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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2000年09月19日(火)14:00~
出席者 小林陽太郎代表幹事
水口弘一副代表幹事・専務理事・広報委員長
南直哉副代表幹事・経済社会思想を考える委員会委員長

記者からの質問に答える形で(1)今後の経済運営、(2)原油高、(3)熊谷組の再建、(4)有価証券譲渡益の源泉分離課税延長問題、(5)経済団体統合問題、(6)IT教育等について出席者から発言があった。

Q:政府において補正予算編成の検討が進められており、「IT商品券」といった構想も浮上しているという。経済同友会は基本的に景気対策としての補正予算は不要であるという立場から、こうした動きをどう思うか?

小林:QEの数字を見ても日本経済が堅調に回復基調にあり、補正予算は不要という立場は変えていない。ただ、補正予算が規定路線となりつつある現在、ノーとばかり言うのも意味がない。二つ重要なことがあり、一つはこれ以上の赤字国債の増発につながらないようにすること。もう一つは歳出の中身として一時的な景気・雇用対策ではなく2001年以降の経済を構造的にも強くする、意味のある分野に集中することである。一般論ではITということになるが、「IT戦略会議」等の検討で具体的にどこに集中すべきかについては焦点が定まっているはずなので、施策の効果を国民にきちんと示すべきだ。

「IT商品券」については具体的な内容は決まっていないが、ITは商品券をもらってやるという類のものではなく、やる気のある人がやるものであり、どれほどの効果があるかは不明である。加えて、今後も企業のリストラが進行することを考えれば、雇用の問題等セーフティネットに対して継続的に有効な方法で金を使うべきで、それが将来にも役立つと思う。

Q:最近の原油価格の高騰について、中長期的な産油能力といった観点も含めてどう思うか?

小林:高騰の原因は不明であるが、米国では原油高を非常に心配しており株価にも影響している。日本は原油価格の高騰に対してやや感覚が鈍いと思う。原油高が米国企業の業績に与える影響やインフレ懸念などを今後も注視する必要がある。また、高騰の原因についてはしっかり把握する必要がある。

南 :昨夜フランスのエネルギー関連の国会議員と話をした時もその話題となり、先方から「なぜ日本は落ち着いているのか」という質問をされた。考えられる原因は二つあり、一つは現在日本では昨年に比べ円高傾向で相殺され、欧州ではユーロ安で相乗的な影響を受けているということ。もう一つは、日本国内の石油産業の過当競争があるせいか、ガソリン・灯油などの製品価格が余り上がっていない。電気料金は燃料コストとスライドする仕組みであるが、余り動いていないことから最終消費者に大きな影響を与えるには至っていないと考えられる。ただ、これが続けば厳しい状況になるかもしれない。特に、電力会社の立場からは、自家発電をする会社が(燃料高騰のため)供給側から需要側に変わり、そこに決まった価格で電力を供給することになると、一方で燃料コスト上昇の影響を受けるので収益的に厳しくなる。エネルギー産業にいる立場からは、原油価格が上がることを前提として対処していかなくてはならないだろう。

Q:市場メカニズムが働かず増産されていないのではないか?

小林:需給バランス以外にも投機的な動きの影響は推測される。

水口:先日、堺屋経企庁長官と討論したときにも、長官は「日本は今度の原油高についての危機感がない」と発言されていた。原油高についてはヘッジファンドを含め投機資金が相当入っているとも考えられる。日本に影響が少ないのは円高の影響もあるだろう。GDPに占める原油輸入割合も非常に小さく、現状ではマクロで見て大きな影響はないと考える。また、OPECのシェアも4割程度であり、いずれはマーケットメカニズムに従うことになるだろう。

Q:原油価格の上昇について、水口副代表幹事・専務理事の発言は『日本経済への影響はない』と理解して良いか?どの程度の水準になると影響を及ぼすか?

水口:当面、日本経済への影響はないと思うが、影響を及ぼす水準については分からない。

Q:南副代表幹事は『ガソリン価格は変動していない』と発言されたが、その理由は?

南 :一つは過当競争にあり、ガソリン価格は本来のコストを適正に反映していなかったのではないか。我家の近くにも80円で販売しているスタンドがある一方、105円で販売しているところもある。こうした店が存在している市場なのである。従って、105円のスタンドは全く影響を受けていないだろうが、80円のスタンドはどうなっているのだろうか。

Q:石油税が高いとの指摘があるが、原油が上がった分、税金以外の小売部分に反映されるため、米国は上がり易いが日本は上がり難いのではないか?

南 :末端の消費価格にもっと反映していいのではないか。貿易を含めた経済活動が、我々の生活とつながっていることを実感できるようにすべきだと思う。

水口:アナリストによると、上場会社のうち来年3月期に過去のピーク利益を抜く業種は非常に多いが、石油については過去のピーク利益の3割くらいの水準であり、相当な過当競争が行なわれていることは事実だと思う。

Q:代表幹事の見解は『あまり影響がない』、との理解で良いか?

小林:今の水準が続けば、米国を通じて、あるいは直接的に必ず影響はあると思う。それがどの程度のインパクトになるかは予測できない。

Q:「熊谷組」が再建に向けて約4500億円の債権放棄を要請したが、どう思うか?

小林:一般論として述べるのは難しいが、「そごう」の場合と同様、その前提となる再建計画がしっかりしているかどうかがキーだろう。再建計画はしっかりと吟味される必要がある。

Q:有価証券譲渡益の源泉分離課税の延期問題が浮上しているが、どう考えるか?

小林:少し時間がかかるかもしれないが、納税者番号制度の導入と総合課税が望ましい方向と考えている。延期論については、原則からはおかしいと思う。法律で決めたことでもあり、しかも当時と比べて違う要因が出てきたとも考えにくい。この問題は制度の問題よりも、例えば株式取得価格の把握や、税務署への申告手続きの煩雑さといった技術的な問題と思うので、そこはきちんとすべきだ。また、税負担が重くなり株式市場へ影響があるならば、申告分離課税の税率の引き下げを検討すれば良い。いつまで延長して、その間に何をするのかを明確にすべきである。もともと税の公平性から生じたもので、きちんとした理由がなければ筋が通らない問題である。

水口:これは30年来の問題であり、証券税制の問題として見た場合に、理論的にも実務的にも不十分のまま来てしまった。これは証券界の問題だけではなく、証券市場の問題、投資家も含めた問題として捉えるべきである。有価証券取引税および取引所税廃止のバーターとして、キャピタルゲインについての源泉分離課税の廃止、申告分離課税への一本化という形になったわけだが、そもそも有取税の廃止はグローバリゼーションの立場からも当然だ。本来、納税者番号制度が導入されれば良いのだが、実際は政治的にも難しい。申告分離課税は、税務申告の煩雑さや26%(地方税含む)という不公平な税率、取得原価不明の株式をどうするかという基本的な問題もある。これらを詰めていけば、自ずから延長期間や方法についても形が出てくると考える。証券市場への心理的な圧迫等から言えば、源泉分離課税を延長してこれらの問題を検討するという方向に賛成である。

Q:経団連と日経連の統合に伴ない、経済同友会はどのような役割を担っていくことになるのか? また、経済同友会では、97年に業界団体の在り方について『小さく、開かれた、自律した業界団体を目指せ』と述べているが、今こそこの提言を活かすチャンスではないかと思うがどうか? さらに、経済界全体が政策実現能力を高めること自体は悪くないが、行き過ぎるとある意味での圧力団体としての機能が強化されるあまり、世の中のバランスを失してしまう懸念もあるがどう考えるか?

小林:経団連と日経連については、機関決定を経て統合に向けた作業が進められており、我々としては粛々と見守るとともに統合の成果が上がるよう応援したい。組織や地方との関係等、中身がどうなるかについても注目したい。

同友会は戦後、個人会員による団体として発ち上がった。『個人と言いながら、会費は企業が払っている』という批判は承知しているが、全くニュートラルな個人というものはあり得ない。それぞれの立場はあるものの、企業や業界の在り方に拘らず、一企業人として、それぞれの経験をもって発言し、貢献していこうというのが同友会の立場である。この考えは今後ますます必要になってくると思う。

ただ、設立当初は少数であったものの、今や会員数は千数百名にまで増えている。重要なことは、千数百名の中でこれからの日本経済に先導的な役割を果たす企業や産業の人達に、同友会の運営に積極的に参加してもらえるよう促すとともに、彼らの声が同友会の活動に大きく反映されるよう工夫することである。この点は、同友会の特長として明確にしていく必要がある。

経済界の活性化という点からは、T(Traditional)型と言われる企業が新しい経営手法を取り入れ、どう変わっていくのかも非常に重要である。従って、我々も新しい業種ばかりではなく、従来型業種とのバランスも保っていく必要がある。

我々は、同友会の在り方に関して、日本はいかにあるべきか、その中で企業や企業人はどのような役割を果たさなければいけないか、同友会が切磋卓磨の場としてどのような形であるべきか等について今年中に固め、「21世紀宣言」として発表していく。あわせて組織と運営についても鋭意検討を進めている。

業界団体については、経済的負担や出費という点からは経済四団体で重複している以上の大きな金額が業界団体に流れている。また、業界団体が天下り等によって官と民との固定化現象を助長していることも否定できず、その在り方についても見直していきたい。

Q:南副代表幹事に伺うが、経済同友会が「21世紀宣言」を纏めていく作業と、経団連と日経連とが統合の理念を作り上げる作業とでダブる部分もあるのではないか?

南 :日経連については、歴史的経緯を含めて不案内なのでコメントできないが、同友会について感じることは、個人の立場で発言し勉強していく場であることから、長い目で見たあるべき姿というものを言い易いという点である。元来人間は、言行を一致させるために本能的努力をするものであり、その点からも、同友会という団体には大きな特長がある。"あるべき"あるいは"こうありたい"ということを、より言い易い立場にある。既存秩序や既得権などに囚われてはいけないという意識が高まる。従って、同友会には存在意義があるし、どこかの団体と一緒になるのであれば、小林代表幹事が言われているとおり解散した方がいいと思う。

また、財界が圧力団体として強化されることへの懸念について指摘があったが、本当はもっと影響力を発揮できるようにならなくてはいけないと思っている。その影響力が不当であれば世論の猛烈な批判を浴びるわけで、経済団体は本来のあるべき姿を目指す意味で影響力を発揮するし、会員企業に問題ありと判断すればそこで指導力さえも発揮するとともに、政治を動かすくらいでなければいけない。民主主義とはそういうものだと思う。

Q:米国と比較した場合、日本のIT教育における問題はどこにあるか?

小林:米国とは一概に比較できないが、IT、PC、マルチメディア等に馴染むための教育は、外国語教育とともに小学校の頃から徹底していく必要がある。米国やカナダの例を見ると、IT分野への投資額が一定水準に達しないと経済全体に対する生産性のプラス効果は出てこない。

大学においては慶應義塾大学の藤沢キャンパスがひとつの例にあたるだろう。ここでは高校時代までITに特別の関わりがなかった学生が半分以上だが、入学後に所定のコースを消化することで、卒業時にはしっかりと"IT化"されている。こうした例を広く展開していくべきではないか。

Q:小学校の先生を教育するために、企業から人を派遣してはどうかという議論があるが、どう考えるか?

小林:先生方に対して、あるいは先生方と一緒になって生徒達を教育していくために、企業からボランティアで人を派遣することは非常に良いことだし、積極的に取り組むべきだと思う。

水口:経済同友会の教育委員会は積極的に教育現場に足を運ぶ活動を展開しており、会員からボランティアで教育現場に出向く人達を募集している。

小林:教育委員会が取り組んでいるのは、何を教えるかというよりも、教育現場に企業人が行き、先生方や生徒達の抱える問題を肌身で感じよう、また我々の考え方をそうした方々に分かって頂こうということである。

「ジュニア・アチーブメント」の取り組みに、コンピューター化されたビジネス・ゲームを通じて生徒達がバーチャル・カンパニーの経営を行なう、というのがある。企業から派遣された人達がこの活動をサポートしているが、先生方や生徒達にいろいろ興味を持ってもらうために企業ができることは多い。企業のノウハウを教育界に対して積極的にトランスファーすることが必要だ。

以上

(文責:事務局)


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