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経済運営についての緊急提言
- 96年度予算編成ならびに税制改正についての意見 -

社団法人 経済同友会
代表幹事 牛尾 治朗

I.緊急対策の視点
II.緊急対策の具体策

日本経済についての危機感が高まっている。直近の本会調査でも、内外の環境変化に対応した構造改革が遅れる中で景況観が急速に悪化しており、デフレ・スパイラルの懸念もある。また、金融システムを巡る問題も先行き不透明感が拭えない大きな要因である。政府は強い決意をもって、新たな視点に基づく以下の対策を第2次補正予算の編成を含めた今後の経済運営において実行するよう提言する。

Ⅰ.緊急対策の視点

日本経済を覆う閉塞状況を打開するに当たって最も重要なことは、一時的な痛みを覚悟しても、構造改革につながる緊急対策を実行することである。その観点から、今後の経済運営は次の3つの視点に立つものでなければならないと考える。

第1は、何よりも民間主導による経済の活性化を優先すること、すなわち個人や企業が活力を発揮し、民間需要が引き出される環境を作ることである。その鍵は、規制の撤廃・緩和とともに、税制である。新しい時代に向けて市場の機能を回復し、それを通じてヒト、モノ、カネを大きく動かすことが、構造改革を促進し、同時に閉塞した経済状況の打開につながる。公共投資の役割を認めつつ、なお内需拡大に当たって公共投資の拡大にのみとらわれるのではなく、民間需要の拡大の可能性を追求する視点が重要である。

第2は、市場開放を進め、わが国市場を世界により開かれたものとすることである。国際化を進める過程で内外価格差・高コスト構造をはじめとする日本経済の歪みが是正され、新たな経済活動の創出のための環境が整備されるとともに、輸入拡大、貿易黒字の削減を通じて為替の安定につながる。

第3は、構造改革に即応する財政の役割を確立することである。一部に議論のあるリフレ政策は構造改革の先送りに他ならず、問題の本質的な解決にはならない。旧来型公共投資はその内容を21世紀に向けてわが国経済を改革していく観点から厳しく優先順位をつけるとともに、従来の発想にとらわれずに時代のニーズに応えうる新しいアプローチによる事業実施が必要である。

Ⅱ.緊急対策の具体策

1.所得税・住民税減税の3兆円への拡大

平成7年度の特別減税2兆円を、最高限度額の引き上げにより3兆円に拡大して継続する。

2.法人税等の2兆円減税の実施

法人の実効税率を直ちに5%引き下げる(約2兆円)。また、できるだけ早期にさらに5%引き下げ、欧米並みとする方針を明確にする。租税特別措置についてはその段階で検討する。

3.土地、株式に関わる税負担の軽減

税制が土地、株式の取引を凍結している現状を是正し、市場参加者の拡大と流動化を図る。市場機能が回復する過程で価格が低下することもありえようが、何よりも市場が機能し、動くことが不良債権処理にあたっても必要不可欠である。

(1)土地について、譲渡所得課税を軽減する。特に地価高騰抑制のために平成4年から実施された個人に対する税率引き上げ、法人に対する追加課税は直ちに撤廃し、平成3年以前に戻す。

また、不動産取得税、取得に係る特別土地保有税、登録免許税を軽減する。

(2)株式について、有価証券取引税を廃止する。また、市場参加者の拡大を図るため、確定申告不要制度の適用限度額を大幅に引き上げる。さらに、利子所得と配当所得に関する課税の不均衡の是正、配当二重課税の是正について早急に検討する。

以上、1.、2.、3.の個人・法人の所得課税の減税、土地・株式に関わる税負担の軽減は、年度改正を待つことなく、秋の臨時国会で所要の法改正を一括して行い、年内に実施する。

4.プロジェクト型公共事業の実施

公共投資は、固定的配分によるばらまき型ではなく、優先順位を明確にして思い切って重点化するとともに、具体的な事業実施はハブ空港の整備や首都移転など、できるだけプロジェクト型で行う。また、民間事業において約3割にも達する建築工事単価の顕著な下落を、公共投資にも十分に反映させ、財源を有効に活用する。

また、情報通信基盤整備や科学技術振興などの未来型事業を大幅に拡充する。その際、事業の対象をハードの施設のみならず研究開発や施設運用に関わるソフト面の施策に拡大する。

これらプロジェクト型公共事業、未来型公共事業については、3兆円程度の別枠を設けて実施する。

5.財源について

以上の対策に要する財源は、まずは公共投資の工事単価の民間並みへの引き下げにより相当程度を確保し、不足分は国債の発行によるものとする。税制については、中期的には安定した経済成長に資するように所得・消費・資産の課税体系を整備する必要があるが、当面は減税を先行実施する。

6.為替の安定化

為替の動向が景況観に及ぼす影響は極めて大きい。先の海外投融資促進策、日米政策協調によって円高是正の動きが生じたことは高く評価される。これを一時的なものに終わらせないため、一層の市場開放・輸入拡大策、そのための思い切った規制の撤廃・緩和による裏付けを行う。

7.金融システム不安の一掃

政府が金融システムの安定化に取り組む断固たる決意を宣言し、内外の不安を一掃する。その上で、関係者の責任範囲の明確化、破綻処理の方法などを含め、問題解決のための枠組みを早期に整備する。

以上


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