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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2007年10月31日(水)
出席者 桜井正光 代表幹事
小島邦夫 副代表幹事・専務理事

冒頭、桜井代表幹事より、「第33回日本・ASEAN経営者会議」(10月31日~11月2日 帝国ホテルで開催予定)、および「同友会起業フォーラム2007」(12月5日 学士会館で開催予定)について紹介があり、その後、記者の質問に答える形で、(1)福田内閣1ヶ月の評価、(2)消費税の導入、(3)サブプライムローン問題、(4)党首会談、(5)原材料価格の高騰と企業業績、消費者への影響、(6)表示偽装など企業不祥事、(7)住宅着工件数の落ち込みと耐震強度への対応、について発言があった。

Q: 福田内閣誕生から約1ヶ月が経った。防衛省の不祥事など問題も出てきたが、その対応も含めて、福田内閣の評価について伺いたい。

桜井: 全般的には、ねじれ国会のなかで大変な環境下にあると思うが、協議すべきこと、審議すべきことが思った以上に進んでいない、というのがひとつの感想である。(原因には)ねじれ国会に加え、質問にもあった周辺の不祥事等が出てきたこともあるとは思うが、予想以上に停滞気味である、という感想が第一である。

Q: 審議が停滞していると思われる具体的案件は何か。

桜井: 第一に、テロ特措法である。期限付きのテロ特措法をいかに延長するか(が今国会の最大の課題であった)。現在、与党・自民党が、新法を提出する段取りをとっているが、ようやく審議に入ったものの、新法に対する本格的な議論・審議がなかなか進まない、というのが最たるものである。

Q: 国会で審議が進んでいないというお話があった。昨日、同友会から「独立行政法人の整理合理化計画」について提言が出されたが、公務員制度改革については国会で迷走しているようである。公務員制度改革についてご意見をお伺いしたい。

桜井: (公務員制度改革については)非常に心配している。この改革は、「官から民へ」、「国から地方へ」、そして効率的な行政制度を構築していく上で、まさに中核となるところである。参院選の直前に(国会を延長して)人材交流センターの議論があったが、これは完璧なものではないが、天下りを止めさせるための公務員(制度)改革の第一歩である。その上で、人事制度の内容、つまり公務員の採用や教育、評価等といった全体の改革がスタートすべきである。そうした公務員(制度)改革に踏み出したにもかかわらず、人材交流センターの制度設計や包括的な公務員制度改革が延期になってしまった。例えば、人材交流センターについていえば、組織編成、人員規模等が出せないと予算化も不可能になる。そうなると来年の秋に予定している設立は難しくなり、また一年延期ということにもなりかねない。今の1ヶ月~1ヶ月半の延期というのは、その先の実務を勘案すると相当の影響が出ると見なければなるまい。そうした遅延は何としても避けていただきたい。

Q: 消費税引き上げの議論が活発になってきているが、改めて消費税引き上げについての代表幹事のお考えを伺いたい。

桜井: これまで何度も発言しているが、同友会としては、2011年の財政再建、いわゆるプライマリーバランスの黒字化を機軸にしている。それまで、そしてその後も、債務残高を減らしていくことが大事である。これを基本にして、成長戦略をいかにとっていくかがもうひとつの軸にあると考えている。そのために小泉、安倍政権以来のいろいろな構造改革のテーマ、課題をそれぞれ停滞することなく進めることが重要である。つまり、今後の財政健全化、構造改革の推進を軸にしている。

一方、平行して我々が提案しているのは、財政的な面で一番問題になる社会保障制度である。国民から見た社会保障制度は、受益と負担のアンバランスが拡大していくことや、財政的にとても立ち行かないものになっていくこと、不払いなど(への不信)で、制度設計を根本から見直し、再建すべきである。その場合、総合的に判断して消費税を使っていくことが大事であろう。

当然のことながら、財政再建が機軸にあるので、まずは歳出削減をしっかりやることである。そのうえで、社会保障制度については財源として消費税を、ということになる。我々の提言している制度では、消費税率9%程度を(社会保障制度に)使わなければならないと言っている。現在、(基礎年金部分の)1/3を税で既に負担しているので、これを差し引くと(新たに引き上げられる消費税は)6.3%から6.4%になる。(基礎年金部分について)全額消費税に移行するか、あるいは(歳出)削減分を充当するかという課題があると思うが、歳出の削減分は、可能な限りプライマリーバランスを黒字化した後の債務の減少に充てるという考え方をしている。

Q: サブプライムローン問題で米国の金融機関が打撃をうけているが、これに伴う米国景気の失速懸念も出てきつつある。米国景気の先行きと景気減速が与える日本経済への影響についてご意見をお伺いしたい。

桜井: サブプライムローン問題の先行きについては、私が自分で調査をしている訳ではないので、予測が非常に難しい。サブプライムローンの問題は、今後、どれだけ価格再評価があり、金融機関にどれだけ痛みが出てくるか、アメリカの住宅建築(数)や価格の低下が実体経済にどれだけ(影響を)及ぼしていくのか、私には読みきれないが、マスコミの情報や日銀のコメント等を総合してみると、日本経済の先行きを占ううえでも大きな不確定要素であることは確かである。

経営者としてアメリカの状況はどうかというと、我々の業界で言えば、確かに需要は停滞し、全需が落ちてきた。しかし、(これは)一般論と同じだが、まだまだヨーロッパは元気であり、また、BRICsでもカバーしているので、今のところさほど事業業績に影響は出ていない。今後、アメリカでどれだけ消費が沈滞するか、世界的に金融収縮がどれだけ広がっていくかについては、申し訳ないが読めない。

Q: サブプライムローン(にかかわる損失)でメリルリンチのCEOが退任した。日本でも野村ホールディングスやみずほ証券などが同じように損失処理をしているが、経営責任についてどのようにお考えか。

桜井: ひとつ(の判断基準)は、収益、業績に対する被害の大きさである。野村ホールディングスにしても同様に痛んだみずほ証券にしても、今後の経営にどれだけ影響があるか、あるいはその判断や意思決定がどうだったかなど、まだ考える規模ではないと思う。まだまだ責任者の退任まで行く問題では当然ないと思う。

Q: ねじれ国会で審議がなかなか前に進まないなか、昨日、福田政権で初めて自民・民主の党首会談が行われた。週内にもう一度開かれる予定だが、党首会談について代表幹事のお考えを伺いたい。

桜井: 現在の国会の状況を考えた場合、日本の成長と発展、そしてグローバルな社会への日本の責任ある貢献については、個々の政党ごとにどう考え、どのような制度・施策をとるかについて、基本的には国会の場で公に見えるかたちで議論していくべきであろう。以前の会見でも発言したが、協議とは一体何なのか。順番としては、まず国会での議論があり、そして問題が出た際にそれを協議する、ということはあって良い。しかし、協議になると(国民に)見えなくなることが問題だと思う。「あらかじめ予定を立てて党首会談が開かれることを公表したのだから密室ではない」という発言があったが、実際は昨日、何が語られたのか国民には全く見えない。一度なら良いが、この先も続くとなると問題だろう。

Q: 党首会談によって国会での党首討論が延期されたが、これは好ましくないとお考えか。

桜井: 党首討論をしっかりとやるべきだ。

Q: 最近、エネルギー、化学、電力、石油などが値上がりし、また、小麦、大豆などの食品も値上がりしている。現在、企業業績は好調が継続しているが、今後の企業業績への影響と個人消費への影響についてご意見をお伺いしたい。

桜井: 一般消費者については、まだCPI(消費者物価指数)には表れていないが、身の周りの生活必需品の経費に非常に敏感に反応しているだろう。小麦粉や灯油、種々の原材料の値上がりについては、スーパー、小売店などで実感しているであろうし、生計にも響いてきているはずである。企業の場合は、生産から販売まで何層ものプロセスがあるため(表には)見えにくい状況である。とは言え、今後、原油価格の影響が原材料等々の価格に及び、各企業での生産性向上やコストダウンの努力が追いつかなくなり、製品価格が高騰し始めるであろう。

一方、顧客市場に出す、いわゆる売価については、たとえ高機能であったとしても低価格であるに越したことはないというのが顧客の判断である以上、製品価格への転嫁は難しい。しかし、生産性向上やコストダウンが追いつかなくなりつつあるなかで、値上げはやむを得ないかと思う。

小島: コストアップを吸収しきれないまま放置していくと、先般の短観における中小企業の例を挙げるまでもなく、企業業績の悪化へとつながってしまう。今後は、ある程度の値上げは避けられないという前提で経済全体を捉えていくべきであろうと思う。

Q: 最近、食品の賞味期限表示などの偽装が相次ぎ、昨日はニチアスの建築資材に関する不正が明らかになっている。経済同友会ではかねてよりCSRを提言されているが、一連の不祥事や企業体質についてどのようにお考えか。

桜井: 「もういい加減にしてほしい」と言いたい。

これからの日本の活力、成長は、民が責任を持って支える、民に任せてほしい、民に任せてもらえればもっと効率的に運営できる、という意識で、民が責任を持って推進にあたっていかなければならないところに、このような問題が次々と起こり、ある産業や業界においては共通して起こっているのではないかという疑いまで持たれるようになってきたことは、非常に残念である。

ミスの問題であれば、仕事のプロセス改革によって、ミステイクを減らすという改善ができるが、いま出てきているのは作為的な不祥事である。単純にいえば「経営者の倫理感」であるが、企業を興すときに第三者が倫理感を認可するなどということはできないし、残念ながら、経営者の倫理感だけに任せておいては問題解決にならない。何人かはこのような作為的な問題を起こす経営者も出てくると思われるので、いかに早く発見し、早く是正を図ることが重要であり、是正が図られないものについてはプレイヤーとして市場から退場していただくことが必要である。残念ではあるが、社会全体の制度、仕組みとして必要である。

早く発見するためには内部告発が有効であるが、これは一長一短がある。内部告発を奨励し過ぎると、ぎくしゃくした社内になり、また競合他社を倒すために悪用するなどもできてしまう。難しいことではあるが、現時点では内部の発見者が「これはおかしい」と発言できるシステムが必要である。各企業では、表に告発として出る前に、社内でそのような声を拾える仕組みを構築しているので、その声をきちんと掴んで対応することを強化する必要がある。(具体的には)ホットラインや内部で用意した第三者の窓口などであるが、そのような仕組みを持てない中小企業でも、日頃から、社内の声が執行部に上がるような教育をしていく必要がある。

小島: 多くの企業では、外部の弁護士などに依頼をして社外に通報窓口を設け、まずはそこに声が上がるという仕組みを取り入れている。経済同友会事務局にもそのような仕組みがある。昨今の話は、反面から見ると、(声が)表に出てくるようになったと評価できるかもしれない。日本の社会に変化が起きつつあるのかもしれない。

Q: ニチアスの場合は、1年前にわかっていたものを社長が隠ぺいしており、これはつける薬がないのではないか。

桜井: これは(つける薬が)ない。ニチアスの場合は1年だったが、他の創業者系(企業)のケースでは20年、40年、官庁でも11年というものもある。いかに早く表に出すか(が最大の課題)である。方策としては、悪い意味の監視ではなく、事業、経営に参加している人たちが、健全な気持ちで「これはおかしい」といかに言えるかである。消費者の声も(重要で)あるが、消費者に正しい情報、つまり賞味期限や消費期限、製造年月日がない場合もある。消費者団体によるサンプリングもひとつの手段かもしれないが、市場に健全なウォッチャーが居て、市場には良品質のものが出ており、そのプロセスについても様々な情報が開示されている、そして、ダメなものは早く退場する、というマーケットにしていかなければ、市場主義的な経済が成り立たない。

Q: 今日の午後、住宅着工件数が発表される。耐震偽装問題の影響でかなりの落ち込みが予想されているが、これについてはどのようにお考えか。

桜井: 耐震偽装は良くないので、建築基準法を厳しくすることは良いことであるが、新たな建築基準法で審査をした場合の現体制における処理能力については、事前に考えておくべき話だと思う。決して結果論の話ではない。対前年度で半数以下という大きな影響が出ている。検査方法が厳しく多くなり、添付データも増え、設計変更の場合は再申請が必要など、工数(作業工程の数)的にかなり増えていることから、影響はわかったはずである。処理数を前年並みに戻す方策としては、処理能力向上と運用上の軽減化が考えられる。昨日の閣議後の発言では、再申請の部分に耐震と無関係の部分も含まれていたので見直すということで、運用上軽減化していくということもある。この場合、処理能力がどのくらい上がり、前年対比でどの程度認可がおりるようになるのか、について明示していただかなくてはならないと思う。そこに効果が出ないのであれば、更なる対応策が必要になると思う。

住宅は、需要に対する広がりが大きいため、(着工件数が)半減となると実体経済への影響が出てくるだろう。

Q:国土交通省の失政ではないか。

桜井: 建築基準法を改正したことは失政ではない。ひとつひとつの項目は分からないが、耐震に影響しないものまですべてを含めて一気に(審査の対象と)してしまったのであれば、それは失政だろう。フランス流では段階を踏む方策をとる。法律はまとめて決めてしまっても構わないと思うが、運用上は、まずは本当に耐震に効いている部分から始めて、段階を分けて周辺部分に広げていく、というステップが必要だろう。

小島: ギリギリまで基準が決まらなかったということがあったようだ。かねてから心配されていたが、「官と民の距離」が遠くなってしまい、民間がどのように考えているかについての情報を知らないまま、頭の中だけで考えて進めてしまったという部分があるのではないか。

桜井: 「日本人は生真面目にチェックする」と一部の報道にあったが、これは大事にしなくてはならない。

小島: フランス流は、実施はしても実際に施行されるのは少し先、ということのようだ。

桜井: 日本流としては、段階を踏んでそれをきちんと実行していくことが大事だろう。

(文責: 経済同友会事務局)

以上


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