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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2005年12月20日(火) 13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

冒頭、代表幹事より「第75回景気定点観測アンケート調査結果」について報告があり、その後、記者の質問に答える形で、(1)2006年度予算の財務省原案、(2)官のリストラ、(3)東京証券取引所のシステムトラブルとトップ人事、(4)日本のシステムへの信頼度、(5)黄金株の導入、について発言があった。

Q:コメントを発表されたが、来年度予算の財務省原案が内示された。8年振りに一般会計が80兆円を下回ったり、5年振りに新規国債の発行額が30兆円を下回るなど、緊縮型で歳出削減を徹底したと財務省は言っているが、本当に歳出削減が徹底されたかどうかの評価を伺いたい。

北城: 歳出削減に努力をしたことは評価すべきだ。国債の発行も30兆円を切る形に抑えたということで、小泉総理がこれまで掲げてきた財政再建への歩みを踏み出すことについては、一歩前進と評価している。一方で、歳出削減については公務員制度の改革も含めて経営者の視点から見ればまだまだ不十分だ。国の財政の中で無駄が無いか、というと、会計検査院の結果を見ても、いろいろなところに無駄があり、不必要なところにお金が使われている。無駄な額の大小はあるにせよ、こうした問題に踏み込まずに増税ということでは、なかなか国民の納得は得られないのではないか。一本前進だが、まだまだやるべきことはある。

小泉総理は「改革続行内閣」といわれたが、我々は「改革促進内閣」であっていただきたいと考えている。特に、任期は9月までなので、これまでのペースから更に一段と踏み込んで、将来の改革への道筋を、今後作っていただきたい。

Q:民間経営者からすると歳出削減の歩みは遅いということだが、民間でもリストラされる側はそれなりに抵抗する。公務員という雇用形態によって途中でリストラされないということもあるが、総理がリーダーシップを取っていながら、官のリストラが進まない元凶は何だとお考えか。

北城: 企業経営でも、利益が出ているときには、経費削減、人員削減は難しい。危機感があれば改革も進む。これだけ大きな財政赤字があっても、毎年の運営ができないということではないので、十分な危機感が共有されていない。その上で政治がリーダーシップを発揮する必要があるということだと思う。財政再建に歩み出すべきという方向はよいが、今の国の財政は危機的状況であるということを認識した上で、改革して頂きたい。また、国民にもこのままでは財政が持続できないということをはっきりと伝える必要がある。その上で、改革について国民が選択できる政策手段をいくつか出していただければ、国民も国によるいろいろなサービスの拡大よりも、財政再建策を取るべきという判断になると思う。

政治の意思が働く環境を作っていくということが必要だ。小泉総理が選挙で大勝し、政治力学が働きやすい環境にあるので、「今やらずしていつやるのか」ということではないか。

渡辺: 民間は仕事をやっている人たち自身がリストラに取り組む。官は、官僚が自らの仕事を無くすとか効率化するということは、一切言い出さない。ということは、首相や官邸の政治主導でしかリストラは進まない。民間は市場の中で生きていかなければならないので、トップのリーダーシップも重要だが、組織全体が持続的リストラクチャリングに取り組んでいる。官の人たちから、自ら改革をするという話を聞いたことがない。今の危機的状況の中で、政府が頑張っているからある程度進んでいるが、それだけでは限界がある。

北城: 官はつぶれないという意識があるのではないか。民間は、経営がうまくいかなければ、倒産する、雇用が守れない、という危機感があるからこそ改革もできる。官に倒産が無いという意識ではなく、「そうではない。持続できない」という政治の意思(表示)が必要だ。「当初の予算を使い切れないで残してしまうと、来年の予算が削減されるから、何でも使ってしまう」としばしば言われる。このようなことは民間では有り得ないし、予算を残した方が評価される。査定している財務省も、予算が残れば、なぜそのような査定をしたのかを追及されるから予算を全部使ってくれ、ということになり、そこに無駄な経費が出る。それが、会計検査院の結果に出ている。会計検査院の報告書が最近出され、インターネットでも公開されているが、それを見ると、いかに無駄があるかということが示されている。こういうことに対処しないで、財政再建のために最初から増税をするということでは、国民の理解は得られない。

Q: 東京証券取引所で本日取締役会が開催され、鶴島社長の辞任が決まった。システムトラブル、みずほ証券の誤発注といった問題について、社長が引責辞任をするということだと思うが、今回の社長の辞任について、どう見ているか。

北城: 社長の経営責任という問題については、社長のどこに責任があったのかを明確にするべきだ。その上で、社長の辞任等を決めるのは、本来は取締役会の機能だ。東証の場合は社外取締役もいるのだから、彼らも含めて(取締役会が)、経営の責任はどこにあったのか、社長や経営者の交代が必要なのか、という判断をするべきだと思う。これまでの日本の取締役会はコーポレート・ガバナンスが働きにくい、社外取締役が少ない仕組みなので、会長や社長が任命した人が取締役になっている。そういう形態からして、取締役が社長や会長の退任を言い出しにくい人事制度であり、マスコミや官庁の批判をきっかけとして経営者の交代が行われる。株主の意向を代表する取締役会が決めるのが、本来のあり方だ。今回の問題についても、社長や担当役員のどこに責任があったのかということを判断した上で、交代を決めるべきだ。社長が自ら辞任して交代するという形が多いが、取締役会が交代を求めるという形が適正な仕組みだと思う。特に社長の場合は、問題が起きた際に、最後は経営トップの責任ということになるが、不祥事や問題が発生しないように、社長が、どのような指示をし、どう検証したのかを、取締役会が精査するべきだ。

Q:経営統合した銀行でシステムトラブルが頻発したり、郵政民営化でもシステム統合について色々と意見が出されたが、日本のシステムの信頼度について、どうお考えか。

北城: 一般的に、日本は(情報)システムの信頼性に対する要求が非常に厳しい社会だと思う。銀行のオンラインが長時間停止するとマスコミに報道されるが、海外と比較して、システム停止に対して日本が一番厳しい要求を出している。中央銀行のシステムに関しても、日銀のシステムは、世界の中央銀行の中で最も信頼度が高いシステム運用を行っていると思う。一方、コンピュータ・システムは大規模になれば、完璧で完全に障害が起きないということは、残念ながら有り得ない。ソフトウェアには完成品は無く、常に問題を内在しながら運用している。完全性を期すためにテストをし続ければ10年、20年とテスト期間が必要になり実用に供さないということで、ある程度の信頼性が確保された段階で実用化している。従って、停止したときに代替策をどう築くのか、障害が起きたときに拡大しないシステムをどう作るかということが重要だ。システムに完璧を要求すること自体が間違いだと思う。

渡辺: 今回、取引は成立したが、あれだけ大儲けができるという、社会的に大きな悪影響を与えた。今回の場合は、経営上の責任はもちろん、続けて失態が起きているということも含めて、社会的影響が非常に大きい。想定できていなかったとは思うが、コンピュータ・システムの欠陥から異常取引が起き、それが成立したことによって、あれだけ大きな損得が生じる、ある意味で、バブルの典型のようなことが起きてはいけないと思う。

北城: 想定外の問題は沢山ある。想定外の事象が起きたときにシステムが誤動作しないような検証を、事前のテスト等で十分にしておくことは非常に重要だ。問題が起きて原因を見れば、「なぜ、こんなことをやっていないのか」と常に言われる。しかし、例外的な処理というのは非常に多く、通常、何百万とあるわけだから、それを完全に(処理)できるということは非常に難しい。逆に言えば、それだけ社会的責任の大きいシステムに関しては、十分な費用や時間をかけて完璧を期しながら運用していくべきだ。一方でこうした問題が起きるわけだから、起きたときに損害が拡大しない仕組みを作っていく必要がある。人間は間違えることもあるし、間違った入力もするので、それが重大な問題にならない対策が必要だ。しかし、問題があるという警告を常時出すと、毎回無視することにもなり得る。警告は出せばいいということではなく、人間工学的にも、それが重大な問題にならない仕組みを作っておかなければならない。

Q:社長交代を決めるよりも、辞任してしまうケースが日本では多いということだが、今回は鶴島社長が辞任され、後任が事実上決まらないので西室会長が代行というのは、本来の姿からすれば芳しくないケースということか。

北城: まず社長が辞任してから交代が始まるというのは、本来のガバナンスの仕組みではない。経営者がおかしいと思えば、取締役会が更迭、辞任を決める。その上で、取締役会がしかるべき後任を任命する。社長や会長が人事権を持っているときに、取締役会が社長、会長の更迭を決めるのは、クーデターという事例はあるが、現実には機能していない。マスコミが辞任を要求すればトップが辞めるというのは、本来の株式会社の仕組みからすれば、おかしいと思う。

渡辺: 指名委員会があるのだから、それが正式に機能して取締役会に諮るという手続きを速やかに行う。そのためのガバナンスだ。

北城: 形式も重要だが、それが整っていればガバナンスが働いた、ということにはならない。社外取締役がいても、その方が機能しなければ意味がない。形式要件は重要だが、その通り機能することも大事だ。

Q:今回のような場合でも、取締役会が更迭を発表するのが本来の姿であるということか。

北城: そうだ。社長を更迭するためには、取締役会の更迭理由が必要になる。社長が十分な対策をしていなかったので、取締役会が社長を更迭し、取締役会の責任において次の社長を選ぶ、という流れがあるべき姿だ。

渡辺: なぜ辞めるのかというアカウンタビリティーを、取締役会が担保しなければならない。

Q:今回の場合は、取締役会がどのくらい機能していたとお考えか。

北城: 取締役会での議論を全て把握しているわけではないので、どのくらい機能していたかは分からない。新聞等で読む限りは、取締役会が社長を更迭すると決めて鶴島社長が辞めたのではなく、社長自らの判断で辞任されたと思う。もちろん、ガバナンスの下でも、社長が辞任を申し出ることもある。しかし、特に今回のような場合には、社長に問題があれば、取締役会が社長の更迭を決めるのが本来の仕組みではないかと思う。

渡辺: そうしたことが、あれだけの損失をどれだけ負担するか、にも影響してくる。

北城: 取締役会が後任を決めるので、天下りなどは本来考えられない。取締役会が次に選んだふさわしい経営者が官庁出身ということは有り得るが、天下りは、取締役会ではなくお役所の考え方で任命されるものだ。本来のコーポレート・ガバナンスをもう一度考える必要がある。特に、M&Aや敵対的買収の際に問題になったが、日本の取締役会のあり方では、取締役が株主の意向を代表して経営を監視する機能が働きにくい。

Q:今回の場合のように明らかなミスで、儲かった証券会社や個人がいる。そのお金を寄附するなどという話も出ているが、本来はどのように解決するのが好ましいか。

北城: 儲かったところもあるが、投資なので絶対儲かるというわけではない。リスクをとって買って、結果として利益が上がった。株式の取引に関していえば、利益が上がるか上がらないかは、自己責任の下で行われている。その結果として利益が上がったのだ。

証券会社に関しては、こういうことで利益を上げる会社はよくないと、投資家から思われれば、自社の業績にも悪い影響を与える。社会の評価としてのブランド・イメージを考えた際、投資家がどう評価するかなども踏まえ、それぞれの会社が判断すればいいのではないか。

Q:株主からみれば、企業が儲けたことは評価されるのではないか。

北城: 株主が期待していることは、会社として適切な戦略を作り、利益を上げることであって、人のミスに乗じて儲けることを求めているわけではないのではないか。また、企業の社会的責任を認識する経営者から見れば、誤発注に乗じて利益を上げることは本意ではない。これだけ批判されているときに、このまま自分の会社の利益にすれば、投資家が次の取引でその証券会社を選ばないリスクもあるので、今回得られた利益を自分の業績にしたいと思う経営者は少ないと思う。それぞれの経営者が判断したらいいのではないか。自分の会社の将来の業績を考えて、経営者の自己責任で判断する。それを株主や投資家がどう判断するかである。周囲がああしなさい、こうしなさいと言うのもおかしい。

耐震偽装問題についても、本来は自己責任の問題である。ただしその前に、適切な情報開示が必要であり、制度的に不正によって経済合理性が上がる仕組みを作ってはいけない。悪いことをしている人を奨励することになってしまう。その意味では、規制をなくすとともに、不正に対する厳しい処分があり、不正による経済合理性が働かない仕組みにしなければならない。規制だけしても、ペナルティーがなければ、いくら検査しても問題は起きる。最終的には、買った人の自己責任、売主の責任、建設会社の責任を追及すべきである。

マスコミの報道では、国がお金を出すことが前面に出ている。暫定的に国が建て替えることが必要であっても、国がお金を出すことだけを期待すれば、どんなことでも国に保証してもらう仕組みになってしまうのではないか。高いけれど信用のおける会社から買うのか、それほど信用はないが安い会社から買うのかというように、買う際にもどこの売主の会社を選ぶかは、それぞれの判断であり、自己責任もあることを考えなければならない。

Q:東京証券取引所は、条件付きではあるが黄金株の発行を認める方針を固めた。このような動きについては、どのようにお考えか。

北城: これから新たに上場する会社が黄金株のような仕組みをもって上場することを全て禁止すべきか、というと必ずしもそうではないかもしれない。海外でもそのような例はあるし、新たに投資する人はそれを前提にすればよい。

しかし、既に上場している会社が急に黄金株を導入することになると、これまで投資した人は、そういう制度が入っているかどうかを踏まえて投資していたにも関わらず、不利益を被る可能性もあるので、既に上場している企業の黄金株の導入は慎重にすべきだと思うし、それに対して東証が厳しい視点を持つことも有り得ると思う。黄金株を導入したら、そういう会社の株を買いたくない、また、M&Aなどで買収を考える対象としてそういう会社は魅力がない、などということで、株価が下がるリスクがある。その時に、その会社の株主に対して、特に少数株主に対して、その利益をどう守るのかという問題がある。黄金株を導入したとき、例えば、マネジメント・バイ・アウトではないが、「ある株主が、この値段で少数株主の株を全て買い取ってくれる」ということがあれば、価格は守られるだろう。

多様な制度の導入の可能性を排除すべきとは思わないが、少数株主に対する保護をよく考えて制度を設計しなくてはいけない。具体策ははっきりとは分からないが、常に少数株主の利益を守るという仕組みがないと、小数株主、小口の個人投資家の利益は守られない。大口の機関投資家だけが守られてしまうような制度そのものは、健全ではないと思う。

(文責: 経済同友会事務局)

以上


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