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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2000年01月25日(火)13:30~
出席者 小林 陽太郎 代表幹事
藤澤 義之 副代表幹事

記者からの質問に応える形で、(1)G7共同声明への評価、(2)「21世紀日本の構想」のポイント、(3)憲法改正や教育改革の議論、(4)TOB活発化の兆し、(5)独禁法改正(差止め請求権)、(6)サマーズ財務長官発言等について出席者から発言があった。

Q.先週末のG7で、「円高懸念を共有」という声明が出たが、これについての評価を伺いたい。

小林: かつて記者会見で「たぶん入らないのではないか」と申し上げたが、結果的に(そういう表現が)入ったことは、経済界としてもプラスと評価している。円高が進むと日本経済にとってマイナスであり、結果的にG7としてもマイナスということで、入ったことは歓迎する。

藤澤: マーケットから見れば、良かったという面と、読み通りだったということで、静かに受けとめたと思うし、その結果、金利が少し下がっている。問題は、新聞やマーケットも日・米とか円に関心を持っているが、ユーロが弱くなっているという現象も含め、全体のバランスのなかでの円・ドル問題、ドル・ユーロ問題、その帰結としての円・ユーロ問題がある訳で、そうした三極通貨のバランスのなかで、あのような結論が出てきていることを見失ってはいけない。日本では、円・ドルレートばかりに関心がいっているが、世界の動きは、必ずしもそうしたことだけではない。

Q.先般「21世紀日本の構想」の報告書が出た。小林代表幹事もそのメンバーのお一人だが、特に訴えたいポイントは何か?

小林: 内容に入る前に、大きなポイントについてご説明したい。小渕総理の私的諮問機関のなかで、いろいろな提言が出ているが、それは閣議決定に近いところまでもっていこうという種類のものと、報告で終わるものとに大別できる。前者は、実現性を意識して、事前の各省の根回しが重要な問題となり、結果的に「この程度か」といった内容のものが多くなる。今回の報告は後者にあたるものであり、メンバーもかなり思い切ったことを言ってきた。

また、小渕総理も、これを実際に実現していくためには、法律化などいろいろな問題もあるが、こうしたものは広く国民の意見を聞くべきと考え、編成プロセスにおいて、海外も含め、随分と意見聴取・議論をしてきた。さらに、作業過程の内容もホームページに掲載するなど、オープンな環境で作業を行ない、広く国民的な議論を巻き起こすことによって、必要なものについては実施の方向にもっていこうという基本的な精神で行った。

この報告書のなかで、トピカルに取り上げられているものとしては、移民政策、英語の第二公用語化、義務教育の週3日化などがあるが、これらのベースにある基調として幾つか非常に重要なポイントがある。

一つは、開かれた日本の国益というものをきちんと見据えることである。例えば、中国・韓国を含めた近隣諸国との外交・友好関係をきちんとすることを意識し、あえて「隣交」という言葉を使って強調している。また、日本の社会をオープンにしていくためには、きちんとした移民政策を施すことが必要だが、一方で重要なことは、日本の社会が、内国民・外国民対応の差別無しに、我々日本人と同じように生活の質やその他を享受できるようにしていかねばならない。また、そうした人達ともコミュニケートできるような、異質なものに対する尊敬の念や物事を共有できる態度、なおかつ、今すぐには第二公用語とまでいかなくても、社会人のレベルでは実用英語を100%できるようにしようと記している。現実的かどうかという議論もあるが、大切なことは、英語が特定の国の母国語ではなく世界の共通語であり、最近のインターネット社会を考えた場合、これはもう不可避であり、この取り組みは、「開かれた国益」とも基本的に関連してくる。

もう一つは、「協治」についてである。ガバナンスは、一般に「統治」と訳されるが、「統治」という言葉のニュアンスには「上から下へ」、「統治者と被統治者」というイメージがあり、国家・社会を構成する夫々の主体の自主性というものを無視・軽視するニュアンスが強い。そうではなくて、各主体の自主性を尊重し、なおかつ「公(おおやけ)」の部分というと、政府・官の独占物に近かったが、そこへNPOや個人を含め、もっと民間の参画を活発にしていこうということを示している。そこで、ただ無闇に参画すれば、カオスを引き起こしてしまうので、お互いに責任を持ち、まさにガバーンすることを「協治」と言うことにした。上からのルールに従うだけでなく、お互いの自主性・自治性の下で秩序を作り出していく。それを言葉としては「協治」と言おうというわけである。私流に言うと、実質的な「協治」といったものは、既に今までの日本は備えていたが、本来の意味での統治が透徹し切れなかったのが、今までの日本の実態ではないか。そこで、実体論として実際にあった「協治」を回復し、「協治」の対象になる主体を認知するとともに、法律その他の面でもカオスにならないようにしていこうという考えである。今、司法制度改革審議会でも議論されているが、一時的にやや米国的司法社会になるというリスクがあってもいいのかと聞かれたら、ある程度のリスクがあっても、そうした主体の自主性・自治性を尊重した「協治」を実現していくべきというのが、メンバー50人の大部分の意見である。この点が、この提言の中で非常に大きな意味を持っている。

他には、企業に絡む豊かさと活力がある。個人と企業・組織の関係、これはもう前から同友会も言っていることだが、個に主体を移して行こうということもそれ程新しいことではない。しかし、全体の「開かれた国益」とか、自治・協治との関係であらためて個を主体としていくことの意味合いがはっきりしてきたと考える。

Q.最近、憲法や教育といった国の在り様の基本に関わる論議が起ころうとしているが、こうした動き自体については、どのように受け止めているか? 同友会としてはどうか?

小林: いずれの問題も、いろいろな議論や検討が、常に行なわれていていいと思う。戦後50余年が経過し、新世紀を間近に控えた時期ということもあり、憲法問題や教育問題といった基本的な問題が議論されることは、自然であるし、好ましいことでもある。憲法問題については初めて国会に調査会ができ、タブーを恐れず、きちんと議論されることが好ましいし、議論される頻度が多かった第9条関連以外の基本的な問題についても議論されると思う。

また、国会だけでなく、国民レベルでの議論も、こうしたことをきっかけに、広く行なわれるようになると思う。そして、結果的に国民レベルでの共有意識が高まることは、非常に好ましいことだと思う。同友会では、憲法だけを取り上げたわけではないが、堤清二委員長のもと、憲法問題についてもいくつかコメントを発表しているし、現段階では未定だが、同友会としてもどのように意見を集約していくかを考えていきたい。

教育について言えば、戦後教育の基本形は、米国の制度を母体としている。初等教育、高等教育などについて、何度か見直しの検討はされて来たが、ちょうど時代の変わり目ということもあり、新しい世紀に向かっての日本あるいは日本人のアイデンティティーというものを基点に、自分達をどう位置付けたらいいのかとの関連で、教育の在り方が問い直されている。初等教育における生きる力の強化、高等教育における問題探求能力の発揮、その先の高度な専門分野の教育を対象とした大学院といった方向は、好ましいと思う。教育には二面あり、国家としてここまではやって貰わなくては困るといった義務付ける面と、自主的に自分の能力を開花させる選択的な面がある。前者については、徹底的に普及させなければいけないが一定のレベルに止めるべきであり、それ以上は個人の自主性に委ねるべきと考える。

家庭における教育の在り方については、企業は、家庭において教育について子弟と話す時間を占有してしまっているのではないか。この点については、企業も思い切って仕事の仕方を変えるなど、協力していく必要がある。今の教育の現状にはいろいろな問題があるが、やむを得ないと言いながら半分以上は、企業の人の採り方、育て方のツケを払わされていると言われても仕方がない。これからは、組織で働く人達が、家庭で子弟と過ごす時間をどのように増やしていくかが、非常に重要なテーマである。

Q.日本でもTOBが活発化しそうな動きに対して、どのように考えるか?

小林:「昭栄」の件は報道の範囲でしか知らないが、TOBそのものは珍しくない。最近、資本家や株主利益の極大化を軸においた経営の方向がはっきりしてきており、これからもこうしたケースは出て来ると思う。個々のケースについて論ずる立場にはないが、米国のケースを見ていると、いわゆる敵対的TOBといわれるなかで、結果的に仕掛けられた企業が眠りから覚めて、株主に対して本来行なうべきサービスを行なうようになったということもあるので、これからも出て来るだろう。

Q.個々の企業というよりは、一種のベンチャーとして投資家から資金を集める若い人達が出て来たことについてはどう思うか?

小林: 出るべくして出て来たし、これからも増え、成功するケースも出て来ると思う。特筆すべきところはないと思う。

Q.企業が広く社会に開かれることで永続化していくという考えがガバナンス論として出ていたのが同友会の流れだと思うが、株価を極大化させるといったように、資本家というよりは株主の短期的な利益を上げるのが今の米国だ。社員として蓄積してきたノウハウによって地域社会やコミュニティーにアクセスできるということは理解し得るが、一方はいささかギャンブル的とも感じられる。これら双方は、あるべき論から見て、また、将来ビジョンとしてどのようにつながっていくのか?

小林: これからの日本の社会は、一面では家族や地域の活動に携わる時間が増え、一方では、短期利益を追求する株主、あるいはそうした株主利益を大切にする企業体が増えるといった傾向が、並行して進んでいくと思う。

今の米国が、まさにそれであり、ボランティア活動など、企業や企業人が地域に密着した活動を積極的に行なっている一方、ご指摘のような、これで“本当にいいのか”といった経済現象や企業形態が出て来ている。こうした状況を疑問視する声は、米国内でもあり、この傾向がいつまでも続くということではなく、どこかで壁に突き当たり、修正されると思う。

これは、企業の理念にも関係するし、若い人達も含め、これからどういう生きざまを選んでいくのかといった選択肢が増えることは、豊かさの重要なことであり、活力の源になる。選択肢が増え、多様性が高まることによって、自身の現在の状況に疑問を感じる人達も多くなると思う。どちらかではなく、両方が並行して出てくると思う。

藤澤: 米国でも、自分は絶対にホスタイル・テイク・オーバーはせず、長い期間をかけて投資し、うまくいったら利益をとりたいと考える人が沢山いる一方で、TOBのようなものも出て来ており、まさに共存している。我々を含め、これを外から見ている人達が、米国というのは全てがホスタイル・テイク・オーバーではないか、仕事の論理で動いている社会ではないのか、それが日本に持ち込まれた時に、「21世紀日本の構想」などがありながら、どのような社会になっていくのだろうかというのが、今のご質問と理解している。むしろ、いろいろな変化があるなかで自分達の「協治」を保つということが、実は「21世紀日本の構想」のポイントであり、個のガバナンスであり、個の自立や「協治」といったものになってくるのだと思う。日本の場合は、とかくひと色で見た方が分かり易く、十派ひとからげで切って捨てようという伝統的なムラ社会の意識になり易い。実は、そうではないという認識を、我々も持たなければいけない。先程の憲法や教育もそうだが、企業・産業側も聖域なく一からやり直しと動いている時に、社会そのものが従来のままでやろうというわけにはいかない。いろいろな分野で、聖域が崩れていくなかで、待ったなしでもう一度見直してみると、基本である憲法や教育といった原点に戻って何ら悪いわけはないというのが、議論の発端であろう。

Q.通常国会に公取委が提出する独禁法改正案のなかに、差止請求制度の導入が含まれており、経団連は「孤立してもいいから反対する」と述べているが、同友会はどうか?この制度導入の根拠について、あらためて教えて欲しい。

小林: 差止請求権を認めるという考え方自体を否定する論理的根拠はない。乱訴の危険があるという点については、有効な手段を考えれば歯止めは利くと思う。差止請求権を認めることについては、私自身がかつて経済政策委員会で提言したからということではなく、現時点で問われても回答は同じであり、また、経済同友会としても同様である。

Q.経団連の反対は、論理的ではないということか?

小林: 論理的ではないということではない。私自身は、修正すべきところはあるにせよ、“角を矯めて牛を・・・”というように、企業が社会の信頼を得るということを放棄してはならないと思う。ただし、乱用については具体的な手だてを考えるべきだ。

Q.G7の際、米国のサマーズ長官が日本は成長率1%程度に甘んじるのではなく、さらに成長率を伸ばすべく一層の規制緩和、特にNTTの接続料金を含めた情報産業分野で規制緩和が必要と述べている。サマーズ長官の日本経済への評価について、どのように受け止めているか?

小林: 言われるまでもなく、今の日本経済がやらなくてはならないことは、怯むことなく構造改革を進めつつ、短期的にもプラスの経済成長を実現していくことである。
サマーズ長官と別途懇談する機会があったが、その際のサマーズ長官のコメントは二つあった。ひとつは、日本の経済の財政健全化や景気てこ入れに対して水を差すような意見が出て来ているが、是非、前向きに取り組んで欲しいというもの。二つ目は、目標成長率や潜在成長率といったものが、それ以上に伸びる可能性を心理的にもぎとっていることに問題があるのではないかという点であった。個人的には傾聴すべき議論だと思う。成長率は結果であって、伸びている分野、横這いのところ、マイナスのところなどがまちまちであり、重要なことは、これらをならして何%とするのではなく、同じ何%でも、これらまちまちの組合せがどうなっているかである。伸びているところ、一皮向ければ伸びるところなど、それぞれにフォーカスした施策を効果的に実施することによって、平均1%以上の成長率も見込めるというのが意図だったのではないかと思う。これは、我々の政策検討の参考にしていきたいと思う。

以上

(文責:事務局)


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