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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2006年07月25日(火)
出席者 北城恪太郎 代表幹事
小島邦夫 副代表幹事・専務理事

記者の質問に答える形で(1)王子製紙の北越製紙に対するTOB、(2)WTO交渉の凍結、(3)自民党総裁選、(4)昭和天皇の発言メモ、(5)日銀・福井総裁の投資問題、(6)OECD、(7)金利の追加引き上げ、について発言があった。

Q:王子製紙の北越製紙に対するTOBについて、同じ業界の中で大企業同士の攻防ということで、これから日本が買収時代に入るという認識も出てきているが、この件についての見解を伺いたい。

北城: 日本企業間での本格的な買収提案ではないかと思う。企業に対する敵対的な買収提案なのか、現経営陣に対するものなのかという議論もあるが、最終的には両社の経営陣が企業の中長期的発展をどのように目指すかという経営戦略、その中には従業員の考え方や企業文化もあると思うが、それぞれの考え方を示して、最終的には株主がどう判断するかだと思う。経営効率を高める手段として敵対的も含めた買収提案は今後も出てくるのではないか。

Q:WTOの交渉について、農業分野の協議が停止して、交渉が長期間にわたって凍結されるのではないかという見通しが出ているが、この点についてはどうお考えか。

北城: 日本にとって貿易は国の発展にとって重要な手段であり、できるだけ早くWTOが再開されることを期待している。日本側もWTOの成功に向けて貢献できる分野を考えていかなければならないのではないか。その中で、日本にとって制約になる農業問題も含めた対策を総合的に考える必要があるのではないか。さらに、WTOが停滞する過程ではFTAの推進も重要になると思うので、できるだけ質の高い、排他的ではないFTAの協議を、今後一層推進していただきたい。

Q:保護の色彩が大変強くなっているという懸念が出ているが、どうお考えか。

北城: 保護政策をとるということは、貿易を含めた世界の発展に貢献しない、あるいは世界経済にとっては制約要因になる。日本経済の発展、貿易の健全な発展は、日本の国益にとっても重要だ。日本は先進国であり世界第二の経済大国という立場も踏まえて、保護政策ではない、より開放的な貿易、投資政策が実現するよう努力するべきだ。是非、政府には総理のリーダーシップの下でFTAやWTOの推進を実現していただきたい。日本の場合、省庁縦割りということになると、国際的な交渉の過程でリーダーシップを発揮することは難しいという側面もあるので、基本的には政府としての方針をとりまとめて、是非積極的に推進していただきたい。経済同友会の提案にもあるが、FTAやWTOのような貿易、投資協定推進の分野でも、経済財政諮問会議のような推進委員会、英国型の内閣委員会のような形で、総理を委員長とし、関連主要閣僚と民間議員が参加したような政策立案の仕組みがないと、各省庁をまたがる課題への対応が難しいと感じている。

Q:自民党総裁選に有力候補である福田康夫氏が出馬しないということを明確にされたが、この点ついては、どうお考えか。

北城: 最終的にどなたが立候補されるかは確定していないが、福田さんが総裁選に出ないという意向を表明し、安倍官房長官が有力ではないかと言われている。政策を中心とした議論が行われずに総裁が決まるというのは好ましくない。有力な候補者が出てくるなかで、それぞれがどのような政策を実現するのか、財政再建、成長戦略、外交政策、安全保障等について、どのような政策を実行するのかというマニフェスト、政権公約を掲げて総裁選を実施していただきたい。それによって総裁が決まることで、政治的に非常に難しい政策を実現する力になるのではないか。

なかでも財政再建について多くの方が取り上げているが、経済同友会は2011年までにプライマリーバランスを均衡させる過程で、基本的には増税ではなく歳出削減に切り込んで、増税なき財政再建を実現していただきたいと考えている。2011年を待つ必要はなく、より早く財政再建が実現できれば、それも好ましいことだ。その過程で、しばしば議論されている道州制の推進についても、具体的にどのように実現するかを政権公約の中に入れていただきたい。道州制の実現によって、中央から地方へというこれまでの構造改革の具体的な手段が実現していくわけで、これなしに公務員制度改革や交付税の改革は難しい。是非、道州制を推進する候補が総裁選で選ばれることを期待している。各候補がマニフェストを出したうえで、我々はこうした観点からも評価していきたい、と思っている。

Q:自民党総裁選で、安倍官房長官が有力とみられているが、安倍さんの印象を伺いたい。

北城: 官房長官として政府の政策について適切なご説明をいただいていると思うが、経済政策、財政再建、外交などに関しては、印象ではなく、どのような政策を掲げるかが非常に重要だ。マニフェスト、政権公約をまず明確に出していただき、そのうえで総裁選が行われることを期待している。逆に、マニフェストの提示なしに総裁が決まってしまうことに対して危惧を持っている。是非、政権公約を作っていただき、それに基づいて我々は判断したい。

Q:現時点では官房長官としてお話されていると思うが、経済政策などについて安倍さんにどのような感想をお持ちか。

北城: 感想や印象ではなく、総裁候補として立候補されるときには政権公約を出されると思うので、政権公約を出していただき、それに基づいて各候補が議論するなかで総裁が決まるという形を取っていただきたい。具体的にいつ正式表明をされるか分からないが、その際には是非政権公約を出していただきたい。これは安倍さんに限らず、他の候補の方にも出していただきたい。それによって具体的な政策が明確になるのではないか。

Q:安倍さんと個人的にお話される際の印象はいかがか。

北城: 官房長官なので、時々は経済同友会の提言等でお話しすることはあり、ご質問などは非常に的確だと思う。先ほどお話したように、印象やある分野でのご理解が深いということではなく、どのような政策を実行されるかだ。例えば、小泉総理は明確に、郵政民営化を行う、構造改革を推進する、などの基本的な方針を出されて総理になられたことが、政策実現の非常に大きな力になった。マニフェストを出さずに総理に就かれると、それ以降の政策実現について、大きな支援する力が働かないことが心配される。マニフェストを出すことで、党内の支持を得ることが、それ以降の政策実現に重要ではないか。そうでないと、各派閥や族議員の意見が政策に反映されることを心配している。これまで小泉構造改革として、経済運営の中心として改革が進んできたが、次の総理のもとで揺り戻し、後退が起こることを心配しているので、これまで行われてきた構造改革路線を、具体的にどのように実現するか、例えば2011年のプライマリーバランス黒字化に向けてどのような手段をとるかということを、明確に示していただくことが重要だ。

Q:安倍さんとのお付き合いは、官房長官として提言などを持っていく程度のものか。

北城: 基本的にはそうだ。

Q:先日報道された昭和天皇の発言メモが発見され、昭和天皇が靖国を参拝しない理由を示しているといわれている。先日、日中関係の障害として靖国参拝があるという提言をした経済同友会として、どのように受け止めているか。

北城: メモについては、昭和天皇のお考えを示したものではないか、という印象を受けた。一方で、経済同友会の提言は日中関係について述べているが、日韓関係も含めて近隣、特にアジアの国々と良好な関係を構築することは、日本の将来の発展や安全保障の観点で非常に重要なことであり、そのための障害のひとつとして首相の靖国参拝があるとすれば、これを取り除くためにも再考を求めたい、という意見を出した。ただし、靖国参拝だけで全ての問題が解決するとは思っていないし、他にも資源、領土、歴史観等多くの問題があると思うが、良好な関係構築の障害の一つとなっているということで、再考を求める提言を出した。これは、昭和天皇のお考えとは関係なく、独自の考え方として提言したわけで、これによって考えが変わるということではない。

Q:昭和天皇の発言メモにより、分祀論が広がりつつある。5月の中国委員会提言では無宗教の国立追悼碑建立を提案されていたが、分祀についてはどのようにお考えか。

北城: 分祀もひとつの解決策だと思う。特に、A級戦犯の合祀に関する批判が大きいことを考えれば、分祀論はひとつの考え方だ。しかし、国や他の団体が分祀すべきという意見を言っても、宗教法人として靖国神社がどのように考えるか、あるいは宗教としてどのような立場をとられるかに依存する。我々から(分祀)すべきといって実現できる手段かどうかははっきりしないので、我々は分祀論ではなく、別の施設を作っていただくことが必要ではないかということで意見を述べた。国の施設として分祀を実現するということは、宗教法人に国が関与する色彩が出るのではないかということなので、我々はそういう立場では発言していない。靖国神社で分祀されることを決めれば、それはひとつの解決策だと思う。

Q:日銀の福井総裁の投資問題について、先日新しいルールが発表され、村上ファンドのようなものへの投資は全面禁止等いろいろと制約が課されたが、これについてどうお考えか。

北城: 今回、日銀総裁の投資問題に関連して、日銀内部の規定として検討されてきた投資に関する規約を見ると、海外の中央銀行よりも一段と厳しいルールだという印象を受けた。一方で、これだけ社会的に批判があったことを踏まえれば、こうした規約を作ることは妥当なことではないかと思う。

Q:これまで、(福井総裁の投資問題について)何の問題も無い、あるいは、あるとしても名前を使われたことと発言されてきたと思うが、一方で投資にブレーキをかけるようなことは発言されていない。今回の、投資そのものにストップをかけるルールを決めたことを妥当という評価と、これまでの発言とは整合性が取れていないと思うが。

北城: 私はそこまでのルールは必要ないと思っている。しかし、これだけ社会の批判があって、日銀総裁の政策決定の考え方に疑問を呈する意見が出てきているなかで、こうした対策をとることは妥当だと思う。ルールそのものについては、株式や投資信託への投資を行うべきではない、という考えは持っていない。本来はここまで厳しい制約を作る必要はないと思うが、これだけ社会的な批判があるなかで日銀がルールを決めたということについて、妥当ではないかということだ。例えば、FRBやヨーロッパ中央銀行のルールと比較して、今回のルールは一段と厳しいという印象を受けている。

Q:国民の批判があったから作ることについては、どうお考えか。

北城: そこまでしなくても日銀の本来の政策決定に大きな影響はなかったと思うし、福井総裁の行動についても問題はなかったと思うが、これだけ批判があるなかでこうしたルールを作ることについて、やめるべきだというような意見ではない。

Q:本来的には、日銀総裁という立場であっても、ファンド投資は可能だということか。

北城: 海外の例を見ても、株式投資について、金融株には投資してはいけない、金利の改定が行われる前後、特に前一週間から10日間は株の売買をしてはいけない、等の制約は設けているが、投資ファンドが全ていけないということではない。村上ファンドの場合は違法と見なされる取引があったということで批判があるのは当然だが、ファンドに投資してはいけないということでもない。株式や投資信託、ファンドというのは、市場経済の重要な機能になっているわけで、これを否定するものではない。日銀総裁という地位を利用して得られる情報で投資をする、例えば金融機関の検査を行う立場の日銀が金融機関の株を保有する、ということに対する批判があるのは当然理解できるし、それに対する制約は必要だ。今回の制約はそれ以上のものだと思う。

Q:日銀総裁の投資問題について、株、投資信託や投資ファンドをすることは、日銀総裁であっても可能ではないかというお話であったが、それは代表幹事個人としてのお考えか、それとも経済同友会としてのお考えか。福井総裁もそのようにお考えなのか。

北城: この件について福井総裁とお話をしたことはないので、福井総裁がどのようにお考えかはわからない。経済同友会として、この問題について委員会等を構成して議論してないので、代表幹事としての個人的な考えである。

小島: 日銀総裁が現役として株を買うことがいいことかどうかは別の話である。日銀総裁には相当な情報が集まるので、実際に買えるものはないと思う。今度の件で一番心配なのは、せっかく貯蓄から投資へという流れが起きかかっていたところへ、やはり投資は悪いのだ、という認識が世の中に広まるのは危険だと思う。

Q:株の認識について、北城代表幹事と小島専務理事の間で、相違があるようだが。

北城: ほとんどないと思う。ほとんどの経営者は変わらないと思う。

小島: 日銀総裁という現役の立場で買うことと、過去に買ったものを持っているということは、別の話である。

北城: 私は株を買ってもいいと思っているが、インサイダー情報に触れるようなもので売買しては問題である。金融機関には金融検査が入るので、個別の金融機関については、日銀総裁は一般の投資家以上に情報をもっている。そのような方が株を売ったり買ったりするのは問題である。しかし、株式の保有について問題である、投資信託・投資ファンドの保有が問題であるというのは、株の投資は健全な経済活動ではないという印象を与えるとすれば、株も、投資信託・投資ファンドの保有も問題はないと思う。ただし、インサイダー情報に基づく取引があってはならない。村上ファンドが良かったかどうかは別問題である。

Q:OECDの対日経済審査報告書で、日本の相対的貧困率がアメリカに次いで先進国で2番目の13.6%という数字が出てきた。報告書では、日本の格差拡大に対して懸念を示している。低所得層の支援や自立、教育など具体的な項目を挙げているが、この問題に関してどうお考えか。

北城: 格差が拡大しているかどうかについては色々なデータがある。特に問題視されているのは、若年層における格差拡大ではないかと思う。格差が存在することが問題というよりも、格差が固定しないことが重要である。努力することで自分が求める生活が実現できる社会が、活力ある社会だ。高年齢の方は、人生のなかで色々な価値観の下で生活をされてきた。その結果として、ある程度の格差が出ることはあり得る。若いときにお金を使いたい方もいるし、お金を使わずに退職した後で生活を豊かにしたいという方もいて、それはそれぞれの価値観である。私は、若年層における格差が拡大することが問題であると思う。

まず挑戦の機会を与えることが必要である。また、親が豊かであるから優れた教育を受けられる、親に十分な所得がなければ十分な教育が受けられない、ということは、世代間の格差の固定に繋がる。格差が固定しないこと、あらゆる人に挑戦の機会が提供されることが大切である。経済活動に参加できないハンディキャップのある人への優しさや暖かさは、格差とは別に、社会保障政策として、セイフティネットとして提供すべきである。

特に、大学の奨学金制度などは、さらなる充実が必要である。国立大学の授業料は、多くの人が国立大学に進めるようにとある程度低い水準で抑えている。諸外国と比較すると、日本の国立大学の(授業料の)水準は低い。一方で、十分な奨学金があるかといえばそうではない。多くの家庭では、親が授業料を出す。欧米では、授業料は高いが多くの奨学金があり、意欲があって優秀な学生は、奨学金で大学等に進学できるので、格差が固定しないことになっている。奨学金の充実は大きなことである。併せて、塾と高校までの教育費が多大にかかることが一つの制約になっているとすれば、今のような受験制度、特に点数だけで入学を決めるような受験制度そのものを変えないと、今の初等・中等教育は改善できない。

小島: OECDの報告書では、一つの指標について格差が見られると書いており、全ての指標がそうであると言っていない。今の日本において、格差がないとは申し上げないし、あるのが当然であるが、代表幹事の発言のように、若年層のなかの正規雇用と非正規雇用との間に格差がある。ここはある程度考えていかなければならない部分である。

北城: 格差が全くない社会は、活力が全くない社会である。努力しても努力しなくても収入が同じである社会では努力しなくなり、今のような日本の生活水準は維持できなくなる。皆が努力し、努力が報われる社会が活力ある社会である。

Q:先日ゼロ金利解除を歓迎するコメントを出されたが、その後のマーケットの反応を踏まえて、次の追加リアクションについて、どうお考えか。

北城: まだ次の利上げを議論するのは早い。前回の日銀の金利引き上げについては、金利正常化に向けての第一歩である。適切なタイミングで実施していただいたということで、我々は賛成の意見を表明した。今すぐに、更なる金利の引き上げをしなければならないようなインフレや資産バブル的なものが起きているかというと、そうではない。これから、経済の実態を見ながら、適切なタイミングで、適切な金融政策に取り組んで頂きたい。具体的な時期を言うのはまだ早い。

(文責: 経済同友会事務局)

以上


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