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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2006年10月11日(水)
出席者 北城恪太郎 代表幹事
小島邦夫 副代表幹事・専務理事

記者の質問に答える形で(1)北朝鮮の核実験、(2)安倍総理の日中、日韓外交、(3)イラン・アザデガン油田の権益縮小、(4)経済財政諮問会議、(5)歳出・歳入一体改革、(6)月例経済報告と景気動向、(7)教育再生会議、(8)官邸の機能強化、(9)格差固定化の防止、について発言があった。

Q:北朝鮮の核実験の実施について、改めてお考えを伺いたい。

北城: 国際社会が北朝鮮の核実験への懸念を表明している中で、実験を強行したことは、非常に遺憾である。これからいろいろな制裁措置を検討すると思うが、国連や6カ国と協議のうえ、厳しい態度で臨むべきだ。北朝鮮がこれから国際社会の一員として責任ある行動をするためにも、これまでの外交努力だけでは成果が出ていないので、制裁措置が必要になると思う。

この問題に関連して、今回安倍総理が中国、韓国を訪問されたことは非常に意義のあることだ。これまで日中、日韓の首脳レベルでの交流が出来ていなかった中で、今回実現したことは、北朝鮮の問題も含めて北東アジアの安定を考える際に非常に意味がある。政権発足直後にもかかわらず、この2カ国の訪問を決めたことは、意義のあることだった。

Q:今後、北朝鮮に対する制裁措置が検討されると思うが、発動された場合、日本経済に与える影響をどう考えるか。

北城: 北朝鮮との直接貿易額はそれほど大きくないので、直接的に大きな影響があるとは思わない。核保有国に関しては、リビアが核開発を放棄して国際社会の一員になることで、発展のための方策を指向したのが非常に良い例だ。一方で制裁措置、一方で核開発の放棄に発展の道があることを説得していくことが非常に重要だ。

Q:本日のシーファー米国大使の講演会でも話題になったが、海外から日本の核武装論があがっている。これについてはいかがお考えか。

北城: しばしば米国政治家や実業界など海外の方から、北朝鮮が核武装した場合の対抗策として、日本の核武装も必要になるのではないかという議論について意見を求められる。安倍総理がおっしゃったように、日本は核武装する考えはないということでいいし、それが適切な判断であると思う。経営者でも、日本の核武装が必要であるという人は少ないと思う。日本の世論の一部には、日本の核武装の必要性をいう人もいるが、日本の国民感情、核による被害を受けた日本として、国際紛争の解決手段として軍事力を行使しないという日本の平和主義の中で、核武装するという考えは、日本の将来にとって好ましくない。日本が核武装をしていないことが、国際社会の中で信頼を得ている一つの柱である。核武装をしていないということで、日米安全保障に基づき、アメリカが日本の安全を守るという位置づけも明確になるし、それも意義のあることだ。従って、日本の核武装については反対である。

Q:北朝鮮への制裁措置について、民間企業はどのような対応を取るべきか。

北城: 国としての政策を決めていくが、日本だけでは効果がなく、国際社会と連携しての制裁措置である。制裁措置が決まれば、当然民間企業もそれを尊重した行動をとることになるだろう。北朝鮮への貿易等については、個々の企業でもそれぞれのご判断で既に取引を停止しているところもある。日本だけが制裁措置をとって効果があるものではなく、中国や韓国を含めて国際社会の連携が必要である。一方で、制裁措置をとった場合に、北朝鮮がどのような政策を取れるかということも、多様な選択肢の検討の中で考えていかなければならない。望ましい方向として、リビアのような方向に北朝鮮が進んでいくことを期待したい。

Q:総理の中国、韓国の訪問の中で、靖国参拝については「適切に対処する」というだけで、参拝の有無を明言していない。この姿勢で今後、両国の理解を得られるとお考えか。

北城: 今回の安倍総理の発言に対して両国とも理解を示しているということだ。外交上、靖国参拝が大きな問題になる懸念材料でもあるだけに、明確に行く、行かないを表明しないというのは、一つの外交手段だと思う。行かないといえば国内でいろいろな問題が出るだろうし、行くといえば両国やそれ以外のアジアの国々からの反対もあるので、適切に対処するというお考えでよろしいのではないか。

Q:特に中国との間では、政冷経熱と言われてきたが、今回の首脳会談復活を受けて、日本経済にどのような影響が出てくるとお考えか。

北城: 経済が良好な関係であるというのは大前提として重要だが、首脳レベルで意見交換をできる場があることは重要だ。中国との関係でも、資源、国境、歴史認識・教育といった課題がある。こうした中で首脳レベルが意見交換の場を持ち、相互信頼の醸成に努めることは非常に重要だ。今回首脳会談が再開できたことは非常に意義のあることだし、今後会談を続ける中で、双方にとって利益のある課題を取り上げながら、一歩一歩、政治レベルでの良好な関係を構築していくことが重要だ。今回、戦略的互恵関係を求めていくということなので、東アジアの安定にとっても重要だと思う。

Q:安倍総理が、就任後に最初に中国と韓国を訪問したことは好感として受け止められているが、日本企業にとってこれからどんな効果があるのか。

北城: 直接的な効果というよりも、中国や韓国のような非常に大きな経済力をもつ近隣諸国と政治の面でも良好な関係を作っていくことは、日本の発展にとっても重要なことであり、民間企業にとっても好ましい。日米は既に良好な関係にあり、安倍総理が米国との関係を重視することは米国も理解しているので、最初の訪問国として適切な外交判断であったと思うし、成果も得られたのではないか。小泉政権の中で、首脳レベルでの会談が実現できていなかったという障害に対して、就任直後にこの問題を対処したことは、安倍政権にとって大きな成果を上げたと判断すべきである。リスクは常にあるが、まずは中国と韓国を選んで訪問されたことは、大変適切なご判断だったと高く評価したい。

Q:イランのアザデガン油田の権益が10パーセントまで縮小したが、日本の今後のエネルギー政策にどのような影響を与えるとお考えか。

北城: 日本の自主油田、自主エネルギーの確保という観点からは非常に残念だが、一方で、国際社会がイランの核開発に懸念を持っている中で、その一員として責任ある行動を取ることも重要だ。そういう視点で見れば、全く権益が無くなったということではないので、やむを得なかったと思う。

Q:経済財政諮問会議が、今週末新しいメンバーで開催される。前政権では改革の司令塔としての役割を担った同会議で、当面、取り上げられる課題として何を期待するか。

北城: 安倍政権が発足して、外交面で非常に大きな成果を上げたと思うが、これから国内の経済政策、財政再建に取り組んでいくということなので、具体的な政策が打ち出されることを期待している。特に、財政再建について具体的にどのように実現していくのか。我々としては、歳出削減を重視して、2011年のプライマリーバランスの均衡を達成するために必要な16兆5千億円の歳出削減をどう実現するかを取り上げていただきたい。「骨太の方針2006」の中で、最大14兆3千億円までの歳出削減の方針、枠組みが作られているが、残り2兆2千億円についても、まだまだ歳出削減の分野がたくさんあるので、歳出削減を最優先するという総理の言葉通り、具体的にどのような施策で実現するかが一番重要だ。2009年の基礎年金の国庫負担比率を3分の1から2分の1に引き上げる財源として消費税が必要である、という議論を今からすることはおかしい。まずは、歳出削減で財政再建を果たすという努力が必要だ。今から増税という議論をすれば、歳出削減が十分達成できない。将来的にプライマリーバランス均衡後も、財政再建のための歳入確保も必要なので、消費税の増税が必要になることを否定するわけではないが、今からその議論は早い。

イノベーションに基づく経済成長戦略ということで色々な方針を出されているが、イノベーションを推進するために具体的に何をするのか。「イノベーション25」という2025年に向けてイノベーションを推進するという方向は適切だと思うが、実現の手段として何を実行するかという具体策が、国内の成長戦略として打ち出されることを期待している。

小島: 小泉構造改革はまだ緒に就いたばかりだ。政策金融、地方分権等いろいろな問題が残っており、これからそれを具体化するプロセスに入っていくので、この辺りも諮問会議で議論を進めて欲しい。歳出削減に関しては、差し当たって来年度予算にどれだけのことを組み込めるかが重要だと思うので、しっかりと議論して欲しい。

Q:主要閣僚の発言によると、消費税率引き上げは来年の参議院選挙が終わってからということで、成長戦略にウエイトが置かれているように思えるが、消費税論議の来秋の再開がまだ早い、という理解でよいか。

北城: 成長戦略の中には、イノベーション以外にも規制改革、FTAの推進、地方の主権が生きる経済政策といった課題があるので、こうした政策課題に取り組んでいただきたい。構造改革のいろいろな課題について、実現できていないものはたくさんある。例えば、政府系金融機関をひとつに統合することは決まったが、具体的にどう実現するのか。特別会計の見直し、公務員制度などの多大な課題があるだけに、まずこうしたことを着実に実行していただくことが重要だ。

選挙があるから消費税議論を先延ばしにするということではなく、まず歳出削減を重視して財政再建を行うということを現実化することが大前提だ。その上で成果を見ながら、歳入確保をどうするかは次の検討課題だ。

小泉前総理が消費税の増税は行わない、歳出削減で財政再建をする、構造改革の実現を図る、という政策を取ったのは適切な判断だったと思うし、安倍内閣にも同じような方針で、まず歳出削減に取り組んでいただきたい。結局、歳入確保というのは国民の負担を増やすということで、経済活動に悪い影響を及ぼすので、まずは歳出削減だ。

Q:月例経済報告で11月にいざなぎ景気を越えるといわれているが、一方で所得がほとんど伸びておらず、実感なき景気拡大と言われている。いざなぎ越えについて、足元の景況感も踏まえてどう見ているか。

北城: 景気が持続的に拡大していることは大変結構なことだ。かつての経済成長に比べて、成長率が低いということが、景気が回復している、拡大が続いていることの実感を得られない原因になっていると思う。企業業績の向上に伴い、給与所得の拡大、正規社員の雇用の拡大も行われているだけに、これから持続的に経済が発展する基盤は整ったと思う。今後いかに持続して成長できるかが重要だ。かつてのような高度成長を目指すべきではないし、現実にその可能性は無い。これからは米国経済が停滞する、あるいはその影響がアジアの国々の成長の制約になるという可能性がある中で、世界第二の経済大国である日本として、内需主導の経済政策をどう実現していくか、ということが日本に課されたに大きな課題だ。先ほど申し上げた経済成長戦略を実現する中で、日本が世界の経済発展にどのように貢献できるかという視点が大事だ。日本企業の国際競争力を高めることについて国際的に競争力がある税制を模索することも重要だし、個人の所得税についてもグローバル競争における国の競争力の視点として重要なので、法人税、所得税を国際競争力のある形に変えていくことも、日本が持続的に成長するための重要な課題だ。

Q:教育再生会議のメンバーが決定したが、議論の対象として期待するところを伺いたい。

北城: これまで教育改革というと、教育分野の専門家といわれる方々を中心として議論が行われてきたと思うが、今回は経済人など幅広い分野の方々、あるいは教育分野でも教育委員会等で実際の教育活動に携わっている方が参加されており、大きな枠組みをつくるうえでは非常に優れた組織が作られたのではないか。これまでも教育改革の具体的な内容については、中央教育審議会等の専門家の間で議論が行われていたが、今回は教育界だけではない方々が参加して大きな枠組みを作るということなので、大きな進展が見られることを期待したい。特に、人材育成は国の成長にとって非常に大きな視点である。もちろん倫理観、規範、規律、人への思いやり、国を愛する心等、倫理に関する教育も重要だが、一方で国の成長、イノベーションの実現のために、どう人材を育てていくかが重要な課題だ。今回新たな枠組みで教育改革の大きな方針が作られることを期待したい。

京都市の門川教育長がメンバーに入っているが、京都市は教育改革について非常に優れた成果を上げている。教育委員会の役割等についていろいろな疑問が呈されているが、現実に今の仕組みの中でも大きな改革を実現されているし、教育面でどのような制度改革が必要かについても、現実に即していろいろな改革を実行した経験をお持ちの方だけに、教育分野の専門家だけが集まると教育改革はなかなか難しいという話が出るが、非常に見識のある方なので期待したい。例えば、指導力不足の教員への対処についても的確に対応されており、教育の現場から外れてもらうなど現実に実行されている。学校の評議員制度等いろいろな改革を実行されているので、現実的な改革案が出てくるのではないかと期待している。

Q:経済財政諮問会議のメンバーについてどのように見られているか。

北城: 今回も経済人から2人、学識経験者から2人という前回と同じ構成が取られており、それぞれ見識のある方である。これまで経済財政諮問会議は、小泉構造改革推進において果たした役割が大きいので、安倍内閣でも改革の司令塔としてその役割を果たすことを期待したい。

Q:労働界から入っていないことについてはどのようにお考えか。

北城: 労働界から入らなければ国の政策が決められないということではないと思うし、経営者も学識経験者も、働く人たちにとっての課題等をふまえて政策を決めていかれると思う。

Q:歳出削減の中で、年度ごとに主要な改革で具体的な数値目標を出しているが、このようなやり方でいいのか。

北城: まず、「骨太の方針2006」において、2011年にプライマリー・バランスの均衡を達成するために、歳入拡大も含めて16兆5千億円の歳出削減が必要である、と、財政再建に向けた具体的な数値目標を提示されたことは非常に意義があった。もちろん、景気の動向や税収の動きによって、この数字そのものは必ずしも予定通りにはいかないかもしれないし、社会保障の歳出削減が思った通り進まないというリスクもある。しかし、その中で一つの目標を出されたことには意義があり、それによって具体的な政策の取捨選択が進む。これから、14兆3千億円の歳出削減について、具体的な点を詰めなければならない。数値目標を作ることは難しいが、年度ごとにおおよそどのくらいの削減をするかという目標を作らないと、来年度の予算編成で、国債の発行額を削減するという目標を作っても、その先に、2011年に向けて財政再建がどのように実現するか、なかなか分りにくい。これから経済財政諮問会議等を通して、財政再建をどのような工程で実行していくかを作り上げていただくことは大事である。簡単ではないが、是非努力して欲しい。年度ごとに作ることは重要であるが、景気の動向や社会保障の推移は予測できないので、作った数値目標通りには行かないことを前提にしながら、一つの工程を作っていただきたい。

Q:官邸機能の強化ということで、5人の補佐官という体制をひいたが、これについてどうお考えか。

北城: 総理主導、あるいは官邸主導で政策決定を実現、推進するために、官邸機能の強化を図られたことは非常に重要である。政策の実現、実行の段階で官僚機構は非常に重要な役割を果たすが、政策決定の過程で官邸に有能な人材は配置されたというのは、官邸主導の体制を実現するために重要な手段だと思う。5名の補佐官を任命されたのは大変結構だと思うし、官房長官をはじめ副長官にも優れた人材を確保されたのではないかと思う。

Q:大臣との役割分担がはっきりしない等の懸念もあるが。

北城: 大臣はそれぞれの官僚機関として政策を実行する上での責任をもつが、全体としての総合的な政策方針を決める上で補佐官がいるというのは、総理ひとりで全ての情報収集はできないし、政策判断のための材料を提供するのは重要なことだと思うので、決して官僚機構や大臣との役割分担で問題が出ることはないと思うが、これから政策決定の過程で具体的な問題があれば対応していただければよいのではないか。

Q:格差という現象が見られるが、格差の固定化をなくすために、各企業が取り組むべきことはあるか。また、あるとすればそれは何か。

格差が全く存在しない社会は活力がない社会である。それぞれが努力をして、努力の成果に応じて報酬を得られる社会が活力ある社会であり、結果として、より多くの人が豊かな生活ができる社会である。現実に景気の回復に伴い、職場が提供され、格差の問題に対しても解消の方向に進んでいる。格差が固定する社会は好ましくないし、いくら努力しても認められない社会は希望のない社会である。従って、格差が固定しない政策が必要である。国の政策も必要であるし、民間企業もそれぞれの企業が雇用政策を行い、格差が固定しない対策を採ることが重要である。

一番重要な点は、教育の機会が提供されることだ。親の所得が高ければ優れた教育の機会がある、という仕組みは格差の固定化につながりかねない。奨学金制度を含めて、教育の機会が格差を拡大することがないような制度設計が要る。安倍政権では教育改革に取り組むと思うが、教育の分野は重要である。塾に行かなければ、優れた学校に行けないとか、有名な大学に入れなければ希望する会社に入れないというような、これまで社会で作り上げられてきた価値観にも問題がある。実際に企業で学生を採用する際に、有名大学で優れた成績を取ったから採用するということは行っていない。当会の教育委員会のアンケートでも、ほとんど全ての企業が面接で採用を決めていると回答している。有名大学に入ることが、将来のキャリアを保証するものではないということを、経営者は伝えていかなければならない。

(文責: 経済同友会事務局)

以上


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