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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2005年06月21日(火) 11:00~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

Q:日韓首脳会談が開催され、靖国問題が話題に上った。韓国の盧武鉉大統領が新たな追悼施設の建設を要請し、以前にも福田前官房長官が私的諮問機関を作って報告書をまとめた経緯があるが、この点についてどうお考えか。

北城: 日韓首脳会談が開催されたことは良かった。色々な問題があるなかで延期すべきという意見もあったようだが、会談を通じてそれぞれの立場を主張しながら、相手の立場も理解するということは重要だ。結論が全て思った通りではないにしても、対話は非常に重要だ。

靖国問題について、新たな追悼施設を作るということを国内で検討することは結構なことだが、追悼施設ができることと、小泉総理が靖国神社に参拝することは別の問題だ。追悼施設の建設が進めば靖国問題が解決したということではないので、混同すべきでは無い。

Q:米国のクレジットカード会社の顧客情報が流出し国内にも波及している。カード業界が共通のシステムを使っている、またインターネットが普及したということも背景にあると思うが、影響と対策について、どうお考えか。

北城: ネットワーク社会で、特に決済システムに対するコンピューター犯罪のリスクが言われてきたが、現実の問題として顕在化したということだと思う。カード会社に限らず、コンピューター・システムを扱う会社にとってはセキュリティの強化は非常に重要だ。外部からの侵入に対しても、内部での不正利用に対してもセキュリティは非常に重要だが、問題が起きるまでなかなか重要性が理解されない。今回の問題を契機に、セキュリティの重視に更に努めていかなければならない。

対策については、システム側にはそれぞれの会社で取り組んでいただくとして、本当に十分なセキュリティが整備されているのか検証をして頂きたい。(セキュリティは)日進月歩の分野なので、対策側も進歩するが、それを破ろうとするハッカーのような不正を行う側(の技術)も進歩する。一度対策を講じれば安全というものではないので、常にセキュリティが完備されているかどうかを、場合によっては外部の専門家を使って確認、検証していくことが重要だ。個人としては、コンピューター犯罪が起きることを想定して、特に最近は(コンピューターの)画面でクレジットカード番号やパスワードの入力を求める場合があるが、不用意に個人情報を提供しないことが大事だ。クレジットカードの使用履歴などにも良く注意すべきだ。

渡辺: クレジットカードは本人が署名をするという形態から始まった。それが、コンピューターに繋がったことによって署名が不要になった。遺言は今でも直筆でないといけない。署名をするという前提が崩れたことで、コンピューター社会におけるセキュリティをどのように確立すべきかが問われている。

北城: カードの決済には署名もあればパスワードもある。たとえば電話で買い物をする際には、署名もパスワードもなしにお金を引き落としてしまうということもある。名前と有効期限とカード番号だけで決済してしまうケースもあるので、個人としてもカードの使用については非常に慎重であるべきだ。

渡辺: 会社同士の継続した取引はもちろん、個人の不特定多数との取引におけるセキュリティについて、もっと考慮しなければならない。

北城: 先日も友人と会話をしていたら、5人中4人がスキミングの被害にあっている。レストランで支払いするときに、カードを預かるケースではスキミングのリスクが高い。信用のおける場以外でカードを手渡すことについては慎重であるべきだ。

Q:最近、原油価格が高騰しているが、企業からは製品価格に転嫁できないという声も上がっている。日本経済に対する影響を、どうお考えか。

北城: 景気定点観測アンケートで、製造業では、経営に影響が出てきているという回答が26%、影響が出てきているがさほど大きくないというのが43%、あまり顕在化していないというのが25%である。非製造業は、影響が大きいという回答が12%、今のところ問題が顕在化していないというのが31%、仕入れ価格の上昇の影響はないというのが32%ということで、今のところ大きな問題になっていない。一方、製造業において、価格転嫁は十分できていないが、他の企業努力も合わせて仕入れ価格の上昇を吸収できているという回答が74%だ。日本企業の場合は、原油に限らず、鉄鋼と素材原料の値上がりに対して企業努力で吸収しているケースが大半だ。そういう意味では、業種にもよるが、日本経済への影響はうまく吸収できていると思う。問題は米国経済への影響と中国経済の持続的発展が可能かどうかということだ。特に米国経済が(原油の)価格上昇で減速してくると、世界や日本の経済に影響を与える。ただし、短期的には日本経済への影響はそう大きくないと思う。どちらかというと投機的な動きであるが、40ドルを越える原油価格であれば、新たな油田開発の採算が合う。ある程度、価格が高い状態が続くという前提で、油田開発、新技術の開発が進むことが必要だと思う。

Q:3月期の決算企業の定時総会が本格化してきた。敵対的買収に対する備えが活発化している。もう一点は、株主が参加できるよう日曜日に開催するなど、企業側が株主と対話する動きも目立っているが、これらをどう評価するか。また、これらに対する、ライブドアとフジテレビの攻防の影響を、どうお考えか。

北城: 株主総会の日を特定の日付ではなく、できるだけ他の日にする、あるいは週末など、株主が参加しやすい日に変えるということは非常に良い動きだし、本来あるべき姿だ。3月決算が終わって会計事務所の意見を求めたうえで株主総会を開くことになれば、どうしても6月の後半に集中はすると思うが、特定日に集中しないことは良いことだ。特殊株主の問題がある場合には、総会屋対策も含めて特定日に集中したが、今はそうした問題が、全く無くなったわけではないが、少なくなってきた。企業経営者が株主との対話を総会で行おうとしているのは非常に良いことだと思う。株主に会社を理解していただき、支持を得るということは敵対的買収への対策としても非常に重要なので、その点でも株主総会の開催日の分散は大変良いことだ。

敵対的買収への対策も、いくつかの会社で導入されているようだが、法制度やガイドラインの整備は今議論されているところで、今回の株主総会というよりも、来年に向けてこれから検討していくということだと思う。敵対的買収の対策が、経営者の保身のためだけでは好ましくない。株主も含めた多様なステークホルダーにとって価値のある対策が取られるべきだ。中長期の株の時価総額(企業価値)を高める判断を誰がするかについては、経営執行幹部と直接の利害関係が無い独立取締役が、取締役会に参加することが望ましい。急に沢山の独立取締役の登用は難しいと思うが、当初2~3人が取締役会に参加し、株主価値を高める経営判断なのか、敵対的買収への対策なのかを判断するべきだ。

ライブドアとフジテレビの、ニッポン放送を巡る争いは、株主にとっての価値とは何か、コーポレート・ガバナンスの問題点は何か、そして企業に株主価値(時価総額)を高めることが重要だという認識をさせたという点で意義があったと思う。企業経営者だけではなく、多くの人々に、企業経営についての認識を高めたということでは意義のあることだと思う。

渡辺: 夏季セミナーでも議論するが、ニッポン放送の結末の評価は別として、その過程において企業価値(という言葉)が新聞でも、どんどん掲載された。(敵対的買収対策として)真摯に企業価値を高めることで株主理解を得ようというグループ、今慌てて導入しているグループ、そして持ち合いや系列の強化を通じて対応しているグループの3つが、来年に向けてそれぞれ対策に取り組んでいくだろう。敵対的買収を現実の問題として意識するようになったことが(この問題の)顕著な結果だ。

北城: この問題によって、例えば配当を増やす企業が出てきたことは結構なことだ。企業が得た利益を何も活用せずに置いておくことは日本経済の活性化ということでは非効率だ。投資、配当、自社株買い戻し等による株主への還元といった施策が取られるようになり、そうした対策を行う会社への評価が高まるということは非常に良いことだ。配当を増やせば株主の手にお金が入るということなので、それを運用する、また年金受給者のような方にとっては配当が得られることで、消費や投資に回すお金が増えるということは大変結構なことだ。

Q:株主総会で新しい経営者が誕生しているが、新しい経営者の選ばれ方や顔ぶれを見て、何か感想があればお聞かせいただきたい。

北城: 各々の会社によって違うので一概には言えないが、印象としては若返りがされている例がかなりあるように感じる。また、新しい事業展開に挑戦するような人を選んでいるのではないかと思う。これまでの路線を踏襲した順送りではなく、今の環境の変化に挑戦しようという方が選ばれているような気がする。そういう意味では、新しい経営者の下で活発な企業活動が行われるのではないかという期待が持てる人選ではないか。かつては、(現経営者が)自分を大切にする後継者を選びたいという気持ちがあったと言われていたが、今はそういう視点ではなく、会社の成長のために誰が一番適任かということで、次期の後継者が選ばれていると思う。良いことではないか。あまりおかしな人選では、いまは社会的に理解されないのではないか。ソニーさんなども、今までにない人選だろう。

渡辺: 数年前までは、社長を選ぶ際、主に社員や仕事の関連先への説明を優先していた。現在は、市場を意識しなくては納得されない。市場というのは株主だけではなく、社会全体のことで、社会全体にきちんと説明をすることが要求され出したのは、ここ数年の変化だ。併せて、社外取締役の議論も成長している。説明の部分では明らかに進歩したと思うが、個人的には、記者のみなさんが質問をしなくても十分わかったというほど、もう少し選任の説明があっても良いと思う。

北城: 社外取締役、特に独立の取締役が取締役会に入ると、どうしても説明責任を求められる。したがって、ある程度納得性のある人が選ばれる仕組みだと思う。

Q:昨日の日本記者クラブでの講演で、「起業をしたい人にお金が集まりにくい。そのための仕組みが必要だ」という話があった。政府系金融機関は、リスクの高い民間金融機関が出せないようなところに資金を出しているようだが、政府系金融機関の見直しが出てきている。これについてはどうお考えか。

北城: 事業を新たに興す資金には非常にリスクが伴う。担保があれば別だが、失敗するリスクがあるところに、銀行からお金を貸し出すのは難しい。通常民間の金融機関が貸し出しできないところを、政府が行えばいいかというとそういう話ではない。どこに投資するかを選ぶには高いリスクが伴い、失敗すれば損失になるわけで、その損失を誰が負担するかといえば、政府が負担することになる。政府が負担することは不適切である。リスクが高い場合に、どこに投資するかを判断するのは民間でも難しいのに、どうして政府が適切な判断をできるのか。もちろん、海外援助等の長期事業分野など、民間が出せないところだから政府がやるというのは分かる。しかし、事業を興す点については、個人がリスクをとって投資するというような、個人のお金が集まる仕組みが必要である。融資ではなく投資であり、株に対して投資をする人が出てこなければならない。日本にはベンチャーファンドがたくさんあるが、ファンドはある程度成功の目途があるところでないと投資できない。あまり少額の規模では採算が合わないので、ある程度成長してきたベンチャーにはファンドは投資できるが、最初に事業を興すところにファンドがお金を出すのは難しい。そのため、個人がリスクをとってお金を出せる仕組みを整備すべきである。エンジェル税制という創業に対する優遇税制があるが、日本の場合、大半はベンチャーを興して成功した人の税金を安くするものである。それもなかなか利用しにくいといわれている。私は、成功した人は税金を払った方がいいと思う。失敗が多いので、失敗した会社に投資した時の痛みを和らげる税制の方がいいのではないか。こうしたことを昨日簡単にお話した。この件は、2004年度新事業創造委員会の提言の中で、投資の優遇策について提言している。

Q:政府系金融機関の見直し自体には、民営化という側面で賛成なのか。

北城: 民営化もあるし、廃止ということもある。先ほど申し上げたように、民間ができないところを行っているから政府系金融機関が必要だ、そのひとつの理由として、ベンチャーへの起業資金を提供しているから、という意見は、創業時点では融資ではなくて投資であるべきだと思うので、存在の理由にはならないと思う。

渡辺: 経済同友会では、政策金融プロジェクト・チームを設けて検討している。先ほど代表幹事が言ったような方向で、秋口に提言を発表する予定である。

北城: 小規模な創業資金を出して経験を積むことは悪いことではないが、大規模に行えば成功するわけではない。創業時は融資ではなく、投資であるべきなので、政府系金融機関が融資で創業支援することを存在の理由とするのは、いかがなものかと思う。

渡辺: 経済財政諮問会議の大きなテーマの一つであるので、真剣にやっていただきたい。

北城: 郵政民営化の入口と出口で言えば、出口の問題である。

Q:景気定点観測アンケートで、経営者が景気の現状を拡大しているとみている理由は何か。

北城: 原油高の問題はあるが、製造業は原油高に対する対策として効率化などをしており、非製造業については大きな影響がないと見ている。そういう意味で、経営者は景気の先行きに対して自信を持ってきている。特に、これまでの構造改革の流れのなかで、(企業は)自社の非効率な点について整理してきており、国の公共投資に依存しなくても企業成長ができるという自信ができている。幸い、個人消費も堅調で、企業業績の好調が従業員の収入増にも結び付いており、正社員の雇用も増えて雇用環境も良くなっているので、個人消費が順調に推移しそうだ。また設備投資も大変堅調で、これはアメリカ経済や中国経済が急に減速することはないと経営者が見ているということだろう。日本経済に関しては、原油高、鉄鉱石や化学素材の上昇があっても、経済成長はできると前向きに見ている。リスク要因は、あまりに原油が高くなったことで、アメリカ経済においてガソリンを使うことで他の消費が抑えられるのではないかという懸念材料がある。

Q:ベンチャー投資について、成功し始めると急にお金が集まり、上場した直後に下方修正をするような例もある。IPOに対するバブルや不透明感について、どうお考えか。

北城: IPOバブルのような問題は常に起こる。適切な情報開示が必要だ。また、日本の場合には、成功した会社にお金が集まる仕組みから、挑戦する人にお金が集まる仕組みに変えていくべきだと思う。事業としてのベンチャーファンドは、創業時に投資するのは非常に難しい。最初に事業を興すのは非常にリスクが高く、そこにお金を出す人は、主として知人・友人・親類・縁者などである。バブルのような成功の直前に融資や投資資金が集まる仕組みから、税制を含めて、創業時にお金が集まるようにすべきだ。残念ながら日本は廃業率が高くて創業する人が少ない。欧米や中国などでは、創業時にお金が集まるように税制などを整備して支援している。日本に投資しようとして参入してきたアメリカのベンチャー・キャピタルも、現在は日本から撤退し、中国や東南アジアに移っている。こうしたことは日本の将来性から言えば問題である。共産主義国家の中国からベンチャーがたくさん出ていることを考えると、日本の方が社会主義なのかもしれない。

文責:経済同友会事務局

以上


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