私の一文字

2026年4月号

会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、渡部 一文アジア委員会委員長にご登場いただきました。

橋を「架」けてつなげる

アジア委員会 委員長 渡部 一文
ロッテホールディングス 取締役

岡西

「架」は構造物を支える様子の象形文字に由来するのですが、選ばれた思いをお聞かせください。

渡部

キャリアを振り返り選ぶ文字を考えたとき、「拓」か「架」で迷いました。事業開発をなぞらえると「開拓」が近いのですが、一方向に進むよりも橋を架けてつなげることに
力を入れてきました。人や価値が行き来することで新たな意味が生まれると感じ、「架」を選びました。

岡西

さまざまな「橋を架ける」経験をされてきたと思いますが、どのようなことを意識していましたか。

渡部

アマゾンなど外資系企業でグローバルと日本双方に携わる中で、日本市場への適応は常に挑戦でした。海外のやり方はそのままでは機能しません。電子書籍でも日本特有の読書文化に合わせた工夫が不可欠でした。既存にどう付加し価値として成立させるかを考え、つながりが一過性で終わらない構造を意識してきました。市場参入にとどまらず、成長やスケール拡大に伴い求められる組織やスキルが変化する局面の橋渡しにもかかわってきました。不確実な判断も一度きりにせず、行き来できる構造に落とし込むことが重要だと考えています。

岡西

複数の業界を経験されていますが、今のようなキャリアは若い頃から想像されていたのでしょうか。

渡部

まったく考えていませんでした。数学や科学の問題を解くことが好きで、エンジニアとしてキャリアを始めましたが、かかわる業界や領域が広がり、「解く」対象も経営や事業開発へ移りました。そうした変化を面白く感じ、あらかじめ行き先を定めないジャーニーを歩んできたのだと思います。コンフリクトの間に立ち、新たな価値を生み出す役割が増えていきました。

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岡西

キャリアチェンジしながらも、一貫してきたことはおありでしょうか。

渡部

自ら制約を設けないことです。得意領域を離れることで新たな発見が生まれます。一方で過去を否定せず、異なる業界や領域でも経験は形を変えて積み重なり活きてきます。未知に向き合うことで好奇心が刺激され、自身の可能性も広がります。こうした積み重ねがジャーニーとなり、今も続いていると感じています。

岡西

最後に、経済同友会で取り組んでいるアジア委員会の活動や今後について、お聞かせください。

渡部

2030年ごろまでにASEANのGDPは日本を超えるといわれています。人口増を背景に成長余地は大きく、日本の経験への期待もあります。日本が乗り越えてきた課題や仕組みは海外にとって有用な資産になり得ると考えています。広がるASEANの可能性を見据え、日本とASEANの間により多くの橋を架けていきたい。経済同友会のアジア委員会ではAJ-NEXT*の枠組みづくりを進めており、人材や知が往来し還流する構造を通じて、双方の事業と価値創造が持続的に発展する関係を実現していきたいと考えています。

* ASEAN-Japan Network for Engagement and Transformation:1974年以来50年続いた日本・ASEAN経営者会議(AJBM)を、次の50年を見据えて刷新する成果志向の新たなプラットフォーム
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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