代表幹事の発言

第27回参議院選挙の結果をうけて

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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  1. 昨日投開票が行われた第27回参議院選挙では、連立与党が過半数を割る結果となった。これは、物価高や米国の関税措置など足元の課題に対し実効性のある経済政策が速やかに提示されず、国民の政権運営への不安が高まったことの表れ。この結果を真摯に受けとめ、わが国が直面する重要課題への対応方針を早急に示し、着実に政策を実行すべきである。
  2. 今回の選挙では、国民のwell-beingを高める将来の国家像、令和の時代に合った新たな経済社会モデルとそれを実現する政策が競われることを期待したが、こうした議論が十分に尽くされたとは言い難い。各政党とも短期的、ならびに物価高対策としての給付や減税など、国民に受け入れられ易い政策議論に終始した。
  3. 日本には重要な政策課題が山積しており、国政の遅滞は許されない。特に、米国の関税措置に対して、一部の国では妥結に至る中、日本も速やかに交渉をまとめていただきたい。与野党間での意見調整を含め、早急に交渉方針を見直し、残された時間を無駄にすることなく、米国との交渉にあたるべきである。
  4. また、米国の関税問題が突きつけるように、外的ショックに対する日本経済のレジリエンスを高めていくことが喫緊の課題であり、具体策を下記のとおり提案する。これと合わせ、財政需要の高まりが予測されることから、財政規律の維持、EBPMに基づくワイズスペンディングの徹底を求める。

    (1)物価高への対応:可処分所得の増加を実現するためのCPI+1%以上の賃上げノルムの定着、最低賃金の全国加重平均1,500円の早期達成、保険給付範囲の見直しなどによる社会保険料の抑制。低廉・安定的なエネルギー供給を実現するための安全性が認められた原発の早急な再稼働、次世代エネルギーに関する研究開発。

    (2)人手不足への対応:従来の働き方改革を見直し、健康確保を前提に労働契約法に基づく柔軟な働き方を選択できる枠組みの検討。外国人材との共生社会の実現。

    (3)経済ダイナミズムの創出:合従連衡による企業競争力の強化。競争力のある企業が優れた人材を集めることができる人材流動化の促進。この経済ダイナミズムを支える全世代のリスキリング機会の提供といったセーフティーネットの構築。

    (4)国内投資拡大のための規制改革の推進:民間企業の余剰資金を国内投資に向けるための、既得権益の打破による新たな市場開拓。対内直接投資の拡大に向け、ワンストップで投資家にソリューションを提供する投資庁の設置。

    (5)社会保障改革:現役世代の負担を軽減するための応能負担の強化。具体的には、マイナンバーの活用によるNISAを対象外とした金融所得課税強化。また、第3号被保険者制度の段階的な廃止、第2号への移行といった年金制度の抜本的な改革。
  5. 政治の不安定化が危惧される中、議席数を伸ばした野党にも、より具体的かつ実現可能性のある政策を提示し、責任を持って国民の期待に応える建設的議論と国会運営を行うことを求めたい。

以上

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