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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2003年05月07日(水) 13:30~
出席者 北城 恪太郎 代表幹事

記者の質問に答える形で(1)株価対策の与党案、(2)個人の株式市場参入への対策、(3)内部告発者の保護法案、(4)景気対策、(5)補正予算、(6)郵政公社の株式取得、(7)SARS等について出席者から発言があった。

Q: 昨日の与党案や、明日の経済財政諮問会議で民間議員が提出する各種の案も含めて報道ベースでいくつか株価対策が出ているが、どのような感想をお持ちか。

北城: 株価の下落が実体経済に影響を与える側面がある。企業業績に関して言えば、実際のキャッシュフローには影響しないにしても企業が持つ株式の評価が下がる。金融機関に関して言えば自己資本が痛む。株価は将来の景気、企業業績への期待なので、株価が上がることで将来の企業業績が明るくなるだろうというメッセージを与えるという意味でも実体経済への影響がある。政府や与党が株価について関心を示し、対策を取ろうということについては適切なことだと思う。内容については、株価は企業の業績に対する期待値で決まっていくもので、かつ株式市場というのは資金を最適に配分する、重要な市場主義の手段だと思うので、それが健全に機能するようにすることが第一だと思う。そのために、企業経営者自らが企業の業績の向上に努力しなければならないということ、経済が根本的に回復するということが基本として大事だと思う。その上で今回の与党の対策は短期的な売り圧力に対して買いを作るという意味では効果はあるのではないかと思う。しかし長期的には、株の買い手、特に個人が少ないというのは問題で、買い手が日銀や特定の団体、郵貯、簡保に限られるよりも多様な人たちが株式市場に参入することによって色々な価値観で会社の株を選ぶことが大事だと思う。個人が株を買わないという問題については、ここ10年を見ると結果的には株価は下がってきているので個人はある意味では正しい判断をしていたのかもしれない。REIT(不動産投資信託)市場は比較的活況を示しており個人もかなり購入しているようなので、資産の運用で成果が出る分野には個人の資金も入ってきているということから言えば、株式市場に個人が参入しやすくする、個人が株を買うことを一層支援する仕組みも長期的には必要ではないか。そういう意味で税制等の改革についてもこれから取り組んでいただき、個人が株を買うことを支援する方向を政府に打ち出していただきたい。個人が株を買ったときの配当等の利益については、証券税制の改正で、かなり整備され優遇されてきていると思うが、株が過去下がってきており、まだ下がるかもしれないというリスクがあって買いが少ないと考えれば、株を買ったときの損失のリスクに対する見返り策、将来に株を売ったときの損失に対して所得通算を認めるという方法も考えられるのではないか。税の論理からすれば株を売ったときの利益も所得通算すべきだ、いわゆる総合課税すべきだという議論はあると思うし長期的な方向はそれが正しいと思うが、現実に日本では個人の株の所有が少ない、間接金融から直接金融への移行が大事だというのであれば個人の株式所有を一層刺激するような策を取るべきではないか。株式市場が経済の実体を示すものであり、なおかつ構造改革を一層推進するということを考えても、株価が下がることによって構造改革が止まる、実体経済が悪化することは問題だと思う。小泉総理が株価の動きや経済の将来を示す指標に非常に関心を持っている、実体経済の回復と証券市場の健全な発展に大変な関心を持って取り組むのだというメッセージが証券市場を活発に機能させることへの期待を高め、その期待が株を買う動きにつながるのではないかと思う。

Q: 経済三団体が出した「緊急株価対策として講ずべき税制措置」については、来年の税制改正の中に取り込まれればという方向になりつつあり、昨日の与党案でも、個人の部分でいえば盛り込まれていないように思うが。

北城: 個人が直接金融市場に参加することが、多様な価値観を持つ人たちが市場に参加する、市場の厚みを高めるということで、長期的には必要だが、今月、来月すぐに効くという話ではない。証券市場の透明性、インサイダー取引の問題も含めた証券市場のディスクロージャー、証券取引監視のためのSECのような機構、証券市場の整備、企業業績を適切に表すディスクロージャーなど、個人が情報を十分に持って自己責任で投資できる環境整備が必要だし、アメリカやヨーロッパに比較して日本の証券市場の規模、特に個人金融資産に占める株式等の運用資金が非常に少ないことを考えると、より積極的に個人が証券市場に参加する対策を講じるべきではないか。今回の与党の対策は政府が決めて行動できる分野に限られている。適切な面もあるとは思うが、日本銀行や郵貯・簡保が株を買い続ければいいということではない。郵貯・簡保に関しては郵政公社の基本的な判断で決めていくべきだし、日銀が株を買ったことによって万が一損失が出た場合には結果的には国民が税金で負担していることと同じなので、市場の参加者が株価を決めていくことが好ましいと思う。

Q: 株価対策の中には、健全な株式市場の発展を阻害するような一種の劇薬のようなものが幾つか検討されているが、その点についてはどう考えるか

北城: 長期的には健全な市場の形成に軸足を置くべきだと思うし、小泉政権の構造改革も長期的な国の発展のために必要だということで実行しているのだと思う。しかし、緊急事態に対して暫定的な策をとるという可能性がゼロということでは無く、市場は時々余りにも大きく振れ過ぎててしまうことがあるので、それを是正する目的での対策はありうる。厚生年金基金からの代行返上のような売り圧力を高めるものに関して対策をとるといった非常時に問題を抑えるための政府の介入的な活動はゼロではないと思うが、政府が株を買って市場を支えるより、できるだけ民間、特に個人が株を買う方向に舵を切っていくべきではないかと思う。

Q: 内閣府で企業の内部告発者の保護に関して見解がまとめられたが、内部告発者の保護は企業統治に対して有効に機能するのか。

北城: 内部告発者が外部に告発しないと問題が解決できないという仕組みが問題だ。企業の中に問題があれば問題を拾い上げる仕組みを持つべきだと思う。それが機能する限りは、企業の中の問題点について経営者に適切な情報が入り、それによって行動がとられ、なおかつそうした問題を指摘した人が不利益を被らない、匿名性を守るような仕組みというのを企業は本来準備すべきだと思うし、コーポレート・ガバナンスの一環で実行していくべきだ。それでも十分機能しない、あるいはシステムそのものが信頼されていないということであれば企業内部からの告発が外部に出るということもあると思うので、法律に違反したような活動が行われているという指摘に関しては、問題を告発、指摘した人を保護すべきだと思う。制度を作ることは好ましいと思うが、本来は企業がこういう制度が無くても、問題を自分で見つけ出して修正できる仕組みを構築するべきだと思う。

Q: 日本企業には伝統的に、「丸くおさめたい」とう企業文化があるように思うが、内部告発は根付くのか

北城: 企業の不祥事が結果としてイメージやブランドといった評価を著しく傷つけ、場合によっては企業そのものが存在し得ないという事態が起きていることを考えると、問題がトップに上がる風通しのよい仕組みを作ることが企業の健全な成長には必要なことだ。つまり経営者が、会社の中で起きている様々な問題を指摘することが会社の健全な発展のために必要だということを社員にも伝えていくことが必要であるし、それを実行するための仕組み作りが必要だ。残念ながら日本の企業経営者やトップは行動基準や企業理念については設定しているが、それが内部で適正に運営されているかどうかということ、社内での徹底と現実に機能しているかどうかの検証や監査、機能していない場合にはそれに対する対策、それを守らない社員の処分という点が整備されていないのではないか。小林前代表幹事が、社会的責任経営ということで企業の経営が社会にとって好ましいものであるべきということで様々な指標を作られたが、内部の透明性、社内でのコンプライアンスの体制作りが重要な観点だと思う。

Q: 今回の最終報告では、派遣社員、定年退職者の声も内部告発として受け入れるべきだということが盛り込まれているが。

北城: 臨時雇用者、退職者も内部告発によって不利益な対応を受ける可能性があるので、そういう人は守るべきだと思う。内部からの問題指摘とは、法律に反する行動を社員がとっている、会社のお金を不正に使用しているといった会社に不利なことばかりではなく、会社を守るための指摘もたくさんある。第一義的には企業が会社の中で起きている色々な問題を吸い上げるような仕組みを作り上げることが経営者の使命だが、それで全てに対応できないのであれば内部告発者に対する保護も必要だと思うし、その範囲は広くても構わないと思う。

Q: 景気対策について

北城: 景気が良くなることが、株価に対しても長期的に最も大切なこと。株価は企業収益の将来に対する期待であり、景気回復は企業の業績の向上につながる。企業業績を高めることが即ち経済対策である。小泉内閣が進めている経済政策の全てを実行していくことが解決につながると思う。小泉内閣の構造改革では、行政改革、規制撤廃、公社の改革、地方と中央との役割分担、金融問題、科学技術振興、公共事業の比率等、さまざまな施策が出されている。これらは適切な方向であると思うが、いずれも痛みを伴うため反対も多い分野である。改革に時間がかかると痛みも長く続くため、速い改革に取り組むことが必要である。改革のいくつかの分野では、事業の縮小・撤退により失業問題が起こる。その解決には、新しい仕事を作ることが必要である。先端産業については、科学技術振興ということで予算も振り分けられているが、より生活者に近い分野での新しい事業が起きるような施策がさらに重要である。製造業を中心とした先端産業で貿易の観点からも日本経済を支える柱、つまり自動車、エレクトロニクス、バイオ、ナノ等は、引き続き競争力を高めるべきである。一方、国内の生活産業については生産性が低い分野である。OECDの調査でも、日本の製造業の先端分野はアメリカに比較して1.2倍の生産性をあげているのに対し、生活産業についてはアメリカの6割にすぎない。まだまだ日本では改革の余地がある。改革の一環としては、規制を極力緩和し、社会のニーズがある分野でビジネスに参加する人が増える仕組みと、エンジェル税制の拡充を含め長期的に新規事業を創ることを支援する仕組みを作り、職の受け皿をつくることが大切である。

Q: 補正予算を組んで、景気を良くするという意見もあるが。

北城: 補正予算が必要になる場面も経済の中ではあるとは思うので、完全に否定するわけではないが、今最も重要なことは、補正予算をどのように組むか、ということである。一時的には政府の支出によってGDPを上げることはできるが、予算不足により翌年に続かないという分野に公共投資を高めても、短期にGDPを高めるだけで持続できない。過去に100兆円も投入しており、これが持続できないことは明確なので、「どこに使うか」に対する方策がないところで補正予算を組んでも、短期的には景気が良くなったように見えるかもしれないが、持続はできない。そういう意味で、今は補正予算を組んで景気を回復するという方策に取り組むべきではない。構造改革を速く進めながら、その過程で補正予算を組むべき問題が起きたときに組むべき。波及効果の多い分野に補正予算を組むことは、現実の政策上難しい。そういう意味でも今補正予算を組むべきではない。もし補正予算を組む必要が出るような経済的な危機に陥った場合には、総理が状況を説明し、総理の経済に対する考えを国民により正しく伝えることが大事である。

Q: スタートしたばかりの郵政公社に対し、郵貯・簡保による株の取得という外圧があることについて

北城: 公社は公社として経営を行うことが設立の主旨なので、資金運用については公社の判断で実行することが望ましい。公社が株式等の保有に基づくリスクが高いと判断すれば、株の持分を増やすことは好ましくないと思う。特に郵貯に関していえば、運用した利子を含めて国が保証しているようなもの。利子が適切に払えるような運用手段を確保しなければならないので、それを確保できる範囲で公社の判断で実行すべきである。郵貯・簡保の株の取得については、確かに株を買う受け皿にはなるが、長期的には少数の人が価値判断をして株を買うことは、市場の厚みを作らないことにつながる。公社や日銀が株を買うということではなく、多くの人達がいろいろなことを考えて市場に参加するから、資源の配分機能が働く。株価に連動してみんなが一律に買うのでは、市場で資源配分の機能が働かなくなり、本来の主旨ではない。

Q: 「市場の厚み」という話が出たが、市場に参入している数が少ないことが乱高下の原因だと思うか。

北城: この程度の乱高下は色々な情報で起こりうる反応ともいえる。個人金融資産1400兆円の中で株に占める比率が8%というのは、国際的に見ても低い。今後伸びると思われる分野に国民が投資をするという行動が行われていないため、間接金融に頼ってしまう。ベンチャービジネスが伸びるためにも直接投資は必要である。株式市場は、市場主義経済を動かす非常に重要な資源配分の手段。株式市場が適切に機能するように、つまり、個人がいろいろな考えで各自のリスクで参入し、多くの人が良いと思うところにお金が集まる、それを実行できる仕組みにする必要がある。株式市場の4割を金融機関が持っており、個人分は2割を切っている。4割を持っている金融機関から放出される株の買い手がないとすれば、需給上株価が下がる可能性がある。一方、個人は上がる期待があってリスクが少ないと思えば参入してくる可能性がある。それを推し進める施策を取ればよい。REITが堅調に推移しているのは、収益が上がり利回りが期待できるから。株式も魅力があればお金が集まるのではないか。同友会は経済団体である。企業の経営者は、周りの経済環境云々ではなく、まず自社の業績を上げる努力をすべきである。業績を上げることができない経営者については、経営方針の転換や経営者の交代を要求するようなコーポレート・ガバナンスも、企業業績を高めるための圧力としては働く。日本の場合には、株主の目で企業経営者に対する圧力が働きにくい体質なので、経営者自らの退任を別とすれば、業績が継続して上げられない経営者に対して、経営方針の軌道修正を行う仕組みが十分に働いていないということがある。

Q: SARSの影響について

北城: 日本の実体経済への影響は、航空業界などを除けばまだそう大きくない。中国では、商談の機会喪失や延期、見本市の中止、工場閉鎖等、実体経済に影響が出始めている。今後SARSが中国で広く蔓延することになれば、経済的な影響が出るのではないか。中国は、現在経済発展があるために国が安定している。年7-8%の経済成長が維持できなくなると、国の安定にも影響があるのではないか。また、多くの日本企業が中国に製造拠点をおいていることからも、影響があるのではないかと心配している。一方、原因そのもののウィルスの判明、検査や治療の体制が整備されていくため、必ず対策は取れると思っている。原点に振り返ると、最初の情報公開が遅れて、問題を広く伝えなかったがゆえに病気が広く蔓延した部分もあるので、悪い話でも早く伝えて早く対策を取ることが重要であることを示していると思う。ベトナムやシンガポールのように蔓延を抑えられるようになっている国もある。情報が適切に公開されて速く手を打てば、抑えられる可能性のある分野ではないか。中国のように大きく広がってしまうと後が大変。製造業の企業ではすでに中国での売上が落ちているという話も出ているため、中国については心配している。

以上

(文責:事務局)


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