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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2005年12月06日(火) 13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

冒頭、代表幹事より「第31回日本・ASEAN経営者会議」について報告があり、その後、記者の質問に答える形で、(1)円安、(2)株価上昇、(3)奥田・日本経団連会長のバブル発言、(4)日銀の金融政策、(5)米国経済のリスク、(6)耐震強度偽装問題、について発言があった。

Q:為替が久し振りに121円という円安水準になっているが、その要因と日本経済への影響をどう見ているか。

北城: 要因については、日米の金利差、また欧州も金利を上げているということもあって、金利差が背景にあると思う。また日本経済が回復しているということも、海外投資家は認識しているので、為替そのものは今の経済情勢、ファンダメンタルズを反映しているのではないか。特に日本は日銀の(金融)緩和政策と、低金利は持続するだろうということを投資家が認識しているという意味でも、今の経済情勢を反映している。輸出企業にとっては当然追い風だし、海外で事業展開している企業にとっても利益を円に換算したときに高く見えるので業績にとっても好ましい。一方、原油価格はさらに高くなっているということで、コスト上昇、特に燃料費の影響が大きい業界にとっては厳しくなるだろう。

問題は将来展望だが、短期的には金利差は縮まらないので、課題は米国経済が来年も堅調に推移するかどうかということだ。先月、米国の政府関係者とワシントンで議論したときには、来年の経済情勢についてかなり強気の発言をしていたが、我々としては3つの懸念要因がある。原油高、金利上昇、ホーム・エクイティ・ローンだ。住宅の価格高騰が来年は続かないのではないか。そうであれば、住宅の価格上昇に基づいてホーム・エクイティ・ローンでお金を借りて個人消費に回す仕組みが効かなくなる。

Q: 一時、15,500円台をつけるなど株価が上昇しているが、奥田・日本経団連会長が昨日の会見で、株も含めて「バブル的なものが出てきている」という意思表示をされている。最近の株高とバブル的な要素があるかどうかについて、お聞きしたい。

北城: これまでは、企業業績の回復に合わせて株価が回復してきた、高くなってきたという水準だろう。一株当たりの利益(PER)で見ると20倍前後の会社がたくさん出ているので、ここまでは企業業績の向上を読み込んだ株価ではないか。もちろん株価が上がるから株を買う人も出ているということは事実だし、奥田さんの発言も適切だと思う。

問題は、これから先をどう見るかということだが、来年の経済成長(率)は、2%はいかないにしても1%台、多くの調査機関も、来年も経済は拡大する、GDPは成長すると見ている。それに合わせて企業業績が向上することを見込んで株価が上がってきていると思うが、先ほども触れたとおり、米国経済の懸念材料があるので、来年の日本経済の成長率と企業業績の向上をどう見るかだと思う。企業業績が大幅に二桁成長するというのは、今後はかなり難しい。株価は、そろそろ現在の企業業績のファンダメンタルズを反映した水準に来ている。この先どうなるかは、投資家が企業業績の向上をどう読み込むかにかかっている。ここまでは経済の現状を反映している。業績が上がらないのに株価だけ上昇したという、いわゆるかつてのバブルとは違うと思う。この先、どうなるかは奥田会長がおっしゃるとおり懸念材料ではあると思う。

渡辺: 経済同友会が11月21日に発表した「量的緩和政策の転換に向けて」という提言で、金融政策の正常化と、今のまま(金融緩和)で異常な状態(バブル)に突入するとういことには注意していかなければならない、と指摘している。

北城: 過剰流動性があると、その資金が土地や株、海外投資に流れるかもしれない。株価も企業業績の現状を反映している水準に達しているだけに、今後は金融政策の正常化に歩み始める必要がある。そうしないと、余りにも過剰な流動性を残しておくと、バブル的な色彩が出てしまう懸念がある状況に来ていると思う。

Q: 日銀の金融政策については、量的緩和をやめれば、景気回復の腰折れを招くのではないか、という指摘も根強いが、そうした懸念は無い、ということか。

北城: 心理的要素はあると思うが、現実には低金利政策をやめるということではなく、過剰な流動性を正常化するということなので、景気の後退があったとしても日銀の政策によるものではない。先ほども言ったとおり、米国経済の来年の推移がリスク要因として働くということだ。日本経済そのものは設備投資も堅調だし、個人消費も割合堅調だ。輸出が堅調に推移する限りは、来年(の経済)も堅調には推移するだろうが、今年ほどの成長は見込めないかもしれないし、米国経済のリスクが現実化すれば、日本経済の減速要因だと思う。それが日銀の政策(の影響)が直接出たとは思わない。正常化に伴って長期金利が多少上がっていくというのは正常な道筋だと思う。問題はパニックのように急騰することで、それは避けなければならないので、日銀には、市場と対話しながら、サプライズの起きない金融政策をとってもらいたい。

渡辺: 日本経団連も、賃金は業績に応じて柔軟に考えればいいのではないか、と言い始めている。そういう意味では、(金融政策の)正常化を助ける地合ができつつあるし、財政健全化へのメッセージとなる。

Q: 米国経済のリスクは、現実に出てきているとお考えか

北城: 現実にリスクが顕在化しつつあるのではないか。住宅価格は9月までは堅調に上昇しているようだが、10月以降ほとんどの地域で値下がり傾向が出てきているようだ。一ヶ月前にワシントンに出張したが、住宅の売り出し「For Sale」という看板が出ると年初はすぐに売れて、看板が撤去されてしまう。ということは売り手市場で買主は言い値で買っていたということだ。ところが10月に入って看板がずっと並んでいる。ということは買い手市場になってきており、買主側がすぐには買わずに、価格はいずれ下がるだろうと価格交渉を始めたために価格が下がりつつある。ニューヨークでも価格が下がっているという話もあるし、全米の調査でも来年にかけて、多くの地域で住宅価格が下落するだろうという予測も出ている。住宅価格が下落するというのは日本のようにバブル(崩壊)で暴落するということではないが、ホーム・エクイティ・ローンによって住宅の価値の上昇によってお金を借りて物を買っていた仕組みが回らなくなり個人消費を抑える。金利の上昇や原油価格(高騰といったリスク)もあるので、経済人はかなり慎重に来年を見ているが、政府はかなり強気で見ているという状況だ。中国経済にも確かにリスクはあるが、米国経済が来年どの程度堅調に推移するかどうかが、日本経済にとってのリスク要因だ。それを織り込んで多少減速するとは思うが景気後退まではいかないのではないかと思っている。

Q: 昨日、奥田・日本経団連会長から、株価上昇に関して金儲けに傾きつつあるのではないか、という発言があった。例えば、建築物の耐震強度偽装問題についても、少しズルをしてでも金を儲けてやろうという風潮があるのではないか、という見解だったが、そのような認識についてはいかがお考えか。

北城: 企業経営として、利益を上げることはおかしなことではなく、法律に反したり反社会的な行動をして利益を上げることが問題だ。企業経営者が襟を正すことに関していえば、CSRを経済同友会も提言しているが、本来企業が持続して発展するためには、社会から評価される経営をしなくてはいけない、これは大前提だ。

今回の耐震強度偽装問題に関していえば、経済犯罪に対するペナルティが低すぎると思う。建築基準法(101条で構造計算書を偽造したことに関する)違反の罰金は50万円と聞いているが、人々の生命や安全に関わるような問題に対する違反に関する制裁が少なすぎる。本来、まずは刑事罰で厳しい責任を追及すべきだ。故意に不正な設計や建築をした経営者や関与した技術者に関しては、懲役25年や30年など、刑事罰を厳しくすべきだ。アメリカのサーベンス・オックスレー法では、経営者が不正に会計報告を出せば、懲役25年だ。まずは、経済犯罪についても厳しい制裁が必要だ。

また、損害に対しても、当然売主は企業として責任を追及されるが、企業だけではなく企業経営者も責任を持つような仕組みが要るのではないか。いくら検査体制を重視しても、不正に対する厳しいペナルティがないと、市場主義はうまく機能しないと思う。検査体制だけを重視すると、そこにお金がかかり過ぎて効率的な運営ができないので、まずは各々が健全な経営をすることは大前提だが、ルールに違反したときは厳しい処分をすることがなければ、市場経済はうまく機能しない。

成田の空港公団による談合・カルテルの問題についても、これまでの課徴金が現実に得られる利益に比較して低すぎたと思う。経済的な犯罪に対しても、厳しい処罰があることが抑止力になる。抑止力としての処罰を厳格にしたうえで、なおかつ不正が起きないような検査体制を作るべきだ。

保険の導入という話もあるが、一律強制保険を導入するとモラル・ハザードになりかねない。不正を行っても保険で建て替えができるということを表に出しすぎること自体は、不正な建設が起きかねないので、私は任意で良いと思う。きちんと建設をするブランド・イメージのある会社は、保険に入らなくても、問題が起きれば売主責任で対処することができるだろうし、それまでの経済的な力のない企業は、保険に入ることもあると思う。

Q: 今日午前中、税金で対応するという政府の公的支援策が決まったが、このような対応についていかがお考えか。これによって、手抜きの建築をして計画倒産をすれば儲かる、というモラル・ハザードが生まれないか。

北城: 本来は売主責任なので、まずは売主が対応するべき。周りの住人が危害を受ける場合もあるため、売主が対応できないものを緊急避難的に国や自治体が建物等を撤去することは必要だと思う。しかし、これはあくまで立て替えであり、国や自治体が負担するということではない。原則は、売主や検査、設計をした民間のそれぞれの責任を追及すべきだ。

起こってしまったことについては、法律が不十分だったと思う。法改正をして、厳しい刑事罰を経営者あるいは技術者に追求するとともに、財政的にも経営者を含めて負担を求めるべきだ。企業が倒産したときに、企業の有限責任として経営者が何の経済的な損失がないということではモラル・ハザードが起きる。

法改正は、厳しいペナルティを入れたうえで、暫定的に国や自治体が負担することを考えなくてはならない。常に国や自治体が負担してくれるとなると、モラル・ハザードを起こしかねない。日本は、経済法制に関するペナルティが甘すぎる。

できるだけ規制を撤廃し、自由な市場競争をすべきだが、反社会的な行動をとったら、懲役25年や30年など再起不能なくらいの処分をしなくては、抑止力にならない。規制緩和は、反社会的な行動について厳しいペナルティがあることによって初めて機能する。

Q: 本来であれば、規制緩和と厳しいペナルティは同時に行うことが望ましいが、規制緩和が進むなか、厳しいペナルティの対応が遅れているのではないか。

北城: 独禁法が来年一月に改正になり、談合やカルテルの課徴金が2倍程度に引き上げられる。しかし、欧米の水準と比較すると課徴金はまだまだ少ない。抑止力が働くくらいの制裁が必要だし、経済的だけではなく、刑事的な制裁も必要だ。アメリカでも、経営者にも責任を追及することで独禁法違反が少なくなったと聞いている。単に実行犯が制裁を受けるだけではなく、企業経営者にも厳しい制裁が必要だ。

渡辺: 規制の期間、消費者は選び方の多様性に慣れていない。いきなり規制緩和で自由になっても、消費者の目が育っていないため、供給者側の責任を強いなければならない。本来であれば市場を通じて消費者の目が育っていく。そのような過程が抜けており、隙間を突かれている感じである。

北城: 全て性善説で物事ができている。今回のように不正を行う人がでてくるのであれば、厳しい処分が必要である。

Q: 手抜き工事は今回の事件に限らず出てきている。手抜きはするは、談合はするは、借金は踏み倒すはで、CSRを果たしてないひどい業界だと思うが、こうした業界の改善に向けて何が必要か。

北城: CSRは、企業経営者が社会的な責任を自覚して健全な経営をすることであり、企業が持続的な発展をするためには必要である。決して、寄付活動をすることだけがCSRではない。現実にこれだけの問題が起きているとすれば、当然経営者として襟を正さなければならない。本人が自ら不正をする意識がなくても、組織が健全に運営されるような仕組みづくりは、経営者の責任である。さらに、こういったことに対する制裁を厳しくする必要がある。そうでなければ、不心得なものがでることを防げない。

性善説の仕組みでは、自由主義の競争環境の中で問題を起す人がでる。その意味では制裁が不十分である。制裁が厳しくなることに関して、経営者側から不満の声がでてくるかもしれないが、不正をしなければ制裁金がいくら高くても困らない。制裁金が高いから経営に大きな負担になるという考え自体が、不正を続けることを意味している。厳しい制裁があって当然だ。

渡辺: 官からの受注が多いことが、長年に渡って秩序ある自由市場経済の形成を妨げた。これが最大の欠点ではないか。長い歴史を持った自由主義経済でこんなことが起きたら会社であれば即倒産だ。規制緩和が行われるようになってボロがでてきた。これまでは皆でそうした問題を覆い隠そうとし、その積み重ねだった。本当の意味での透明性の高い市場経済を作り上げねばならない。

北城: これまでは、談合を通して価格を維持しなければ経営が成り立たないという村社会の仕組みで通っていたが、公共事業が減り、事業規模が縮小する中では、事業縮小や他の事業への転換、撤退などを検討すべきだ。それをせずに、同じだけの企業や雇用を維持しようとするからこのような事件がおきる。市場での淘汰が進んで、新たな企業が出てくれば、別なところで雇用の受け皿ができる。縮小すべき事業を日本は保護し続け、一方で、新たな事業を作り出すところに十分な政策が実行されてこなかった。成長事業分野への資金や人の移動が十分機能してない仕組みを温存してきてしまった。

建築基準法(101条で構造計算書を偽造したことに関する)違反の罰金50万円は低いが、これを100万円や1,000万円にしても抑止力は低い。売主責任で、最後まで企業や経営者に対して追及すべきで、刑事罰も厳しくすべきだ。

ある意味では、国会議員や国交省など、立法府や行政府の対応も怠慢であったのではないか。罰金50万円にもかかわらず、警察による追及が行われているというのは、大きな犯罪であったことがかわかる。検査の仕組みも不十分であったが、ペナルティに関しても不十分であったと思う。

(文責: 経済同友会事務局)

以上


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