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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2005年03月31日(木) 13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

冒頭、北城代表幹事より、意見書 「市場における公正なルールの確立と企業価値の向上に向けた経営者の不断の努力を求める」 について説明があり、その後、記者の質問に答える形で(1)新日本製鉄等の株式持合い拡大、(2)メキシコとのFTA発効、(3)個人情報保護法、(4)新年度の経済見通しと課題、(5)郵政改革の現状、(6)石油開発公団の解散について発言があった。

Q:昨日、新日本製鉄、住友金属工業、神戸製鋼所の三社で相互の持ち株比率を上げる検討を始める、新日鉄が年間増配をするとともに自己株消却をするという発表があり、意見書の内容が市場で実行されつつあると思うが、これについてどうお考えか。

北城: 企業業績を上げるということは経営者として第一義的に重要だが、上げた成果をどのように株主に還元するかについては色々な方法がある。企業が十分な資金を持っていて成長のための投資が十分出来るということであれば、第一に自社の成長のために投資をする。それでも十分な余力があれば配当を増やす、あるいはその資金を使って企業買収、新しい事業を作り出す。自社の株価が安ければ自社株買いを行う。配当を増やす、自社株買いをするということは、資金に対する効率を高めるということでは好ましい。そういう意味で、株主へ企業経営の成果を還元する、高める、それによって株価も上がっていき、それが企業価値を高めたということに繋がる。

新日鉄、住友金属、神戸製鋼がお互いに持ち合いを増やそうということについては、一般的な持ち合いというよりは、業務提携的な色彩もあると思う。製鉄製品の融通等色々と考えているようなので、個々の企業戦略として、それを株主がどう評価するかは市場で決まってくることではないか。

Q:増配をすると株価が一時的に上下するとういこともあり、一定的に安定した配当を提供することが市場にとっては好ましいとお考えか。

北城:それは個々の企業の属する業界や、経営環境によって異なる。安定配当するということは業界や企業業績が安定している、急成長していないので新たな設備投資をする必要性が少ないということであれば、利益を配当で還元すれば良い。ただし、配当で還元すれば資金が流出し設備投資にお金が回せないし、それによって借入金を増やせば財務体質の悪化に繋がる。従って一律に配当を増やすことだけが株主への価値の還元ではない。一義的には業績を上げるために資金をどう使うかであり、業績が上がって一株当たりの利益が増えれば当然株価は上がる。その上で配当を増やす、自社株買いにお金を回す。それは個々の会社の配当も含めた株主に対する政策なので一律に増配が良い、安定配当が良い、ということではない。個々の企業の経営者が株主に対する還元の考え方を株主に示して、それを市場で評価してもらうということだと思う。

渡辺:昨日の一連の発表の内容を見ると、非常に利益を上げている、非常に優れた技術を持った会社でありながら、株価は企業価値の実態に見合ったものになっていない。企業価値を市場が株価で値段をつけるということが、市場価値、株主価値ということだ。企業がもっと利益がこれだけある、技術は優れている、将来への希望もある、ということを正しく発信すれば市場は価値を評価していく。それがIRであり、花王においては、積極的に行ってきた。配当に関しては得た利益をどのように活用するか、どれだけ株主に対して還元するのかという配当方針というのが常に語られなければならない。それとともに、社内に留保されたお金の生かし方をCEOが総会や営業報告書で明確に株主に説明しなければならない。株主総会もこれまでお粗末だったということだ。そういう意味では、社外取締役が、利益に対する配当が適性かどうかを判断してそれを株主総会に諮る。その判断の正否は株主総会がチェックする。そうした二重のチェックが行われていてれば、配当が低いなどという非難を受けることはない。

Q:4月1日にメキシコとのFTAが発効するが、韓国では2007年までに15カ国で発効するという加速の動きも出ているが、現在の日本のFTAに関する政策についてどうお考えか。

北城: 基本的にはFTAを推進していくべきだ。日本は貿易によって国を支えているわけで、各国との貿易障壁を取り除く、投資を行うということは日本に取って良いことなので、FTAの推進、締結の加速化を図るべきだ。そのためには農業や雇用といった制約があるが、基本的に、日本は先進国であり、発展途上国、特に東南アジア諸国とのFTAにおいては日本市場を開放することで、各国が発展する、それによって日本にとっての市場は増える。特に日本では製造業が強く、工業製品の輸出や投資については、日本は優位な立場にあるので、できるだけFTAを推進して東南アジアの市場規模を拡大することで日本も反映すると考えるべきだ。もちろん農業や雇用等、特定の問題が起きる業界はあると思うが、それについては移行過程の対策が必要だ。急に何の対策もなしにFTAの推進は難しいと思うが、保護政策を続けるということはFTAの締結を遅らせて、市場の拡大を通じた日本の発展を妨げる。FTAを推進するべきであり、日本の推進(の動き)は遅いのではないか。

一方でFTAだけだと、個別の二国間、地域間協定が沢山できて整合性が取れなくなるので、合わせてWTO、他国間の協定も推進するべきだ。

Q:メキシコとFTAが行われれば北南米市場への足がかりとなる。戦略的な重要な拠点として、産業界として、企業経営として意図する地域はあるか。

北城: タイ、フィリピン、マレーシアとの現在の交渉をまず推進するべきだ。その上で、できるだけ早く、韓国、ASEAN全体、長期的には中国、米国と進めるべきだ。FTAによる日本の利益はもちろんだが、東南アジアの国々の長期的な発展を支援する、それが日本にとっての成果に繋がるという視点でのFTAの推進が必要だ。本来の時間軸からすればASEANと中国のFTAが先に実現するが、ASEANから見れば中国とのFTAも重要だが日本とのFTAの締結を望んでいるので、もっと加速するべきだ。個別のFTAの交渉内容を見ても日本に有利になる案件が多い。個別の問題がある業界への対策を取りながら推進するべきだ。

Q:4月から個人情報保護法が全面施行される一方で、昨日みずほ銀行で約27万人の顧客情報を紛失したという発表があった。政策や対策が取られても個人情報が流出している現状について企業経営者が今後留意する点は何か。

北城: 個人情報保護は企業経営にとって非常に重要な課題だ。これまでの日本は社内の人たちを信用する仕組みで動いてきたところがあるので、社外に流出したときに、外部に悪意を持った人がおり、その侵入を防ぐ対策はかなり行われてきたと思う。しかし外部のシステムやネットワークを使って、悪意で侵入する場合もあるだろうし、社員はもちろん外部に業務を委託している場合もあるだろうから、情報流出に対しては様々なリスクがある。その前提の下に企業経営者として、個人情報を守るための仕組みをいかに作るかということが重要だ。各社ガイドラインを作っていると思うが、日本の場合は特に内部で問題が起きるというリスクにも配慮したガイドラインの運用が必要だ。本質的には必要の無い情報を持たないことだ。情報は何でも蓄えておくということであれば流出のリスクは高まる。個人情報については最低限必要なものだけを保持し、それを守る仕組み作りが必要だ。作った仕組みがうまく機能しているかという内部監査の仕組みも作らなければならない。日本では、仕組みまでは作るが、それが機能しているかどうかの確認が弱い。ありとあらゆることを考えても(可能性は)ゼロとはいえない。

Q:明日から新年度を迎えるが、経済の見通しと課題についてどうお考えか。

北城: 日本経済が踊り場と言われているのは、その通りだと思う。1‐3月の業績はそれほど悪くないかもしれないが、4‐6月に景気が回復するかが課題だと思うが、あまり楽観はしていない。海外市場も急激に悪化はしないだろうし、それほど悪くはならないだろうが、個人消費が順調に回復するとも思えない。所得はある程度増えているが負担も増えてきているので、個人消費が今後堅調に推移するかについては、色々な制度設計や将来不安を無くすということがなければ、やや厳しいのではないかと懸念している。経済同友会の会員経営者にアンケートをとっても、景気はやや後退局面と見ている。年末にかけては回復するという意見も多いが、やや希望的なものも含まれている。景気後退はないと思うが、そう簡単に景気が堅調に推移するとも思っていない。

Q:楽観していないということについて、具体的に鋼材価格や原油価格等、個別の要因としてはどうお考えか。

北城: 原材料の価格が上がって最終製品の価格が上がっていないということは、どこかでそれを吸収しているということだ。コストが上がって販売価格が上がらないということは、企業業績がそう簡単に上がらないということだ。ディジタル家電の在庫はある程度調整が進むと思うが、産業全体としては厳しい。サービス業については、価格が上がる状況ではない。サービス産業(の比率)が一番大きいので、第三次産業の価格が上がらなければ、前述したように製品の価格も上がらないので、デフレも簡単には解消しない。

Q:今後、税や社会保障の議論が進んでいかないと景気回復のきっかけにはならないということか。

北城: GDPの6割程度が個人消費であり、これまでは収入が増えない中で堅調に推移してきたが、今後年金の負担や、所得税、住民税の負担が増える(定率減税の廃止はある意味での増税なので)中で、個人が消費を拡大し続けるかどうかが懸念材料だ。従って、将来不安をできるだけ起こさないような年金も含めた社会保障制度、税制について個人に配慮した設計が必要だ。

渡辺: 負担増は個人消費に対するアゲインストであり、それに立ち向かうためには、イノベーションがどれだけ起こるか。生産性をどれだけ上げるか。そうした解決策が無ければアゲインストを突破できない。バロメーターは、国内産業、政府部門も含めて、イノベーションがどれだけ起きるか、生産性がどれだけ上がるかということだ。経済同友会の来年度のテーマはイノベーションだ。

北城: イノベーションによって生産性を上げて、企業業績が上がって、なおかつ労働者への配分を増やしても業績を上げ続けられるような生産性の向上が無ければ持続できない。その生産性向上を実現するようなイノベーションを民間セクターも行うが、公的セクターも効率化しないと、重い負担を抱えて民間セクターが順調に発展するということは非常に難しい。海外市場が堅調なときには輸出で成長できたが、米国も中国も、これまで以上に堅調に推移することは難しい。内需を拡大するための施策を取らないと厳しい。

渡辺: 郵政改革も資本の生産性を上げるために重要であり、いずれ利潤や金利、株価というところに跳ね返ってアゲインストを突破する力に繋がる。そういう意味では郵貯改革もイノベーションだ。

Q:郵政改革について、これまで政府が自民党に譲歩している印象がある中で、小泉総理は政府案を4月1日に固めたいという意向を表明したが、これまでの動きについて、どうお考えか。

北城: 基本的な民営化の枠組みについては、政府の基本方針に基づいて進められていると思う。前回の枠組みについては賛否両論あると思うが、それに基づいて推進していただくことが必要だ。その上で、自民党から出てくる色々な要求に対して、法案を成立させる過程で色々な妥協が行われるということは考えられるが、基本的な原則は何のために民営化するのか、ということだ。銀行業務と保険業務はそれぞれ民間が行っている事業なので、同じような競争環境に置くことが大原則だ。2007年4月に民営会社を発足させるという基本は引き続き守っていただきたい。政府原案の窓口ネットワークも含めた4社を別々に設立するという形は必須だ。ある程度の妥協と言ったときに、基本枠組みから違う、例えば4社分割を行わない、2007年4月の民営化を延ばすというのは好ましくない。2007年4月の直前になってシステムが間に合わないといった技術的な問題で数ヶ月遅れることはあるかもしれないが、それは基本原則ではなく例外の話だ。根本は、2007年4月にきちんと実施する。そして5~10年以内に郵貯と簡保については完全民営化する。株式の持ち合いのような話もあるが、そうなると本来民間の独立した会社にはならない。全く独立した民間資本による民間企業にすべきだ。金融業務についても、ユニバーサル・サービスの義務付けということで、設置基準によって銀行と保険に関するルールを作るということになると、本来、民営化の主旨は、民間企業として創意工夫して良いサービスを低コストで提供するということなので、結局、経営の自由度をなくすことになる。全国各市町村に一箇所の郵便局を設置することは現実的に問題無いと思うが、金融業務に対する義務付けは問題がある。過疎地への配慮は必要だが、どこまで配慮するかというバランスの問題だ。配慮すれば、するほど、そのコストは結局税金で負担するということなので、コストがかかるということは無料ではない、という意識が必要だ。全く税金がかからないという意見があるが、本来収めるべき固定資産税や法人税を納めていないわけで、そこで上がる税収分だけ、国民が税で負担をしているということだ。本来の経営以上に負担をかけるとういことは、その分を国民が税金で負担しているということであり、本来の民営化の主旨に則って、郵便事業と金融と保険は明確に分けるべきだ。

Q:今日で石油公団が正式に解散し、4月1日から新組織が業務を継続することになる。公団の使命が変わって、従来の融資、出資についてかなり絞り込まれているようだが、それが開発にどのような影響を及ぼすとお考えか。

北城: 資源開発は日本のエネルギー政策として重要だが、一方で、余りにも過大な支援策があるということで非効率な分野の開発に取り組ませてきたという面もある。リスクはあるが、過大な政府負担をして、原油等の開発を支援することは非効率だと思う。基本的には民間の努力を中心にしてくべきだ。資源開発については、最近非常に大きな成果が出ているので、基本的には民間のリスクで取り組めば良いと思う。

Q:根本的な点だが、日本経済の命脈を握っているエネルギーの調達を民間ベースで民間のリスクで行うということについての代表幹事としてのスタンスを聞かせて欲しい。

北城: 基本的には民間による資源確保で良いのではないか。ただし、エネルギー政策として、日本のエネルギーの中で、どれだけ原子力、石油、等に振り分けるかというについては議論する必要があるが、基本の資源確保は民間の努力で良いと思う。政府が各国との交渉や条件整備について支援するということは当然あっても良い。

Q:今開催されている愛知万博において、産油国の中で、サウジアラビア、イラン、カタール等は参加しているが、UAEやクウェートは不参加であり、日本は積極的に招聘したようだが実現しなかったようだ。これについてはどうお考えか。

北城: 万博に参加しなかったということだけで、体外的な関係が悪いということではないと思う。それぞれの産油国の発展に日本が貢献するといった良好な二国間関係を作ることは政府の仕事であり、そうした外交努力は政府に期待したい。中東諸国と日本は割合良好な関係にあり、過去色々な投資をしてきているので、日本に対する国民感情は悪くないと思う。開発の資金のリスクを大半、例えば9割を国が負担して開発を行う、失敗しても民間がリスクを負わない、というのは、ややモラルハザードを生みやすい仕組みだったと思う。

渡辺: 経済同友会は市場主義を標榜しているが、農業でもエネルギーでも、結局は市場が左右している。需要と供給の関係で値段が上下する。高くなっても買える力を国の経済が持っていなければならない。それを維持できるかどうかが、その国の経済競争力だ。石油の値段が上がっても揺るがない日本経済を生産性も含めて作っていれば、他国よりも購買能力があれば供給を確保できる。資源というのを純粋な経済として考えると、買える力を如何に培うかという競争を行っていると思う。

Q:買える力があっても、(原油高が)実体経済に響いてきているが。

北城: 日本だけが高い石油を買っているわけではなく、中国や米国も同じ値段で石油を買っている。それでも隆々と利益がでる経済を培っているかどうかだ。

以上


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