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記者会見発言要旨(未定稿)

日時 2000年01月11日(火)13:30~
出席者 小林 陽太郎 代表幹事
水口 弘一 副代表幹事・専務理事
広報委員長
茂木 友三郎 副代表幹事
千速 晃 副代表幹事
鳥海 巖 副代表幹事
藤澤 義之 副代表幹事
坂本 春生 副代表幹事

記者からの質問に応える形で、(1)春闘、(2)憲法調査会設置、(3)株価、(4)為替レート等について出席者から発言があった後、小林代表幹事から今年の経済同友会の取り組みについて発言があった。

Q.今年の春闘をめぐって賃下げの議論もあるようだが、どのような基本方針で臨むのか企業経営者の立場からご意見を伺いたい。

小林: 何をやるかは各企業毎ということになるだろう。経営の合理化を進める上で雇用に対するマイナスのインパクトは避けられないながらも、雇用の安定に手を打ちたいというのは多くの企業に共通する願いだろう。その方法として、賃下げやワーク・シェアリング等があるが、一律に進めるものではなく、企業毎にかなりいろいろな動きが出てくると思う。

水口: 基本的には、各企業がそれぞれ対応すべきことで、かつてのような労使一体型で取り組むことではないだろう。中には人手不足の業界もあるだろうし、また、同じ業界の中でもそれぞれ事情が異なる。

坂本: 小売業界でも、一般的な問題に加え、パートタイマーの比率が非常に高い等の独自の問題を抱えている。一律ではなく、各企業がそれぞれの問題点に対応する形で解決を図るほかないと思う。

鳥海: 賃下げと言われているが、実質賃金がどうなっているのかを考え直す時期だと思う。この数年間を見ても、物価等に照らした実質賃金はそれほど下がっておらず、むしろ5%くらい上がっているとの統計もある。世の中の一般的な総論に流されることは、道を誤るもとではないか。我々の業界を見ても物事はまともな方向に向かいつつあると思うし、政府としても今までコミットしたことについては、きちんとやってもらいたいと思う。

茂木: 企業毎にそれぞれ異なるという意見に同感だ。昨年7月に開催された日米財界人会議において、人件費削減をいかに進めるかという議論があり、米国の企業経営者の選択肢として、市場から幾つかの企業が退場することで業界全体の人件費が削減されるケースや、賃下げ、レイオフ、採用の抑制等等、いろいろなケースが紹介された。米国においても企業によって違うわけで、日本でも当然さまざまな方法が考えられる。そうした手段の一つとして賃下げがあるのは事実だが、企業がそれぞれの事情に照らして対応するべきだと思う。

千速: 賃上げよりは雇用の安定確保が重要と考える。個別企業・産業の立場から言えば、今年の春闘は相当厳しいものになると思う。

藤澤: 雇用を維持すること、人的資源の有効活用を前向きに考えることが重要だ。そのためにも、ワーク・シェアリングや雇用のミスマッチ解消に向けた方策を採っていく必要があり、伝統的な賃金論争をぎりぎりとやる時代ではないと考える。

Q.春闘において賃下げもありうるとなれば、消費への影響も出てくるのではないか?

小林: 物価との関係で、実質賃金が本当に下がっているかどうかをきちんと考える必要がある。将来に備えて当面は固くしようとして消費が鈍ることもないとは思わないが、企業も働く人々自身も雇用の安定確保に最も強い関心を抱いていると思うので、賃下げによる消費へのマイナスのインパクトはそれほど心配しなくてもよいのではないか。消費の問題については、ここ数年(日本の消費者は)持つべきものは皆持ってしまって、もう購入するものがないと言われているが、そんななかでも特徴ある商品やコストの安いもの、新しい面白さを持っているものが常に新市場を創ってきている。賃金のフリーズ、賃下げが議論されるなかにあっても、このような状況は基本的には変わらないのではないか。

Q.春闘方式の形骸化が言われて久しいが、一定年齢において一律賃上げするという方式を今年も連合では言っているし、現実には春闘が始まる。春闘の在り方をどのように考えるか?個別方式であれば、この時期に一斉に行う必要はないと思われるがどうか?

小林: 実態から言えば、全国ベースでの春闘といったものに縛られることなく、個々にやった方がいいと考えている企業の方が、業界によって異なるかもしれないが、多くなっているのではないか。

千速: 今は、変わり目、節目に来ていると思う。鉄鋼の場合は、業界一律は薄れて企業毎になって来ている。我々は、賃金については複数年方式をとっており、賞与はその時の業績によって決めるという方式をとっている。いろいろな変化が生じており、今後もそれは進むと考える。

Q.鉄鋼業界の場合、労使が団体交渉するという形式が残っているが、その時期や賃上げの要求方式がバラバラになることは考えらるのか?

千速: 報酬体系そのものが企業において変わりつつある中、従来からの春闘方式が、どれだけ意味をなすのかといった点から、実態に合ったものに変わっていくと個人的には考える。

水口: 経済同友会では数年前に、春闘方式というものは終わった、しいて言えば、ひとつの目安を示すというくらいであるという議論があった。かつては鉄鋼労連や電機労連がプライスリーダーと言われてきたが、今はそういったことはなくなった。

Q.春闘方式による企業側から見たデメリットというものはあるのか?

千速: 実態に合わなくなって来ているというのが、現在の状況であると思う。

Q.実態に合わなくなった春闘に労働側がこだわって続けることによる企業側のデメリット、ダメージといったものはあるのか?

千速: メリット、デメリットということではなく、双方が実態に合わないということを認識し合いながら、少しずつ変わって来ていると受取るのがいいのではないか。

Q.1月20日に召集される次期通常国会において設置される憲法調査会に、どのような期待を持っているか?

小林: 憲法の問題については、「外交・安全保障委員会」、「安全保障問題委員会」等で集団的自衛権に関わる憲法解釈の見直しを巡って議論しているし、その以前には「新しい国家像を考える委員会(1993~94年度:委員長 堤清二 セゾン文化財団理事長)」において広範な問題について議論すべきと提案している。基本的な憲法問題について国会が正面切って取り組むことは、このような時代の変わり目において重要なことだと思う。将来を見据えつつ現憲法の重要性も認識して、タブーにとらわれないできちんと検討してほしい。

坂本: 「新しい日本を考える委員会」で憲法の問題を取り上げたが、絶対に憲法を改正しないという考え方は必ずしも正しくないのではないか。日本と同時期に憲法を策定した諸外国では、改正手続き上の違いはあるにしても、必要に応じて、考え方や時代の変化に伴って何度も憲法改正を行っている。まず、(憲法を)変えてはいけないという考え方自体を変えてほしい。9条のみならず国会のあり方等の重要な問題も憲法に関わってくるので、いろいろなことを時代に則して洗い直し、虚心坦懐に検討することが重要と思う。

Q.株価の動きをどのように見ているか? もし米国で大規模な調整が行われるようであれば、日本にもその影響が及ぶと思うが?

小林: 米国でも日本でも、インターネット等の情報通信関連分野が(株価を)牽引している状況は変わらない。その中で、現状の収益とは無関係に、将来の夢を買うといった動きによって株価が上がっていることについては、いつまで続くか心配である。一方で、そのような心配が度々表明されているにもかかわらず、ここ数年同じような状況が続いていることから、いわゆる「ニューエコノミー」と呼ばれるだけの強さが米国経済にはあるのではという感想も持っているが、やはり不安のほうが強いと言わざるを得ない。いずれ何らかの調整が行われると思うが、非常に大きなものになるとは思えないので、日本市場への大きなインパクトはないだろう。むしろ日本経済にとって当面注意しなければならないのは、為替レートの問題だろう。国際競争力という観点から見ると、賃金の問題にもこの点が大きく関わってくる。

水口: 個人的見解であるが、米国の株価は高すぎると以前から申し上げている。昨年末に“Financial Times”紙が特集していたが、ITの発展とそれに即応した非常に柔軟な資本市場に支えられた米国の株高の帰結がソフトランディングかリセッションか、このブームがどのように終わるのかという点についてヨーロッパらしい見方をしていた。また、ある新聞でもサミュエルソン教授が(現在の米国の株価は)30%割高だと言っており、米国はバブルの経済学を持っていないと認めていた。個人的には今の米国株価の動きは理想買いによるものであって、いずれ現実買いに戻ると思っている。IT、ネット関連企業の多いナスダックでは、利益が出たらその企業の株価は下がると言われるくらいで、理想が現実を上回っている。今のところ、グリーンスパン氏に対する信認と政策余地の大きさがあるので、2~3割下がっても米国経済がおかしくなることはないだろうが、いずれ修正されると思う。

Q.先ほど、日本経済にとって注意しなければならないのは、円高であるとの発言があったが、どの位の水準なら日本企業にとって大丈夫と考えるか?

小林: 一番高くて100円までで、105円前後であれば日本の産業は大丈夫であると言ってきた。先般、宮沢蔵相の発言に101円になったので介入を決めたとあったが、100円を上回らないようにするというのが、歯止めの目安ではないか。

Q.22日にG7があるが、その共同宣言の中に円高懸念のような表現が盛り込まれることは期待しているか?

小林: 議題に上がるということは聞いているが、コミュニケに入るかどうか、入ることを日本の政府が期待しているのかどうかについては分らない。この前のように円高に対する懸念が非常に強く持たれているといった感じはしない。

水口: 共同コミュニケには、この前、あれだけ入れているので、その延長線上ということはあっても、改めてとは聞いていない。

今年の経済同友会の取り組みについて

小林: この2000年を経済同友会として、特に重要な年と考えている。現在の日本は、明治維新以降、三番目の変革の時にぶつかっていると言われている。経済同友会は、二番目の変革である敗戦直後にスタートし、50余年が経過した。昨年、私が代表幹事に就任した際、先に向かっての企業、あるいは企業人の価値観というものについて考えようということで、「経済社会思想を考える委員会(南直哉委員長)」を発足し、検討しているが、2000年の内に新しい世紀に向かっての経済同友会の在り方、その中心的な価値観を成すものは何か、市場経済を仕上げなければいけない中で何が重要な問題なのかについてまとめ、発表したいと考えている。
従って、今年が新しい時代に向かっての最終準備の年であり、重要な年であると認識している。情報については、できるだけオープンにしていくので、我々の発言については、皆さんも注意深く耳を傾けていただきたい。我々は、2000年というものを一般に言う新千年紀としてだけでなく、経済同友会にとって新しい年であると認識している。

以上

(文責:事務局)


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