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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2005年05月10日(火) 10:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

記者の質問に答える形で (1)JR西日本の脱線事故、(2)日中韓のFTA、(3)子育て支援官民トップ懇談会、(4)景気の現状について発言があった。

Q:JR西日本(の脱線事故)について、(事故後に社員が)ボーリングや宴会をしていたことが取り沙汰された。その後の対応も含めて、企業のあり方や企業風土について、どう見ているか。

北城: 今回の事故で大変多くの方が亡くなられた、犠牲者が出たということで安全性の重要さを再認識させたと思う。企業の社会的責任というときに、単に利益を上げるだけではなく、社会から見て価値のある存在でなければならない。その中には、法律に違反しない、倫理観の高い経営をするということもあるが、環境への配慮や安全確保は非常に重要だと思う。これまでも食品や自動車の安全性についても色々な問題が起きて、企業経営に大きな打撃を与えた。そういう意味でも、安全の確保は重要だということを再認識させた。従って、企業は効率の良い経営をして利益を上げることは重要だが、安全を確保し、環境に配慮し、法律に違反しない経営をすることが大前提だ。今回、安全に対する配慮が十分行き渡っていたのか。設備の面もあるだろうし、社員教育の面もあるだろう。企業経営者として、安全が確保できる経営をしなければならないということについての重要性を再認識させたのではないか。

私鉄などは民間で経営しているわけで、(民営化したから)安全性に問題があったわけではない。民営化の問題として取り上げている説もいくつかあるが、個々の企業の経営の問題だと思う。民営化されて10数年経つわけで、今回のJR西日本の経営に関して言えば安全性の確保に問題があったということであって、すぐに民営化の問題にこじつけるのはおかしい。民間経営であっても、当然、安全に配慮しなければならないし、逆に配慮が不充分であれば、これだけ大きな経済的、社会的批判を受けることが当然あるわけだから、経営者として十分配慮するべきだと思う。

Q:同時に、危機管理という点でも非常にずさんだったということか。

北城: 危機管理ももちろんあるが、それ以前に安全の確保が非常に重要だ(という認識が)、JRに限らず、公害、食品や製品の安全性も含めて全ての経営にとって必要だと思う。

渡辺: 輸送機関にとって、安全に(与えられた)時間の中で人を運ぶというのが商品品質だ。従って(輸送にかかわる)企業が何をするべきかといえば、安全に正確に快適な運送をつかさどることだ。危機管理や企業のリスク管理という意味ではなくて、乗る人は安全だから乗る。

北城: 安全、安心があって、その上での時間管理であり、乗り心地のよさだと思う。化粧品などでも使って安全であって、初めて綺麗になる(商品を作れる)とか、(商品の)競争力が生まれるわけで、(安全は)経営の大前提だと思う。

渡辺: 調子に乗るようだが、安全性を無視すれば、もっと綺麗になる化粧品ができるということだ。それを考慮しなければならないから、限界を感じながら苦労している。

Q:安全への配慮が経営の大前提だといいながら、それができない会社でこれまでも事故が起きている。経営者は、企業倫理は大事だと言うが、一向にその点について改善されない理由の一つに地域独占形態という面があるのではないか。民営化、自由化したものの、誰に向って経営をしているのか見えない会社が、事故を起こしているように思えるが、これについてはどうお考えか。

北城: 独占的な市場を持っている企業は内向きの議論が多くて、外部に対する配慮が不十分だということは、一般論では言えると思う。しかし、JR西日本に関して言えば、独占というよりも地域間の競争、特に私鉄との競争は名古屋や大阪地区は大変厳しい。従って、独占企業だったから問題ということではなくて、経営の優先順位をどこに置くか、事故が起きないときに安全にどこまで配慮して経営資源を投入するかという優先順位の問題だと思う。

JR西日本に限らず、食品でも、事故が起きない限り、それに対する配慮が不十分になる。しかし、一度起きたときの影響が非常に大きいということを考えれば、(今回の事故は)安全は重要だという考えのもとに、優先順位を高くして経営すべきだという(経営者に対する)警鐘だと思う。自分の業界で問題が起きると経営者も重要と考えるが、他の業界で起きた安全の問題に対して、自社は大丈夫かという配慮が不十分だったのではないか。

一般論として独占的な体質の会社で問題が起きるのではないかという指摘は、その通りだと思うが、JR西日本の場合は、独占のためというよりも、収益はもちろん重要だが、それに対する意識が強いあまり、安全に対する配慮が不十分だったのではないか。少なくとも設備投資の過去の推移を見ると、安全に対する投資がここのところ、やや少なくなっているように見受けられる。

Q:企業が利益のみを追及して事故や不祥事を起こすと、逆に規制を強化すべきだという声があがる。それによって、現在進められている規制緩和を土台から揺るがすことになるのではないかと思うが、その点はいかがか。

北城: そういう意味で、企業の社会的責任は非常に重要で、大前提であるといえる。経営者が規律ある経営をしない限り、おっしゃるような批判が出ることは十分あると思う。

一方、我々が言っている規制とは、経済的な規制のことだ。量的規制や参入規制によって価格を維持しようという規制がもっとも大きく、このような既得権益を守る規制をまず止めるべき、ということだ。そうすると、打撃をうける産業が出ると思うが、それは新たな職を作ることで対応すべきで、法・政策の上での規制は止めるべきだ。安全に関しては、まずは企業側がきちんとした対応をすべきだが、食の安全に関する基準など安全確保のための基準は必要だと思う。

渡辺: 「競争や利益が悪いことを生むから規制すべきだ」という意見があるが、よく見れば、グローバルな競争社会の中で優れた経営をやっている会社が大きな不祥事などを起こした例はない。結局、競争に負けていく過程か、あるいは規制業種の中に変なものを守ろうとする力が依然として残っているからおかしなことが起こる。規制改革をして、社会で生きていけない会社は振り落とされ、残るのは良質な会社だけだというのが我々の目的だ。

今回のJR西日本に関しては、利益優先や民営化が安全を脅かしているという報道があるが、むしろ完全に民営化されていないことが大きな要因だと思う。競争のなかで古い生き方で生きているために、いろいろな問題が発生する。良い意味での競争のなかで生きていけば、企業や経営者自らがCSRを全うせざるを得ないというのが現実だ。優れた企業は、同業の過去の失敗を全て勉強している。他者の例を自分たちの教訓として活かしていかなくては、グローバル競争のなかで企業を持続できない。

北城: 利益優先が悪いというが、持続的な利益を考えれば今回の事故は大きな打撃だ。利益優先が悪いのではなく、経営の中での優先順位のつけ方が適切ではなかったということだ。長期的な利益を考えれば、今回のような事故では多大な批判を受けるし、経済的な損失もある。利益優先が悪いのではなく、持続的に利益を上げられるかどうかというきちんとした経営をしているかどうかという問題だ。何となく「金儲けが悪い」という言い方が聞かれるが、もともと我々は自由主義・資本主義の中で経済活動を行っているわけで、利益を追及しないということは共産主義・社会主義で世の中を運営することになる。東欧や東ドイツ、北朝鮮を見ても、共産主義でうまくいっている国はない。利益を追及するために創意工夫、努力をすることが民間の活力であり、経済活性化のために必要な手段である。

Q:過去にも食品業界など安全性が疑われた問題があったが、そのような例を見ながら今回の事故が起きたということは、完全に民営化されていなかったことが要因ということか。

北城: 民間企業の経営として適切な経営をされていなかったのではないかということで、民営化の問題ではない。経営者は、他の業界で起きたことを自分の業界に置き換えて、安全の重要性を見直すことが重要だ。特に、輸送は安全がもっとも大きく、その上でのサービスや定時運行なので、商品品質の一番の特性である安全を無くしたことは非常に大きい。

渡辺: 優れた企業は、今回の事故の翌日には自社の全工場などの安全性を総点検しているはずだ。そのくらい、企業は真剣に経営している。安全でないものを安全と偽ることが最悪だが、今回の事故によって、優れた経営者たちは安全に対する事故チェックをやっていると思う。

北城: ある意味では過信もあったと思う。現場を時速70キロのスピードで運行していれば事故は起きないという認識があったと思うが、人間はミスを起こすかもしれないということからすれば、人間がミスをしてもそれを防ぐシステムを準備しなくてはいけないというのは当然の経営課題で、あとは優先順位の問題だ。あくまで、民営化の問題ではなく経営の問題である。何か問題が起こると、こじつけて郵政民営化に反対する声が上がるが、それは問題のすり替えだと思う。

Q:事故発生後に宴会やボーリング大会が行われていたという、社員のモラルの問題についてはどのようにお考えか。

北城: これは社員のモラルの問題だと思う。これだけの重大事故が起きたときに、自分たちのレクリエーションを自粛するのは、会社の指示で動く話ではなく、個人の判断としてあると思う。一方、そのことばかり大きく報道されているが、もっと何故このような事故が起きたかという本質論を報道していただいた方が良いと思う。安全に対する経営としての優先順位がどこにあったか、それが十分社員に伝わっていたかということが大事で、事故が起きたときの自粛のやり方については、確かに配慮が足りなかったとは思うが、そこばかり追及すれば問題が解決することではないと思う。心情的に追及したくなる気持ちは分かるが、もっと本質的な因果関係を追及した方が良いと思う。

Q:今回のような事故が長期間起きなければ、安全への意識が薄れるなどということは起こらないか。

北城: 企業の社会的責任、CSRを採り上げているのは、そういうことを忘れてはいけない、ということだ。CSRを確実に実行するために、企業の行動基準をつくり、それがうまく機能しているかどうかのチェックの仕組みもつくり、さらに外部に情報を公開し、社外の目も入れて経営を監視する、という制度を作るということだ。多くの会社が行動基準を作っていると思うので、作られた基準通り経営がされているか、その優先順位の通り日常の経営活動がされているか、それを監査し外部の目にさらすということをしない限り、こういうことは起こる。責任ある経営をするには何をしなくてはいけないかという具体的な項目を作り、自社はどこまで進んでいるかを毎年チェックしている。そのような仕組みをきちんと作り、その仕組みが機能しているかどうかを確認しない限り、問題は起こると思う。安全に限らず、環境、法令順守、情報開示など沢山の項目がある。社会的責任とは、確実に実行するための制度設計と、機能しているかどうかの監視と、情報開示が重要になる。

日本のコーポレート・ガバナンスは、あまり外部の目にさらされない形式でこれまで来ているので、経済同友会では、社外取締役も入れて、外部に情報を開示しながら、外部の目を含めた監視体制をとるべきだと主張している。今回の事故で、社外取締役は、現経営陣に対して安全配慮について質問してほしいと思う。そういう意味では、マスコミには社外取締役がいない会社が多いので、コーポレート・ガバナンスも見直してほしいと思う。

Q:中国が、日中韓によるFTAを提案して、まだ検討の段階にはなっていないようだが、中国とのFTAについては、どうお考えか。

北城: 中国に限らず、FTA、できればWTOによる多国間の経済連携、貿易自由化が実現できれば好ましいが、当面は、他国間、二国間のFTAで個別の問題を解決しておくことが、まず必要だ。そういう意味で、中国や韓国とのFTAが推進できることは良いことだ。日本とASEANとのFTA、ASEANは中国ともFTAを行うので、(日中韓のFTAは)両方の推進の中で出てくる課題だと思うし、日韓でFTAができれば、その延長で中国とのFTAも可能だと思う。

その上で、日本は米国とのFTAも今後検討すべきだ。農業問題等色々難しい問題もあるが、日米(関係)は日本の安全保障と繁栄のために重要なパートナーシップなので、そことのFTAを推進することは重要だ。

Q:どちらかといえば、米国とのFTAを優先すべきだというお考えか。

北城: できれば米国とFTAを締結した方が良いと思うが、農業問題等難しい問題がある。日韓ができれば、その延長で日中というのも可能性がある。米国よりは農業問題による影響の難しさは少ないと思う。

Q:日韓そのものが、なかなか進まないという現状を、どう見ているか。

北城: 今、政府間で協議しているし、私は可能だと思う。韓国側で日本の工業力、製造業の競争力に懸念を持っているようだが、先進国二国間での問題は解決できると思う。

Q:本日、政府で、子育て支援官民トップ懇談会が行われるが、代表幹事はメンバーとして、どのようなことを目指しているか。

北城: 子育てに関して、国が重要な政策課題として取り上げることは非常に良いことだ。今まで、社会保障関係では年金、医療、介護など高齢者に対する対策に視点が向いていた。日本では高齢者に関する社会保障関係の支出が、子育て(支援に)比較して圧倒的に大きいという問題がある。そういう意味では、子育て、あるいは少子化に関する様々な課題に対して政府として取り上げることは良いことだと思う。ただし、財政に限りがあるので、新たに子育てに支援を強化するということになれば、どこかを削減せざるを得ない。その点では、社会保障費のバランスの中で、高齢者対策から少子化対策、子育て(支援)に政策の舵取りを変えていく必要がある。その上で、民間企業も子育てをしやすい環境を作るということは、次の世代を育てる意味でも重要な課題だ。各社それぞれ努力をしていると思う。

おじいさん、おばあさんが、両親を飛ばして、孫にお小遣いを上げているといわれる。どちらにしても高齢者世代から孫の世代にお金が移動するのであれば、国の政策を変えてもいいのではないか。少し年金をカットして少子化対策としての子育て支援に資金を回すことがあってもいいのではないか。孫の世代を育てるためには、我々(高齢者)が少し我慢しようということも必要だ。ただし、高齢者は票を持っているが、子供は無いので票に結びつかない。

Q:景気の現状については、どうお考えか。

北城: 年初から、1-3月、4-6月の二期を過ぎれば、景気はある程度回復するだろうと言われていたが、私はやや慎重な見方をしていた。1-3月はそれなりの成果が出ていると思うが、4-6月がどう出るかということだと思う。

ただし、日本の景気はかなり海外に依存している。中国との問題が起きたときに、米国の景気の減速もあったと思うが、株価が大幅に下がったが、(これは)海外市場の動きに対する日本の景気の依存度が高いということを示したと思う。輸出関係は数量も改善しており、IT関連の在庫調整もかなり進んできたようなので、そういう意味では4-6月を底に少しずつ回復する方向にあるのではないか。私はあまり楽観しなかったが悪くなるとも思ってもいなかった。やや底を這う環境ではないか。

Q:一番のリスク要因は海外の景気ということか。

北城: 海外で大きく依存しているのは米国なので、米国に関して言えば、原油価格と金利が今後上昇していく中で、景気後退を招かずに着地ができるか。それと中国市場の動向だ。

ダボス会議のアジア版(アジア・ラウンドテーブル)が今年はシンガポールで行われた。そこでは、これまで中国に対する関心が非常に高かったが、今回はインドへの関心が高かった。長期的に見ると、インドは2030年代くらいに中国を上回る人口になるのではないか(と言われて入る)。なおかつ中国を上回る経済成長を目指しているので、中国が追いつこうとすれば、インドは中国よりも高い成長率を達成しようとする。そういう意味で、インドの可能性がかなり議論されていた。中国だけに依存するのではなく、二極的に中国もインドも発展する中で、アジアの発展をどう考えるかが議論されていた。小泉首相もインドに行かれたが、日本企業も中国と米国だけに依存するのではなく、複眼的にインドも含めた東南アジアとの経済連携を含めて発展を考えていく必要があるのではないか。

もう一つ、以前から言われている内需について、もう少し国内市場の活性化に努力した方が良い。まだまだ規制が沢山あり、新たな市場を作る活動への取り組みが弱い。たまたま昨日も起業家と話をしたが、できるだけ規制をなくして民間の自由な活動の場を作って欲しいというのが一番大きな要望だった。内需拡大の実際の具体策は規制をなくして育児、介護、医療、農業などの新しい事業に挑戦する場を作るということと、新しいことに挑戦する人達が出やすい社会を作ることだ。

以上


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