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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2001年03月21日(火)13:30~
出席者 小林陽太郎代表幹事
水口弘一副代表幹事・専務理事・広報委員長
鳥海巖副代表幹事・欧州委員会委員長

記者からの質問に答える形で、(1)日米首脳会談の評価、(2)日銀の量的緩和政策、(3)不良債権処理問題等について出席者から発言があった。

Q:昨日の日米首脳会談で米国から不良債権処理について強い要求があり、森首相も半年以内には結論を出したいという約束をしたようだが、今回の日米首脳会談をどのように受け止めたか?

小林:首脳会談が実現したことは良かったと思う。柳澤金融担当大臣が、共同声明に不良債権処理が入ったことで各省との折衝がやり易くなると言われたようだが、本音かもしれない。国内でも不良債権処理の問題も含め構造改革を進めなければいけないと言われ続けてきたが、それがなかなか進まないことに対してブッシュ大統領の発言がどれだけ重みを持つかどうかは別にしても、会談内容については、予想通りで特に驚くべきことはなく、当然のことがお互いに確認されたのだと思う。

米国に注文をつけるわけではないが、米国自身の継続的な問題として経常赤字の問題がある。特に最近の米国経済、株式市場の状況を見てみると、実際に、株式市場の活況や将来見通しの強気さにより、経常赤字にも関わらず外資が入っていたわけだが、こういう状況が変われば、そういう問題について変化が起きないとも限らないので、この点は何か一言あっても良かったかという気もする。両首脳の間では話が出たのかもしれないが、少なくとも報道や共同声明には出てこなかった。日本の立場としては、人のことを言う前に我々がやるべきことをやるということだろう。

Q:先日の日銀の量的緩和政策について歓迎の声明を出していたが、本日は株価も多少戻しているということで、これについて改めてどう考えているか?

小林:今度の日銀の決定は、速水総裁も言っておられることだが、従来やったことの無いことをやるという意味で、やったこと自体も方法も、日銀として非常に思いきったと思う。そのこと自体は市場も好感していると思うし、経済界のコメントも基本的には、それを好感していると思う。その前に発表された与党三党の緊急経済対策も、個別には意見もあるが、全体としてはやるべきこと、やれることを思いきって何でもやるということで好感を与えていると思う。

ただし、一番重要なのは、それらを構造改革に結び付けていくということが常に条件となるということだ。今度の日銀の決定にもその注文がついている。この点が国内の問題としても、今度の日米首脳会談の問題としても、最大のものということを忘れてはならない。そうしないと金融政策は金融政策、金融緩和は金融緩和、量的緩和は量的緩和、また緊急経済対策もできるものから順次やっていくということで、肝心なことに手をつけなければ同じことを繰り返すことになり、ケガが大きくなるだけだ。このことを企業も国民も、もちろん一番大事なのは政策を担当するリーダーが、きちんとメッセージとして出すことが非常に重要と思う。日銀の決定はそれ自体が目的ではなく、構造改革を進めるための新しい手段が出てきたということなので、まさに政治のリーダーシップが問われるわけだが、経済界も含めて、それをやっていくシナリオとスケジュール、それぞれについての効果を広く国民に見せていく時期に来ていると思う。

Q:構造改革を進めなければならないという点について、日銀は今回の政策決定でカードを切ったので、これからは政治のリーダーシップをということだが、一方で、民間側が今後やるべきこと、銀行が不良債権処理に向けてどういうことをやっていくべきなのか、産業界として考えるべきことについては如何か?

小林:金融であろうとメーカーであろうと依然継続している日本企業の基本的な問題は、ビジネスモデルとしてのブレーク・イーブン・ポイントをどう下げて、国際的なビジネスモデルと競争できるモデルを如何に作り上げるかということだと思う。同じ利益率、同じROEでやれと言うつもりはないが、実際には金融も含めてペイできるビジネスモデルを完成することが第一で、それに向かって今度のような一連の施策を活用していかなければ意味が無いと思う。その中で、個々の企業や産業が、過剰な設備、雇用の問題に対してどうやって責任ある施策を打っていくのかということだ。

これまで何度か雇用関連のセーフティーネットの話をしているし、今日は坂口厚生労働大臣が失業給付の積み増しはしないと言われたようだが、欧米の例を見ても、前向きに労働移動を促進する方策と、現状に固定してしまう施策といった区別があるが、前者にウェイトを置いた形でセーフティネットをもっと強化していくことが必要である。個々の企業レベルでやれることを更に強化する、やり易くするということも十分に検討した上で具体的なプログラムを検討していく必要があると思う。少なくとも個々の企業が、一段と経営の合理化について努力しなければならないということは、金融界も、産業界も、依然として日本企業が共通して抱えている大きなテーマである。

Q:不良債権の直接償却に関しては銀行側の経営判断がかなり大きいと思うが、銀行の経営者に何か注文があるか?

小林:特に注文はない。こういう状況の中で、当然将来の見通しを立てたうえで、きちんとした判断をされるものと思う。基本的には経営の中身がよくなっていかないといけないし、金融システムが崩壊しないようにあれだけの公的資金を注入してきたわけだから、システム全体としても、それを作り上げている銀行の経営そのものの中身を良くしていくことについて、どうすればいいのか、その関連で不良債権の償却について、間接、直接、どのような方法でやっていくのか、また借入れ企業との関係をどう判断していくのか、個々に責任ある判断を進めていかれると思う。

今度の金融緩和を如何に先のマーケットに繋げていくかということが重要で、一時の銀行経営の指標の良化だけで終わっては何にもならない。短期的に効果はあるが長期的な構造改革に繋がっていないことは今までの実績から明確なので、これについては、責任ある行動の中できちんと示していただくしかないと思う。

Q:坂口厚生労働大臣は失業給付の延長を考えていないということだが、これまで不良債権の最終処理に当たっては、セーフティネットの拡充が必須と言われていた代表幹事としては、今回の大臣の発言をどう思うか?

小林:坂口大臣の発言は報道でしか聞いていないので、全体との関係でどのように言われたのか把握していないが、雇用対策で失業給付の先延ばしをしないと言っておられるようだ。しかし、給付日数も含めてトータルとしての雇用のセーフティネットのパッケージを、不良債権処理、借入れ側企業に関連して予想される失業の増大との関係で、全体としてどのように考えておられるかを、給付の上乗せをするかしないかも含めて、大臣にははっきりしていただきたい。

失業給付に関しては、前向きというよりは現状を如何に救うかという部分のウェイトが高いので、前向きな部分として更にいくつかの手が打たれるのであれば、給付自体を上乗せしないことについては否定的な見方はしない。大切なことは全体としてどういうセーフティネットを考えているのか、ということだと思う。

Q:ということは、必ずしも給付の上乗せ延長がされなければ不良債権の処理をすべきではない、というわけではないということか?

小林:そのようなことはない。

水口:やはり、パッケージとして考えるということだと思う。

Q:それ(給付延長)以外に、どのようなものがあるか?

水口:今、日本に一番足りないのは総合的政策に欠けるということなので、ワースト・ケース、ベスト・ケース、通常のケースというくらいのシナリオをはっきり描いて、こういう場合にはこうするということを明確に出すべきと思う。2月に米国でオニール財務長官に会った際にも、「日本は力があるのだから自分でやって欲しい。ただし、全て構造改革を目標としてやって欲しい。こうして欲しい、ああして欲しいとは言わない。」と言われた。恐らく米国のその姿勢は継続していると思う。構造改革で一番重要なのは不良債権問題ということになっており、パレルモG7の時もグリーンスパン氏は、「日本の問題は大変だというが、そんなミステリアスなことではない。答えは見えており、それは不良債権問題の解決だ。」ということを明言している。ただし、あの頃と今とは、日米の株価急落で状況が非常に変わってきており、当初日本政府側のシナリオは、日米安全保障問題がメインテーマであり、その次が経済となっていたのが、がらっと変わって、経済問題、しかも不良債権問題が主になった。そういう意味では、日米共通でそうした問題に正式に対処しようという姿勢になってきたということは、非常に歓迎すべきことだと思う。

日銀については、最後のカードを切った、ある意味では賭けに出たとも言える。従来の金利政策中心から量的な政策を採り、中央銀行としては、異例なことと言えるが、インフレターゲットとは言わずも、将来において、消費者物価指数がゼロ%以上になり安定的に推移するまで続ける、ということだ。時期がいつかは誰も明言できないし、できるだけ早くそういう状況になることを期待するということだと思う。そういう点で、マーケットのセンチメントを変える、マーケットにある程度のコンフィデンスを与えるという意味の最後のメッセージと考えている。準備預金を一兆円増しても急に貸出が増えるということは無いが、マーケットのセンチメントを変えるということで効果はあったと思う。米国では0.5%の利下げは予想より小さかったということで、ニューヨーク市場もNASDAQも下がっているが、日本は非常に好感しているという状況だから、財政金融 - ポリシーミックスというものが日米ともに揃ってくれば、相当マーケットのセンチメントが変わっていくということに期待したい。

Q:日銀は公定歩合をゼロ%に戻すということを政策の余地として残した、三月末の決算に向けて最後のカードとしてヘッジしたと見ているが、三月末までに公定歩合を変える可能性はあるか?

水口:政策決定会合でどういう意見が交換されたか分からないが、従来から言われていることは、公定歩合は実際上、指標性は無いと言われている。マーケットサイドから公定歩合がいくらか、ということは余り意味が無く、実際上の金利がどうなっているかということだと思う。今のままでは恐らくゼロに近づいていくだろうが、それをずっと続けるということをはっきり言ったというのは大変な決断だと思う。

鳥海:明日、明後日、どう動くか分からないのが株価だと思う。今回の日米共同声明の中で、規制緩和、不良債権問題処理、構造改革を打ち出して、日本はそれを約束した形になっている。この部分は、同友会がずっと訴え続けているところだ。ある経済界の集りで、当時の首相が我々に向かって、「そうは言うが、各企業の経営者に会ったら、皆が助けてくれと言っているではないか。」と言っていたが、一国のトップが、こういう感覚で要求を受け止めていることに大きな問題があるのではないかと思う。トップというのは、大局を見て、大きな流れを見て、決断していかなければならないが、各業界から色々な声があると思うが、そういう捉え方自体が問題だと思う。私は、常日頃、政治に経済は殺されてきていると言っている。確かにバブルの発生から後処理について経営者の責任は非常に大きいと思うし、反省をしっかり持って真摯に受け止めないといけないのは当たり前だが、各企業はどうやって生き延びるかということで、必死になって構造改革をやっている。そうした中で、政治が何故経済を殺してきているかというと、変革の時代には世の中の仕組みやシステムを全部変えなければならず、一つの仕組みを直したからといって世の中が急激に良くなることはない。最近、会計原則論議が前に進んでいるが、税制の問題、商法の改正、あらゆるものが関係しているのに、その仕組みがバランス良く、整合性をもって直っていない。それが、経済界、各企業にとって、非常に大きな打撃を与えている。政府としては、今後、どうやって整合性を持った改革を早く進めるのか。例えば、規制緩和一つとっても、細川内閣のときから何年続いているのか。時間軸、各システム間の整合性、優先順位が非常に重要だ。

株価の問題については、一喜一憂しても仕方ない、というのが経済界全体の受け止め方だと思うし、グリーンスパン神話が崩れてきて、やはり彼も普通の人かというように受け止められはじめた、ということが、米国の株価を下げさせているのだと思う。だから、日本側としては、森首相が行って約束したことを粛々とやる、しかも時間軸をもってスピード感を持ってやらないと、また不信感がでてくる。この辺を念頭においてやっていただきたいと思う。

Q:時間軸を持って進めるために、経済界は何をすればいいのか?政治に経済が殺されているのであれば、殺さないでくれと言わなければいけないと思うが、経済界はどうするのか?

鳥海:今まで同友会は、そういうことを真摯に要求してきている。

Q:今まで、地道な活動、もしくは大きい提言を出して活動されているのはよく分かるが、にも関わらず殺されてきたのだとすれば、それを繰り返しても、また殺されかねない局面が来るときに、どういう形で声明を出し、どういう形で政治と対峙していくべきなのか?

鳥海:私個人の考えとしては、より具体的な提案を出していくことであり、優先順位をつけた形で出していくことだと思う。今の政治の中で自民党自体が抱える大きな問題として、森首相に全て責任があるということに焦点が当たっており、自民党自体がフェードアウトするかもしれない、という危機感に遠いと思う。ある意味ではマスコミの責任かもしれないが、自民党自体が変わらなければいけないということにスポットを当てるべきである。政治家の出処進退は各個人が決めていくのだと思うが、私の意見としては、民間や企業もそうだが、年寄りは年寄りとしての納まるべきところがあると思う。自民党の若い世代が前に出てきてもらいたい。ここのところの動きを見ても、それがビビッドに我々に伝わってこない感じがする。

水口:言い残したことを申し上げるが、為替が議題になっていない。為替は120円絡みのところで自然体で行くという状況になっているということは、実体に合っているということで、経済界の立場としては良いことだと思う。米国からもその問題が出てきていないことは、非常に良いことだと思う。我々は常に総合的な政策を提示して、タイムスケジュール、優先順位をつける、ということを言ってきている。米国は恐らく実行力があるが、日本の場合は本当に実行力があるのかということにかかってくる。自民党政権としては、国民に政策を提示して実行できるかということが、政権を維持していくラストチャンスだと思うし、それだけにしっかりやっていただきたい。

コーポレートガバナンスの問題では、経営者が各自で考えないと、マーケットの評価がもっときついものになっていく。そういう意味で、一部の銀行は三月期赤字決算をしてきちんとやっていこう、というふんぎりを付けてきている。詳細は不明だが、不良債権直接償却という方向に目処が出てくるということは非常にプラスだと思う。現在、株価が非常に安い企業は、どうしたらいいかについて、それぞれが判断すべきだと思う。

株式市場の活性化対策についても、政府に税制改正を求めるのは結構だが、同時に証券界は、投資家の信頼を取り戻すという努力をどうやってするか、あるいは企業が自社の株式価値を上げるためには、コーポレート・ガバナンスとして、どうしていくかをそれぞれが真剣に努力する、ということが最も必要だと思う。政治には要求するが、我々自身もやっていく。そこで恐らく合成の誤謬が出てくると思うが、その場合に政治の立場は非常に重要だ。

鳥海:誤解があると困るので言うと、変革の時代には過去を否定していくことが、国も企業も重要だ。バトンタッチするときには、過去を否定してくれ、自分を否定してくれ、ということを私自身が言っている。政治もそうだと思う。過去の人が残っていることは、後に国を司るものにとってはやりにくいことではないかと思う。過去を否定するからには、若いジェネレーションにバトンタッチしていくことが必要だと考えている。今の時代、知力、気力、体力というのは、企業にしても、国にしてもトップに立つものとしては、充実していなければいけないが、それにもまして、ITに後押しされたグローバリゼーションの時代に更に要求されるのは感性だと思う。感性というのは、すべてではないが若い人ほどビビッドだし、感性を持った人達にバトンタッチしていくことが、ある意味で国を活性化していくことではないかと思う。

アジアから帰ってきたばかりだが、アジアの政治のトップと会うと、日本はしっかりしてくれよという言葉が次々と出てくる。例えばAMFのように、日本が主導してアジアの地域協力を強くするということに対して、日本は後ろ向きになっているのではないか、という発言が多い。そういう意味においても日本の存在感を高めることが、アジア自体の経済も良くしていくのだと思う。

小林:雇用の問題について、何らかの手を打たないとリストラに弾みがつかないというのは、明らかに事実だと思う。ただ、ヨーロッパの例を見ると、個々は別として、基本的には良かれと思って色々な手を打った結果、失業率を高止まりに押さえてしまい、かえって労働市場の流動性を妨げるという経験があり、先程の失業給付の上乗せや延長は、そういう範疇に入る。米国や特にイギリスは、その経験を踏まえて、幾つかのプログラムを発表してきている。

日本の場合、雇用に手を打てばリストラが一斉に動き始めるとは思わないが、非常に大きな要因であることは事実だ。今日の坂口さんも、最終的には雇用対策を総合的にもう一度考え直す時期に来ていると言われている。例えば、クリントン政権が93年の8月に雇用投資戦略等トータルとして何をしようとしているのか目に見えるものを出している。あるいはブレア政権でも、ウェルフェア・トゥ・ワークというように、自主的に自分の新しい仕事をやっていく。そういう自主性を尊重した前向きな政策を分かりやすい形で出していく。これは、日本が官民一緒にやらなければいけないことで、政府の政策として財政構造改革も当然入ると思うが、全部一貫して分かりやすい形で出すと同時に、勇気を持ってリードしていくことが、政治、政府の責任だと思う。

では、民間はどうするのかと言えば、株価も企業業績も良いところもあれば、悪いところもある。企業業績の良いところは、今まで特別な手を政府に打ってもらったとか、助けてもらったから良いのではなく、やるべきことをやってきたところが良くなっている。株価が低迷していること自体は、マーケットが企業業績やこれからの日本経済の見通しに対して厳しい評価をしているということだ。特に海外の投資筋は、思いきった構造改革をやる勇気が今のところは無い、という診断を下している。そうでは無い、というメッセージをはっきり出す必要があり、その具体的なあり方が先ほどから申し上げているパッケージだと思う。

我々も全て政府の仕事と言っていないで、経済財政諮問会議にも牛尾さんや奥田さんも出ておられるのだから、こういう手がある、これをやったら効果があるのではないかというものを出しながら、民間は個々にやるべきことを、きちんとやっていく。やれないところは、市場の厳しい判断が下るということは甘受しなければならない。ただし、それが非常に短期に出ると、社会的問題になる可能性もあるので、マクロ政策として手を打っていく必要がある。業績が継続的に良い企業や株価が全体の影響に左右されない企業は、今まで特別な支えがあったのではないということを我々民間は見据えなければならない。その点で、マーケット、市場の判断が出つつあると思うし、それを鈍らせるアクションは、むしろやらないほうがいいと思う。

以上

(文責:事務局)


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