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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2001年09月18日(火)13:30~
出席者 小林陽太郎代表幹事
水口弘一副代表幹事・専務理事・広報委員長

冒頭、米国での同時多発テロについて小林代表幹事から発言があり、その後、記者の質問に答える形で、テロに関連して(1)株式市場と金融政策、(2)日本経済の見通しと経済成長率、(3)為替レート、さらに、(4)マイカルの経営破綻等について出席者から発言があった。

小林:テキサス州ダラスで東京行きの飛行機に乗り換える直前に同時多発テロ事件が起きた。ひどい、信じられないことが起きた、と今でもそのような感じを覚える。水口さんが顧問を務める野村総研の二人も含めて、五千人を超える方々が依然行方不明で、二百名近くの方が亡くなったということで、改めてお見舞いを申し上げる。経済への影響は、空港でのセキュリティ強化によって利用者側は当然不自由になるし、航空会社も便数を制限せざるを得ないことから営業にも支障が出るため、航空会社の株が既に下がっている。三日間、足止めに近い状態で、朝から晩までテレビに釘付けだったが、それを通じて(適切な言い方ではないかもしれないが)印象的だったことが三つある。

一つは、米国の人々が「このようなひどいことをされるほど、何故憎まれなければならないのか」という素朴ではあるが基本的な疑念を持っていること。二つ目は、テロがあり得ることが分かっていながら、少し気が緩んでいたのではないか。手を打たなければならないことが色々あるにもかかわらず、長くて10年、少なくともここ5、6年の間にこうした対応ができないような環境になっていて、結果的に手薄になってしまった。最後は、90年代は明らかに米国の一人勝ちになっていて、色々なことでついていた運が、少し離れ始めたのではないか、ということを何人かが言っていたことである。

当面の問題はセキュリティ強化であり、時間はかかるだろうし、テロはゼロにはならないかもしれないが、事前にテロを抑えられる体制をどう作るかについて、米国に限らずサミットでも毎回テロに対する声明が出されるが、日本も含めてテロ対策のネットワークを如何に作っていくかという問題が改めて提示されたのではないか。また、直接の問題解決にはならないと思うが、日本の場合、イスラム世界と縁の深い企業や個人は割合少ないわけで、文明の違い等についてテロの根底にある問題として遅まきながら勉強していかなければならない。

Q.ニューヨーク株式市場が再開され、かなり株が下がったが、日本の株価は戻している。この点から、欧米の金融当局が打ち出した利下げは効果的だったのか、代表幹事の見解を伺いたい。

小林:今後どうなるかについては分からないというのが本音だが、今までのところ、欧米当局の利下げ、金融緩和策によって、ニューヨーク市場の下げ幅は予想よりも小さいところで納まったのではないか。東京市場が戻したのも、米国の株価がどんどん下がり続けるという事態は避けられたという安堵感が効いているからだろう。ただし、今週、あるいは来週に向けては予断を許さないと思う。一つの鍵は、米国政府が「これは戦争である」「報復については手段を選ばない」「(生死にかかわらず)ビンラディン氏を掴まえる」と言っているが、具体的な軍事行動が、いつ頃から、どのような範囲で、どう行われるかによって、将来の市場や経済への不安感、あるいは安心感という形で、市場(や経済)に大きな影響を与えると思う。

水口:FRB、欧州中央銀行までが機敏に動いたのは非常に良かった。ブラックマンデーの時もそうだが、米国国民は、極めて重要な局面になると、全体が結束して事に当たるという特徴がある。何かあれば「星条旗よ永遠なれ」「星条旗の元に集まれ」という国民的なアイデンティティが発揮される。市場再開の際も、新聞報道によればウォーレン・バフェットが「私は株を売らない」と言ったとか、GEのウェルチ会長も持ち株には手を出さないし、94年から非常に多額の自社株買いを決めているが、それを更に迅速に行うとか、SECもファイヤーウォールを緩めるといった状況を作り出した。今はシティコープ代表になっている元財務長官のルービン氏も冷静を呼びかけ、市場オープンの時にはオニール財務長官も取引所の中央に姿を見せた。こうしたことが世界的な金融、経済の混乱を避けようという意志を世界中に示した、ということで好感されたし、非常に早い対応だったと思う。

東京市場も前場は日経平均で300円程度上昇しており、当面の問題は冷静に回避されたということであろう。後は実体経済にどのような影響を及ぼすかだが、冷静に考えていく必要がある。全体としては、直ぐに反発するとは思わないが、大きな底割れは無くなったのではないかと思う。恐らくどの研究機関も、今度の事件を契機に、日本経済および米国経済の今後の見通しについて、鋭意、再検討していると思う。野村総研でも検討しているが、かなり下方修正をせざるを得ない状況になっている。

Q.欧米の協調利下げを受けて、次は日本の金融政策ということになると思うが、今日、明日と日銀の政策決定会合が開かれる。これまで代表幹事は、資金需要が無いという理由で追加的な金融緩和策に対しては懐疑的なところがあったが、日本の金融政策は今後どうなるか?

小林:今までのスタンスと基本的には変わらない。同時多発テロという異常な事態が起きて、欧米が足並みそろえて金融緩和を実施したが、米国にとっては当然期待もされ、実質的な必要もあったのだろう。日本の場合、通貨供給量をジャブジャブにして、円安にして、デフレを少しでも押さえろという議論もあるし、一方では、そのようなことは効果が無いという議論もある。私は一段の金融緩和について、実体的な効果があるとは思わない。同友会の夏季セミナーでも、緩やかな円安そのものは容認すべきだとの議論があった。そのうちに円高がやや進んで、介入せざるを得ない状況が起きたわけだから、円安を誘導するような効果を期待しながら金融緩和を行うということについては、少しは効果があるかもしれない。しかし、実体経済を上向きにするという効果を狙っての金融緩和には、今でも疑問を持っている。こういう時期だから、極論すれば「何でもありだ」というムードは、前よりも強くなっているという気がする。

Q.材料不足の面もあり、予測するのは難しいと思うが、実体経済、特に日本における景気のステージは明らかに変わったと言っていいと思う。日本経済の先行きをどのように見通しているか。

小林:今度の事件によって気分的な問題は別として、実質的に航空機関連業界、米国におけるロジスティクスがかなり影響を受けて、それによる米国経済の低迷が長引くことは不可避だと思う。今度の紛争に対する報復措置が非常に大規模なものに展開していけば別だが、急激にそういう形になることは無いと思っている。その前提で、いつまでかということを考えると、米国の回復は元々早くても年明けくらいという感じだったから、果たしてそれが半年伸びるのか、数ヶ月で何とかなるのか。一年延びるということはないと思う。米国の景気回復が遅れることの日本経済に対する影響は、少し大きいのではないかと思う。水口さんが話された通り、各調査機関の今年から来年にかけての経済予想は当然下方修正されるだろうが、今年一杯はかなり厳しい状況が続くだろうし、来年の前半くらいまでは、日本経済には明りが見えない状況だろう。こういう状況になればなるほど、「それほど厳しくない」と活路を開いていくところ、非常に悪くなるところの見極めを今まで以上にきちんとしていくことが重要である。どのような対策を取るかという場合にも、セーフティネットの問題や、前向きに何らかの活性化をしようとしたときに、どのセクターに金を使えば効果があるのかという見極めが今まで以上に重要になってきている。いずれにせよ、日本経済に対するプレッシャーは少し強まったという感じがする。

水口:日本銀行として金融面のセーフティネットをきちんとする、その方法として更なる緩和がいいのか、決済機能に支障が起きた場合に迅速に対応するなどについて専門家が考えるべきだ。米国については、7~9、10~12のGDPは恐らくマイナスになるということで、定義上はリセッション入りということになると思うが、これには消費の問題が影響する。湾岸戦争の例から言っても、相当消費が落ち込むだろうと言われているので、我々の予想も下方修正せざるを得ない。米国の景気回復の時期も、従来の予想より少なくとも半年ずれるというのがコンセンサスのように思える。日本の場合も輸出、為替レート、特に円高というよりドル安の影響がどうなるかということは更に検討する必要がある。今までの我々の予測では、(日本の経済成長率は)今年度はプラス0.3%、来年度はプラス0.8%としているが、これも下方修正せざるを得ない。しかし、私が一番関心を持っているのは、ここ数年間、特にヨーロッパを中心にして、世界のマネーフローが全て米国に行っていた。このマネーフローの関係がどうなるかということが非常に重要な問題であり、注目する必要がある。米国としても、これに最も注目していると思う。

Q.代表幹事が指摘された通り、日本の場合、政府の景気対策としてどのようなセクターにどれ位の額を使うかが重要になる。そうした局面になると、補正予算にもかなり追い風になる要素があると思うが、改めて日本政府が今後採るべき景気対策について認識を伺いたい。

小林:以前からセーフティネット中心に、必要であれば補正予算を組むという話しはしてきた。こういう状態の元で景気を刺激する、浮揚するためにどういう策が必要なのか。今までも何回か色々なところで言われてきた減税の話しだとか、今の段階では具体的にどういう景気刺激策に効果があるか、そのためにどれ位の金額が必要になるかについては、具体的にお話しできるところまで詰まっていない。一方では、以前から色々と議論されている、例えば証券市場活性化対策など、延び延びになっていることを一日も早く導入していく。もちろん投資対象の企業の業績が良くなるようにしなければならないという問題があるわけだが、証券市場活性化の諸対策も議論され始めてから実際に導入されるまで、やや時間がかかっているのではないか。最近、小泉政策に対して、海外も含めて、市場が「少しスピードが足らないのではないか」と感じ始めてきている原因の一つも、その辺にあるのではないかと思っている。

Q.昨日、円相場が1ドル116円台に急騰したことを受け、円売り・ドル買いの市場介入が実施され117円台に戻したが、この水準は昨年の今頃と比べれば1割近く円安の水準である。円相場の水準をどのように見ているか。

小林:必ずしも円高とは思っていない。かつてどの程度の幅で動いたらよいのかという質問があったときに、大体115円から130円程度という話をしたが、今回は介入が行われた。117円の今の状態が円高というより、他の通貨との比較、とくに最近は人民元との比較でそう感じるのではないか。かつて、100円くらいまでなら大丈夫だという業界があったが、今は同じ企業のトップが120円を割ると円高だ、円高だと言っているわけで、感じ方は周りとの関係で随分違う。ドルとの関係というよりも、人民元との関係での円高を非常に強く感じている人たちが多いように思う。購買力平価の問題がときどき出てくるが、117円が非常に高いとか、140円とか150円でもいいんだという、この話は一般には通じにくい。いまの117円とか118円というのは良い水準であろう。

Q.市場介入は必要なかったのではないか。

小林:何とも言えない。放っていたら、もっと円高になると心配して介入した可能性もあるし、放っていても円高にならなかったかもしれない。

水口:従来の口先介入だけではなく、実際に115円(近く)になったら一つのラインとして介入した、ある意味で実力行使をしたというのは、象徴的な意味があったと評価したい。

Q.マイカルが過剰債務で破綻したが、同様のケースがこれからどんどん出てくると思うか。

小林:どんどん出てこられては困るが、何年も前から業界として供給過剰で、その中の個別企業でも供給過剰で、かつ過剰債務を抱えているところが出てきていることは事実である。それが、景気全体の立ち直りが遅れている中でますます厳しくなり、いくつかは出てくるだろうと予想されていたわけで、こうしたケースはマイカルで終わりだとは残念ながら思えない。次がどこかは分からないが、日本経済が通らなければいけない構造改革の道を通り始めているのだと思う。その際、あのような処理が良いのかどうか、一般論で言うのもどうかと思う。それぞれのケースに応じて、責任のある形でやっていく必要があると思うが、じりじり、だらだらというのは良くない。いつか良くなるのではないかという先延ばしをするやり方に限度があることは、マイカルだけではなく、いくつかのケースで出てきている。一般的にいう不良債権の問題、その対極にある過剰債務の問題については思いきった処理を進めて、その場合に金融機関に対して、必要があれば公的資金注入についても思いきった決定をしていくことが必要である。

Q.米国同時多発テロ事件の日本経済への影響をどうみるか。

小林:今のところ具体的に言いかねるが、米国経済の回復が明らかに遅れるだけではなく、米国経済における航空機産業やロジスティックスが大きなインパクトを受けることからくる日本の輸出産業、関連産業へのインパクトは、かなり大きなものがあると思う。これは日本経済にとって、どの程度下方修正になるかは何とも言えないが、今年、例えば0.3%成長と予測されているのであれば、ゼロになるといったことは十分可能性があると思う。来年、仮に前半が0.5%とか0.8%であれば、これもゼロ近く、あるいはマイナスになる。今年も終わりの頃はマイナスになる危険もあるかも知れない。ただ、一番分からないところは、純粋な経済の部分を除いて、テロ行為に対する米国の報復行為がどういう規模で、どれくらいのスピードで出てくるか次第で、その影響は大きくもなるし、逆にそのマイナスを少し緩める方に作用するかもしれない。後者であることを願うが、予測し難いところだと思う。

Q.例えば0.3%成長など、成長率がプラスになることはあり得るのか。

水口:業種別・地域別の営業利益の構成比をみると、北米が一番大きいウェートを占めているのは自動車で35%ある。国内が68%、商社が24%、ソフトウェアが20%、電機機器が9%だが、これはアジアとか欧州全部に行っているので、実際のウェートはもっと高いと思う。おそらく、消費が落ち込むときに、日本の自動車は米国では非常に競争力が強いので、やはり、電機・エレクトロニクス関係が悪いとすれば、とくにクリスマス商戦にあらわれてくると思う。アジアはどうかということもあり、輸出関連にとってはかなり厳しいことが予測される。ただし、数量的にどのくらいかということは、まだ分からない。エコノミストやアナリストは常にリスク要因として米国経済をあげていたが、今回はこれにテロが加わったので見通しが不透明になってきた。これから一週間内外で、各研究機関からの予測が出てくると思うが、それを比較考量して、いろいろ意見をいただきたい。

小林:無責任な楽観論は許されないが、しばらくは不要不急の海外旅行・出張は控えようというムードが広がると思う。消費については、悪い悪いといわれながら堅調に推移してきた。ついこの間までは、海外旅行者数は史上最高で、特に若い人たちは海外で積極的に消費をしてきたが、海外を止めて、その代わりに浮いた金をすべて貯蓄に回すかというと、そういうわけではなくて、消費に回ってくる分もあると思う。消費全体のマイナスを押し上げるとか傾向を変えるということはないと思うが、様子を見極めないと何とも言いかねる。少なくとも良くなる条件は一つもないが、これで滅茶苦茶になるという形で極端な悲観論を言う必要も更々ない。

水口:半藤一利氏が書いた『真珠湾の日』というドキュメンタリーがあるが、日米開戦を決定した際に、時の大蔵大臣が担当課長に「明朝の兜町が心配だ。行って様子をみて、うまく指導して欲しい」ということで、当時においてさえ、全体的な国民の動向を知るという意味で大蔵大臣も兜町の動向を気にしていた。ましてやいま非常に重要なときであり、株式市場が示すメッセージの分析は素直に受け取る必要がある。構造改革も民間にとっての正念場であり、それぞれの企業が迅速な対応をしていくことが重要だと思う。

消費全体のマイナスを押し上げるとか傾向を変えるということはないと思うが、様子を見極めないと何とも言いかねる。少なくとも良くなる条件は一つもないが、これで滅茶苦茶になるという形で極端な悲観論を言う必要も更々ない。

水口:半藤一利氏が書いた『真珠湾の日』というドキュメンタリーがあるが、日米開戦を決定した際に、時の大蔵大臣が担当課長に「明朝の兜町が心配だ。行って様子をみて、うまく指導して欲しい」ということで、当時 いくことが重要だと思う。

以上

(文責:事務局)


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