には、まずは地球(環境)を考えて、(次に)国益(を考慮すべき)である。国益を損なってはいけない。このような意味での政治決断をすることが必要だ。

経済界のなかでのコンセンサス作りについては、(意見を)まとめることはできないだろうが、意見交換をすることが大事である。意見交換の場は色々あるので、(やり方は、)それぞれに任せていただければ良い。今、いつまでに何を(するか)というプランニングはしていないが、(まずは)意見交換をすることが非常に大事である。

Q: 年金問題について、基礎年金の全額税方式を消費税で負担するという案が麻生氏はじめ自民党内からも出ている。経済界も税方式を薦めていると思うが、その場合、厚生年金の基礎年金部分の企業負担分についてはどうすべきとお考えか。

桜井: 経済同友会では、2002年に年金制度改革を提言し、それからずっと述べているが、基礎年金の1階部分は全額税方式、2階部分は所得に応じて私的年金を活用するという内容である。税方式と私的年金の方式になった場合でも、企業は、これまで負担してきた厚生年金(保険料)の半額負担については、2階部分の私的年金のなかで継続する、という趣旨である。

小島: 既に支払われたものの清算については、明確には言っていないが、2階建て部分を国(賦課方式)から民間(でも提供可能な積立方式)へ移行する際に、過去(債務)の清算をしなくてはならない。この場合には、多少の不公平はあるかもしれないと思っている。

Q: 経済同友会の提言では、1階部分の消費税増税分は、法人としての企業が被ってそれが使われるのだから公平である、という内容だったと理解しているが。

小島: それもあると思う。ただし、いまの厚生年金の負担の仕方は、ここまでが基礎年金部分でここからが2階部分だ、という形にはなっていないので、いままでと同じ2階建て部分についてすべて使うと考えれば同じことであるともいえる。(提言作成の時点では)そこまで詰めた議論はしていない。

Q: 2階部分は私的年金に転換して、企業は半額を負担する、ということか。

小島: 確定拠出年金のようなものにならざるを得ないと想定しているが、その場合は、もちろん企業も拠出するという前提で考えている。

Q: 足下の為替は想定以上だと思われるが、来年度の業績にどの程度の影響があるとお考えか。また、適正な(為替の)水準はどの程度とお考えか、コメントをいただきたい。

桜井: 今回のアンケート調査では、為替については予測のみで、適正水準は尋ねていないので、昨日今日の102円、103円についてコメントするのは難しい。想定としてお話すると、ほとんどの企業の事業計画では、昨年10月時点で115円を軸に見通しを立てていると思う。それが今、102円、103円という、現時点ではボトムにまで達している。各企業の輸出採算は、企業によって違うので一般論としては言いにくいが、希望も含めると、今のペースでは105円から110円の間であろう。問題は急激な変動である。企業は、為替変動に対してリスクヘッジをとっているが、急激な変動は(企業業績にとって)大きなダメージとなる。

小島: 為替変動は、今期の収益にはほとんど関係なく、影響は来期である。これからの動き方次第だが、企業の対応でその影響も変わってくる。適正水準は、市場で決まってくるものである。

Q: 政局について伺いたい。2月29日、与党は(衆院において)2008年度予算案と予算関連法案を強行採決し、これを受けて現在国会が空転している。与党の強行採決についていかがお考えか。また、いま修正協議が焦点になっており、世論はやるべきだという声が高いが、代表幹事はどうお考えか。

桜井: 強行採決について、両院議長の斡旋で、十分な審議を尽くし今年度中に一定の結論を出してほしいという議長裁定があり、両党ともそれを頭に入れて予算案および関連法案をセットで採決していく、ということが基本にあると思う。それぞれの考え方の差が出ていると思う。自民党は、まず衆議院で採決し、参議院で徹底して修正協議をしていこうとしているように思える。民主党は、(議長)斡旋の意味合いが強行採決で反故にされたという立場を取っており、十分な審議を尽くさないとは言っていないが、今年度中に一定の結論を(出す)ということについては、必ずしも堅持しなくてもよいという立場になっているのではないか。このような考え方の違いが、また「ねじれ国会」のなかで出てきてしまったという印象である。国民にとっては、今後の見通しがつかない不透明なものにまた戻ってしまったという不安がある。両党とも、十分な審議をどのような形態でどう行えばよいのかについて、双方とも責任ある対応をしていただくほかないと強く思う。

修正協議はやるべきだろう。

Q: 道路特定財源について、世論調査では一般財源化すべきという意見が過半数を占めており、国会でも道路整備中期計画の積算根拠があいまいだという意見もある。これらを踏まえて、どのような方向で修正協議を進めるべきとお考えか。

桜井: 修正すべき項目の焦点は、期間、一般財源の率、道路の整備計画をどう考えるかなど、ほとんど決まっていると思うので、それをしっかりと議論すべきである。いまはその議論すらできないということが非常に問題である。両党とも、協議を拒否しているわけではないだろう。

Q: 小泉元総理は、「修正協議を進めるためには、総理自らが乗り出して修正にむけた環境づくりをする必要がある」と発言され、それに対して福田総理も「重く受け止めている」と発言されているが、いっこうに福田総理の動きが見えない。総理の指導力についてどのように見ておられるか。

桜井: 指導力に期待している。

必ずしも、公開された場で協議するわけでもないだろう。

Q: このまま硬直状態が続くことも考えられるが。

小島: それはあまり国民のためにならない。

Q: 与党がやるべきか野党がやるべきか、については、与党がやるべきとお考えか。

桜井: そうだろう。福田総理のリーダーシップに期待している。

(文責: 経済同友会事務局)

以上


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。