代表幹事の発言

記者会見発言要旨(未定稿)

小林陽太郎代表幹事
水口弘一副代表幹事・専務理事・広報委員長
藤澤義之副代表幹事・経済政策委員長

冒頭、小林代表幹事から、ケルンサミットおよび国会会期延長に関して見解が述べられ、その後、記者の質問に応える形で、(1)日銀の通貨政策と景気動向、(2)外銀による長銀買収問題、(3)米大統領選挙と保護主義の関係、(4)大型補正予算、(5)今年度の経済成長率、(6)日銀の介入等について出席者から発言があった

小林 :最近の大きな出来事としては、ケルンサミットが閉幕し共同宣言が出されたこと、国会の会期が延長され雇用問題や商法改正法案を中心に審議されるとのことだが、これは朗報である。

サミットについては、短期資本の移動の制限などは、単に開発途上国のシステム不備だけに責任を帰すのではなく、グローバリズムそれ自体の負の局面が出たもの、ということを先進国を含めて認識したことは重要であったし、日本も含めた先進国の責任もはっきりしたと思う。

特に日本に関係する具体的なテーマとして、ODAの問題にしても、債務国に対して先に向かった道を開いたという意味で、先進国のひとつの責任の果し方として評価できると思う。一方、これから日本のODA政策をどうしていくのかについて、対象を含めて、抜本的な見直しをしなければならないという新しい問題が出て来たという感じがする。

また、延長国会の中で審議すべきものが目白押しであり、将来に向かっての日本経済の構造改革、企業の前向きなリストラが円滑に進むよう、産業競争力会議でも議論されている株式の移管にからむ商法改正などについて、重点的に成立を目指して欲しい。

水口 :補正予算は5千億円で実施すると明言しているが、特に産業競争力強化のための関係諸法案が成立しないと、6月11日に発表された緊急対策・競争力強化案が実行できないので、是非ともやってもらいたい。さらに商法改正が実施されないと、連結決算や時価評価といった会計問題を含めて、企業経営上も大変な問題になる。この延長国会での懸案事項の整理を折りに触れて要望していきたい。

Q.景気と日銀の通貨政策に関して、日銀はつい最近もユーロ市場で介入するなど円高を防止する姿勢を強めているが、日銀の通貨政策とこうした円高防止策を受けてか、このところ株高が顕著である。また、消費の一部にも景気に対する支援材料が出て来ている。こうした日銀の通貨政策と現在の景気についてどう考えるか?

小林 :基本的には為替は120円前後、124~125円位までがいいところではないか。一方、円高については、それ以上の極端な円高にならないための(日銀の)介入は是としていいと考える。ただ、円安の範囲が少し広がりつつあるとの感もあるし、介入の仕方等については見え見えといっては変だが、慎重に考えた方がいいのではないか。円高が進むことが、景気に水をさすという判断は、基本的に支持したい。ただ、ごく最近の株高に対し、どの程度、直接にインパクトがあったかは分からない。

水口 :日米で一番重要なのは株価の水準である。米国の場合は、グリーンスパン議長の金利引上のアナウンスがあり、調整期は過ぎたとの見方もあって、ソフトランディングするとの意見が多い。

日本の株価が上がり始めたのは、1~3月のQEが1.9%、年率で7.9%となったため、この先もいいだろうという見方と、これを後押ししているミクロの企業業績がこの9月期で底をついて、今年度後半からよくなるという見方による。これが心理的な支えになっている。株価が17500円から18000円というのは、充分にあり得る水準だと思う。

心配なのはミクロとマクロの見方のすれ違いであり、ミクロの立場からは非常に強気であるが、マクロの見方では1~3月の反動や、あるいはその後に従来型の財政出動を行った場合に金利上昇がマイナス効果になるとの判断から、プラス成長に修正しているシンクタンクはあまりない。従って、実際はこれからの補正予算や産業競争力会議の具体的施策、今国会での実際の審議や進み方が重要である。

藤澤 :個人的見解だが、1~3月が1.9%と非常に大きな数字が出たことが、ますます強気論を復活させた一方、研究所等は多少上方修正はするが「本当かな」と思っている。こうした予測におけるまだら模様というのは、依然としてはっきり残っている。ただ、個人的には、去年から一貫して日本経済がこのままであるはずがないと言い続けており、これは非常にいいサインであって、大幅に上がるということではないが、ひとつの転換点になってきたという気はする。

為替レートについては、今の水準は、全体のバランスから言って、いいところにいるというのが実感である。また、(日銀の)介入は、日本の経済成長に対する世界各国からの期待が非常に強く、それに対して、政府として本腰を入れた行動を対外的にどう示していくかという意味で、いろいろな手段を使って上手にやっていこうという意思を示したものと見ている。従って、効果の有無の前に、政府は責任をもって対処しよう、ポリシーミックスの中でいいポリシーをその都度選択していこう、という姿勢を見せていることについて評価したいと思う。

株価について私は強気で、今のままで行けば18000円は間違いないのではないか。世界で余っているお金が米国に集まる時代は変わりつつあり、日本がよくなれば日本に投資したいという投資家の意思があると思う。これだけの低金利の中で、多少リスクをとっても投資したい人も出てきていることを考えると、投資環境としては決して不利ではなく、底堅いあるいは上値を追う方向ではないかと考える。

Q.長銀の外資による買収攻勢があるが、外資による買収に日本の公的資金が使われることに対してどう考えるか

小林 :外資が買収した後どうなるのかが重要である。一般的に言われるように急速にリパッケージして売り逃げするのか、あるいは腰を据えて新しい先進的な経営技術により安定的な経営を実践し貢献するといった、大きく分けて2つのパターンが考えられる。個人的には、外銀であれ邦銀であれ、長銀自身が後者のルートで、新しい日本経済に、そして結果的にグローバルに貢献できる道が開けることが好ましい。

また、もし外銀による攻勢が前者に属することが明確になれば、やり切れない思いがする。しかし、外銀攻勢の全てが前者に入るわけではないし、噂の限りでしかないので、最初から外銀は“禿げ鷹”だと決めてかかることもない。ただ、他のケースを見るとそういうことがあっても不思議でないので、日本側でも何等かの動きが出て来てもおかしくはない。

藤澤 :願うことは、きちんと立ち直り、日本の金融システムが結果としてよくなり、かつ投資した人がメリットを享受できる形になって欲しいということである。日本の金融界や産業界として処理しなければならない問題が残っている現実を踏まえ、長期にわたって銀行がしっかりしていくことが重要だと思う。こうしたいい結果をもたらすように、投資家、金融監督庁、金融再生委員会は充分に考えて判断して欲しいと思う。

水口 :個人の意見だが、60兆円を用意して安心感が出て来ている今、長銀の問題を早く解決することが、日本の金融システムをすっきりさせる一番の要素である。不良債権を全て公的資金で引き取りその上で銀行として存続するのか、どこかに売るのかといった選択になるが、その場合、明確なディスクロージャーと今後の収支見通しというプロスペクタスをはっきり出すことが重要となる。これがなければ内外の投資家は、買いようがない。投資判断を与えることが必要である。私は、“日本勢よ頑張れ”といいたい。

Q.米国は大統領選挙を控えて、保護主義的な傾向が出て来たと言われるが、これは一過性ものと考えるか?

小林 :大統領選挙については、まだ緒戦でそれぞれの候補も具体的な対外関係や対日関係についての政策や発言を出す所まで来ていないが、従来の例を見れば、ある程度は日本を含めた貿易政策、特に米国側の赤字が大きい相手国に対しては、かなり発言が強くなることはあり得る。対日貿易赤字は依然大きいものの、米国経済の基調は強く、企業経営の中身も充実していて、対外的な競争力に自信を持っており、鉄鋼の問題はあったにせよ大勢を揺さぶるような対日問題はなかった。

今後、声高なものが出て来るにせよ、日米関係を大きく揺さぶるような、あるいはトップの出番が要請されるような事態が、大統領選挙の展開の中で出て来るとは思わない。一方で、日本が景気回復に対して怠けているといった印象を与えると、いろいろな問題が出て来るかもしれない。ただ、実体論として、日米関係がおかしくなるとは思っていない。

Q.補正予算については雇用対策を中心に検討されているが、秋以降に景気刺激策が必要との見方もあり、大型補正予算や来年度予算について今後どうあるべきと考えるか?また、来年度の経済成長率については、どの程度を見込んでいるか?

小林 :補正予算は、これまで述べているとおり雇用の流動性を高める施策や新規事業促進策を中心にすべきである。仮に公共事業をやるのであれば、従来型ではなく新たに求められるインフラ整備を色濃く打ち出したものが必要だ。

また、来年度の経済成長率については、1-3のQEが高く出たからといって、今の段階で成長率見通しを大幅に上方修正するだけの材料があるわけではない。

Q.今年度の経済成長率についてはどの程度を見込んでいるか?政府見通しのように0.5%はいくと見ているのか?

小林 :(成長率が)プラスは20%、ゼロまたはマイナスが80%という考え方は、基本的には変えていない。

Q.日銀の介入について見え見えとの発言があったが、それは円レンジのことを指しているのか。

小林 : レンジを直接言っているのではなく、円安の方向に広がっているとの報道がなされたり、憶測が流れたりすること自体が芳しくないことと思っている。日銀の行動の具体的なことを対象に見え見えと言っているのではなく、印象論としてそう思っていると受け止めてもらいたい。

以上

(文責:事務局)

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