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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2004年02月03日(火)13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

冒頭、北城代表幹事からダボス会議について発言があり、その後記者の質問に答える形で(1)青色発光ダイオード訴訟判決、(2)日本経団連の政策評価、(3)年金改革、(4)米国の過去最高の財政赤字について発言があった。

ダボス会議の感想

北城: 先週、ダボス会議に参加した。世界中の経営者、政治家、NPO、報道関係者など2,000名くらいが参加していたが、総じて世界経済については明るい展望を持っていた。米国経済については今年いっぱい、大体4%前後成長で好調であろうという見方をしていた。来年については、選挙が終わった後、財政規律を達成するために少し経済が減速するのではないかという意見と、個人消費から設備投資への切り替えがうまくいって来年も好調であろうという意見との二つに分かれていたが、総じて楽観的だった。中国経済については大半が楽観していた。特に中国に進出している企業の経営者は、人件費の安い製造拠点として活用しているというよりも、中国市場そのものが伸びていて、中国の人たちに販売する事業が好調で収益にも大きく貢献していると見ている。こうした経営者たちは、経済の過熱による不良債権の発生、エネルギー、水、食料、環境、政治体制といったリスクはあるにしても、2008~2010年くらいまでは今の高い成長を持続するだろう。それ以降も、色々な問題を克服しながら8~9%とは言わないまでも5~6%は成長するのではないか、という意見が大半で、明るい展望を持っている。日本経済に関しては米国、中国の景気が良ければ、欧州も底を打ったようなので、日本にとってもよい影響があるだろうということで、比較的明るい話が多かったと思う。

経済問題以外にもテロを含めた安全保障の問題、アラブ世界との対話の問題等も議題に上っており、アラブからの首脳陣も参加して、アラブにはアラブの民主化のプロセスがあるというような発言も出ていた。米国はクリントン元大統領、チェイニー副大統領等が参加しており、副大統領は「米国は世界の自由と民主主義のために貢献していく」という大変格調の高いスピーチをされていた。

そのほか、企業の社会的責任や年金、社会保障、WTO・貿易の問題など、大変幅広い議論が行われた。今年は、昨年、一昨年のような厳しい景気見通しやアラブ世界との対立など緊迫した状況と比較して、かなり明るい展望の議論だったと思う。

一つ残念だったのは日本の政治家の参加が少なかったことだ。各国の首脳、政治家が参加して、各々の政策や魅力を紹介しているにもかかわらず、日本は日産のゴーン社長、野村證券の氏家会長、ソニーの出井会長、東芝の西室会長、日本ガイシの柴田会長など、経営者は40人ほど参加していたが、政治家では尾身元科学技術政策担当大臣と民主党の古川さん(古川元久衆院議員)くらいしかお見受けしなかった。竹中大臣もキャンセルされて、国会会期中とはいえ、閣僚レベルの参加はゼロだった。したがって日本の政治的なリーダーシップ、あるいは政治家が考えていることを世界の多くの人たちに発言する場をうまく利用できなかったし、逆に世界各国がどのようなことを考えているかを理解するチャンスも失ったのではないか。例えばアフリカのAIDS、マラリア、結核のような問題に対して先進国がどのように支援すべきかを議論している中で、それを聞かずに政治を行うことは、日本の政治家が内向きだと感じてしまう。来年は国会のスケジュール等を調整して、もう少し政治家に参加していただければ良いと思う。

Q: 先週、青色発光ダイオード訴訟で、開発者である中村教授への発明対価として、日亜化学工業に200億円の支払いを命じた判決が出たが、これに関してどのようにお考えか。

北城: 日本の研究開発の競争力の観点から問題のある判決だと思う。企業の研究員の成果に対して特許権は企業に属するが、成果に対する相当の対価を支払うという法律に基づいて今回の判決になったが、「相当な対価」というのは企業で働いている人へのインセンティブ、ボーナスという色彩での対価ではないか。過大な報奨を出すことは、企業経営に対して非常に大きな影響がある。企業も日本、米国、欧州など、色々なところで研究開発を行っているが、競争力という観点から企業に多大な負担が発生するのであれば、日本で研究開発する魅力がなくなる。日本に製造拠点としての魅力が少なくなってきている中で、研究開発拠点としても魅力を失うような制度の運用自体は問題だと思う。

IBMでも研究者が良い成果を出せばインセンティブを出しているが、入社時に、企業で行った研究開発に関して、その権利は企業に帰属するがそれに対して特別なボーナスを支給するという契約はしていない。しかし、研究者の意欲を高めることは必要だし、継続して企業に残って良い研究開発をしてほしいのでボーナスは出しているが、通常は数百万円の単位だ。上限は無いが、億円単位ということはなく、千万円台も例が少ないと思う。研究者は給与を保証されて研究をしているわけで、インセンティブとして常識的に判断すべきであろう。企業では、様々な研究をしており、結果として成果が出ない研究もたくさんある。成果が出た研究だけを取り上げて、その研究者だけに多大なボーナスを出すというのはおかしな制度ではないか。研究の成果も製品化したり販売したり、色々な人たちが会社として取り組んで始めて利益を出すのであって、研究者だけに多大な額を払うのは異常だと思う。

Q: 200億円という金額についてはどうか。

北城: 破格だと思う。もちろん二万円しか払っていないというのも少なすぎるので、両方とも100倍位ずれているのではないか。裁判官が相当と考える価値が我々庶民の感覚とずれているのではないか。

Q: 先ほど、IBMでは数百万円が多く、千万円台は滅多に出ない、という話があったが、それくらいの水準が妥当ということか。

北城: 私も全ての国際企業を調べたわけではないが、米国や欧州の企業では特許を申請、取得したときに数千ドル~数万ドルといった対価を制度として支払っているようだ。それ以上はボーナスとして出すか、昇給をしたり、ストックオプションを出したりして、研究者に意欲をもって研究活動をしてほしいというインセンティブと、優秀な研究者が他企業に移ることを防ぎたいので、そのための処遇はしていると思う。研究者の場合には株の売買やトレーディングをする人たちの人事制度とは違う。そういう人たちはもっと高いインセンティブで仕事をする、その代わり成果が出なければ給与も出ない。一方で研究者の場合、ある一定の給与水準を保証した上で、よい成果が出ればボーナスを出すというのが国際競争のあり方だと思う。従って、日本の研究開発に対してだけ、成果が出たら多大なコストが企業にかかる、ということになると今のような処遇制度は維持できなくなる。成果が出ない人の給料をまったく無くしてしまうということになってしまう。研究者はそういうことを求めていないと思う。研究するための設備や処遇は確保してほしい、研究はしたい、ただし良い成果が出ればボーナスがほしい、ということだろう。ボーナスの額は国際競争力を念頭に考えるべきであって、日本の研究開発が他国に対して競争力があるような処遇をしていくべきだ。ただしそれを外れた制度を入れれば、日本企業にとって国内で研究開発するよりは、米国や中国でした方がいいと思うだろう。さらに海外から日本に進出する企業にとっても、日本は研究開発、特に製造のための研究開発は競争力を持っているが、それとても、よい成果が出ても何百億円というコストが発生すると思えば、日本に研究拠点を設けるよりは米国、中国、インドに設けたほうが良いということになりかねない。製造だけでなく研究開発の空洞化までもたらすということで、日本の競争力、科学技術の振興という観点でも今回の裁判は問題である。

Q: その前の光ディスクの読み取り装置の判決では「億円」の支払い判決が出たが。

北城: 億円も多いと思う。研究開発をする人たちも重要だが、営業でも新しいビジネスモデルを考えたり、新しいお客様、新しい事業を開発したりする社員もいるわけで、企業の中で働く人たちは基本的な給与を保証されたうえで、成果に応じてボーナスは出すが、億円というボーナスを出す例は無いと思う。野球選手なら別だが、野球選手と同じ制度を研究者に適用するということではないと思う。

Q: 現在の日本企業の報奨制度で問題は無いということか。

北城: 今回のケースでは、二万円は安すぎると思う。二万円で意欲が湧くか、他の企業に移らないかといえば、これも論外だと思う。従って国際競争力のある水準で実行していけば良い。従って、日本企業も成果に応じて処遇をしたり、ボーナスを出したり、ストックオプションを出したりという制度は、もっと手厚く考えていくべきだ。まったく処遇に影響しないで皆が働くというのも不適切だと思う。

Q: 日本経団連から政党の政策評価が発表されたが、この評価について代表幹事のご感想を伺いたい。

北城: 日本経団連の政策評価は拝見したが、評価の項目的には適切だと思う。経済政策のすべてを取り上げているわけではないが、日本経団連が考える重要なテーマに対する評価だろう。中身についても、妥当な分野を評価していると思う。各政党に対する評価の甘い・辛いはあるかもしれないが、政策に対していろいろな団体が評価をするのは好ましいことだと思う。

Q: 政策評価の結果について、自民党に甘いという意見もあるが、これについてはどのようにお考えか。

北城: 政策の合致がひとつの基準になると思うが、政策の取り組みについては政権を担当している政党の方が良い評価を得られるだろう。一方、野党は現政権に対する問題提起や挑戦、代替案を提供するという立場なので、取り組みや実績についてはあまり厳しく評価すると、健全な野党という立場が育成されないのではないか。野党に対しては、問題提起や代替案の提示などの分野で厳しい評価だったのではないかと思う。

Q: 政党助成金もあり、また「政治とカネ」という問題が解決していない中で政治献金を復活させることへの厳しい意見もあるが、その点についてはどのようにお考えか。

北城: 政党助成金が出た背景には「政治にはコストがかかる」という現実があり、政治のコストは政党助成金・党費・個人献金で賄うべきではないかという考えの下で、10年ほど前に経団連で献金をやめられた経緯があった。今回のものは、それ以降政治的な変化があったかという評価だと思うが、日本経団連が政策について評価したことは妥当だと思うし、中身を見ても決してある業界や企業のための判断だったとは思わない。日本経済のために評価をしていると思うので、決して企業がお金を出して業界や企業のために政策を金で買ったとは思わない。

しかし、それが十分に国民に理解されるかどうかが問題だと思う。経済同友会の中でも、企業の政治献金を認めるべきという意見と、行わないほうが良いという意見とが拮抗している。私個人の意見としては、党費・政党助成金・個人献金を主体にした方が国民の理解を得やすいのではないかと思う。

Q: いろいろな団体が政策評価をすることが好ましい、という発言があったが、経済同友会としては評価をされるのか。選挙前にマニフェストについて提言されていたが、その検証なども含めて、どのように進められるか。

北城: 経済同友会では、各政党のいろいろな政策について意見を述べている。どの政党を支持するということではなく、日本のために好ましいという政策を提言しながら、各党のその分野での政策が同じか違うかを表明するという取り組みをしたい。経済同友会が好ましいと考える案を出している政党は、政策分野によって異なるので、それぞれについて我々の考えを表明したいし、広く一般にも意見を表明していきたいと思う。政党自体を、その各々の政策についてプラス/マイナスをつけて評価するという方向でない。

Q: 与党案で、厚生年金の保険料率が18.35%から18.30%に引き下げられて合意したが、これについてはいかがお考えか。

北城: 18.35%では企業への負担が過大であるというお話は以前にも申し上げた。厚生年金の企業負担が1%増えると、法人税に換算すると4%近くの負担増に相当し、影響が大きい。これは、企業の競争力という観点から大きな問題がある。併せて、現行制度では多くの矛盾が内包されており、若年層の約半分が国民年金を納めていないことや、パート労働者の問題などもある。各々の負担と将来の受給が公平な制度にしないと、参加する意欲が働かないので、その辺りの精査が必要だろう。

全体から見ると、少子高齢化で労働者の数が減っていく。2050年には65歳以上の人たちが国民の35%を占めるという世の中で、少数の労働者が多数の年金受給者を支える仕組みは、持続可能な制度ではないと思う。65歳以上の人も、お金を使った時に消費税という形で負担をして、皆で支えるような年金制度でなければ維持できないと思う。今後、医療・介護・失業保険など、他の社会保障制度の見直しと合わせて、国民負担率の水準(経済同友会では、潜在的国民負担率を50%以下にすべきと考えている)をどのように設定するのかという見直しのなかで、抜本的改革が必要だ。今回の18.35%から18.30%になったことで、問題が解決したとは思わない。

Q: 昨日発表された予算教書で、米の財政赤字が来年度に過去最高になるということだが、これについてどのような印象をお持ちか。

北城: 短期的に財政赤字は問題だが、米国では財政規律を持つべきという意見は常に働くし、過去にも財政規律を考慮したうえで財政再建を果たした実績もあるので、選挙が終わった後に財政再建に取り組むと思う。財政再建がうまくいかないと、金利の上昇をもたらして経済に悪影響が出る。また、双子の赤字の中で、財政規律はいずれ実現するとの目処から、大幅なドル安を招いてはいないところもある。財政規律に目処がたたないと、大幅なドル安が米国への資金流入の制約になって金利の上昇に結びつく。持続的に経済を発展させるためには、財政規律の実現に向かって次の政権が取り組むと思うので、双子の赤字が大幅に拡大して財政が破綻状態になるとは思わない。また、(日本で大きな課題となっている)少子化問題についても、米国には移民があり人口が減少する状態でもないし、GDPも成長する状態にあるので、日本の方が課題は多いのではないか。

以上

(文責:事務局)


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