ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2004年10月19日(火) 13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

記者の質問に答える形で(1)定率減税縮小・廃止、(2)コクド・西武鉄道株式虚偽記載、(3)ダイエー再建、(4)ソフトバンクによるダイエー・ホークス買収、(5)FTA交渉進展、(6)新札発行、(7)固定電話加入権廃止、(8)米国大統領選挙、(9)米国経済の見通しと原油高、について発言があった。

Q: 昨日の予算委員会で、小泉総理が定率減税の縮小に理解を示す発言をした。経済界からは慎重論、反対論が非常に強いが、定率減税の廃止・縮小問題についての見解を改めて聞きたい。

北城: 景気の先行きについて不透明感があり、特に個人消費が伸びるかどうかは、経済の発展にとって重要な課題だが、個人消費の面では定率減税の廃止は非常に大きな影響を与える。年金の負担が増え、配偶者特別控除が廃止され、住宅ローン減税が縮小されるなど、2005年度までに1.4兆円の負担増が予定されている中で、更に定率減税が全て廃止されると3兆円を超えるような税負担になる。負担している国民の側から見れば増税であり、合わせて5兆円近い負担増を行うということは、景気にも、特に心理的に悪い影響を与える。定率減税の対象は中堅のサラリーマンであり、今でも年金も含めて大きな負担をしている層に悪い影響が出る。見直しは慎重であるべきだ。基本的には消費税も含めた税制全体の改革の中の位置づけとして考えていくべきテーマだ。そういう意味では、すぐに定率減税を廃止することには反対だ。

Q: 政府税調では来年度の縮小を検討しているようだが、それについても反対というお考えか。

北城: そうだ。基本的には働いている世代に対する直接税による税負担を高くする方向から、広く多くの人たちが税負担をする消費税に比重を移していくべき段階に来ている。特に、日本の場合には、少子化、高齢化が急速に進展しているので、欧州諸国のように消費税を税の主体にする方向に進むべきだ。そういう意味で、定率減税廃止は直接税を増やしていくようなものだから、方向としても適切ではない。

Q: 西武鉄道とコクドの株式の虚偽記載について、コーポレート・ガバナンスの基本がなっていないという厳しい批判も出ているが、かねてよりCSRについて積極的に発言している立場としてお考えを聞かせてほしい。

北城: 今回の件は、企業の社会的責任ということを考えると非常に大きな問題だった。特に上場している企業の主要な株主が非上場会社であって、その経営の実態が明確に開示されていない中で起きたことは、非常に大きな問題だ。特に西武鉄道の株主にとっては、非公開の情報、誤った情報に基づいて投資の決断をしてきたということになるので、コーポレート・ガバナンスの観点でも問題だし、企業の社会的責任の観点からも非常に大きな問題だ。企業の不祥事が出ることで、株式会社、民間の経営に対する国民の信頼を失うことになりかねない。こういう問題については、経営者それぞれの責任もあるが、こうした企業の上場に関する証券取引所等の審査体制についても信頼性を失わせることに繋がる。

渡辺: 花王で東証と決算その他について、長年付き合ってきたが、細かいことは色々と要求するようになった。四半期決算にもなってきたし、記載についても単体と連結と両方とも細かい要求が多くなった。透明性が高く、健全な参加者を担保していくのが、株式市場であり、東証の役目だ。東証の機能強化は海外の投資家にとっても非常に重要だ。このような問題が続出すれば日本の経済界に対する信頼にかかわる。

北城: 企業の社会的責任は重要だと思っているが、企業が社会にとって好ましい存在である、法令に違反しないというのは基本中の基本だと思う。それに反することをしながら、社会的責任といったところで、消費者、国民から理解されない。今回の事件も含めて企業不祥事が色々と起きているので、経営者は談合やカルテル、安全性の問題も含めて、社会から信頼される経営を行うべきだ。それが企業の持続的な発展にとって重要なことだという認識が必要だということを、再認識させられた事件だった。我々は本気でCSRを推進するべきだ。

Q: ダイエーの再建について産業再生機構を活用することになったが、その後、再生委員会の高木委員長が経済産業省の過剰介入があったという抗議文を提出するなど、必ずしも透明でない部分がでてきているようだ。産業再生機構を活用するに至った一連の経緯を振り返って、見解を伺いたい。

北城: 今回のダイエーの問題は、銀行が再建のために要求している事項をダイエーがどう受け止めるかとういことだ。債権放棄を要求しないのであれば、ダイエー側の意向を基本的に尊重するべきだが、金融機関から借りたお金を返済しない、銀行による債権放棄を要求するのであれば、基本的には金融機関の主張を尊重し、提示した再建策をとるべきだ。最終的には(金融機関が主張する)産業再生機構を活用することになったので、市場のメカニズムが働く解決に向けて進んでいるように思う。

渡辺: ダイエーの再生計画については、銀行中心で二度ほど出されたが、企業のバランスシート、損益計算書を含めた財務状況の的確な開示について、常に質を高めなければならない、ということを強く感じる。

北城: バランスシート、決算書の内容がどれだけ信頼できるのか。企業が倒産したときに、産業再生機構が入ってくるなり、再建ビジネスが参入するなりして、資産等が適切に表示されているかを調べるわけだが、その都度、不良債権がたくさん出てくるということ自体、決算の信頼性を損なっている。そういう意味で、適正な決算をするということは企業経営者の責任であると同時に、それを監査する法人も決算内容について責任を負っている。倒産した場合には、損害を受けた株主が監査法人を訴えるということも必要ではないか。監査の適正性というのは資本主義の基本のインフラなので、ここが信頼されなければ、日本の市場が十分機能しているとはいえない。そういう意味では監査法人の責任が非常に大きい。我々はそこを余り重視してこなかった。企業との馴れ合い、長い付き合いによって決算処理に甘い審査をしてもらう、ということを考えること自体、本来経営者としてとるべき姿勢ではない。

渡辺: 郵政問題についても、国の決算書として真実をどのくらい表しているかを、タックスペイヤーとして追及しなければならない。そのためにも自らの企業の財務状況は信頼できることを示し、そのうえで、官を監視していかなければなければならない。

Q: 決算書の信頼性について、企業が破綻した後に債権者集会が行われ、資産査定をやり直せば、ほとんどが債務超過だが、直近の半期、四半期決算は大体黒字、少なくとも資産超過というケースが多いと思う。それは、破綻したからデュー・デリジェンスが厳しくなるという側面があるのか、それとも、粉飾している企業がつぶれているというべきなのか。

北城: 破綻すれば、資産の価値が無くなるものは確かにあるが、もともとの決算書の内容が適正ではなかったというのが大半のケースだと思う。一概に監査法人だけを責められないところがあって、監査法人に払っている費用が非常に少ない。これでは十分な監査が出来ていないということもあるので、もっと監査費用をかけて適正な審査をしてもらわなければならない。しかし、どれだけの費用かは市場で決まってくることなので、監査法人が不充分な監査をした場合には非常に大きなペナルティがある、適正な監査をしない限り損害賠償を請求されるということになれば、監査法人も十分な監査を行うために必要な経費を請求するようになると思う。そういう意味では、企業も適切な監査をするための費用を負担していないし、一方で、監査法人も不充分な監査に対する責任を追及されてこなかった。株式市場は市場メカニズムの中心であり、株主が資金を株という形で提供し、企業を運営する一番の基盤は市場メカニズムを働かすための証券取引所、監視委員会、監査法人である。企業としても「長い付き合いだからヨロシク頼む」というのは馴れ合いであり断ち切るべきだ。監査法人は第三者として独立した意見を示すべきであり、株主から見て自分の投資が安全かを判断する一番のよりどころは監査法人である。そこが不適正なことをしているのであれば、社会的に厳しく批判されるべきだ。

渡辺: 減損会計も含めて、「時価とは何か」という問題も内包している。産業再生機構は処分価格に近いものを時価と見るかもしれないが、余りにも(簿価との)差が大きすぎるというのは色々な問題を包含している。

Q: ソフトバンクがダイエー・ホークスの買収に名乗りを上げたが、感想を伺いたい。

北城: 球団の買収に色々な企業が名乗りを上げることは、個別企業の経営判断だ。ソフトバンクはIT系のベンチャーで、古くからベンチャーの雄の一つとして成果を挙げてきている会社なので、そういう企業が球団の買収に名乗りをあげたことは歓迎すべきことだ。一方で最終的に売却するかどうかは、所有企業の経営判断になるので、今後産業再生機構を通じて、どの会社がダイエー再建に当たるかは分からないが、球団を保持することになる売り手側の判断はこれからだ。

Q: ASEANとのFTA交渉において、農業と労働者の受け入れについて、なかなか明確な方針が打ち出せないような印象を受けるが、改めて(政府に対する)要望等があれば聞きたい。

北城: FTAの推進は日本経済発展のためにも、相手国(ASEAN諸国)の発展のためにも重要だ。貿易額が拡大すれば双方の経済活動を発展させる。日本は先進国なのだから、自国の市場開放を通して発展途上国の経済発展に貢献する心構えが必要だ。農業や看護師の問題についても、日本市場を開放することで、逆に日本の消費者にとってもメリットがある、日本の農業を強くするという意味でも、必要な政策だ。政府としても積極的に推進して頂きたい。推進体制が不十分ならば、FTAを積極的に推進する中心となる省庁を指名して頂いた方が、各省庁の利害が対立するだけに交渉しやすいのではないか。相手国から見ても、「この点は譲るが、この点は認めてほしい」という交渉もあるので、日本版USTRのようなものを作るのは難しいかもしれないが、FTA担当相という形の責任者を任命した方がいいのではないか。

渡辺: カナダは、NAFTAを契機に経済や財政を健全化した。欧州にEUがある一方で、東アジア経済圏という話しが出るが、アジア諸国とのFTAも解決できないで、経済圏など遠い話であり、大変遅れている。今、アジアに関する論文審査を依頼されているが、その全てがFTAの迅速な推進について述べている。そうした状況を考えると、遅々として進まないのは両者にとって損失だ。

北城: 本来は、WTOの推進が日本の基本政策として必要だが、進展が遅れている。特に日本は国内問題を抱えているので、FTAを推進する中で、それも解決できるのではないか。農業や雇用も含めて国内問題を解決するし、構造改革を推進するために、できるだけ排他的ではない(特定の国を優遇しない)FTAの推進が必要だ。ASEANの経営者と経済同友会は30年来の交流をしているが、今回は10月28、29日に30回目の会議が日本で行われ、60名くらいの経営者が来日される。前回の議論の中でも必ず出てくるのはFTAの推進だった。特に個別の国だけではなくて、ASEAN地域に対するFTAの推進でも日本にリーダーシップをとってほしいということだった。中国が2010年に向けてASEANとFTA交渉を進めるということだが、ASEAN諸国から見ると、日本は以前から投資をしてきたし、貿易額も大きい。中国は非常に重要な市場である一方で競争相手であり、脅威にもなっている。そういう意味でも、日本のリーダーシップが期待されている。

Q: 11月1日に新しいお札が発行されるが、経済効果について、どうお考えか。

北城: それほど大きな経済効果は無いと思う。もちろん印刷業や、ATM等の置き換え需要等はあるだろうが、それほど、大きな需要を引き出すとは思えない。淡々と実行されるとういことだと思う。

Q: NTTの固定電話加入権について廃止の答申が出された。企業としては損失処理をすることになると思うが、その影響や是正を含めた要望について聞きたい。

北城: 加入権そのものの経済的価値はなくなってきていると思う。現実に固定電話を引く人の数が減っていること自体、実際に加入権の存在が市場の評価に合わなくなってきている。そういう意味で加入権が無くなることはやむをえない。あとは経済的影響をどう緩和するかだと思う。もちろん、加入権が喪失する人から見れば、NTTにその費用を返してほしいという気持ちがあると思うが、当初からNTTが償還するという方針を出していないので、NTTに要求することも難しいのではないか。従って、既に加入権を保持している人にとっては不利だと思うが、やむをえないことではないか。通信設備が発展してくる過程では経済的意味があった制度も、現在の市場環境に合わなくなったということだ。多くの企業で、損失処理は既になされているのではないか。

Q: 携帯電話の負担金が廃止された以降も、固定電話の加入料を取り続けていたことについては、どうお考えか。

北城: 経済合理性の範囲の中で、それだけ負担金を払ってでも固定電話を引きたい人がいる。ないしは、料金制度も負担金一時金を払うか、月額で負担するかという制度もあった。(固定電話加入権という)制度が残ったということはNTTの経営判断だったと思うが、現実には価値が無くなってきたということで、(廃止は)止むを得ないのではないか。

渡辺: 携帯電話に加入者を増やした結果、固定電話の方が損かどうかは別として、若い人を中心として固定電話から携帯電話に移ってしまった。そういう意味で、NTTが今の判断をもう少し早くしていればと思うが、市場の読み方の問題だと思う。

Q: あと二週間で米国大統領選挙が行われるが、どちらが勝つと思うか。

北城: それは分からない。米国人に聞くと、共和党支持の人は必ず共和党(候補)が勝つというし、民主党支持の人は民主党(候補)という。その理由を聞けば、理路整然と理由を説明する。米国人の中でも見方は分かれていると思う。一般的には現職が強いということはある。

Q: ケリーが勝った場合に、対日関係に変化があると思うか。

北城: 外交政策に関しては、それほど変わらないと思う。大統領選挙では色々な分野で議論するが、米国では(新しい)政権ができたときには外交政策にあまりブレが無い。日本にとって米国との良好な関係は必要だが、米国としても日本との良好な関係は重要だ。イラクの問題に対しても、急に今、派遣している軍隊を引き上げることは現実にはできないと思う。政権が変わることによって外交政策も変化するが、基本はそう大きく変わらないと思う。国内政策については色々と変化が出るかもしれない。

Q: 選挙後の米国経済の見通しについては、どうお考えか。

北城: 経済が順調に回復し続けるかは、個人消費が堅調に推移するかにかかっている。石油価格の上昇と、金利の上昇による住宅投資への影響、この二つの動きにもよるが、個人消費が堅調であれば、雇用が増えて、企業の設備投資も増えると思う。一つの踊り場だとは思うが、減速はしても米国経済が後退局面に入るとは思っていない。米国は人口も増えているし、より豊かな生活を求めて人々が動く社会なので、減速はしても発展は続けるのではないか。石油価格が上昇すれば日本の自動車産業にとっては大きなチャンスだ。燃費が良い車を販売しているし、ハイブリッド車のように燃費が良くて、環境対策に優れた車を出しているのは日本のメーカーだけだし、大変売れているようだ。(ハイブリッド車は)燃費が倍くらい良くなるということだから、例えば米国の車が全てハイブリッドになれば、車両用の原油の使用量が半分になる。価格が高くなること自体は色々な技術革新を起こして、その結果、省エネにもなるし、環境対策にもなる。(原油高は)結果として意味のあることになるかもしれない。少なくとも50ドルを超えるのは異常にしても昔の水準には戻らないと思う。(原油が)高いというのは、米国のようにガソリンをがぶ飲みする車が走っていること自体おかしなことなので、環境問題にもいいのではないか。コスト(ガソリン代)が高いということ自体、日本車の省エネやハイブリッド等の技術を発展させたとも言える。(二酸化炭素排出削減のために)日本では原子力、風力、太陽光エネルギー、特に、原子力と風力を推進すべきだ。日本は風力にあまり注力してこなかったが、技術革新のペースが非常に速いので、日本はもう一度、風力を見直すべきだ。

以上


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。