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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2000年06月06日(火)13:30~
出席者 小林陽太郎代表幹事
水口弘一副代表幹事・専務理事・広報委員長
生田正治副代表幹事・経済政策委員会委員長

冒頭、水口副代表幹事・専務理事より、代表幹事見解「衆議院議員選挙における投票率の向上を」、及び2000年度(第15回)夏季セミナーの開催について説明があった後、記者の質問に応える形で、(1)衆議院議員選挙への期待、(2)補正予算の必要性、(3)新卒者就職状況の好転と景気動向等について、出席者から発言があった。

Q:6月13日に衆議院議員選挙が公示されるが、何が争点となるとお考えか。また、経済同友会として今回の選挙に何を望むか。

小林: まず、政治体制の問題として、保守連立を前提とした点が今回の選挙で問われることが挙げられる。前回の連立政権が選挙の洗礼を受けていないことが批判の対象となっていたことを考えると、この点は重要だろう。
次に、これがメインになるが、日本経済を今後どうしていくかということで、短期的にここ1~2年の景気の問題に重点を置くのか、視点をもう少し先に置き、21世紀の日本や構造改革をも視野に入れて年金等社会保障も含めて考えるのかという問題である。この点が大きな争点になるべきであり、是非、政党間の政策が表に出てくる選挙戦になってほしい。
更に、選挙の結果として判断したいのは、93年の政治制度改革を受けて、小選挙区制に移行することで政策本位・政党本位の政治に向かうことを期待してきたが、今回の選挙を経てその方向性がより明確に見えてくるのか、それともそうした効果は小選挙区制では期待できないのかという点である。是非前者であってほしいが、われわれ自身の投票行動によってその答えが表れてくるのだと思う。

Q:「神の国」発言、「国体」発言を受けてか、森総理の支持率が低下している。再三にわたる森総理の失言に照らして、総理としての能力、人格、思想等どうお考えか。

小林: 森総理の総理としての資質・能力・人柄に対する疑問や、総理が現行憲法に基づく国のあり方に疑問を持っているという考えは、今のところない。しかし、結果として一連のご発言が不注意であったことは否めないし、このところの支持率の問題にもこの問題が影響していることも否定できず、非常に残念に思っている。

生田: 森総理のご発言は不適切で、残念だと思う。実際のご発言と後に釈明された真意とをつなぎ合わせることも難しい。ただ、それが(選挙の)争点になってしまっては、この重要な時期に道を誤ってしまう。いわば、素振りなしに突如ティー・ショットをしてミスが出たというところではないか。真の争点は政策論議であるべきだし、景気が自律調整路線に入りつつある今、21世紀の日本の経済社会がどうあるべきかを議論して頂きたい。財政難は承知しているが、経済は病み上がりの状態なので、あまり突き放されても困る。早く健康体になるよう、財政措置も含めながら、21世紀に向けてどのように展開していくのかを議論してもらいたい。
また、IT革命は、人類史上初のグローバルな規模での産業革命であり、政府にはITが日本で振興するための枠組みとルール作りを是非進めてもらいたい。本来、今回の選挙後には総理候補として挙げられるような人が2~3人出てきて、この点も含めた考えを争点に議論してもらいたいと思う。

Q:「衆議院議員選挙における投票率向上を」という文書を会員に配るとのことだが、幾つかの世論調査によると投票率が向上すると野党優位に働くとの見方もあるが?

小林: あくまで「皆で投票に行こう」というのが主旨であり、間接的にでも野党を支持しようと言っているわけではない。

Q:小林代表幹事ご自身は、必ず投票されているか? 区長選挙にも行かれている

か?

小林: 不在者投票も含めて必ず投票している。区長選挙については海外出張等で投票していないケースもあるが。

Q:経済同友会としては、前回の選挙の時も投票率向上を呼びかけたのか?

水口: 前回も出している。

Q:来年度予算から抜本的財政改革予算を組むべきとのことだが、一方でゼネコン等の厳しい業界や一部産業界からは補正予算の要望が強い。今年下半期を見とおして、補正予算についてはどのようにお考えか。

小林: 従来から申し上げているように、現段階で補正予算を必要とする状況は表れていないと判断している。

Q:産業の再編にあたってハード・ランディングもやむなしとのお考えか。

小林: 何を指してハード・ランディング、ソフト・ランディングと呼ぶかは難しいところだが、金融ビッグバンや産業界のリストラを含めた日本経済の現状は、ソフト・ランディングの範疇に入るだろう。このような状態が急激に減失する段階に来ているとは思っていない。こうした形でのリストラはしばらく続くだろうし、日本経済が構造的に健全化し、強くなるためのソフト・ランディング・プロセスとして不可避である。それを避けることは日本経済の強化から自らを遠ざけることになる。経済は生き物なので、補正予算が必要になる状況が全く起こり得ないとは言い切れないが、少なくとも今は、そうした状況ではないと思う。

水口: 個人的には、従来からハード・ランディングで行くべきと主張してきたが、この段階になると如何にランディングさせるかが問題であって、ソフト・ランディング、ハード・ランディングの区別にはあまり意味がないと思う。

補正予算については、経済同友会では従来から不要であると主張してきた。補正を前提として予算編成を行なうのは誤りであり、本来は予算編成の段階で全て組み込むべきである。99年度予算の場合、当初(予算)の国債依存度は36~37%であったが、(補正予算の)結果43.4%に達してしまった。始めから明確な政策を打ち出して、それに基づく予算編成を行なうことが必要である。予備費の5,000億円に手をつけてはどうかとの意見もあるようだが論外だ。景気が回復してきた段階でこのような議論をするのは時期尚早だと思うので、その点、大蔵大臣の判断は正しいと思う。

証券業界は既にハード・ランディングして、多くの会社が倒産した。銀行業界も本来ならばハード・ランディングしたであろうが、相当な規模の被害の拡大と世界金融恐慌の端緒となることを懸念して、公的資金導入によるソフト・ランディングに向かいつつある。経済全体として、これから民間自身の努力が非常に重要になってくるので、政策的に金をいくら注ぎ込むという話を今行なう必要はないと思う。

現在集計中の「景気定点観測アンケート」においても、第一の関心事は景気回復だが、その内容についてはそれぞれ考えがあるだろうし、公共事業を期待する意見は少なくなくなってきていると思う。そうした意味でも選挙は政策論争を中心にすべきであり、野党も総理の発言問題ばかりにとらわれず、正々堂々と政策論争を展開し国民の審判に委ねるべきだ。

Q:昨日、労働省から、新卒者の就職状況が好転しているとの発表があったが、これは景気動向を見る上で、良くなっている兆候と捉えていいものか?

小林: もちろんプラスの兆候の一つと考えるべきである。この2~3年、業績の良い企業も、悪いなりに構造改革を行なってきた企業も、雇用を要としながら押さえてきた。特に新規採用については、かなり制限してきた。しかし、ある程度リストラの目途がたった企業が、いつまでも新卒採用を行なわないことは、将来の組織構造上、好ましくない。従って、プラスに動き出したことは当然でもあるし、良いことだと思う。これが、継続した傾向なのかは注視する必要はあるが、今回の結果はプラス材料として受け止めている。

生田: 雇用率は景気の回復を後追いする傾向があり、企業がリストラを行ない生産性を高めていく過程においては失業率が高まる。しかし、新規採用が上向き始めたということは、景気は緩やかながら良い方向に向かいつつあると受け止めてもいいのではないかと思う。

Q:昨日発表の4月景気動向の先行指数は28.6%となり、14か月ぶりに50%を下回った。補正予算なしで景気が悪化するのであれば、補正予算を組んだ方が金額面では結果的に安く済むのではないか?何故、補正予算が必要ないのかをもう少し詳しく伺いたい。

小林: 経済同友会で行なった「景気定点観測アンケート」でも、2000年後半あたりの見通しについて、ややそうした傾向が出ている。では、質そのものをどう見るかについては、50%を割ったということで直ぐそれに反応するのは早過ぎるのではないか。経済そのものが堅調に成長しているという判断を変えるだけの新しい要素は、現状では出ていないと思う。継続して「消費が良くない」という声も聞くが、いずれ鉱工業生産指数の上昇をフォローしていくだろう。何かしなければ97年の二の舞になるという判断があれば、補正を含めて手を打つべきだが、97年と現在では客観情勢もかなり異なる。当時は消費税増税や減税をやめたり、また、金融システムに対する不安感があり、根本的に今とは違うと思う。

水口: 不況と言われながら280兆円台の消費を維持しているということは消費不振ではなく、消費は景気の下支え要因として非常に大きいし、中身も最近では変わって来ている。家計調査をどうするか経済企画庁でも検討しているようだが、できるだけ早く信憑性ある実態を表わした調査が実現することを期待している。

また、97年の橋本政権下での財政緊縮による失政ということを聞くが、これは俗説だと思う。実態的には97年4月に消費税を引き上げた結果、消費は4 - 6月期に落ち込んだが、7 - 9月期には回復し設備投資も増えた。従って、循環的な意味はあったが、僅か9兆円の需要を奪っただけで大不況に落ち込むことはありえない。むしろ7 - 9月期の数値が発表になったのは12月と金融不況の真只中であり、誰もこれに注意しなかったという点で一部エコノミストの怠慢だと思う。問題は、やはり金融不安である。97年秋には大銀行、大証券会社が潰れ、海外ではアジア通貨危機やロシア危機があった。そこで98年から60兆円の金融再生枠を作り、中小企業信用保証協会が20兆円の対策を打った結果、この不安が一掃され、98年10月9日で日経平均は大底を打ち立ち直ってきたわけである。従って97年と今とでは環境が全く違い金融不安はないわけだから、もっと力強く自信をもってやっていくべきではないか。民間にしても最近の鉱工業生産や機械受注の伸びを見ていると設備投資の輪は大きく広がり、雇用も良い方向に向かうので、もっと自信を持ってやるべきたと思う。また、構造改革を行なう絶好のチャンスであると思う。

Q:景気や補正に見方について、生田副代表幹事は小林代表幹事や水口副代表幹事・専務理事とニュアンスが違うのではないか?

水口: 今の発言は私の意見であって、経済同友会の経済政策委員会として一本化されたものではない。

生田: 私自身は違っていないと思う。自立的回復路線に入り始めたという感触を得てからあまり時間が経っていないが、持続的に回復の方向に行って欲しいと思っている。また、確信を持てる段階ではないので、しばらくは注意深く見守るべきであろう。こうした点については、お二人と同じ考えであると思う。補正の問題についても、もともと自律調整でやっていくべきものであるし、原則的にはいらないし、現在では補正が必要と思われる材料はないという点で同じだと思う。フェアウェイの右か左かといった違い程度だろう。

小林: いろいろな数値から見て、経済が良い方向に行っていることは間違いないと思っている。DIが50%を割ったからといって、これだけで見方を変える必要はないと思っている。ただ、このところ続いている政府の巨額なサポート、ゼロ金利政策等に慣れてしまうことに恐ろしさを感じる。ある面、政府に対して民間から活気を発散していくことも必要で、こうした点は大切なことだと思っている。従って、経済同友会の中で表現のニュアンスが違うことがあっても当然だが、全く“黒と白”といった話をしているわけではない。方向として経済は回復を続けているし、もう自立回復に入りつつあると言っても間違いないと思う。

水口: 統計手法は従来的なものを引きずってきているので、経済の構造改革期においては現実を見誤り易い点がある。日経平均の継続性が取り沙汰されているが、一方、遅きに失した感もあるが日本経済の構造改革に合わせて指標銘柄を替えたことは意味がある。家計調査の場合も、消費行動が変わっている時に、従来と同じやり方をやっていては新しい動向は掴めない。行政も民間も構造改革期に相応しい指標を開発することが重要である。

Q:現在の自民党主流派は、補正予算は必要との認識に立ち、そのような姿勢で選挙に臨もうとしている。経済同友会の立場とは正反対だが、それについてどうお考えか。

小林: 小渕前総理は生前、「二兎は追わず当面の景気回復という一兎のみを追う、財政再建も大切だが、それは景気が回復し成長率が2%台に入ってからだ」と言っておられたし、森総理以下、自民党主流派は同じ姿勢を示しておられるのだと思う。小渕前総理ご存命時から2001年度予算は(景気回復と財政再建の)両方を視野に入れて欲しい、更に2000年度は補正予算は必要ないと申し上げてきたので、この点のみを取り上げて自民党主流派と経済同友会の考えは違うかと聞かれれば、違うと申し上げるしかない。2000年の経済が真当に補正を必要とする状況になれば考え直すが、少なくとも今の段階ではそのような状況にはないと思う。

Q:選挙に際しての政策選択の問題について、与野党とも国民の審判にたり得る政策を提示しているかどうかという点については、どうお考えか。また、森総理による「新生日本」プランをどう評価するか。

小林: 年金制度、税制等、個々の政策面では違いが出ているが、与野党共に党としての全体的政策パッケージという形で(の提案はなく)、有権者がトータルに比較できるような政策対比の図式はまだ表れていないと思う。この点は、はっきりさせてもらいたい。極めて単純化すれば「先楽後憂か、先憂後楽か」という問題をどう考えるのかということだ。21世紀の日本をきちんとしたものにするためには、当面厳しいことにも耐えなければならないというシナリオを国民にきちんと提示できるのか、国民も痛いばかりでは耐え難いので、痛みの先にあるシナリオが用意されているのか、その中身は具体的にどういうものか等の点に関する考えを是非提示してもらいたい。

以上の点は、「新生日本」プランにも関わってくるだろう。森総理の提示されたパッケージの内容はまだ充分に拝見していないが、総論的に見ると触れるべき点に触れていると思う。問題はその内容をどう実現していくか、当面の戦略はどのようなもので、その先のシナリオが開けるのかどうかといった点が必ずしも明示されていないと思う。10年~15年位の視野を定め、その中でどのようなスケジュールで日本経済を立て直して行くのかという点も含め、堂々とシナリオ的なものを出して頂くことが必要ではないか。

生田: 各党の政策的な考えは報道等を介して断片的に視界に入って来るが、パッケージとして各党が選挙に臨む姿勢が見えてこないまま、言葉のやりとりだけに終始しているのは残念なことだ。財政・税制、憲法論議、教育問題等について、21世紀にどのような方向に進むのかというビジョンが、きちんと整理されるべきだ。

更に、選挙後、総理に就任する可能性のある立場の方々が、国民に見えるところでオープンなディベートを行ない、それを見て国民が判断するのが良く、公示後にそのような動きが現われることを切に望んでいる。トータルのパッケージ、ビジョン等の形で、国民に判断できるチャンスを与えてほしい。何に向かって投票して良いのかわからないような状態で、選挙にもつれこむようなことがないよう願っている。

水口: 森総理誕生の際、「新生日本に向かって構造改革を中心に果敢に挑戦する」と所信表明されているので、経済同友会としては、「森新内閣に望む」と題する代表幹事見解を発表した他、その所信通りに実行してくれるよう再三申し上げてきた。きちんとした政策が提示され、それに基づいて投票が行なわれるように期待している。

以上

(文責:事務局)


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