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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2005年06月07日(火) 13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

冒頭、北城代表幹事より、「『チーム・マイナス6%』への賛同と経済同友会の取組」について説明があり、その後、記者の質問に答える形で (1)企業不祥事へのトップの責任、(2)日銀・当座預金残高の目標下限割れ、(3)公務員制度改革、(4)若年層の雇用対策、(5)対中国ビジネス展開、について発言があった。

Q:橋梁工事を巡る談合事件の責任を取る形で横河ブリッジの社長が辞任を発表し、その前にも小田急グループの有価証券報告書虚偽記載問題で会長や社長が辞任をした。何故、こうした企業不祥事が続くのか。また、トップの責任の取り方についてどうあるべきとお考えか。

北城: 企業不祥事は、企業の社会的責任の重要性を表していると思う。不祥事に関連して、経営者が責任を取るということは当然あるべきだ。企業のガバナンスとして経営者にどのような責任があったかを明確にした上で、責任があるというのであれば、当然退任すべきだと思う。経営者の責任というのは、不祥事が起きないような企業文化や会社の制度等を作ると同時に、倫理や法律に反しない経営をするという考え方を社内に徹底するとともに、それが現実に機能しているかどうかを確認することだ。それを実行していてもなお、不心得な社員が出て不祥事が起きることはあり得るが、防ぐための手段を十分講じていれば、「退任しろ」というのは適切ではない。しかし、今回の、特に談合事件を見ると、あれだけ多くの企業で談合が行われていたとすれば、経営者が社内で「法律に違反しない活動をしよう」という指示が徹底されていたかについては疑問がある。

Q:先週、日銀が金融の量的緩和の目安とする当座預金残高が目標の下限を割り込んだが、これについて見解を伺いたい。

北城: 今回のように技術的な問題で割り込むようなことがあっても、無理に残高を維持しなければいけないということではないと思う。しかし日銀も、「量的緩和の目標値を変えるというメッセージではない」ということをはっきり示していたので、現実に下限を割っても市場が大きく混乱することは無かったと思うので、市場との十分な対話が行われたうえでの残高割れだと思う。そういう意味ではうまく対応されたと思うし、不自然に残高維持をするということは技術的にも難しかったと思う。

Q:特に心配はしていないということか。

北城: うまくマーケットとの会話ができていたのではないか。福井俊彦・日銀総裁は、市場との対話を重視されているし、今回も残高を割り込むことはあるという前提の下に、例え割り込んでも量的緩和についての日銀の基本方針は変わらないということを周知徹底されていたので混乱も無かったと思う。

渡辺: 結果として金利もあまり変動していない。

北城: (金利は)安すぎる。これだけ安ければ、長期的に金利のメカニズムが働かない。いずれ正常化に向けて歩み出す必要はあると思う。

Q:6月1日に経済財政諮問会議が開かれ、今度の「骨太の方針」の中に公務員の人件費削減が柱として位置づけられているにもかかわらず、依然省庁の抵抗が強いようだ。これについての見通しを伺いたい。

北城: 見通しというよりも、本来の政策の方針として、国にこれだけ大きな借金があるときに、人件費総額を削減していくことは当然必要なことだ。総額を削減する中で、給与水準の引き下げにするのか定員の削減にするのかについては、色々な政策があると思うが、全体としての公務員への支出は減らさざるを得ない。それだけ国は大きな借金を抱えているわけで、国民にも年金や医療などの面で痛みを伴う施策を行い、場合によっては増税をせざるを得ないという環境だとすれば、当然、(人件費)総額を縮小することは必要だ。

企業経営でも、赤字になったときに経費を削減するのは当然だ。もちろん、売上や利益を上げることは必要だが、経費削減は重要であり、その大きな柱は人件費総額(の削減)だと思うので、国としても実行するべきだ。

ただし、今のような公務員制度の昇給の仕組み、成果に応じて処遇の差がつかない制度を維持しながら、支出総額を下げるというのでは、一律給与カットになり、それはおかしい。公務員制度そのものにもメスを入れるべきで、抜本的に変えていったほうが良い。

渡辺: 経済同友会が以前から提言している財政健全化の中で、公務員の人件費も聖域ではなく、財政再建のためにも公務員の生産性も上げなければいけないと主張している。

北城: 基本的には(人件費)総額を削減せざるを得ないし、昇給等の仕組みについても成果主義の導入等に取り組むべきだと思う。

Q:4月の完全失業率が6年4ヶ月振りに低下したが、依然、ニートと呼ばれる人たちが60万人位いると言われている。業績回復による企業の採用は新卒に偏りがち、長期失業者には恩恵がないのではないかという話もあるが、現状と必要な対策について、どうお考えか。

北城: 正社員の採用が増えたということは、雇用所得全体の水準を高めるという意味でも良い影響がある。景気の回復、また団塊の世代の退職者が増えるということを踏まえれば、企業が正規雇用の社員を増やし始めたというのは前向き(な動き)だ。

その上で、ニートの問題については、既にニートになってしまっている、学校を卒業して就職していない人たちへの対策と、今後卒業する学生に対する教育という二つの視点が必要だ。いずれにしても、就職して働くことは重要だというメッセージが必要だ。自分に適した仕事が無いので、それを求めるために就職をせずにアルバイト等をしながら適職を探すという意見もあるが、就職してみなければ、仕事の本当の面白さは分からない。まずは働いてみることが重要だ。

サラリーマンや経営者の中でも、元々その会社に入りたいと思っていた人もいると思うが、たまたま色々な理由でその会社に入って、仕事をする中で面白さを見つけた人もいると思う。学生に対してはそのようなメッセージを発するとして、ニートに対しても、まずはどこかで働く、例えつまらないことがあってもそこで努力する、その中で仕事の面白さも出てくる。どこかで正規社員として働いている経験を下に、次の仕事に移っても良いが、就職をしないということは良くないというメッセージが必要だと思う。私たちも、「働かなくても良い」というメッセージを伝えるべきではない。

渡辺: 一ヶ月後に行われる軽井沢セミナーでも3つのセクションのひとつとしてこの問題を議論する。

北城: 軽井沢セミナー(の一日目)では政治の面、特に小泉政権のこれまでの政策と、今後、少なくとも一年間は(政権が)続くという前提で、どのような取り組みが必要かということを議論しようと思っている。小泉総理の後に、どのような方が改革路線を維持するのかも議論したい。二日目は企業価値の向上やコーポレート・ガバナンスの問題を取り上げるとともに、ニートのような個人の働き方に対する問題を取り上げようと考えている。

Q:若者の働き方について、企業の中には、技能の蓄積もせず単純作業の人集めとして使っているケースもある。海外の安い人件費に対抗するという大義名分はあると思うが、長い目で見れば、国内に技能が蓄積されない若者が溢れ返って、結局企業自らの首を絞めることになりかねないと思う。ニート、フリーターの対策に取り組む一方、このような現状がある矛盾について、いかがお考えか。

北城: それぞれの企業の経営戦略があると思う。国内で安い労働力を集めて経営しようという考えもあれば、技能の高い労働者を育成して競争力の出る事業分野で競争しようという考えもある。ただし、これから働き始める若者に対しては、「自分たちは正規社員として会社に入って努力をする」という気構えを持って働いてほしいと思う。

また、会社がこれまでリストラをしてきた過程で、新規採用を抑えて中高年の雇用を護っていた、そのために若い人たちが働く場所がなかったことについては、社会全体の問題もあると思うが、労働制度を変えて若い人たちも就職できる、その代わり継続できない場合は他の職場に移るというように、流動性を持った人事制度に変えないと、企業は若い人の採用を抑えるという問題があると思う。若い人たちが挑戦できるダイナミズムを備えた環境を用意することが、制度として必要だと思う。

Q:「就職しないことは良くないというメッセージが必要だ」という話があったが、ニートが増えている原因の一つに、親元での生活に困らない環境があると思う。親元で生活するよりも就職した方が良いというメッセージを伝える工夫が必要ではないか。

北城: 大人は社会で働いて貢献することによって生活の糧を得る、ということを親の世代が子供達に伝えなければならない。親は「働くな」とは言っていないと思うが、「自分に合った仕事がなければ無理に就職する必要はない。就職は一生の問題だから良く探しなさい」と言って親元で生活できる環境を作ってしまうと、子供達は努力しなくなる。そういう意味では、親の世代が子供たちに「学校を出たら働く」ということを伝える必要がある。企業経営者も、そうしたメッセージを社員含めて社会に出していくべきである。

渡辺: 「親は甘いけれど、社会は厳しい」という認識を持つ必要がある。

北城: 親と言っても、特に母親だと思う。「有名な学校に行って良い成績を取りなさい」ということではなく、「社会に出たらとりあえず働きなさい。社会ではそれぞれの適性に応じて、チャンスがある」ということを母親に伝える。これは経営者の役割である。子供は親から大きな影響を受けるので、最近我々は生徒や教師だけではなく、保護者にも会い、企業の採用方針が変わってきたことなどを伝えている。

戦後復興期は貧しかったので、働くことで豊かな暮らしを求めるのは当たり前だった。現在インドや中国で活力があるのは、より豊かな生活を求めて努力をしているからである。日本は豊かになっているので、黙っていては学生に活力が出ない。大人が動機付けをする必要がある。経済同友会では、毎年経営者を学校に100人以上派遣し、生徒、教師や保護者にメッセージを伝える活動を行っている。

Q:本日、JETROで「日本企業の対中国ビジネス展開に関する緊急アンケート調査」結果が発表された。これは、中国での反日デモを踏まえて5月18日に行われたものだ。結果、「現時点で影響はなく、今後も影響はない」と回答した企業は53.4%、「影響を懸念している」企業は36.5%だった。さらに、懸念される影響として、「販売減」が19.1%、「日本製品へのイメージダウン」が16.4%のほか、「労使関係の悪化」や「人材確保の困難」などが挙げられた。また、対中国ビジネスの今後の展開については、「既存ビジネスの拡充、新規ビジネスを検討」が、2004年12月時点で87%だったのに対し、今回は55%に低下した。
現在は「政冷経熱」と言われているが、「政冷経冷」とならないためにはどうすべきか、また政府に何を望まれるか。

北城: アンケート調査結果の数字は、我々が感じていることとほぼ同じだと思う。中国でのビジネスは、過熱化、エネルギー問題、環境問題など、もともとリスクがあると言われていたが、それでも企業は、リスクを上回る投資価値があると考え、中国ビジネスを展開してきた。今回の日中関係の問題は、更に追加のリスクになってきたということだ。最近は、中国進出は、工場立地だけではなく、マーケットとして考えている企業も増えている。中国への進出に新たなリスクを感じているということは、東南アジアなど他の国への進出を視野に入れ、リスク分散を考えるようになってきたのではないか。

「政冷経熱」は良いことではないし、長期的には良好な関係を維持することが必要だと思う。両国相違はあるとしても、共通の利益を探し出して、政治に関しても良好な関係を築いていただきたいし、経済や国民レベルの交流が進むようにしていただきたい。小泉首相の靖国参拝については、いろいろな議論があるが、首相は靖国参拝を続けられると思う。A級戦犯を崇拝しているわけではなく、戦争で亡くなった方を慰霊するという意味での参拝だと思うが、中国の政府や国民の理解を得られるような方策を考えていただく必要があると思う。そうしないと、この問題が非常に大きなネックとなっているように感じる。

Q:このままの日中関係が続くと、経済も冷めてしまうのではないか。

北城: 政治の面で対立関係が継続することは、経済の面でも決して良いことではない。しかし、中国との関係は、靖国問題だけではなく、歴史認識や資源開発の問題など、さまざまな課題がある。それを超えて共通の利益を探すための戦略が必要だし、歴史認識については共同作業をやる方向で進んでいるので、このようなことを積み重ねていくことが重要だ。一方、中国から日本へ留学して日本で良い経験をした方々は、良い対日感情を持って自国へ帰るので、長期戦略として、留学生、修学旅行、観光含め、多様な交流を推進するような戦略を作って対応する必要があると思う。米国では、米国への留学生が卒業後も働ける職場を作る、また成功した人たちが母国へ戻ったとき母国での成功を支援する、などの仕組みを作り、うまく機能している。日本でもそのような長期戦略が要ると思う。

渡辺: 現在のような日中関係の経済への影響がないわけではない。日本の企業は中国の市場において、欧米や現地の企業と激しく競争しながら苦労してやっている。経済活動にとってプラスということはあり得ないので、市場においては常に競争しているということを忘れないでほしい。経済的利益を得たいという意味ではなくて、それが日本の富への国益になると思う。

北城: 何が日本の国益かを考えながら議論をした方が良い。「日本および日本人の安全と国の繁栄を実現すること」が国益だと思う。それに合致しているかどうかで政策を判断すべきで、経済界は決して自社の利益のためにこのような発言をしているわけではない。

Q:欧米企業に比べて日本企業では、アジアからの留学生に門戸が開かれているとは思えないが、企業として、どのような認識をお持ちか。

北城: 最近状況は変わってきたのではないかと思う。経済同友会でも、企業で働く外国人の管理職を集めて交流会を行ったが、日本企業の外国人採用は増えてきたようで、採用面では前進している。また、成果主義を導入し、国籍に関わらず良い仕事をすれば評価されるようになってきている。これも前進だ。ビザ取得など日本で継続的に働ける環境を提供することについては制約があるが、かつてに比べれば大分良くなってきた。現地法人のトップを日本人から現地人にすることも進み始めているし、ソニーでも外国人が経営トップに就いたり、日産のカルロス・ゴーンさんといった例をみれば、決して日本人でなければならないわけではない。優秀であれば、外国人でもできることが実証されており、今はチャンスだと思う。

米国では、「9.11」のテロ以降、外国人留学生の受け入れを絞ってきているので、このような時こそ、日本は戦略的に優秀な留学生を受け入れるべきである。中国やインドで経済的理由により大学に行けない学生に奨学金を与えて、自国や日本で活躍してもらう非常に良いチャンスである。今回の日中問題を一つのきっかけにして、新たな長期戦略の中で、中国・アジアの国々と良好な関係を構築していけば良いのではないか。

渡辺: 経済同友会の関係団体で、企業の社員寮への留学生受け入れ等を行う「財団法人留学生支援企業協力推進協会」があるが、先週金曜日に行われた理事会で、現在の留学生数は12万人弱で、この5ヵ年間で5割程増えているという報告があった。また、社員寮に受け入れた留学生の就職先を調べたところ、日本企業に就職している人が自国で就職している人よりも圧倒的に多かった。この留学生数12万人の内、公的な寮に入ることができる人は2割強しかおらず、多くの留学生が寮に入れない。我々の活動も多少役に立っているようだ。

北城: 調査結果からは、日本企業の社員寮に入った人は、日本人との交流の影響かもしれないが、85%ほどが日本企業に就職している。かつては、就職難が原因で留学生が来なかったが、状況は変わってきている。その意味では、成果主義の導入は、留学生の受け入れにおいて良い方向に働いているのではないか。最近では、成果主義の問題点が指摘されているが、私は必要な施策であると考えている。外国人や女性が活躍することは、日本の活力にとって良いことである。

文責:経済同友会事務局

以上


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