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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2003年11月18日(火)13:30~
出席者 北城恪太郎 代表幹事
渡辺正太郎 副代表幹事・専務理事

記者の質問に答える形で(1)厚生労働省の年金改革案、(2)株価1万円割れ、(3)道路公団の新総裁について発言があった。また途中、年金制度の背景にある問題として、少子化対策についても発言があった。

Q: 昨日、厚生労働省が年金改革案を発表した。年金保険料を20%に引き上げるこの案に対し、本日、経済団体から共同で意見書が発表された。改めて代表幹事の考えをお聞かせいただきたい。

北城: 年金問題については抜本的な改革を図るべきで、問題の先送りであってはならないが、今回の厚生労働省案は、抜本的な対策とはいえない。

ひとつは、現在の年金制度そのものが持続可能な仕組みではないということだ。特に基礎年金部分に関して、国民年金の空洞化が37%に達しているという状況のまま、さらに負担の金額を上げるような改革案では、若い人が国民年金を負担してくれるかが疑問だ。若い人が入らなければ、将来、無年金者になりかねないと共に、厚生年金の加入者による負担で年金財政を維持することになってしまい、再度見直しが必要になるだろう。

二つ目は、経済界から見ると20%というのは大きな負担である。人件費の負担を考えると、現在の人事制度を見直さなくてはならなくなり、日本企業の国際競争力にも影響を及ぼす。また、現在景気の回復局面で負担を増やす策を導入すること自体が問題だ。税や他の社会保険などすべてを含めて、国民負担率を明確にせず、保険金の増額だけを明示することも問題だと思う。これらを含めて、本日、経済団体の共同意見書を発表した。

Q: 仮に保険料が20%に引き上げられるとすれば、小泉首相に対する経済界の失望は出てくると思うか。

北城: 抜本改革を実行せず、現行制度を引き継いで当面の問題解決を図ったということになり、年金改革については失望するだろう。また、企業の国際競争力ということに配慮せず、年金財政だけを切り取ったような対策では、結局経済に悪影響が出て、税収に影響するのではないか。年金改革については、基礎年金部分は世代間の負担を調整する現行制度では対応できず、消費税で負担するべきだと考えているので、抜本的な改革に踏み込んでいただく必要があると思う。

また、構造改革のスピードを速め、経済が悪くなる前に実行に移していただきたい。

渡辺: 年金で保険料を引き上げるということは、将来の需要のために現在の需要を殺す、ということ。今日の年金改革案は国民の負担増の方向に傾いており、イラク問題がこれに合わさることで、株式市場に悪影響を与えている。こうした状況が続けば、小泉改革への失望も当然高まるだろう。それを避けるためには、年金問題が最大の試金石になると思う。

北城: 年金問題に関連して、少子化の問題も考えなくてはならない。少子化の問題が年金制度に大きな影響を与えており、少子化についても対策を講じるべきだろう。日本は、他国とは違い、移民の受け入れによって人口の構成を変えることが社会的に難しい国だと思う。今後、国を開放することも必要になるかもしれないが、受け入れ体制や国民感情、安全の問題などを考えると、まだ準備は整っていない。ヨーロッパで少子化対策の成功例などもあるので、少子化の問題に積極的に取り組むべきだと思う。単に補助金を出すだけで解決できる問題ではなく、抜本的な税制の改革や、保育所の整備などが必要だ。また、働く女性・男性にとって、育児休暇の取得が不利にならないような人事処遇の制度も整備すべきだ。休職や退職をしたときに、年功序列型の給与構成だと必ず不利になる。仕事の成果に応じた給与・人事制度に変えていかないと、問題は解決できないと思う。

Q: 年金保険料が20%に引き上げられると、実際、企業への負担はどういうものになるか。

北城: 一度に20%に上がるわけではないが、企業は将来に向けて投資政策や人事制度を考える。その際に、正社員の採用を減らしてパート労働者を増やすなど、人件費の増加を抑える対策を採らざるを得なくなるだろうし、場合によっては海外立地なども考えるだろう。今回の厚生労働省の提案では、パート労働者の年金負担も増えることになる。負担対象者が週30時間勤務から20時間になるなど、パート労働者の勤務形態も変わりかねない。特に外食産業や小売など、雇用の面で大きな労働力を吸収している事業に対して大きな負担になる。そのような分野で業績が低下すると、新店舗拡張などの投資抑制や値上げをせざるを得なくなるなどの問題が起きる。特に、食品や流通関係での雇用の面で問題が生じるのではないかと心配している。

Q: 経済界の方々は今回の厚生労働省案に反対しているが、何か良い点はないのか。また、何故、厚生労働省はこのような案を出してきたのか。

北城: 抜本的な見直しをする必要があると以前から主張している。基礎年金に対する国民の信頼がないということで、持続可能な仕組みを作らない限り解決されないと思う。今回のように保険料率を上げたり給付を削減したりするということでは、また5年後くらいに再度見直しをせざるを得なくなるのではないか。まずは、抜本的な改革をしていただきたい。

また、今出ている改革案を実行したとしても、これで解決ということではない。引き続き抜本的な対策を考えていただきたい。特に国民年金では、負担能力がないため免除されている人を除いても37%の人たちが負担しておらず、中でも若い世代の5割が負担していない。いずれこの人たちが退職する頃に無年金者を作ることになり、場合によっては、その人たちの老後のために、社会保障で低所得者に対する対策を別途採らなくてはならなくなるかもしれない。これでは持続可能な年金制度とは言えない。さらに、国際競争力の問題もある。

良い点としては、少子化が進むこと、また、経済は必ずしも順調に回復しないかもしれないというリスク、年金受給者への支払い抑制についての対策を表に出したことではないか。これまでのように、5年後ごとに見直しが必要になるような、楽観的な出生率を前提にした制度案ではないだろう。

Q: なぜ、厚生労働省は抜本的な案が出せないのか。

北城: 基礎年金については、世代間の負担調整で対応することは不可能だと思う。全世代で負担するような消費税で対応する以外、これだけ大きな財源を調達することは無理だろう。消費税であれば、若い世代は年金を負担しないということは起こらない。消費税を前面に出して解決策を考えない限り、抜本的な対策は取れないと思う。

渡辺: 現在の年金制度を続けていれば、2025年度には年金払い額が80~100兆円に到達し、これは、現在の税収の倍に相当する。このような大きな年金制度、即ち大きな政府は、高度成長の終焉や財政の大赤字によって持続できなくなった。それを小さな政府に変えること、つまり構造改革を小泉内閣に期待した。このまま大きな年金制度を維持することは不可能だ。

また、年金に関しては、厚生労働省の情報開示が専門家のみに限られてきた。マスコミの取り上げ方も少なかったし、経済界にも年金に関して語れる人が少ない。国民的議論にしてこなかったということが、現在の行き詰まりや手遅れの最大の要因だろう。

Q: 経済界にとって、年金問題が小泉構造改革の根底にあるべき問題なのか。

北城: 構造改革には多くのテーマがある。年金改革も非常に大きな問題であると同時に、「官から民へ」、「大きな政府から小さな政府へ」、即ち官が関与する分野を減らす意味での規制緩和や「中央から地方へ」などの問題もある。三位一体の改革についても初年度でどこまでやるかもはっきりしていないし、4兆円という規模も不十分だと思う。方向性としては適切だと思うが、それが経済効果を出すほどの大きな政策として実行されていないということは、期待に反する。経済を活性化するくらい、現在の構造改革を速く行わないと経済が失速しかねない。前進は認めるが、スピードが遅いために経済が停滞しないかが心配だ。

渡辺: 郵政事業や道路公団の民営化も、「官から民へ」の小さな政府というテーマで進められる。経済同友会の年金改革への提言は、報酬比例部分については「官から民へ」の主張を貫いている。

Q: 厚生年金の企業負担を考えると、企業と個人の折半部分が消費税に変わると、企業と個人の負担が減るという主張だが、負担増にはならないのか。

北城: 消費税を導入する分、現在年金保険料として負担している部分がなくなるということで、税が増えるのではなく、保険料が減るということだ。負担増ではない。

Q: 厚生労働省の案で、パート労働者の厚生年金加入が20時間以上に設定されるということは、パートの人が将来厚生年金の報酬比例部分を受給できるという見方もあるのではないか。

北城: 将来の年金も含めて収入を高めたいと考える人もいるかもしれないが、多くは、将来の年金よりも現在の収入をどのくらい確保できるかが、焦点になっていると思う。企業の負担だけでなく、個人の手取りが減る可能性もあることが、負担感の大きさではないかと思う。

Q: 今回の衆議院議員選挙での選挙協力を考えると、公明党の主張を尊重せざるを得ないように思える。その場合、経済界の考える構造改革に反するような政策を取らざるを得なくなるかもしれないが、それについてはどのようにお考えか。

北城: 自民党と公明党で連立政権を作り、その連立政権が過半数を獲得したことについて言えば、国民が与党の体制を支持したといえるとは思う。しかし、個別の政策を見たときに、あまりに大きな政府を作るような政策を採った場合、経済界が反対するだけではなく、長期的に国の活力を弱めるのではないか、結局日本経済の停滞をもたらすのではないか、という意味で心配だ。政権与党として今後採っていく経済政策の中で、より国の活力を高めるような政策の方向に舵を取らなくてはならない。より大きな政府を作る政策を採るのでは、結局国の財政も破綻するし、年金制度も維持できなくなると思う。今回支持された政権与党は、基本的には小泉改革の支持によるものではないか。決して年金問題の対策を支持して、政権与党が過半数を獲得したのではないと思う。

Q: 今、年金の問題を議論しているが、年末までに解決した方が良いのか、それとも年金や医療、その他社会保障の問題を併せて、抜本的な改革を来年以降にやり直した方が良いのか。

北城: 今は、抜本的な対策を前面に出した方が良いと思う。今回の改革案を実施しても、今後すぐに医療など国民が負担しなければならない問題が出てくる。暫定策を抜本策として導入すること自体に無理があると思うので、他の対策も含めて早急に検討し直した方が良い。今出ている案をすぐに導入することに無理があると思う。

Q: 年金改革は、経済界が期待する小泉構造改革の本丸に位置しているのか。

北城: 年金問題は、国民にとって関心事であるし、今非常に大きな問題になっているが、あくまで構造改革の中のひとつだと思う。大きな政府を作って国がお金を集め、それを国民に配布する制度が良いのか、それとも民間主体で経済運営をするのか、という考え方の問題の一環だろう。まだまだやらなければならないテーマは沢山あるが、構造改革の政策が今表に出てきていない。年末の予算編成に向けてはこれから出てくると思うが、今出てきている案は構造改革の推進案よりも、短期的な税収確保だけの政策のように見えるので、それが心配だ。

Q: 株価が1万円を割り込み、今日も反発力が弱い推移だが、それについてどうお考えか。

北城: 株価の動きそのものが、実体経済に影響を与えると同時に、経営者・消費者心理にも大きな影響を与えるので、非常に注目している。実体経済については、企業業績において年金運用の問題、金融機関の資産の問題で影響が出る。同時に好転してきた経営者・消費者心理にも大きなマイナス要因になる。

実体経済は7期連続で実質GDPがプラスになり、景気は回復しつつあると言われているが、名目GDPがマイナスということは、実際の経営の立場から見ると、売り上げが伸びていない、また設備投資額が伸びていない業種も多いということだ。

これまでは海外の機関投資家の買い越しで株価が上昇しており、国内は個人も事業会社も含めほとんど売り越しの状態で、海外依存型の株価回復だったと言える。これは、海外の投資が止まると、国内の投資家が買わない限り、株価は落ちかねないということで、非常に懸念をもって見ている。

今後については、今日どの程度で踏みとどまるかが注目される。国内には、まだ売りの必要を感じている機関投資家や事業会社があると思う。特に金融機関は株の持ち高を減らそうとし、事業会社は持ち合い解消を控えているので、売り圧力はあるだろう。株価が下がると早く処分したくなるし、信用取引で損失が出ている人たちが売りに出かねない。

最も影響が大きかったのは、米国の投資信託に対する不安感から、投資信託が売られるという米国内の売り圧力だと思う。海外で売られたときに、日本国内で買いに回る投資家がいないことも問題だ。今日ある程度踏み止まれば、再度海外の投資家から買いが出るかもしれない。

国内の実体経済はそれ程良くないのではないかと思う。確かにGDPは7期連続でプラスだが、個人消費が堅調に推移しているわけでもなく、設備投資も輸出を中心とした一部の国際競争力のある企業は堅調かもしれないが、ほとんどはキャッシュフローの中での投資だろう。にも関わらず、衆議院議員選挙後に出てくる政策は、経済活性化を目指すものでなく、年金や税など国民の負担増が前面に出ているため、国民は将来への不安感を高めているのではないか。自民党・公明党の与党は、マニフェストで掲げた構造改革や規制緩和について、スピードを速めて実行し、経済活性化を前面に出していただきたい。

Q: 道路公団の新総裁に、経済界のバックアップで国会に送り出した近藤氏が内定した。急な決定で氏は国会議員も辞職されたが、この人事につき北城代表幹事はいかに評価されるか。

北城: 確かに、経済界の考え方をよく理解した人に政治活動に努めていただきたいとの期待があったので、その意味では残念に思っている。しかし、道路公団改革は国を挙げて取り組むべき重要課題であり、民間の経営経験のある人が総裁になることは好ましい。近藤氏は非常にバランスの取れた人物なので、道路公団の経営実態について精査したうえで情報を公開していただきたい。また、新総裁一人で改革ができるわけではないので、民間の経営経験のある人が(近藤氏以外にも)道路公団の経営に参画することも必要になるかもしれない。

Q: 民間が参画すべき道路公団総裁以外のポストとは、どのようなものを想定しているのか。

北城: 例えば、郵政公社の場合、生田総裁が誕生したときに、トヨタ自動車から高橋俊裕氏が副総裁に登用されている。近藤氏も、民間からの登用が必要だと考えれば、ご自分でそういうことをしていけばいいと思う。特に、民間基準で道路公団の財務体質の検証を考えると、民間で財務を担当してきた人の活用などは考えられると思う。

Q: 人選について、同友会として協力することはあるか。

北城: 経済同友会には見識豊かな経営者が多いので、期待があることは承知している。しかし、同友会は人材の推薦組織ではないので、会として紹介することは考えていない。同友会の会員の中に適切な人がいて、近藤さんが必要だと考え、会員個人が申し出を受けるのであれば、就任に反対するということはない。

以上

(文責:事務局)


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