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『経済財政運営と改革の基本方針2023』等の閣議決定について

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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  1. 本日、『経済財政運営と改革の基本方針2023』等が閣議決定された。経済がデフレ状態を脱するとともに、高齢化の進展に伴い構造的な人手不足社会が到来するなか、持続的な賃上げの実現に向け、労働移動の円滑化に注目した政策は、正に機を得たものであり評価する。

    かつて言われた日本企業の「六重苦」のうち、労働市場の硬直性は、残された大きな課題の一つである。しかし、昨今の世界的なインフレを受けて、日本でも賃上げの機運が高まり、人材の流動化も起き始めている。これは、日本経済の再生に向けた明るい兆しであり、この絶好の機会を逃してはならない。
    大前提として、経済の主役は民間である。経済・社会活動の本格的な正常化を機に、財政支出に大きく依存した経済運営から、民間主導の経済への転換を急がなければならない。
    まずは企業が大胆に意識を変え、自ら行動していく必要がある。賃金の引上げ、キャリアデザインに基づくリスキリングの支援など、有為な人材の獲得・育成を通じ、競争力を磨き上げようとする企業行動こそが、国内投資の拡大とともに持続的な賃上げを実現し、ひいては賃金と物価の好循環をもたらす。時代の転換点を迎えるなか、企業は投資の重点をTangible Assetから人材育成などIntangible Assetへと移し、切磋琢磨していくべきである。
    政府には、産業・企業の新陳代謝活性化や労働移動の円滑化に向けて、いわゆる業法によるポジティブリスト方式の主体規制からの転換など、経済のデジタル化や産業構造の変化に即した各種基盤整備の加速を期待する。
    経済同友会としても、会員所属企業とともに、成長と共助の両輪にて企業経営を行う資本主義を掲げながら、企業の目指すべき姿を徹底的に議論し、取り組みを実行に移していく。また、幅広いステークホルダーとも連携しながら、政府による基盤整備を後押ししていく。

  2. 80歳以上人口の増加に伴う医療・介護給付増や防衛力強化等により、財政需要は増大する。そうしたなか、少子化対策を重要政策に掲げたことを評価する。
    なお、児童手当については、①限られた財源は子どもの貧困対策に重点的に投入し、貧困の再生産を断ち切るべきであること、②現金給付の少子化対策としての実効性が未検証であること――から、給付対象となる所得上限の引き上げには賛成するが、所得制限の完全撤廃には反対である。現金給付の拡大より重要なのは、我々企業自身が働き方改革を深化・加速させることである。就業者数の最も多いサービス産業の就労実態に即した子育て環境の実現に向け、本会としても議論を深め、提言をまとめていく。
    また、「加速化プラン」等の実効性を高めるためには、適切なKPIの設定と進捗の点検・検証、タイムリーな見直しのための体制づくりが肝要である。政府は増税や保険料の引き上げ等の負担増を議論する前に、歳出改革の具体的内容とその工程表を明確化し、国民に対し、課題を先送りしない姿勢を見せていただきたい。
  3. 歳出改革の要諦はワイズスペンディングの徹底である。その意味で、中長期の財政運営に関し、あらゆる予算事項に対する検証可能なKPIの設定や歳出全体を通じた優先順位の明確化、EBPMの徹底強化が明記されたことを高く評価する。
    特に、一般会計歳出のうち最大の割合を占める社会保障費については、医療・介護、保育等の現場におけるAIやIoTなどデジタル技術の活用を促す規制・制度改革を速やかに進めることが、QoLの向上と財源捻出を両立する鍵となる。
  4. 日本経済の活性化に向け、継続的な世帯所得の向上は重要であり、1,000円達成後の最低賃金引上げの方針について議論を進める旨や、金融資産所得の拡大策が明記されたことは適切である。なお、保険料負担増が若年層の可処分所得を圧迫し、経済の活力や子どもを持ちたいという意欲を削ぐことがあってはならない。診療報酬・介護報酬等の同時改定に向け、これまでの医療・介護等の改革の進捗と実効性を検証し、各種保険の給付範囲の見直しも含め、制度改革を加速すべきである。また、ビジネスケアラー、特に仕事をしながら介護と育児に従事する方々への両立支援も遅滞なく充実させる必要がある。
  5. 最後に、持続的かつ実効性の高い経済財政運営を行うためには、骨太方針のあり方についても再検討が必要である。
    既にいくつかの領域では、中長期計画に基づく基金を作り、複数年度にわたる支出を可能としている。今後は、あらゆる領域において中長期計画を作成し、同計画に照らしたモニタリングと政策の実効性の検証、それらを踏まえた政策の改善、見直し、追加を毎年の骨太方針の軸とすべきである。大きな政策課題に対応するため、政策のサイクルそのものを時代の転換点に即した枠組みへと見直していただきたい。

    以 上

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