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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2004年12月07日(火) 13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

冒頭、北城代表幹事より、本日発表の意見書「例外なく、すべての民間提案をモデル事業に: -実効ある『市場化テスト』の実施を求める-」について説明があり、続いて記者の質問に答える形で(1)郵政改革、(2)介護保険制度改革、(3)社会保障制度改革、(4)防衛費削減、(5)為替水準の見通し、(6)米国経済の今後の見通し、(7)OECDの学力調査、(8)韓国与野党議員による小泉総理の靖国参拝中止決議案提出、について発言があった。

Q: 郵政改革について自民党が週内に独自の意見書を、月内に党の案をまとめる。9月の政府の基本方針とは若干主旨が異なるように伝えられているが、今後の法案化の過程におけるスタンスがどうあるべきかを伺いたい。

北城: 色々な報道がなされており、最終的な案は存じ上げないが、例えば窓口ネットワーク会社で決済業務を行ったらどうかという議論もあると聞いている。これは結局、金融業務になってしまい、郵便貯金会社と窓口会社の両方が金融業務を行うことになってしまう。また、窓口会社と他の事業とのリスク遮断もできなくなり、他で赤字が出た分を金融で補填するということも起きかねない。やはり銀行業務と保険業務、郵便事業は分けるべきで、銀行業務については銀行業法で、保険業務は保険業法で管理をする。そして、金融二事業については(完全)民営化、100%民間保有の会社として、できるだけ早く独立すべきだ。そういう意味で、政府の方針で進めて頂きたい。小泉総理は郵政事業の改革について必要性を述べられてきたし、その必要性も十分理解されていると思うので、総理のリーダーシップで、基本的には政府の方針の下に、これから検討が進むことを期待している。

Q: 今週中にまとまる介護保険制度改革に関して、経済同友会の意見書は11月18日に発表されているが、改めて最終とりまとめを前にして、介護保険がどうあるべきかについて、聞かせてほしい。

北城: 介護保険制度改革については、日本経団連、日本商工会議所、関経連と共同で、本日意見書を発表したが、基本的にはそれに沿った考えだ。

まず、40歳からの介護保険の負担を20歳から開始するような拡大については反対である。20代の人たちにとっては、自分が介護を受けるという認識は少ないし、介護を行う世代でもない。必要性が理解できないところに費用負担を求めること自体、国民年金でも起きているように未納、未払いの問題に結びつきかねない。また、企業負担も非常に大きくなってくるので、ただでさえ厚生年金等の負担が増える中で、介護保険の負担を増やすことにも反対している。基本的には、介護に関する財政が赤字になりかねない、これからの負担を増やしても費用が大きくなる、ということが問題なので、軽度の要支援、例えば要介護「1」については、もう少し支出を抑える、個人負担を増やすという方向が必要ではないか。今1割の負担を2割程度にしていったほうがいいのではないか。本当に必要なところには支出をするけれども、軽度のものについては、できるだけ自己負担を増やして経済合理性が働くような方向が必要だ。

他の点については共同意見書と大体同じだが、介護が必要にならないように訓練をするといったことに介護保険の事業として支出するということだが、誰でも人の世話になることを望んではいない。健康に過ごしたいわけだから、健康に過ごすための訓練、例えはジムに通うような活動までも国が関与する必要があるのか。個人の考えでやるべきだ。どうしてもそのような制度が必要だと考える自治体があれば独自にやればいいわけで、国がやるべきではない。

Q: 介護に関連して、経済同友会は、今年度末くらいを目処に、医療と年金を含めて社会保障制度全般について提言をするということだった。社会保障審議会がばらばらで3つ一緒に議論する場というのが無いような状況だが、経済同友会としては、どのように筋道をつけていくべきとお考えか。

北城: 社会保障の中には、年金と医療、介護、その他にも失業保険や生活保護といった幅広いものがある。これらを社会保障全体として、どのような制度が必要かということを議論しようとしている。ただし、ここで議論をしても、どの程度の財政支出が必要かという話しが出てくる。国の財政全体の中での位置づけも必要だということで、社会保障のほかに、国の財政で負担が大きい地方財政改革、特に交付税の問題も含めて、地方へどれだけ国としてお金を出すべきか。さらに公共事業といった支出もあるので、全体を含めてプライマリーバランスの均衡、財政再建のために何が必要かということを来年の3月位までにまとめたい。

現在、潜在的な国民負担を含め負担率50%を超えるような歳出の規模になりそうだということだが、このまま(拡大して)56%程度になったときに、それを賄う歳入を維持するとすれば、例えば消費税(による歳入)がどれくらい必要になるのか、あるいは50%程度に抑えるとすれば、どの程度の負担になるのか。我々は、国民所得で40%程度のより小さい政府を目指しているので、その場合にはどの程度の負担になるのか。その3ケースをできればまとめて、3月末に提言として出したい。

Q: 来年度の予算編成に関して、防衛費の削減が焦点になっている。今週防衛大綱が示されて具体策が詰められると思うのだが、防衛費の削減について、ご意見を伺いたい。

北城: 安全保障の状況については、冷静構造時代から変わってきており、新たにテロ等の脅威が起きているので、日本の防衛、安全保障の政策をどうするべきかという議論が行われていると思う。一方で、財政再建をしなければならない、国の歳出を抑えなければならないという中で、(防衛費を)考えていくべきだ。新しく必要となるミサイル防衛やテロ対策にお金を回すにしても、これまで冷戦構造下で考えられていたような費用は削減して、全体としては歳出の規模を削減する方向で検討せざるを得ないと思う。防衛費も、社会保障費も交付税も、聖域無く考えていかざるを得ないと思う。

Q: 円高が進行しているが、ひと頃と比較して米国向けには現地生産を増やし、一方でユーロ高であるために欧州向けの輸出には逆に有利になっている。10年前に比べて円高の影響は変化してきていると思うが、どのようにお考えか。

北城: 日本から米国への輸出が大きく増えているわけではないし、現地生産も増えているので、直接的な影響は10年前と比較すると違ってきている。一方で、製造業の多くの収益が米国での事業で得られている。例えば、自動車産業での利益の大半が米国での事業のものなので、それを円に換算した場合、小さく出てしまう。増収増益と見ていたところが、下手をすると減収減益になりかねない。減収減益、あるいは売上げや利益の伸びが減ってしまうと、経営者としてはより慎重になる。そういう意味で、実体的な輸出減という影響は過去ほど大きくはないが、経営者の心理をより慎重にさせる。

ただし、為替(水準)は市場介入で決まってくる問題ではないので、経済の実体を反映した水準で決まると思う。急激な変化は、事業戦略、例えば工場立地の戦略等を誤る危険があるので好ましくないが、緩やかな変化であれば、それぞれの通貨の実力に合わせて為替の水準は決まってくると思う。

今回は円高というよりドル安だ。米国の経常収支赤字、財政赤字の改善がどうなるかの方が、影響は大きい。この二つはそう簡単に解消できるわけではないと思う。ただし、先週米国に行ったが、政府筋は、財政赤字の改善についてブッシュ大統領が2009年までに財政赤字を半減すると言っているが、それに向けての展望にはある程度自信を持っているようだった。

渡辺: 中国と米国との関係が大きくなってきているので、人民元やASEAN(の一部の通貨)が、ずっとドルとのペッグを続けていくのかどうかが、今後の大きな注目点だ。

北城: ドル安といっても、対円、対ユーロではドル安だが、人民元とはペッグしているので、いずれ人民元が少しずつ切り上がっていく方向が、通貨の調整という意味で必要となって来る。しかし、今、中国は簡単に切り上げできる状況ではないので、当面、すぐにはありえない。通貨は少しずつ変化していくことで、お互いの通貨の価値が調整されるので、ずっとある水準を維持して、急に大幅な変化が起きるとその影響は返って大きい。できるだけ早く、中国が人民元をドルとのペッグから、もう少し変動幅の広い形に変えていく方が、中国経済の持続的発展のためにも好ましいと思う。

Q: 米国のファンダメンタルズとして、双子の赤字の問題がある一方、米国経済が強くなれば、また「強いドル」に向うと思うが、米国経済の先行きをどう見ているか

北城: クリスマス商戦等について多少懸念があると思うが、基本的には米国経済は強いと思う。その理由はいくつかあるが、人口が約1%ずつ伸びている。生産性が年率2~3%向上している。これは、IT技術の利用もあるし、資本が最も効率よい分野に多く投下されているということもある。人口増と生産性の伸びで、年率3~4%程度の成長ができそうだ。その上、1~2%のインフレがあると名目GDPの成長率は4~6%達成できる可能性がある。ということで財政支出が抑えられれば、財政再建はできるのではないか。そのためには、年金の問題と医療費の改革の二つが必要だ。政治的には難しいと思うが、これらにうまく対処すれば、イラク情勢によって軍事費増大のリスクはあるが、財政再建は可能ではないか。少なくとも2009年までに財政赤字の半減は可能だろう(と政府筋は言っている)。

経常収支についてはそれほど簡単ではない。通貨がゆっくりと調整されてくれば、米国に投資する魅力は増えるので、例えば日本の自動車工場の進出等が進めば、少しずつ改善の方向に向うと思うが、現状のまま放置すること自体は問題があると理解している。

Q: 米国に成長が期待できる一方、日本はそれほど高い成長が期待できない状況なので、円高ドル安については一定のところで歯止めがかかるという見通しもあるが。

北城: そう簡単ではない。日本の潜在成長率は、人口が増えない中で2%前後とも言われており、それだけ成長できるかどうかは、小泉総理が構造改革をどれだけ進展できるかにかかっていると思う。それを乗り越えられれば、官から民へ規制を無くしたり、中央から地方へという改革を実行できれば、潜在成長率を達成できると思う。どちらかというと、これまで不良債権処理といった過去の問題の解決に時間をとられていて、これから成長するための戦略、経済の活性化が十分見えていない。本来の潜在的な成長力を発揮できるかどうかについての疑問があり、それが円高に向わない、株価が上昇しないというところに出ているのではないか。企業業績から見ればもう少し株価が上がってもいい。もう少し先の企業の業績向上に対して市場はやや懸念を持っているということだと思う。

経済同友会は定期的に景気がどう推移しているか、アンケートを取っている。最終的な数字が出ていないが中間結果でも、景況感については三ヶ月前に比較して慎重な見方が増えている。

渡辺: 米国は移民によって人口が増えているが、日本は(人口)減少が明らかになっているので、それに対する負担の問題も含めて、抜本的に解決されていない。目に見えて(人口)減少社会、負担は財政上増加する。そういうことを克服するために、何を政策として強力に打ち出すかについて見えていない。それをはっきりさせて、立ち向かうことが経済の活性化だ。メディアも、そのような立ち向かい方をするべきだ。分かっていても何もやらないというのが今の日本だ。

北城: 米国は12月の半ばくらいに、(National)Innovation Initiativeということで、企業経営者と大学関係者が600名程度集まって、イノベーションによって国の活力を高めようという提言を出す予定だ。米国は確かに今、色々な問題を抱えているが、次の発展に向けての改革について新たな展望を作り出してくる。日本は今のところ、新たな成長に向けての展望が見えてこない。それが課題だと思う。

渡辺: 聞くところによれば、(Innovation Initiativeにおける)イノベーションというのは企業の技術ではなく、政府が行う社会システム、小さな政府を築くための社会、経済の仕組みを変えていくという意味のようだ。

北城: 企業のイノベーションもあるし、行政、教育、人材育成の分野もある。最近、教育改革についても話が進んでいない。教育基本法の話しは時々出るが、教育の制度をどう変えるかについては、総理は米百俵の話をされたので、教育改革に熱心に取り組まれると思ったが、最近、余り(教育の話しが)出てこない。国の競争力の基本は人材なので、教育の水準向上にも力を入れていくべきだ。

Q: OECDがOECD諸国の15歳の学生を対象に学力調査をして、各国の順位をつけて発表した。日本について気になるのが、数学を学ぶ姿勢、意欲について他国に比べて著しく後退している。数学が役に立つかどうか分からない、役に立てようという姿勢が見られないということが数字ではっきり現れている。なぜ日本の学生がそういう姿勢になってしまったのか、こういう状態が長く続いた場合、日本の将来にどのような影響があるか、お伺いしたい。

北城: これまでのOECD調査では、日本は数学1位あるいはトップグループにいたので、あまり心配されておらず、どちらかといえば読解力のほうが低いと言われていた。今回の調査では前回の1位から6位へと後退した。数値そのものもあるが、数学を学ぶことが面白い、あるいは数学を学んで何に役に立つのか、仕事でどのように生かせるのかについての意識が無い、というのが少し心配だ。日本は今後、科学技術を中心に発展しようとしているので、その基礎として、数学や理科は重要だ。その数学について、単に受験のために勉強しろというのであれば、面白さもないし、何のために数学を学ぶかという意欲も湧かない。そういう意味では、より教育の場で、学ぶことの必要性、何のために学ぶかについて、もっと子供たちに教える必要がある。先生方もそうだが、社会人、技術者やエンジニアのような人たちが、教室に出て行って、自分はこういう理由でカメラの設計をしている、そこで数学を利用している、理科がこんなに役に立っているということを話して、子供に興味を持たせれば、もっと数学を学ぶことを面白く感じると思う。

よく基礎的な能力として読み書きそろばんというが、昔は計算するのに、繰り返し色々な計算問題を出していたと思うが、今、総合学習の時間を取るといった理由で減らしている。やさしい計算を繰り返してやれば自信もつくし、数学は面白いという気持ちにもなる。基礎を繰り返し教えることの重要性を、もう一度認識する必要がある。

Q: 最近のゆとり教育にも問題があるということか。

北城: ゆとり教育という言葉がよくないと思う。最初は、ゆとりではなく受験勉強はやめようとか、自分の個性を生かそうとか、総合的な学習をしようという言葉だったと思うが、単なるゆとりでは、勉強を教えないと取られてしまったのではないか。基礎は好き嫌いにかかわらず、強制してでも教えなければならない。字が読めない、書けない、計算ができない国民が出てきては困るので、基礎は嫌でも教える。その上で、それぞれの特徴を生かした教育をすればいい。決して高い偏差値を取って有名な大学に行けば、自分の希望した会社に入れて豊かな暮らしができるというわけではない。現実に企業はどこの大学を出て成績がいいかどうかでは採用しない。人物本位で採用をしている。そういう変化が保護者、学校、生徒に伝わっていない。我々経営者も反省しているが、そういう変化をもっと伝える必要がある。

Q: 現状のシステムが続く限りは、そういう事態が起きるということか

北城: 変えていく必要があると思う。それが教育改革の大きな柱になる、初等、中教育にとっては重要だと思う。大学教育も問題がある。大学は研究はいいが、教育の方は不充分だと思う。教育することに対して、先生が評価されない。先生に評価が無いから、教育に一所懸命な教授がいれば、一方で研究だけをしている教授がいる。ほとんどが研究の評価で教授が評価されるが、それによって給料が変わらず、年功序列で給料が上がってしまう。これでは大学の競争力も出ない。

渡辺: 私の大学入試には数学は無かった。大学の大部分は数学の試験が無いということも良く考えなければいけない。読み書きそろばんができなくても大学に入れるのであれば、一体、何のための試験なのか。私は算数ができなかったが会社の利益にはすごく強かった。損得など、数字のベースを実社会的に考えて見る時期に来ているのではないか。試験が無いと(ある科目を)優先するわけだから、理科系にとっては必須であっても、全般的な学力としては(低下する)。

Q: 韓国で与野党議員の79名が小泉総理と日本の閣僚の靖国神社の参拝中止、韓国人戦没者の合祀の中止を求める決議案を提出したようだが、改めて靖国神社問題についての考えを伺いたい。

北城: 靖国神社に参拝し、戦争で亡くなった方への敬意を表する、慰霊をするということは個人の考えであるし、小泉総理もそのような考えで参拝されている。そういう意味では国内問題であるが、一方で、韓国や中国の国民感情、中国胡錦濤主席や温家宝首相等の色々な意見があるので、対外的には外交問題でもある。アジアの国々と良好な関係を作っていくというのは、日本の安全保障のためにも発展のためにも必要なことだと思うので、良好な関係の上で相互理解が進むことで、国民レベルの相互理解も進む。そういう意味では、両国首脳が相互に相手国を訪問できる関係が望ましい。それの制約になることはできるだけ避ける、あるいは解決策を考える必要があると思う。

Q: 解決策とは何か。

北城: 相互の意見なので、日本だけの考えとは一致しないかもしれないが、今まで小泉総理が行われてきた靖国神社の参拝、特に内閣総理大臣としての公式な参拝に対する反感があるのだと思う。そういう意味では個人の参拝にされた方が、相互理解が進む。ただし、これは総理のお考え(がどうかということ)だと思う。両国首脳が相互に訪問でき、首脳レベルでの理解が深まることが、より国民レベルの良好な関係を構築する上で必要だと思う。

Q: イラクへの自衛隊派遣延長について、一年間の期限についてはどうお考えか。

北城: 今回、大野防衛庁長官がイラク・サマワを視察され、私もテレビの報道をいくつか拝見したが、現地の知事からも自衛隊の派遣延長の要請もあったようだ。単に水の補給だけではなく、道路や学校の補修等の活動もしているので、自衛隊が復興支援で活動していることについて、イラクの人々の評価は高いと思うし、そういう意味では延長することは妥当だ。戦争状態のような騒乱がサマワで起きているわけではないので、一年延長は適切ではないか。逆にここで引き上げてしまう、という選択肢はないと思う。イラクからの期待にも反するし、米国をはじめとするイラクの復興支援参加国の期待にも反する。

OECDの学力調査の質問に関連して

北城: たまたま、「経営者、15歳に仕事を教える」という本を書いたばかりだ。私も中学、高校に行って、働くとはどういうことかという話しをしている。大学にも呼ばれていくが、職業観を教えるには遅い。中学生や高校生に対して、働くとはどういうことか、将来、自分にとって興味がある分野で働く方が人生豊かになるということを話している。

以上


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