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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2007年02月20日(火)
出席者 北城恪太郎 代表幹事
小島邦夫 副代表幹事・専務理事

記者の質問に答える形で(1)日銀の金融政策、(2)春闘・賃上げ交渉、(3)スティール・パートナーズのサッポロHD へのTOB提案、(4)みすず監査法人の業務全面移管、(5)政府の「成長力底上げ」戦略、(6)ワーク・ライフ・バランス、(7)安倍内閣の支持率低下、(8)「過労死は自己責任」発言、について発言があった。

Q:今日と明日、日銀の政策決定会合が開かれる。追加利上げが焦点であるが、前回の会見以降、2006年10-12月期の実質GDP成長率など重要な指標がいくつか出てきた。現時点で追加利上げの是非についてお考えを伺いたい。

北城: 基本的には、金融政策は日銀の判断を尊重したい。10-12月期の実質GDP 成長率は、我々の当初の予測よりも強かった。それも含めて、日銀で判断されると思う。

Q:仮に利上げされた場合、景気への影響についてどのようにお考えか。

北城: 金利水準そのものは、まだ緩和的な低金利政策なので、短期的に経済に大きな影響が出るとは思わない。利上げがあったという前提で話せば、その発表の際に、日銀から将来の経済や金利水準について、どのような展望を示されるかによって、為替への影響が出ると思う。急激な為替の変動そのものは、経済にとって好ましいことではないので、急激な変化が出ないように、適切に市場と対話していただくことを期待したい。

Q:金融政策に関して、為替の急激な変動をまねかないようにという発言があった。今回の政策決定会合で利上げがされた場合、そのような懸念があるとお考えか。

北城: 為替は金利だけで決まるわけではなく、産業競争力も含めて多様な要素が関係してくるが、今後の経済の進展、どのくらいの成長が見込まれ、それに対して日銀がどういう水準で金利を判断されていくか、というメッセージをどう出していくかだと思う。今回、例えば金利の引上げがあったとして、その次の引上げがすぐに行われるように見られるのか、あるいは、もう少し時間をかけて金利の正常化が進むのか、というメッセージの出し方が非常に重要だ。経済の健全化、正常化に進むに併せて金利水準も正常化を目指すべきで、日本は急激な金利の引上げをする状況にはないと思う。緩和的な金融政策をこれからもとり続ける、そのなかで経済の実態に合わせた金利水準を模索する、というメッセージが必要ではないか。

Q:春闘交渉が本格化している。景気や企業業績の拡大を背景に、労組が強気の要求をしており、一部では賃上げへの期待が高まっている。この春闘での賃上げ交渉の見通しついて、いかがお考えか。

北城: 賃金水準は、経営者にとって非常に重要な戦略課題である。企業経営者が、企業の経営に応じてどのような判断をされるかによる。企業業績がよく、昇給等で従業員に報いたいという経営判断であれば、昇給していただく方が、働く側にとってもこれまでの努力が報われる。経営の成果をどれだけボーナスや昇給に反映させるかは、企業の判断もあるし、業界の中での従業員に対する施策の水準にもよる。業界によっても、経済や景気の情勢も違うし、同じ業界のなかでも(業績の)良い企業と悪い企業とがあるので、かつてのように一律昇給いくら、ということはない。

Q:政府・与党から、消費の浮揚を狙って賃上げを期待する発言が出ている。賃上げと消費浮揚の関係について、いかがお考えか。

北城: 勤労者の所得が増えること自体は、個人消費によい影響があると思うが、このような問題は、個々の企業経営者が自らの経営責任で判断することである。政府、マスコミや世論から意見があったからといって決めることではない。結果については、経営者が責任を持つべきで、どのような判断をするにしても自らの経営責任で判断していただくことが重要である。

Q:サッポロビールとスティール・パートナーズのTOBについて、北畑経済産業省事務次官が否定的な発言をし、本日閣僚会議後会見でも、甘利大臣からグリーンメーラー的動きと否定的な発言をされた。こうした否定的な経営判断があることについて、いかがお考えか。

北城: スティール・パートナーズがどのような考え方でTOBを行うのかがよくわからないので、これからの推移を見守りたい。単に株価を高くして利益を上げたいと判断するファンドもある。どのような投資行動をとるかを含め、ファンドの運営についての判断が下ると思う。一方で、株価がどの水準であれば適正かということは、市場と株主が決めることである。ファンドや経営者がどのような考えで経営をするかを株主によく話をして、その上で、最終的に決めるのは株主である。提案された株価が適切であると判断されればTOBに応じるであろうし、不十分であれば、引き続き株を持ち続けるであろう。良いか悪いかは、最終的に株主が判断することであり、第三者が言うべき問題ではない。

Q:「スティール・パートナーズがどのような経営判断でTOBを行うのかはよくわからない」という発言があったが、提案する段階で、よくわからないような提案をしていること自体について、いかがお考えか。

北城: サッポロビールの株主ではないので、具体的な中身はよくわからないが、企業経営の側が現状の経営についてどのような判断をしているか、株を買い増しして2/3以上持つということは経営権を持つということであり、経営権を持たずに過半数を買い占めることはないと思う。スティール・パートナーズ側も、どのような意向で今回のTOBを考えているのかを株主に話さなければならない。経営側もこれから防衛策を検討されると思うが、最終的には株主が判断することである。情報が十分開示されているか、提案内容が適切か、についても株主が判断することである。

Q:サッポロビールは、経済産業省が主導してルールを作った買収防衛策を導入している。今回のTOBは、買収防衛策を導入した企業に対する初めてのケースであり、意味があると思うが、いかがお考えか。

北城: サッポロビールの経営陣が、どのように判断して買収防衛策を実行されるのか、結果がどう出るのかについては、初めてのケースなので注目している。TOBを提案することが良いか悪いかは、結局は株主が判断することである。株主にとって、十分魅力的な価格であれば応じるであろうし、不十分であれば応じない。現経営陣を尊重して、業績の向上を願う。M&AやTOBを受けること自体がおかしいのではない。経営者が十分な経営の成果を上げているのか、経営の成果をどう株主に還元しているのか、に対する判断である。TOBそのものや敵対的買収が問題ということではない。敵対的というのは、誰に対して敵対的なのか、現経営陣に対して敵対的であっても企業に対して敵対的かどうかは、最終的には株主が判断することだ。

Q:スティール・パートナーズのこれまでの実績を踏まえて、これまでの投資行動は企業価値向上に資するTOBであると判断されるか。

北城: それも個別の会社の状況に応じて株主が判断する。TOBによって、株価が企業業績を反映する形で上がれば、株主が利益を得る。一方で、株価が下がれば、株主にとって不利益であったということである。企業価値が向上するかどうかは、単に価格だけではない。提案があったことによって、経営側も緊張感のある経営、あるいは企業業績を上げるような経営戦略をすれば、それは価値あることなので、それが本当に会社に貢献したかどうかは、株主が判断することである。我々がこの戦略がいいか悪いかを判断することは適切ではない。このような経営判断には多様な見方がある。一義的に決めてしまうこと自体が、市場の判断を誤ることになる。十分な情報開示をした後で、株主が判断することが適切である。

一般的なTOBや買収提案に伴って、企業はより高い業績を上げるように努力する。特に、不採算事業の撤退、新規事業進出など、企業業績が向上することも重要である。一方で、買収が行われたうえで、より業績を上げる経営行動をすれば、それもいいことである。結果としては、企業業績を反映した形で株価が形成されてくればいいのではないか。あとは株主が判断することである。

Q:このようなスティール・パートナーズの動きを反映したものではないかと思うが、最近、上場企業の中でも買収防衛策をとっている企業が多い。買収防衛策を入れれば終わりということではなく、企業価値を向上させることが重要であると思うが、買収防衛策を導入している企業が増えている傾向については、いかがお考えか。

北城: 買収防衛策にもいろいろある。全く買収ができないような策を導入されると、既存の株主もそのような提案に反対すると思う。買収防衛策は、株主総会で承認されて導入されるべきで、取締役会だけで決議し、過剰な防衛をすることは株主にとって好ましくない。場合によっては、それが株主の離反を招き、株価が低下することもある。敵対的な買収の防衛策というときには、何に対する敵対かを踏まえて、防衛策を導入されるべきである。現経営陣に対する敵対的という場合もある。現経営陣が優れた経営をしていること前提に導入されると思うが、別な経営陣が経営した方が優れた成果が上がる可能性もある。過剰な敵対的な防衛策は、必ずしも株主のためにはならないのではないか。多くの機関投資家がそのような提案に反対を示している。現実にも全く買収が成立しないような敵対的防衛策を導入しているところはない。

Q:みすず監査法人が、業務の全面移管を検討しているとの報道があり、影響が大きいと思うが、これについて見解を伺いたい。

北城: そもそも監査法人は、株主の立場で、健全に企業経営が行われているかを監査する立場にあり、経営側と癒着をして監査の報告を出すことは、本来の監査法人のあるべき姿ではない。いくつかの企業不祥事に関連して、監査報告が適切であったかという疑問が呈せられており、このようなことが起きると、その監査法人を継続して使うことに対する懸念も出てくる。今回最終的にどのような判断が出るかはわからないが、監査の対象となっている企業の経営に混乱をきたさない策をとるとすれば、それは経営者として必要な判断だと思う。基本は、株主の立場で健全な監査を行い、それを株主に報告することが監査法人の一番重要な仕事であり、それがされていないとすれば本来の責務を果たしていないということだ。

Q:政府が先週、「成長力底上げ」戦略の概要を発表したが、どのようにご覧になっているか。

北城: 成長力を高めるのは非常に重要なことだ。経済成長があって初めて、雇用の場も増えるし、財政再建も達成できる。特に、少子・高齢化に向かうなかで、成長力を高めることは非常に重要だ。さらに、成長力を高めた結果として、これからは質の高い雇用の増加に焦点をあてて政策を出していただきたい。より質が高く、高い付加価値を生むような雇用を、いかに国内でつくるかに政策の焦点をあてていただきたい。底上げをして最低賃金を高めることも必要な分野はあると思うが、より高い付加価値、高い賃金を支払える雇用を国内にどうつくるか、そのために既存の企業がどう努力をするのか、新たな事業に挑戦する人をどうつくり出すか、あるいは海外から投資する人も、質の高い雇用をつくるのであればそれを還元することも必要だと思う。結果として、経済成長の戦略によっていかに雇用が増えるか、それに伴って賃金がどう確保され、それが個人消費にも反映されていく、ということを考えていくべきだ。特に人口が減少するので、安い賃金での雇用というよりも、高い賃金がもらえる、付加価値を生むような雇用を、どのように国内につくるかが、非常に重要な政策だと思う。

1月末のダボス会議で、多国籍企業による中国への研究所設置件数について、4年前は200件だったのが現在では700件程度に増えたという話があった。研究所は高い付加価値を生む雇用の場だと思うが、中国やインドに増えるのではなく、もっと日本に増えるような政策が要ると思う。そうすると、それを支える人材をどう育てるかも必要となる。現在、学力が低いという問題があるが、より質の高い人材をどう育てるかも、これからの教育改革の大きな柱になるのではないか。

Q:「底上げ」戦略に絡めて、政府は産業界や労働界との円卓会議など具体的に進めたいようだが、産業界としてどのようなことができるとお考えか。

北城: 個別企業に関しては、それぞれの企業が成長を目指して努力をしており、雇用の場も増やそうとしている。産業界からすると、労働・雇用政策において、企業の競争力が出ないような労働政策は、企業にとっても日本にとっても好ましくないので、そのような意見表明はできると思う。

新たな事業をつくる起業家、ベンチャーがもっと出るような、税制を含めた仕組みをもっとつくっていただくことで、産業界もいろいろな挑戦ができると思う。産業界として考えていかなければならないのは、不採算事業を守るという発想から、どう採算の高い事業に転換するか、ないしは、より付加価値の高い新たな事業をつくり出すかに努力すべきで、衰退産業の雇用を守るという政策は、必ずしも国内に高い付加価値を生むわけではない。経営者も、より業績の高い、成果の高い分野に事業構造を変えていくという努力は要る。働く側にもそれに備えた覚悟が要ると思う。より質の高い、付加価値の高い仕事は、それだけ高い技術や経験を要求するので、それを身につける努力も要るし、それに対する教育の場も必要だ。質の低い仕事で高い処遇を得ることは、国境を閉鎖しない限りない。現在のように、できるだけ国境による差別をなくしていこう、いろいろな国の人たちが活躍の場を提供していこう、特に日本は先進国として、アジアの国々をはじめ発展途上国が活躍できる場を阻害すべきではない。発展途上国でできる仕事で、そのような国々が素晴らしい成果をあげるのであれば、そのような分野は発展途上国の人々に任せ、我々はより質の高い先進的な分野で努力をすべきだし、それができる人材を育てていくべきだと思う。

Q:春闘において、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がよく使われているが、経済界と労働界とでは、この言葉の認識が違うように感じる。「ワーク・ライフ・バランス」をどういうものとお考えか、なぜ必要かについて、見解を伺いたい。

北城: 働く側にとって、仕事のために使いたい時間と個人生活のために使いたい時間の配分は、一人ひとり違うと思う。自分が必要だと思う優先順位に応じて、「ワーク」と「ライフ」とをバランスすることができる働き方が必要だということを「ワーク・ライフ・バランス」といっていると思う。人によっては、ある時期は仕事に比重をおきたい、個人生活は少し犠牲にしても仕事をしたい、という時もあれば、働く時間を減らして今は家庭生活を重視したい、という時もあり、これは人によっても時期によっても違うだろう。働く側が自らの判断に基づくバランスをとった働き方ができる雇用の場をつくっていくことが大事で、家庭生活に時間を使いたいという時に、家庭に戻ることができないような仕事の仕方をせざるを得ないというのは、「ワーク・ライフ・バランス」が取れない、ということだ。

長時間労働も含め、個人が自ら必要だと思う判断ができるような環境を作っていくことが大事だ。いまの日本の労働時間からみて、長時間労働をしなければならないというのは、必ずしも働く側が希望しているというよりも、自分の優先順位がうまくバランスをとって実現していないということになるのではないか。我々は、短時間で成果を上げる仕事の進め方にもっと努力すべきだと思う。長く会社にいることが「あの人は頑張っている」という評価に繋がることは健全ではない。経営者が全員ワークだけに優先順位をおいているわけでもないので、トップ自らも休むことが必要だ。

Q:安倍内閣の支持率低下が進んでいる。先の中川幹事長の発言にも見られるように、与党と内閣との関係がぎくしゃくしていることが、支持率が上向かないひとつの要因になっているのではないかという見方もあるが、これについてはいかがお考えか。

北城: 政府と与党の関係がぎくしゃくしているとは思わない。安倍政権として政策課題の優先順位をどこにおいて、その政策が具体的に実現されているということが、支持を得るために非常に重要だと思う。審議会等がたくさん作られていること自体は、必ずしも悪いことではないと思うし、我々は総理がリーダーシップを発揮して政策を実現していく、イギリスの内閣委員会のように、主要な閣僚ないしは総理が、重要政策については自らの考えで政策を立案し、実行していくという体制そのものは必要な仕組みだと思う。その結果として、具体的にどういう政策が作られ、それが実行に移され、それが経済、あるいは我々の生活にどのような良い影響を与えたか、というのがまだ見えていない段階ではないか。支持率等もあるが、いま重要なのは政策を実現すること、その過程では賛否両論あると思うが、総理が必要だと思われる政策を実現するなかで世論の支持を得るという風に考えていくべきだ。

国民の関心が高い課題としては、年金を含めた社会保障や医療の問題がどう持続可能な仕組みになるか、最近言われているような格差の問題も含め雇用の場がどう確保されて国民生活がより豊かになるのか、また、教育やFTAの推進など、具体的に政策として実現されていくことが重要だ。将来のビジョンだけでは、なかなか国民は納得できないと思うので、国会の場で政策が明確に出されることも必要だと思うし、政治資金の問題も、より国民が納得できる形で情報が開示されることは、支持率に良い影響を与えるのではないか。

Q:ある経営者から「過労死は自己管理」という発言があったが、これについてどのようにお考えか。

北城: どういう状況のなかでどういう風に発言されたものかがよく分からないが、過労死自体を認めるような発言ではないと思う。従業員が健全に働けるような雇用の場を提供することは、経営者の責任でもあり、また、働く側も仕事に時間を使いたいという気持ちはあるにしても、個人の健康を害するような働き方をすること自体は問題だと思うので、仕事が忙しいといってもやはり、個人の健康や個人の家庭生活とのバランスを考えて働くべきだ。

より質の高い雇用の場をつくり出すことにもっと努力すべきだ。より優れた職場があれば、過重な仕事をしなければならない、あるいは処遇が低い仕事から移っていくことができると思うが、移る先の仕事がないということが、条件の悪いところで働かざるを得ない環境を作り出すと思う。これからは、単に経済成長といわずに、質の高い雇用の場をいかに国内につくるか、そのための政策をどう実現するか、イノベーションによって雇用の場をどう拡大していくか、ということが大事だ。これは地方でも同じで、地方の経済が非常に厳しいというときに、単に公共事業で雇用の場をつくることは持続可能ではない。地方においても、いかにより高い処遇を提供できるような雇用をつくるか、という発想が要ると思う。

(文責: 経済同友会事務局)

以上


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