代表幹事の発言

経済3団体共催新年祝賀パーティー後の共同記者会見

山口信夫 日本・東京商工会議所会頭
奥田 碩 日本経団連会長
北城 恪太郎 経済同友会代表幹事

Q: 為替相場が上下するなど不安定な年明けとなったが、今年の景気をどのように見通しているか。また、リスク要因があるとすれば何か。

山口日本・東京商工会議所会頭: (略)

奥田日本経団連会長: (略)

北城: お二人の考えと基本的には同じだ。年の後半に景気回復を期待しているが、その要因として、企業業績は引き続き堅調に推移する。米国経済も今の成長率よりは低くなるかもしれないが3%台の成長はできるだろう。中国も多くのリスク要因があるが、9~10%は高すぎるにしても7~8%の成長は恐らくできる。心配なのは個人消費だ。企業業績は上がっているが個人の給与所得が増えていないので、個人が将来に向けて不安の無い政策が打ち出されるかどうか。年金の負担増、定率減税の廃止等、増税の方向が見えてくると個人消費に対する悪い影響が出かねない。円高と個人消費の停滞がリスク要因だと思っている。基本的に企業業績が良いということは、株価も良くなる方向だし、株が上がれば景気に対する明るい展望が出てくると期待している。

Q: 政府の経済政策運営は、引き続き改革なくして成長なしという路線を踏襲するようだが、政府の経済運営に対して注文があるか。

山口会頭: (略)

奥田会長: (略)

北城: 今年は戦後60年、還暦を迎える年だと思うが、これまで日本の発展に貢献してきた政策が制度疲労を起こしている、それを直すのが構造改革だと思う。小泉政権の仕上げの年ということで抜本的な構造改革に是非、取り組んでいただきたい。

郵政事業の改革もその一歩だと思う。2007年4月から分社化した形で郵政の民営化を行うという政府の方針が出ているので、その通りに実現して頂きたい。特に民間になるときに、会社の形態としては社外取締役を登用した委員会等設置会社の形で民間会社を作って頂きたい。国の政策や省庁の利益で経営されるのではなく、国民の目から見て客観的な立場の取締役が経営に参加するような委員会等設置会社で民営会社を作ることがコーポレートガバナンスの観点からも重要だ。道路公団の改革についても、今年の10月に民営化会社が発足すると聞いているが、このコーポレートガバナンスも、社外取締役を登用した委員会等設置会社で作ることが国の関与を少なくして、無駄な道路を作らない、不良債権を作らないためにも重要だと思っている。その上で、構造改革の中では、奥田さん、山口さんも触れたように、社会保障の一体改革を政府与党で取り組んで頂きたい。財政再建については、基本は歳出カットだ。これ以上歳出は削減できない、国民が「税を増やしてもいいから、このサービスを提供して欲しい」という状況になるまで、無駄な歳出を削減することに重点を置くべきで、増税はその後で考えていただきたい。

Q: インドネシアでの地震発生から10日が経過し、被害が拡大している状況である。当初は日本経済への影響は限定的と見られていたが、現地では伝染病の発生が危惧されるなど2次的被害も懸念されている。生産や物流面で、今後日本経済への影響が出てくるのか、日本とのかかわりの深い地域での災害であるだけに、あらためて見解を伺いたい。

山口会頭: (略)

奥田会長: (略)

北城: 今回の津波の被害について、CNNで見ていたが、「TSUNAMI DISASTER」という英語で紹介されている。津波が国際的に通用する言葉になっている。日本の学者が学界で津波に関する発表を行って以来、「TSUNAMI」という言葉が使われているようだが、国際的に認知されているということを感じた。

救援活動については、日本も医者の派遣は割合早かったと報道されているが、海外の国々の救援活動が先にたくさん紹介されている。自衛隊の派遣を今検討しているようだが、国際貢献の中で、自衛隊の初動体制、「すぐに出て行く」ということができるような法律も含めて制度を検討しておくべきではないか。それが、日本の、(特にアジアの国々に対する)大きな国際貢献になると思う。

経済的な被害については、ほとんどが観光地なので日本経済に際立って大きな影響が出るとは思っていない。中国等の観光客はそれほど大きな被害は受けていないようなので、中国や米国の経済に影響が出るとは思わない。アジア経済に多少影響が出ても日本経済に大きな影響は出ないと思っている。

Q: これからの人口減少社会を迎えるに当たって政府に望むことは何か。また、企業として取り組むべきことは何か。

山口会頭: (略)

奥田会長: (略)

北城: 戦後これまでは、人口が増えていく中で、高齢者の問題をどうするか、国民全てを平等に豊かにするために何が必要か、あるいは経済発展をどうするかということで、政策が出されてきたと思う。少子化の問題は、目先、今日誰かが非常に困っているという問題ではないので、どうしても先送りになりがちで、政策として取られる規模も小さい、従って大きな効果が出ていないということだと思う。戦後60年、還暦を迎えて、次の60年を考えたときに、少子化、子供の教育は日本の将来にとって非常に重要な課題だ。高齢者の福祉も必要だが、どの水準で高齢者を含めた社会保障(介護、医療、年金)にお金を回すのか。一方で、どの水準で少子化、子育てにお金を回すのか、政策の優先順位をもう一度、考え直す時期に来ていると思う。高齢者に対する社会福祉、公共事業、農業支援、色々な政策項目に比較して、少子化、教育についての優先順位を上げて、予算の配分を抜本的に変える時期ではないか。

人口が減少するからすぐに移民を受け入れるという考えよりも、子供を産みたい人が産みやすい環境を作るべきだ。経済的な負担、特に教育に関する負担が大きいということが少子化をもたらしていると思うので、保育、幼稚園も含めて、教育にかかる費用を大幅に国、地方自治体が負担する制度に変えていくべきだ。日本だけ豊かな国になって、外国から人を受け入れないということは難しいと思うので、移民の受け入れも必要だが、少子化の対策のために受け入れるということより、子供を産みたいという人が産める環境を作るべきだと思う。企業も社員が子供を産みたいというときに、子供を産んでも、子育ての期間会社を休んでも、在宅勤務等、仕事を続けたいという女性には、そのようにできる制度を作ることが大事だと思うし、こういう制度を作れる企業が社会からも認知され、学生や社員からも高い評価を受ける企業として発展できると思う。

Q: 少子化進行への企業の取り組みに関して、育児休暇制度などは整備されていると思うが、実際にはなかなか利用されていないという指摘もある。経済団体として、企業への法令遵守は呼びかけているものと思うが、実際の制度活用を呼びかけるための働きかけなどは行っているか。

奥田会長: (略)

Q: 国民は、総論としては少子化が好ましくないとわかりながら子供をつくらないのが現状である。各論として、企業経営者としても一歩踏み込んだ取り組みが求められているのではないか。

山口会頭: (略)

奥田会長: (略)

北城: 少子化対策について企業が行うべきことについては、個々の企業が大体取り組んでいる。基本的には働いている女性が子供を産むことによってキャリア上不利にならない制度を作ることが企業の責任だ。逆にそういう制度を持っている企業に優秀な女性が入りたいと思うだろうから、その問題は自ずと解決していくと思っている。産休期間を確保するという単純な問題ではなく、産休を取った後で、同じ職場に復帰した時に、男性社員と同じ処遇を受けてキャリアを追求できるか。そういうことに価値観を感じる女性が活躍できる会社が、これから女性に支持されるようになるだろう。

一方で、教育にお金がかかるという現実の問題があるので、抜本的に育児、幼稚園、保育園にかかわる費用は、形態としてはバウチャーがいいと思うが、月額いくらという形で支給して、そのお金で公立でも、私立でも好きなところを選んで、子供を預けられる。保育園、幼稚園にかかわる費用がかからないようにするべきだ。初等、中等教育についても公的な教育機関の質を高めて、必ずしも私学に行かなくても、優れた教育を受けられるような教育改革をするべきだ。税制についても日本の場合は子供一人について定額の控除があるだけだが、フランスのように収入を家族の数で割って税率を決めるようにすれば、子供が増えることで税制上非常に有利になり、子供を産みたいという人が産めるようになる。一義的には子供を産みたいと思いつつ産めないという気持ちを、政策的に取り除いていくのが一番だと思う。

Q: 戦後60年たった現在、今後必要な改革の優先順位を伺いたい。

山口会頭: (略)

奥田会長: (略)

北城: 三つ挙げたいと思う。一つは、経済を活性化させる施策、なおかつ、財政出動という形ではなく、民間の活力を生かすための施策を取ることが大事だ。そのためには、社会保障制度の改革等も将来不安を起こさないということで個人消費を増やすためにも必要なことだと思う。新しい事業に挑戦する人々が出るような制度、規制改革、新事業への挑戦を支援する税制を作って、新しい事業が増えることで雇用を拡大して経済を活性化させる。不良債権処理等、これまでの政策は過去の問題の処理だったが、将来に向けて経済が発展するような施策を打ち出すべきだ。

二つ目は、財政再建だ。長期的には財政が破綻すれば金利の上昇も含めて経済発展の阻害要因になるので、財政再建をするべきだが、その順番は、第一に歳出カット、その次に経済規模の拡大による税収確保、それができないときに初めて増税を考えるべきだ。国民が納得するまで歳出カットに取り組むことで財政再建をするべきだ。2013年にプライマリーバランスの均衡ということであれば、それに向けてのスケジュールと手段を明確に示してもらいたい。それによって財政再建に関する国民のコンセンサスもできる。

三つ目は、将来的な課題として、教育、特に学力の向上を含めて、新しいことに挑戦し、創意工夫できる、生きる力を持つ子供を作る。そのためには校長先生や第一線の先生に権限が委譲されて教育現場が活性化するような教育改革と、子供を産みたいという人たちが子供を産みやすくするような環境整備が必要だ。

Q: 憲法改正議論が高まっており、総理も各党間の改正案を調整する時期にあると発言している。憲法改正への認識や政治に望むことは何か伺いたい。

山口会頭: (略)

奥田会長: (略)

北城: 色々な憲法改正案が出ているが、多くの国民がコンセンサスを得られるような現憲法における矛盾点を先に改正するようにしたらどうか。前文から全て書き直すということでは、国民のコンセンサスを得にくい。一度も改正されなかった憲法だけに、ここだけはおかしい、という少数の問題点を洗い出して、そこにコンセンサスを求めていくべきではないか。例えば、第9条の問題や、憲法上判断が難しいが、私学に対する国の資金援助は「公の支配」の無い所にお金を出していることになる。実際にはバウチャーのような形で解決できるかもしれないが、(私立の)学校に国がお金を出せるというのは(憲法と)矛盾している。こういった矛盾点を改正すべきであり、またそのために(憲法改正に関わる)手続法を整備していく。その上で、国民のコンセンサスのできた分野から直していけばいいと思う。

以上

(文責: 事務局)

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