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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2001年05月15日(火) 13:30~
出席者 小林陽太郎代表幹事
藤澤義之副代表幹事・諮問委員会委員長

記者からの質問に答える形で、(1)共産党との会談、(2)小泉政権発足後の感想、(3)不良債権処理問題、(4)日・米経済の現状と見通し、(5)雇用流動化と環境整備、(6)日銀総裁後継問題等について出席者から発言があった。

Q.先日、共産党と会談して反響があったが、どのような経緯で会談が実現し、今後どのような方針で臨むつもりか?

小林:予想以上に話題になったが、本来同友会は政党から会談やミーティングの要求があればお断りしない。今回の件は、共産党版緊急経済政策について同友会とミーティングを持ちたいという話が、共産党側からあったのでお応えした。今までの共産党との関係は、最初にミーティングを持ったのは1977年で、そのときも経済政策を中心に意見交換をした。その後、96年に上田さん、翌年志位さんが書記長の時に、それぞれ委員会講師としてお招きし、お話を伺った。今後のことは、共産党からどういう要求があるか分からないが、ミーティングを持ちたいということであれば吝かではないが、こちらから共産党に何かをやろうと呼びかけることは考えていない。今後の委員会活動の中で、講師の候補に共産党の方が入るという可能性もあるが、今のところ決まっていない。方針としては従来どおりのやり方を続けていく。

Q.小泉政権が成立し、今週から予算委員会の審議が始まっており、本格的に始動して1週間ほどが経つが、どのような感想をお持ちか?

小林:小泉総理は非常に健闘されていると思う。小泉総理、小泉政権の大きな方向性に対する期待、また総理が、総裁選の中で非常にはっきりと謳われていた自民党を変えるということに対する期待もあるだろう。今までのところ、総理はその期待に十分以上に応えているのではないかと思う。国民も国会中継があれほど面白いとは思わなかったし、視聴率も上がっている。関心が高まるのは非常にいいことだし、その一環として、政治家が自分の言葉で自分の思いをストレートに話されるということの新鮮さ、それに多くの人が触れて共感している部分もあるのではないか。今後、具体的な政策の問題、構造改革の中身、あるいは田中外務大臣のもとでの外交政策等、確認しなければならないことがまだまだあると思うが、今のところ大健闘されていると思っている。

Q.金融庁と経団連が債権放棄のルール作りについて協力する、しないという話が持ち上がっているが、経済界全体として、経済再建のためにそうしたルール作りが必要だと思われるか?

小林:経済界全体としての意見は分からないが、同友会では理事会や諮問委員会で議論しており、不良債権問題を迅速に処理することが重要ということで意見が一致している。ルール作りについては、英国のINSOLが参考にされているようだが、我々は、指針作り、ルール作り等を一概に否定はしないが、不良債権処理を進めてバランスシートを健全にするためには、税制等のインフラを整備することの方がはるかに役立つのではないかと思う。具体的には、不良債権処理によって生じる損失の処理期間をもっと伸ばす方が本質的ではないか。英国等、海外のローンの形態に比べると、日本の場合はケース・バイ・ケースが多く、それら全てに通用するためには非常に一般的なルールになってしまい、指針作り、ガイドラインといった方法がニードに合致するのかどうか。先程申し上げた通りインフラ整備の方がはるかに本質的ではないか。

藤澤:全く同感である。

Q.インフラとは具体的に何のことか?

小林:不良債権を処理した場合の損失繰り延べ期間として、現行の5年を米国並みの20年にするかどうかは別として、もっと延長する等の施策が、実際に処理を進める上ではるかに効果的ではないか、ということだ。

Q.今日、米国で連邦準備委員会があるが、多くの経済学者は50ベーシスポイントの利下げを予測し、今年5ヶ月で既に5回利下げしている。金融政策の効果が出てくるのは1年~1年半と言われているので、今、FOMC(連邦公開市場委員会)はどうすべきと思うか。利下げするのはどういう意味を持つか。また今の世界経済の状況をどう認識しているか。

小林:これだけ米国が利下げをするということは、その時々で政策当局が判断していた状況より経済は良くないということの反映である。政策当局が経済の状況についてかなり厳しい見方をしているということを、日本経済の今後の見通しとの関係でどう判断するかが基本だと思うし、それはFOMCの問題だけではないと思う。金融政策については、日銀がこの前の量的緩和で、やることはやったので後は政治の問題、という間接的なメッセージが出ていた。しかし、連邦準備委員会が利下げをやらざるを得ないような状況に米国経済があると判断しているということを、むしろ日本が、これからの経済見通しとの関係で、輸出の問題等を含めてどう判断するかということがキーだと思う。(景気回復が)U字型で、必ずしもそう悪くないと思っていたのが、「考えているよりかなり厳しい」という見方が出た時に、今、考えられている経済政策をどう再評価するかという問題につながってくると思う。

Q.米国経済の見通しについて、今年の後半から来年にかけて回復基調が出るというシナリオもあるが、どういう見方をしておられるか?

小林:今年一杯は見通しの定まらない状況が続くのではないか。それなりに明るさなり、見通しが見えてくるのは2002年の前半ぐらいではないかと思う。企業ベースで随分ばらつきが出ているし、特にシスコシステムズ等、この10年ぐらい米国経済急成長の実質的な先頭に立ってきた企業が急速に業績を悪くして自信を失っているという点が、ドットコム企業が潰れたということよりも、遥かに重要なのではないか。この辺は、我々の予測を上回る厳しさが出ている。

Q.FOMCは一昨年、昨年と、バブルを抑えるため利上げを続けてきたのに、今は大幅利下げをしている。これが再びバブルを引き起こす可能性はあるか?グリースパン氏の言う「irrational exuberance(根拠なき熱狂)」の時代は終ったと見ているか?

小林:「irrational exuberance」の時代は終っているのではないか。金利引下げを続けることによって、バブルが再来することはないと思う。むしろグリーンスパン氏が「irrational exuberance」と言った以降もどんどん(株価は)上がり続けた訳だから、例えばブラックマンデーの87年10月から89年まで日本が行った余計なバブルの2年間と同じとは言わないが、似たようなことが「irrational exuberance」の後、米国でもあったし、その調整を今やっているのだと考えていいのではないか。

Q.日銀発表の前年度比の卸売物価指数を見ると、下落幅が拡大してきている。それを踏まえて、現在の日本経済はどういう状態にあると考えるか?また、米国経済の見通しが厳しいことも踏まえて、政府経済見通しの実現についてどう考えるか?

小林:今の日本経済の状況については、政府も日銀も基本的に弱含みであり、また正式にデフレの状況にあると述べている訳で、それが続いているということだと思う。どんどん悪化しているとは必ずしも思わないし、一部、家計消費や自動車関係等でプラスの指標も幾つかあるが、全体としては、依然、日本経済について悪化の数字が多い状況が続いている。それを踏まえると、今年度の政府見通しの達成は、なかなか厳しい状況になってきているのではないか。しかも米国の状況を重ねて考えれば尚更である。政府見通しが決まった段階では、米国について、一時の落ち込みはあるものの比較的早期に回復する、基本的に米国経済は堅調との見通しは変らないという前提であったが、それが少し弱含みになるとすれば、両方を合わせて、かなり厳しくなるのではないかと思う。

Q.小泉総理は「痛みを伴っても構造改革を進める」と言っているが、どんな「痛み」が、いつ頃から始まると考えるか?

小林:具体的に一番大きな問題は失業である。現在でも4%台後半で、史上最高水準と言われ、日本の失業の実態はかなり高いところに来ている訳であるが、今後、不良債権処理等のなかで、大きなニュース記事の対象になるような形での企業整理が進んでいくと、その問題と併せて失業の問題が出てくる。これが一番目に見えて出てくる「痛み」である。しかし「痛みを厭わず」と言っても、所信表明の中でもセーフティーネットのことをきちんと言っておられるように、放っておけというのではなくて、無制限なモラルハザードにつながらない範囲で少しでも「痛み」和らげようとすることは、政治家としても企業経営者としても当然のことである。「痛みの出そうなことはやるまい」という姿勢で今までやってきたからこうなってしまった、だから「痛み」を伴うかもしれないがやらねばならない政策はやる。しかし、そこで出てくる失業に代表される「痛み」については十分に手を打っていく、ということである。具体的な金額、対象等は今後検討されると思うが、小泉総理には、是非、重点的にその辺を見えるようにして頂きたい。

Q.日本の失業が高いといってもまだ5%以下である。10年前の英国では、50%を超える地域も多かったことを考えれば、まだ世界的にも低い水準である。構造改革の中で雇用流動化の環境を作ることが企業の最も大切な責務ではないか。

小林:日本の失業率の3%台は、国際的に使われている統計方法で失業率を計算すると7~8%に相当するということが言われてきた。欧州ではずっと二桁の失業率が続いていた訳だが、統計方法を同じにすれば、現在の日本の失業率は8~9%台に来ていると考えて間違いないと思う。これまで日本は、長い間、安定雇用の中で社会を運営してきた訳だし、企業経営者の雇用責任も欧米より日本の方が社会的重みが相対的に大きいままで推移してきている訳で、失業が更に増えることの社会的インパクトを軽視してはいけないし、大きな影響があると思う。

それに対処するためには、規制撤廃・緩和等で新産業をどんどん作ることと、構造不況産業の企業の整理に伴って出てくる人々に再訓練・再教育をして、新しいセクターに早くシフトしてもらうこと、そしてそのために年金のポータビリティもきちんと整理をしていくこと等が必要になる。これらはいずれも90年代初めから議論しているものだが、小泉総理の姿勢が非常に強く伝わってきたということもあり、「そうしなければいけない」という必要性についての感じ方が社会的に高まってきていると思う。セイフティーとは「そこに居れば安心」という、言わば「塩漬け」ではいけない。かつてそれを行った欧州大陸諸国は結果的に失業が高止まり・固定化した訳で、やはり新しい部門へ雇用を移していくことがプラスになるようなインセンティブが入ったセイフティーネット政策を打ち出していかねばいけない。

Q.雇用の流動化を図るという点について、雇用を大事にする日本型経営の結果だと思うが、終身雇用に代表される長期雇用により、一度雇ってしまうと中々解雇できない。そのため社員を採用するのを控え、結果として雇用が生まれない。小泉総理が厚生労働省に指示したようだが、労働基準法や判例にある解雇制限をもう少し緩和する、あるいは、産業界としても解雇自由あるいは解雇の制限を緩和するという意見もあるようだが、これらをどのように考えるか?

小林:解雇制限について企業側、経営者側の自由度が増すということは、働き手にとっての脅威という受け取り方もあると思うが、日本の労働市場の弾力性や流動性を考えたときに、今までの雇用制度や労働慣行は長期の安定的な雇用を前提として、短期や臨時雇用は補完的なものという体系を抱えて今日まで来ていると思う。小泉総理が終身雇用制の見直しを指示されているのは、長期の雇用期間を前提とするのではなく、短期でも正規社員扱いされることも含めて考えるように、ということではないか。坂口厚生労働相の答弁からは、具体的にどこまで指示されたのかは分からないが、ニュアンスとしては、そのように受け止めている。一方的に経営者側、企業側の自由度が増すだけのシステム変更はフェアではないと思うが、労働市場全体における流動性を増す、働き手にとって自分の能力を思いきり活かせる職場に動けるような市場を作るための新しい仕組みであれば、そういう視点からきちんと評価して、単に一方の権利が増えた、他方の権利が阻害されたという形で評価をするべきではない。そういう非常に重要な大きな変革期に来ていると思う。

Q.日銀の速水総裁の辞任問題について、先日、総理が速水総裁に会って慰留し続投することになったようだが、代表幹事は速水総裁についてどういう印象をお持ちか。

小林:この問題については、報道されている以上のことは何も知らないが、速水総裁は非常に頑張っていると思う。日銀の中立性に対して、正直言って色々なところから、速水氏個人に対する攻撃も含めて、やや過剰な介入が有り過ぎたと思うし、その点ではお気の毒だと思っている。

Q.任期を全うしてもらいたいということか?

小林:任期を全うするかどうかについては、ご自身がお決めになることだ。

Q.過剰な介入とはどういう意味か?

小林:余計なことを色々な人が言い過ぎるということだ。

Q.(後継総裁として)候補とされる福井副代表幹事から話はあったのか?

小林:「全く根拠も無いし、自分のところには何の話もない」との連絡はあった。

以上

(文責:事務局)


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