代表幹事の発言
参議院選挙の公示にあたって
公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史
代表幹事 新浪 剛史
- 今回の参議院選挙は、国内外の山積する重要課題を直視し、日本の取るべき進路を問う選挙である。本会では、政策論争を活性化すべく、経営者対象のアンケート、各政党の政策についての評価や対談動画の配信を行った。こうした取組みの範囲内ではあるが、各党の政策は分配や短期的対応に偏り、現実的かつ戦略的な構造改革を明示するには至っていない。
- しかし、わが国は今、昭和・平成を通じて構築され、すでに実態と乖離した因習や仕組みを排し、令和の時代に相応しい経済社会に転換すべき時にある。各政党には、選挙戦を通じて短期的課題への取組みにとどまらず、目指す国家像とその実現に向けた制度改革等の道筋を具体的に提示し、闊達な政策議論を行うことを期待する。
- 米国の関税措置や中東情勢などにより世界経済の不確実性が高まる中で、日本経済のレジリエンス強化は喫緊の課題である。争点の一つである物価高への対応としては、賃上げの継続に加え、社会保険料引き下げによる可処分所得の増加、低廉・安定的なエネルギー供給、農業分野の構造的課題の解決を図る政策が必要である。また、人手不足への対応では、労働投入量を増やし、潜在成長率を引き上げる真の働き方改革や外国人材との共生社会の構築が重要な論点である。
さらに、社会保障における応能負担や基礎年金改革、財政規律の維持と防衛費などの財政需要増加への対応についても、具体的な政策議論を求める。分配策については、一律の給付や減税のような財政規律を軽視した措置への国民の評価は厳しくなっている。むしろ、NISAを対象外とする金融所得課税の強化など負担のあり方を問うべきである。 - 一方、外交・安全保障においては、地政学的リスクの高まりに対し、自国防衛の自立性と抑止力強化について明確な政策提示が必要である。加えて、アジアの安定や多国間の開かれたルールに基づく貿易・投資体制の維持・強化に向けたわが国の役割についても各政党の考えを示すことを望む。
以上