代表幹事の発言

『経済財政運営と改革の基本方針2024』等の閣議決定について

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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  1. 本日、『経済財政運営と改革の基本方針2024』等が閣議決定された。
  2. この骨太方針において、長引くデフレからの完全脱却に向けた、新たな経済社会への転換を目指した中長期ビジョンが示された点は評価できる。中でも、少子高齢化が加速し、人手不足の恒常化が不可避となる我が国においては、性別や年齢問わず意欲ある人が健康で働きたいだけ働けるwell-beingの高い社会を実現し、それによって国民の「生涯可処分所得」を引き上げていくことが重要である。
  3. この実現に向け、まずは国内外からの民間投資の拡大が重要となるが、潜在的な投資需要を実現させる仕組み作りとして、エッセンシャルワーカー確保に向けた魅力度向上、全世代リスキリングを含む労働移動の活性化、海外人材活用の在り方に関するさらなる議論等を早急に進める必要がある。これに加え、エネルギーコストの競争力は、DXによる企業の生産性向上、持続的な賃上げのバックボーンとして国民生活に極めて重要となることから、エネルギー自給率の大幅な引き上げ、低廉かつ安定的なエネルギー供給の実現に、政府として全力を挙げて取り組んでいただきたい。
  4. また、社会保障制度も、令和の時代に即したモデルとして、多様な働き方のもと、働く方が健康で働きやすい環境を支えるものとしていかなければならない。いわゆる「年収の壁」問題の抜本的な改革に加え、スイッチOTC化促進を含むセルフメディケーションの推進、健診の受診率向上をはじめとした「治療」から「予防」へのシフト等の転換をしっかり進めるべき。この際、現役世代に負担の偏る現状のモデルは、応能負担の徹底へと抜本的に改めていくことも不可欠である。
  5. 財政健全化は、こうした取組みを一体的に進め、労働参加と国内投資の拡大により潜在成長率を高めた結果として、恒常的なPB黒字化を定着させていくことが重要である。そのためには、単年度ベースではなく複数年度での柔軟性を持った財政運営によって、効果の高い政策にはしっかり財政支援するワイズスペンディングの徹底が求められる。そして、この着実な実行の鍵となるのが、EBPMに基づくPDCAの実践であり、未だ不十分な情報開示やデータ整備を徹底的に進めることでEBPMを強化し、骨太方針の実現につなげていただくことを期待する。

以 上

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